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EP 47

爽やかな朝の光が、真守の屋敷のキッチンに差し込んでいる。

昨晩の「世界を揺るがす大騒動」が嘘のような、穏やかな日常の始まりだ。

トントントン……。

小気味よい包丁の音が響く。真守は鍋から立ち上る湯気の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

「ん~……。やっぱ、日本人の朝はこれだよな」

昨日から昆布と鰹節でじっくりと水出ししておいた、黄金色の出汁。

今日は久しぶりの完全な「和食」モーニングだ。

「マモル、おはよう! いい匂い~!」

エプロン姿のフィリアが元気にやってくる。

「おはようフィリア。今日の味噌汁の具は、豆腐にネギにわかめだ。王道で行くぞ」

「りょーかい! じゃあ私は、裏庭で採れた薬草を使った『特製薬膳サラダ』の準備と、お魚を焼くね~!」

フィリアは手際よくコンロに網を乗せ、一夜干しの魚(ダンジョン産の高級魚)を焼き始めた。

ジュウウ……という音と共に、脂の乗った香ばしい匂いが広がる。

そんな平和なキッチンとは裏腹に、廊下の方からは何やら揉める声が聞こえてきた。

「もうっ! お父さん! いつまで入ってるんですか!」

ドンドンドン!

トイレのドアを叩くエルミナの声だ。

「……やかましいぞ、エルミナ。朝の排泄行為は生理現象だ」

「長すぎます! それに、また新聞持ち込んでるでしょ! トイレで新聞を読むのは止めてって言ってるじゃないですか!」

カチャリ。

トイレのドアが開き、スッキリした顔のデュラスが出てきた。片手にはしっかりと『王都日報』が握られている。

「フン。用を足すだけの時間は無為だ。情報を収集し、時間を有効活用する。これこそ大人の嗜みというものだ」

「むぅ~っ! 次のわたしが困るんですっ! 臭いし!」

プンプンと怒るエルミナと、悪びれないデュラス。

そのやり取りをキッチンから見ていた真守は、味噌を溶きながら心の中で突っ込んだ。

(……もう完全に『昭和の親父と年頃の娘』だな、コイツら)

魔界の公爵と天使が繰り広げる、あまりにも所帯染みた光景だった。

   ◇

「「「「いただきまーす!!」」」」

食卓には、炊きたての白米、湯気を上げる豆腐とわかめの味噌汁、皮がパリッと焼けた焼き魚、そして彩り豊かな薬膳サラダと漬物が並んだ。

「ん……うまい」

真守がまず味噌汁を一口。

出汁の深みと味噌の塩気が、寝起きの体に染み渡る。

「はぁ~……。やっぱり和食は落ち着きますねぇ。この『ミソ・スープ』、心が洗われます」

エルミナがほっこりとした顔で椀をすする。

「お魚も脂が乗ってて最高! 大根おろしと合うね~!」

「うむ。この薬膳サラダの苦味が、白米の甘みを引き立てている。計算された献立だ」

フィリアとデュラスも箸が止まらない。

異世界の住人たちも、すっかり真守の「和食」の虜だ。

平和な朝食タイムが過ぎ、食後のお茶を飲みながら、真守が切り出した。

「さて……。腹も膨れたし、今日はどうするんだ?」

昨日は直帰したため、まだギルドへの報告が済んでいない。

デュラスが爪楊枝(これも真守が作った)を使いながら、キリッとした表情に戻った。

「まずは冒険者ギルドだな。昨日の『第二階層突破』の依頼達成報告をせねばならん」

「そうですね。昨日バックレちゃったし、アルマスさんが心配して胃に穴を開けてるかもしれません」

「それに、あの『レオパルド騎士団』の動向も気になる。……ギルドで情報を集めつつ、報酬を貰いに行こうか」

「よし、決まりだ!」

真守たちは食器を片付けると、装備を整えて家を出た。

エプロンから戦闘服へ。

最強の「家族」パーティが、今日もアルニアの街へ繰り出す。

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