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EP 28

爽やかな朝日が、アルニア村の丘の上に建つ「マイホーム(外見は廃屋)」に差し込んでいた。

昨夜の作戦会議を経て、真守たちの心には新たな決意が宿っていたが、それはそれとして腹は減る。

キッチンでは、真守とフィリアが並んで朝食の準備をしていた。

「マモル、今日はおはよう! 今日は何を作る~?」

「おはようフィリア。う~ん……昨日のバゲットが余ってるし、フレンチトーストにするかな」

真守はボウルに卵と牛乳、砂糖、そして隠し味のバニラエッセンス(ポイント交換品)を数滴垂らして混ぜ合わせた。そこに厚切りにしたパンを浸す。

「わぁ、甘い匂い! じゃあ私は、森で採ってきた薬草を使って『特製薬膳サラダ』を作るね! マモルのドレッシングなら苦くないし!」

「あぁ、頼むよ。ビタミン補給は大事だ」

ジュワァ……。

フライパンにバターを落とすと、食欲をそそる芳醇な香りが立ち上る。たっぷりと卵液を吸ったパンを乗せると、焦げ目がつくまでじっくりと焼き上げる。

「よし、完成だ」

真守は黄金色に焼き上がったフレンチトーストを大皿に盛り、たっぷりとメープルシロップをかけた。横にはフィリア特製の彩り豊かなサラダ。

それをリビングの大きなダイニングテーブルへと運ぶ。

そこには既に、いつもの光景があった。

「……ふむ。今日の第3レースは荒れそうだな」

魔族の公爵デュラスが、老眼鏡モノクルを光らせ、赤ペンを耳に挟みながら競馬新聞を広げている。

「いただきます」

真守が席に着き、手を合わせると、全員がそれに続いた。

「「「いただきます!」」」

ナイフを入れると、フレンチトーストはフワリと切れ、口に運べばジュワッと甘い卵液とメープルの風味が広がる。

「んん~っ! 美味しい~!」

「外はカリッとしてて、中はプリンみたいです~! 幸せです~!」

フィリアとエルミナが頬を緩ませる。

しかし、デュラスだけは片手でフォークを動かしつつ、目は新聞に釘付けだ。

「……む。この馬の調教タイム、平凡だが血統は……」

それを見たエルミナが、頬を膨らませて注意した。

「もう~お父さん! 新聞読みながら食事は止めてください! お行儀が悪いです!」

「ブッ……!?」

デュラスがむせ返り、真守とフィリアが吹き出した。

「誰が、お父さんだ! 私はまだ独身貴族だぞ!?」

「だってぇ、その格好といい、やってることが休日のパパそのものですもん」

「ぐぬぬ……」

デュラスは渋々新聞を畳んだ。なんだかんだで、この「家族ごっこ」のような食卓に馴染んでいるのがおかしい。

   ◇

食後のコーヒーを飲みながら、真守が切り出した。

「さて……今日はどうする? いきなりダンジョンに突撃するか?」

デュラスがブラックコーヒーを啜り、首を横に振った。

「いや。まずは冒険者ギルドに顔を見せると良いだろう。ダンジョン探索はギルドの管理下にある。勝手に入ると、後で権利関係で揉めるぞ」

「なるほど。あのアルマスさんの胃痛が増えるのは申し訳ないしな」

「それに、お前がSランクを目指すなら、正規の手続きで『依頼クエスト』として攻略の実績を作らねばならん」

真守は頷いた。

「最強」を証明するためには、公式記録が必要だ。

「そうか。じゃあ、まずはギルドへ行って登録変更と、ダンジョン攻略の申請だな」

フィリアが立ち上がり、拳を握った。

「いよいよ、冒険ね! マモルとパーティーを組んでダンジョンなんて、夢みたい!」

「お役に立てるかどうか~……私、閉所恐怖症じゃないといいんですけど~」

エルミナが不安そうに言うが、彼女の戦闘力(火力)は折り紙付きだ。

「神族や魔王もお忍びで来るという、キュルリン特製のS級ダンジョンか……。私の『影』がどこまで通用するか、楽しみだ」

デュラスも不敵に笑う。彼にとっては、これもまた極上のギャンブルなのだろう。

真守は窓の外、ダンジョンのある森の方角を見つめた。

「クリア出来たら、勇者か英雄か……。俺はただ、ローンのない家でゆっくり生活がしたかっただけなんだがなぁ。ハハハ」

乾いた笑いがリビングに響く。

だが、その目には迷いはない。

平和な日常を守るため、そして借金生活から脱却するため。

「チーム・マイホーム」の、最強のダンジョン攻略が始まろうとしていた。

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