EP 48
おいしい和食の朝食を終え、真守たちは冒険者ギルド・アルニア支部へと向かった。
ギルドの扉を開けると、朝から酒を飲んでいる荒くれ者や、依頼ボードを眺める冒険者たちで賑わっていた。
だが、真守たちが一歩足を踏み入れると、その喧騒が一瞬にして止んだ。
「おい……あれだ。Cランクに飛び級した『ピザ長者』だ」
「昨日の今日だぞ? 何しに来たんだ?」
ざわざわと囁き声が広がる中、真守は涼しい顔でいつもの受付カウンターへと向かった。
「おはようございます。依頼の報告に来ました」
受付嬢が業務的な笑顔を向ける。
「おはようございます、マモル様。昨日の討伐依頼の精算ですか?」
「いえ、第二階層のフロアボス撃破と、到達報告です」
真守はカウンターの上に、証拠の品――白と黒のガーゴイルの魔石と、第二階層踏破のメダルをコトリと置いた。
「…………はい?」
受付嬢の笑顔が凍りついた。
彼女は数秒間、置かれた魔石とメダルを凝視し、自分の頬をつねり、そして――。
「えっ……ええぇぇぇぇぇっ!? ギ、ギルドマスターーーッ!! ギルドマスターーーッ!!!」
昨日以上の悲鳴がギルド中に響き渡った。
◇
ドガガガッ!
奥の扉が乱暴に開き、アルマスが飛び出してきた。口元には胃薬の粉がついている。
「な、なんだ!? 今度は何だ!? ドラゴンでも出たか!?」
「違います! マモル様が……マモル様たちが!!」
受付嬢が震える指でカウンターの上を指差す。
アルマスはそこに置かれた高密度の魔石と、輝くメダルを見て、膝から崩れ落ちそうになった。
「マ、マモルさん……。まさか、もうダンジョンの二層を!?」
「はい。昨日のうちにクリアしてきました。報告が遅れてすみません」
真守が申し訳なさそうに頭をかくと、アルマスは信じられないものを見る目で天を仰いだ。
「な、何て事だ……。あの難攻不落、過去数百年誰もクリアできなかった伝説の『キュルリン・ダンジョン』を……」
「まだ登録して一週間も経ってないのにね」
横からフィリアが茶々を入れる。
その言葉に、アルマスはハッと我に返った。
「そ、そうです! まだ一週間もしない内に、二層まで……! 帝国騎士団が何年かけても入口すら突破できなかった場所を!」
アルマスは震える手で、真守たちのギルドカードを手に取った。
彼の目つきが変わる。これはもう、「規格外の新人」などというレベルではない。歴史的偉業だ。
「……マモル殿。本来なら実績を積み重ね、試験を経てランクを上げるのが筋ですが……貴殿らに、もはや既存の枠組みは通用しません」
アルマスは魔導端末を操作し、力強く宣言した。
「ギルドマスター権限において、マモル殿のパーティを『Aランク』冒険者に昇格させます!!」
ピロリン♪
軽快な電子音と共に、カードの文字が『Rank:A』――鮮やかな赤色に書き換わった。
「ええっ!? Aランク!?」
真守が驚く。
Aランクといえば、一流中の一流。国賓級の扱いを受ける英雄の領域だ。
「当然です。S級ダンジョンの二層突破は、Aランク上位の実力がなければ不可能ですから」
その宣言に、周囲の冒険者たちがどよめきを通り越して絶句した。
「おい……聞いたか? Aランクだと?」
「一週間だぞ……? EランクからAランクになった奴なんて、お伽話でも聞いたことねぇぞ……」
「化け物だ……。あいつら、本物の化け物だ……」
畏怖と称賛の眼差しが突き刺さる。
受付嬢も、開いた口が塞がらないまま、呆然と呟いた。
「一週間でEからA……。ギルド始まって以来の椿事です……」
「フッ、Aランクか。悪くない響きだ」
デュラスが腕を組み、満足げに頷く。
エルミナも「すごいです! エリートです!」とはしゃいでいる。
こうして、真守たちは「ピザ屋の億万長者」の肩書に加え、「史上最速のAランク冒険者」という新たな伝説をアルニアの歴史に刻み込んだのだった。




