表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/123

EP 32

数々の即死トラップと雑魚モンスターの群れを蹴散らし、真守たちはついに第一階層の最奥、ボス部屋の扉の前に立っていた。

扉は巨大な黒鉄製で、表面にはキュルリンの悪趣味なレリーフ(舌を出して笑う妖精の顔)が彫り込まれている。

「……ここから先はボスって奴か」

真守が『王帝』のグリップを握り直し、ゴクリと唾を飲み込む。

扉の向こうからは、今までとは質の違う、冷たく重い殺気が漏れ出している。

「簡単な奴が良いな……。だが、あの性格の悪いキュルリンを考えれば無理な話か」

デュラスが呆れたように肩をすくめる。

「適度なスリル」と言いつつ、初見殺しを満載にするのがあの妖精のやり方だ。

「大丈夫よ! 私達にかかれば、どんな魔物もイチコロなんだから!」

フィリアが頼もしく弓を構える。彼女のポジティブさは、暗いダンジョンでの救いだ。

「怖いですけど~……マモル様達と一緒なら、不思議と勇気が湧いてきます! 私が皆さんをお守りします!」

エルミナも震える足を叩き、聖騎士の覚悟を決めた。

「よ、よし。……行くか!」

真守が意を決して、重い扉を両手で押し開けた。

ギギギギギ……ズォォォォォン!!

扉が開くと同時に、冷気が吹き荒れる。

そこは、古代の闘技場のような円形の広間だった。

部屋の中央に、一体の騎士が佇んでいる。

全身を漆黒のフルプレートアーマーで覆い、身の丈ほどある長大な魔剣を地面に突き立てている。

だが、決定的に「あるべきもの」が無かった。

「な、何だ? ……頭がない」

真守が思わず後ずさる。

兜があるべき場所には何もなく、ただ虚無が広がっている。

首なし騎士――デュラハン。

「……来るぞ!」

デュラスが鋭く警告した瞬間、彫像のように静止していた暗黒騎士が動いた。

ブォン!!

予備動作なしの超高速移動。

瞬きする間に間合いを詰め、巨大な魔剣を横薙ぎに振るう。

「くっ……!!」

エルミナが瞬時に前に出て、聖盾を構える。

ガギィィィィィン!!

凄まじい衝撃音が響き、火花が散る。

「お、重いですぅ~っ!?」

パワー自慢の天使族であるエルミナが、たった一撃で数メートル後退させられる。

だが、その隙に真守が動いた。

「この野郎! 隙ありだ!」

真守は『王帝』を展開し、デュラハンの側面へ回り込んで三節根を打ち込む。

変則的な軌道を描く一撃は、通常の騎士なら防げないはずだ。

しかし。

キンッ!

「なっ!?」

デュラハンは剣を振った後の体勢のまま、左手のガントレットの甲だけで真守の攻撃を弾いたのだ。

まるで背中に目があるかのような反応速度。

「つ、強い! ただのアンデッドじゃない、達人の動きだ!」

真守が舌を巻く。

そこから、怒涛の接近戦が始まった。

デュラハンは二対一の不利をものともせず、流水のような剣技でエルミナの防御を崩し、真守の撹乱攻撃を的確に捌いていく。

「そこっ! ……くそ、硬い!」

「マモル様、危ないっ!」

エルミナが真守を庇い、鎧に斬撃を受ける。神気で強化された鎧でなければ、一刀両断されていただろう。

(接近戦では分が悪い……なら、遠距離から一点突破するしかない!)

後方で機を伺っていたフィリアが、呼吸を整え、精神を統一する。

彼女の身体から、赤い『闘気』が陽炎のように立ち上る。

(動きのパターンは見切った……。エルミナちゃんが受け止めて、マモルが弾かれた瞬間……そこ!)

「今! スパイラル・アロー!!」

フィリアが限界まで引き絞った弦を離す。

放たれた矢は螺旋状の風を纏い、ドリルとなって空間を抉り進む。

ヒュオオオオオオオッ!!

デュラハンが真守に意識を向けた一瞬の隙。

回避不能のタイミング。

ドォォォンッ!!

「グオオッ!?」

必殺の矢はデュラハンの胸板、心臓にあたる部分を正確に貫いた。

分厚い魔鉄の鎧が紙のように粉砕され、背中まで貫通する風穴が開く。

「やった! 命中!」

フィリアがガッツポーズをする。

心臓を破壊されれば、いかにアンデッドといえど活動を停止するはずだ。

だが。

「……ッ!?」

胸に風穴を開けられたデュラハンは、一歩も退かなかった。

崩れ落ちるどころか、その漆黒の剣にさらなる魔力を込め、より一層激しい殺気を放ち始めたのだ。

「何!? 死なない!?」

真守が驚愕に目を見開く。

「心臓がないから平気、ってわけじゃなさそうだぞ! 動きが鈍るどころか速くなってる!」

「厄介な……! まさか、この鎧自体が本体とでも言うんですか!?」

エルミナが冷や汗を流す。

胸の大穴から見えるのは肉体ではなく、空虚な闇だけ。

痛みを感じず、急所も存在しない「動く鉄塊」。

「オオオオオオォォッ!!」

デュラハンが音のない咆哮を上げ、暴風のような連撃を繰り出してきた。

「くそっ、物理攻撃じゃ倒せないのか!?」

フィリアの必殺技すら耐える不死身の門番。

真守たちは、この理不尽な強敵を前に、さらなる苦戦を強いられることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ