EP 53
最後の扉をくぐり抜けた先。
そこは、ダンジョンの最深部とは思えないほど広大な、ドーム状の大空間だった。
天井には無数の発光苔が星空のように輝き、冷たい風が吹き抜けている。
しかし、真守たちの目を奪ったのは、その美しい景色ではなかった。
ザッ……ザッ……ザッ……ザッ……。
地鳴りのような足音が、整然と響き渡る。
広間の向こう側から、漆黒の霧を割り、それらは現れた。
骨だけの竜に跨り、錆びついたフルプレートアーマーを纏った騎士たち。
その数、十や二十ではない。百騎は下らないだろう。
死竜騎兵団。
彼らは一糸乱れぬ隊列を組み、青白い燐光を宿した瞳で、侵入者を見据えていた。
「は……? 嘘だろ……?」
真守が絶句する。
今まで戦ってきた単体のボスとは訳が違う。
前列は巨大なタワーシールドと槍。中列は騎兵。後列には魔法兵と思われる杖を持った骸骨たち。
それは、完璧に統率された「軍団」だった。
「軍隊が相手って事かよ!? ふざけんなキュルリン!! 俺たちはたったの4人だぞ!!」
真守が天井に向かって怒号を飛ばす。
返事は無い。ただ、死竜の喉が鳴らすカラカラという乾いた音だけが返ってくる。
「……落ち着けマモル。奴ら、生きてはいないが……」
デュラスが冷静に、しかし険しい表情で敵陣を見渡す。
「個々の意思を持たぬアンデッドだからこそ、恐怖も躊躇いもない。一つの巨大な意思によって統率された、殺戮のマシーンだ。……生半可な軍隊よりタチが悪いぞ」
「数が多すぎよ! どこを狙えばいいの!?」
フィリアが弓を構えるが、狙いが定まらない。
射抜いても射抜いても、次から次へと湧いてくる絶望的な数。
「あわわわ……。大変ですぅ。あんなのが一斉に突っ込んできたら、私の盾じゃ受けきれません~!」
エルミナが青ざめ、聖盾を握りしめる手が震える。
百の死竜が一斉にブレスを吐き、突撃してくれば、Aランク冒険者といえどもひとたまりもない。
ジャラッ……!
先頭に立つ、一際巨大な死竜に乗った隊長格が、音もなく剣を振り下ろした。
それが、開戦の合図だった。
「「「オオオオオオオオオオッ!!!!」」」
死竜騎兵団が、咆哮と共に大地を揺るがして突撃を開始する。
迫りくる死の波濤。
「来るぞ!! 総員、迎撃ッ!!」
真守の叫びと共に、最強パーティ対、最凶の軍団の最終決戦が幕を開けた。




