表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/131

EP 35

レオパルドたちを追い払い、真守たちは改めて『黄金の宝箱』に向き合った。

「よし、開けるぞ……!」

真守が重厚な蓋を持ち上げる。

溢れ出したのは、目が眩むような光の洪水だった。

「うおぉぉぉっ!!」

「きれーい!!」

箱の中には、山盛りの金貨、古代の銀貨、そして魔力を帯びた宝石類がぎっしりと詰まっていた。これだけで、アルニア村の年間予算など軽く吹き飛ぶ金額だ。

「やった……! これで家のローンが……いや、増築のリフォーム代まで払えるぞ!」

「すごいですね! これなら新しい教会だって建ちそうです!」

真守とエルミナが手を取り合って喜ぶ中、デュラスは冷静に宝の山を探っていた。そして、底の方から一本の「花」を取り出した。

それは、宝石のように透き通った花弁を持ち、摘み取られているにも関わらず、妖しく、そして力強く脈打つ光を放っていた。

「……こいつは」

デュラスの目が細められる。

「『不死の華』か。伝説上の植物だと思っていたが……まさか実在するとはな」

「不死の華? そんなに凄いのか?」

「あぁ。煎じて飲めば万病を治し、寿命を数百年伸ばすと言われている。……死を恐れる王族や、老いぼれた権力者たちが、国を売ってでも欲しがる代物だ」

デュラスはニヤリと笑い、その花を空間収納アイテムボックスにしまうのではなく、懐に大事に入れた。

「これは使える。金以上の価値があるぞ。今後の国や商会との『交渉の材料』になる」

その時。

ダンジョンの虚空から、あの生意気な妖精の声が響いた。

『おめっとさぁ~ん! やるねぇ、兄ちゃんたち!』

「キュルリンか!」

『その華はアタシからのサービスだ。ま、権力者共にちらつかせて、もっと面白い状況を作ってくれよ。……次の階層への「飴」は用意しておくから、また遊びに来な!』

キャハハハッという笑い声と共に、気配が消える。

同時に、宝箱の底がガコンと抜け、その下に隠されていた階段が現れた。

「……これが『専用脱出ルート』ってわけね」

「帰りは歩かなくていいのか。時間短縮だな」

真守たちは顔を見合わせ、頷いた。

「よし、長居は無用だ。帰ろう!」

   ◇

脱出ルートを通ると、真守たちは森の、ダンジョン入口とは少し離れた茂みの中に転移して出た。

気配を殺して様子をうかがうが、レオパルド騎士団の姿はない。

「騎士団は居ないようだ。捨て台詞を吐いて帰ったか」

「ふん。略奪に失敗した以上、ここには用はないということだろう」

デュラスが森の空気を吸い込む。

だが、安心はできない。懐には国を揺るがす『不死の華』がある。

「この華、とりあえず家に持って行こう。ここじゃ不用心すぎるし、ギルドに預けるのもリスクが高い」

「賛成。マモルの家の地下金庫なら安全だわ」

一行は人目を避け、裏ルートを通って真守のマイホームへと帰還した。

   ◇

真守の家の地下室。

そこは元々ワインセラーとして作った場所だが、今は真守がスキルで強化し、分厚い魔鉄の扉を取り付けた『金庫室』になっていた。

真守は厳重なロックを解除し、部屋の中央にある台座に『不死の華』を安置した。

「さて……ここからが本番だ」

デュラスとエルミナが、台座の両脇に立つ。

「物理的な鍵だけでは不安だ。魔法による封印を施す」

デュラスが両手をかざす。

ドス黒い、禍々しいほどの魔力が部屋を埋め尽くす。

「我が魔名において命ず。触れし者に永遠の悪夢と呪いを。『魔王級封印・奈落のアビス・チェーン』」

漆黒の鎖が華の周囲を取り囲み、空間をロックする。魔族や邪悪な者が触れようとすれば、その魂ごと焼かれる最強のトラップだ。

「次は私ですね! ……邪悪な封印の上からでやりづらいですけど……」

エルミナも聖杖を掲げ、神聖な光を放つ。

「聖なる光よ、守護の壁となれ! 『神聖結界・サンクチュアリ・シールド』!」

黄金の光が黒い鎖の上からさらに覆いかぶさる。こちらは物理的な干渉や、探知魔法を完全に遮断する鉄壁の守りだ。

魔族の『呪い』と、天使の『浄化』。

相反するはずの二つの最強魔術が、奇跡的なバランスで組み合わさり、神ですら解錠不可能なセキュリティが完成した。

「……ふぅ。これで完璧です」

「あぁ。これを破れるのは、この部屋にいる四人だけだ」

真守は、禍々しくも神々しく輝く金庫を見つめ、ゴクリと唾を飲んだ。

「とんでもない物を抱え込んじまったな……」

しかし、その顔には笑みがあった。

この華がある限り、いざという時の切り札になる。

真守たちは重厚な金庫の扉を閉め、久しぶりの我がリビングの安らぎへと戻っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ