表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/123

EP 57

自宅に帰還したマモル達は、地下の厳重な結界が張られた金庫室に集まっていた。

テーブルの上には、先ほど手に入れた『始祖竜の卵(化石)』が鎮座している。

「始祖竜の卵、ねぇ……」

マモルが石化した表面を指でなぞる。今はただの冷たい石だが、中には伝説の怪物が眠っている。

「化石ですけど、孵ったら可愛いのかしら~?」

「見た目はともかく、その力は世界を滅ぼすレベルですわ。……うっとりします」

フィリアとエルミナは興味津々だ。女性陣の肝が据わりすぎている。

デュラスは腕を組み、難しい顔で唸った。

「ふむ……。通常なら蘇生は不可能だが、我々には手に入れたばかりの『時戻しの霊薬』と『不死の華』がある。これらを組み合わせれば、理論上は孵化させることが可能かもしれん」

デュラスが学術的な見解を述べると、マモルがポンと手を打った。

「そっか。じゃあ、やってみよう」

「うむ。……って、ま、待て貴様!!」

デュラスが慌ててマモルを止める。

「相手は始祖竜だぞ!? かつて天使と魔族が手を組んでやっと封印した最強種族だ! それを蘇らせてどうするつもりだ!」

「どうするって……。やっぱり、どんな生物か見てみたいじゃないか。男のロマンだろ?」

「それに、可愛いは正義です! もふもふかもしれません!」

「私も見た~いです! 私たちの手で育てれば、きっと良い子になりますよ~」

マモル、フィリア、エルミナの三人は完全に「孵化させる気満々」だ。

「ぐぬぬ……。こうなったらもう止まらんか……」

多数決に敗北したデュラスは、諦めてため息をついた。

こうして、世界を揺るがす「始祖竜孵化プロジェクト」が、地下室でひっそりと始まった。

   ◇

「まずは、この化石化した時間を巻き戻す。『時戻しの霊薬』の出番だ」

デュラスの指示で、エルミナが小瓶の蓋を開ける。

「いきますわよ~。……エイッ!」

エルミナは躊躇なく、国宝級の霊薬をドバドバと石の卵にかけた。

シュワワワワ……!

液体が染み込むと同時に、灰色の石の表面に亀裂が入り、剥がれ落ちていく。

中から現れたのは、虹色に輝く真珠のような、美しい巨大な卵だった。

「おおっ! 綺麗な色に戻った!」

「な、何という波動だ……!」

デュラスが冷や汗を流す。ただ卵に戻っただけなのに、部屋中の空気がビリビリと震えている。

「まだ眠っている状態ね。……でも、すごく強い生命力を感じる。良い子に育つわね、これ」

フィリアが母性溢れる顔で卵を撫でる。

「次は魂と肉体の定着、そして生命力のブーストだ。『不死の華』を使うぞ」

マモルは、以前手に入れた『不死の華』を取り出し、その花弁から滴る蜜を卵の殻にすり込んだ。

ジュッ……!

「熱っ!?」

マモルが手を引っ込める。卵がカッカと熱を発し始めたのだ。

まるで、生きる意志に火がついたように。

グゥゥゥゥ~……キュルルル……。

突如、卵の中から可愛らしい、しかし野太い音が響いた。

「あら? 今の音……」

「お腹が空いてるみたいですね?」

エルミナが目を丸くする。

孵化直前の赤ん坊が、エネルギーを求めているのだ。

「ええい、手のかかる! 全員で魔力を注ぐぞ! こいつを満足させてやる!」

デュラスの号令で、四人は卵を囲んだ。

「王帝よ! 俺の気合い(オーラ)を全部食らえ!」

「主の御許に! 神聖なる神気を!」

「私の闘気も! お腹いっぱいお食べ!」

「魔界の深淵なる魔力よ! ……加減はせんぞ!」

マモルの赤いオーラ、エルミナの黄金の光、フィリアの緑の風、そしてデュラスの漆黒の闇。

四種四様の膨大なエネルギーが、小さな卵へと収束していく。

普通なら破裂するほどの量だが、卵はブラックホールのように全てを飲み込んでいく。

そして。

パキッ……パキパキッ……!

「あ、割れる!」

カッッッ!!!

まばゆい閃光が地下室を包み込んだ。

光が収まると、割れた殻の中心に、一匹の小さな竜が座っていた。

全身は透き通るようなプラチナシルバー。背中には小さな翼が生え、瞳は宝石のようなオッドアイ(右が金、左が紫)。

トカゲというよりは、ぬいぐるみに近い愛らしさがある。

「おぉ……!」

「か、可愛い~!!」

フィリアとエルミナが歓声を上げる。

「ふぅ……。ようやくか。……しかし、禍々しさはないな」

「何という神々しいのでしょ。天使の私より光ってますわ」

マモルは恐る恐る手を伸ばし、その幼体を抱き上げた。

温かい。そして、ずっしりとした命の重みがある。

「可愛いなぁ……。俺たちが孵したんだもんな。……えっと、名前は……」

マモルが考え込んでいると、腕の中の幼竜が、つぶらな瞳でマモルを見つめ返し、小さな口を開いた。

「ア……ル……カ……」

「えっ!?」

「しゃ、喋った!?」

デュラスが驚愕する。生まれた直後に言語を発するとは、やはり規格外だ。

「アルカ……。自分の名前を言ってるのか?」

「ア~ル~カ~!」

幼竜は嬉しそうにマモルの頬にスリスリと顔を擦り付けた。

「決まりね! 『アルカ』ちゃん!」

「素敵な名前ですぅ! アルカちゃん、いいこいいこ~!」

フィリアとエルミナが交互に頭を撫でると、アルカは「キュウ!」と嬉しそうに鳴いた。

その光景を見て、デュラスも強張っていた肩の力を抜いた。

「フン……。始祖竜アルカ、か。……我ら四人の力を受け継いだ申し子。末恐ろしいが……まあ、悪くない」

こうして、マモルの家に最強の新しい家族が加わった。

数学教師(元)にして、Aランク冒険者、プラチナ商人、そして「始祖竜のパパ」となったマモル。

彼の波乱万丈な異世界ライフは、まだまだ終わらない――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ