EP 42
腹ごしらえを済ませた真守たちは、緊張感を漲らせて巨大なボス扉を押し開けた。
ズズズズズ……ッ。
重い石の扉が開くと、そこは石柱が立ち並ぶ神殿のような広間だった。
その中央の台座に、二体の石像が鎮座している。
一体は、大理石のように白く輝くガーゴイル。
もう一体は、黒曜石のように闇を吸い込む黒いガーゴイル。
侵入者を感知すると、二体の石像の目が怪しく光り、バサリと石の翼を広げた。
「グオオオオオオッ!!」
「ガーゴイルか。それもツインタイプとはな」
デュラスが鞭を鳴らし、冷静に観察する。
「よし、分担して各個撃破だ! 俺は白い奴をやる! エルミナは黒をお願い!」
「分かりましたわ! お任せください!」
真守が『王帝』を構えて白へ、エルミナが聖槍を構えて黒へと向かう。
しかし、その瞬間だった。
ヌルリ……。
黒いガーゴイルが、まるで液体のように溶け出したかと思うと、隣にいる白いガーゴイルの足元の「影」の中へとダイブしたのだ。
「えっ!? 消えた!?」
フィリアが驚愕の声を上げる。
黒い像は完全に消失し、場には白いガーゴイルだけが残された。
「グアアアッ!」
白いガーゴイルが瞬発的に加速し、エルミナに向かって襲いかかる。
鋭い爪が空を裂く。
「くっ……! 聖盾!」
エルミナは咄嗟に盾を構え、重い一撃を受け止める。
ガギィン!!
火花が散るが、エルミナは踏みとどまった。
「させません! ハッ!」
エルミナは即座に反撃に転じる。盾の隙間から聖槍を突き出し、白いガーゴイルの隙だらけの胴体を狙う。
必殺のタイミング。誰もが直撃を確信した。
だが。
ジャキッ!
「なっ……!?」
白いガーゴイルの「影」から――いや、白い石像の腹部から、突如として「黒い腕」が生えてきたのだ。
その黒い腕はエルミナの槍をガッチリと掴み、威力を殺してしまった。
「影から出てきて、防いだ!?」
真守が目を見開く。
黒い腕はすぐに引っ込み、また影の中へと消える。
「鬱陶しい! チョコマカと……まとめて灰にしてやる!」
デュラスが苛立ちを露わにし、愛用の鞭を振るう。
その鞭が赤熱し、炎の魔力を帯びて巨大な龍の形を成す。
「紅蓮の炎・火炎龍!!」
ゴオオオオオオッ!!
灼熱の炎の龍が、白いガーゴイルを飲み込もうと襲いかかる。回避不能の広範囲攻撃だ。
しかし、白いガーゴイルは避ける素振りも見せない。
ブォン!!
白いガーゴイルの足元の影が瞬時に膨れ上がり、黒いドーム状の「防御陣」を展開した。
それは白の身体を内側から包み込むように出現し、デュラスの放った極大の炎すらも弾き返してしまった。
「何!? 防御陣だと!?」
炎が晴れると、そこには無傷の白いガーゴイルが、嘲笑うかのように立っていた。
そして黒い影は、再び白の足元へと収束していく。
真守たちは、一度距離を取り、体勢を立て直した。
「……なるほど、読めてきたぞ」
真守が忌々しそうに吐き捨てる。
「あいつら、二体で一つだ。白い奴が攻撃(矛)特化で……」
「黒いのが防御(盾)特化ってわけ?」
フィリアが弓を引き絞ったまま、真守の言葉を継ぐ。
「ええ。黒い方は攻撃してきませんが、白への攻撃を影から完璧に防いできます。……これでは、攻撃が通りません!」
エルミナが悔しそうに言う。
最強の矛と、最強の盾が融合した無敵の要塞。
物理攻撃も魔法攻撃も、あの「影」がある限り届かない。
「攻略法を見つけなきゃ、ジリ貧だぞ……!」
攻守一体のコンビネーション・モンスターを前に、真守たちは次なる手を模索するのだった。




