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EP 36

『不死の華』を厳重に封印した後、真守たちは着替えて、再び冒険者ギルド・アルニア支部へと向かった。

夕方のギルドは、ダンジョン探索から戻った冒険者たちの熱気と、うめき声(主にトラップの被害報告)で溢れかえっていた。

「……酷い有様だな」

真守が辺りを見渡す。

「あの毒霧なんなんだよ!」「矢が止まらねぇ!」「入って3秒で落とし穴だぞ!」

聞こえてくるのは阿鼻叫喚ばかり。

そんな中、真守たちは涼しい顔で受付カウンターへと進んだ。

「お疲れ様です。報告をお願いしたいんですが」

受付嬢の女性が、業務的な笑顔で顔を上げた。

「はい、お疲れ様です。……あら? マモルさん達は、今日登録したばかりの新人さんですよね? もう戻られたんですか?」

彼女の目には(あぁ、やっぱりEランクじゃ入口で挫折して帰ってきたのね)という同情の色が浮かんでいた。

「ええ、まあ。とりあえずキリの良い所まで行ったんで」

「キリの良い所……? 入口の『安全第一』の看板あたりですか?」

「いえ、第一階層のボス部屋までです。……あ、これ討伐証明部位です」

真守はカウンターの上に、ゴトッ、と重い物体を置いた。

それは、あの暗黒騎士デュラハンの兜の残骸と、ボス部屋の宝箱に入っていた『第一階層踏破のメダル』だった。

「…………はい?」

受付嬢の動きが完全に止まった。

彼女は置かれた兜の残骸と、燦然と輝くメダルを交互に見て、ペンを取り落とした。

「えっ……ええっ!? 第、第一階層!? ボス撃破!?」

「はい。……一層クリアしました~って報告で合ってますよね?」

真守が軽く言うと、受付嬢は椅子から転げ落ちそうになりながら、裏へ向かって叫んだ。

「ギ、ギルマスーーッ!! 大変です! アルマスさーーん!!」

   ◇

ドタドタドタッ!

奥の部屋から、アルマスが血相を変えて飛び出してきた。

「なんだなんだ!? リザードマンの襲撃か!? それともレオパルド団長がまた難癖をつけに……」

「違います! マモルさん達が! 第一階層をクリアしたって!」

「……はぁ!?」

アルマスは目を剥き、カウンターの上の証拠品に駆け寄った。

震える手で兜の残骸に触れる。

「こ、これは……高位アンデッドの魔鉄装備……。それにこのメダルは、間違いなくダンジョンコアが生成した踏破証明……!」

アルマスは信じられないものを見る目で、真守たちを見上げた。

「マ、マモル殿……。本当に、今日潜って、今日クリアしてきたのですか?」

「ええ。まあ、ちょっとトラップが厄介でしたけど」

「厄介どころの話ではありませんぞ! 他のパーティはまだ、入口の毒霧と矢の雨で全滅寸前なんですよ!? あの帝国騎士団ですら、グレムリンの群れに阻まれて撤退したという報告が入ったばかりなのに!」

「あー……。まあ、俺達には優秀な『壁役エルミナ』と『火力役デュラス』がいますから」

「失礼な。私はか弱い乙女ですよ~?」

「ふん。騎士団が撤退か。情けない」

平然としている四人を見て、アルマスは額を押さえた。

(規格外すぎる……。常識が通用しない……)

周囲の冒険者たちも、ザワザワと騒ぎ始めている。

「おい、あいつらマジかよ?」「一層クリアだって?」「あの地獄を?」

アルマスは大きく深呼吸をし、意を決したように言った。

「……分かりました。この偉業、ギルドとして正当に評価せねばなりません」

アルマスは真守たちのギルドカードを回収し、魔導端末にかざした。

「通常なら、実績を積み重ねてDランクへの昇格試験を受けるところですが……S級ダンジョンの第一階層を、初見かつ無傷で踏破。これはAランク相当の功績です」

ピロン、という音が響く。

「ですが、飛び級にも規定がありますので……今回は特例中の特例として、一気に『Cランク』へ昇格とさせていただきます!」

「えっ、Cランク!? いきなり二階級特進ですか?」

「誰も到達していない領域を踏破したのです。文句を言う者はいませんよ。……というか、これでも評価が足りないくらいです」

アルマスは書き換えられたカードを真守に返した。そこには輝く『Rank:C』の文字。

「おめでとうございます、マモル殿。……いやはや、貴殿を受け入れて正解でした。これで騎士団も、貴殿の実力を無視できなくなりますぞ」

「ありがとうございます、アルマスさん」

真守はカードを受け取り、フィリアたちと顔を見合わせた。

「やったねマモル! 一日で中堅冒険者だよ!」

「ふふっ、これであの団長さんの鼻も明かせますね」

「Cランクか。……まあ、通過点に過ぎんよ」

真守たちの周りには、いつの間にか尊敬と畏怖の眼差しを向ける冒険者たちの人垣が出来ていた。

「アルニアの英雄」への階段を、彼らは駆け足で登り始めたのだった。

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