3-1【予言】※Another side
こちら別視点となります
ヘスティア(エマ)が妖精さんとわちゃわちゃしていrる裏側のお話
世はまさに混沌の渦に飲み込まれようとしていた。クロノス様の暴政は留まるところを知らず、世界はどんどんと恐怖で覆われていく。神々の笑顔は奪われ、代わりに不平と不満だけが募っていく。あぁ、どうしてこうなってしまったのだろうか。最後に笑ったのはいつだっただろう。神々は少しずつ、しかし確実に疲弊していった。
それも全ては一つの予言から始まる。
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クロノス様の御尊父であるウラノス様は、見目が醜いことを理由にクロノス様の御兄弟を底なしの奈落とも言われるタルタロスに追放していました。それに怒ったクロノス様の御母堂、つまりウラノス様の奥方様であるガイア様は、末子であるクロノス様にウラノス様の権威を刈り取らせたのです。その際にウラノス様はこう予言なされました。
「お前もまた自分の子に権力を奪われる」
きっとそこから物語の歯車は狂っていってしまったのでしょう。クロノス様の様子はどんどんおかしくなってゆき、憔悴してゆくようでした。そしてついにご自身の御子息、御息女を次々と飲み込んでいくという暴挙に出たのです。
しかし、そんなクロノス様にも一つだけ誤算がありました。それが第一子である長女ヘスティア様です。
ヘスティア様は飲み込む前に、クロノス様の……いいえ、クロノス様の奥方様であるレア様の腕からスルリと零れ落ちてしまったのです。
レア様は産まれたばかりのヘスティア様をクロノス様に抱いていただこうと、クロノス様の元へと向かいました。予言を恐れたクロノス様はオリンポスの山からご自身の治める地を眺め、気持ちを落ち着かせていたのです。そしてレア様が、腕に抱くヘスティア様をクロノス様へ渡そうとしたまさにその時、事は起こります。
それまで寝ていたヘスティア様が目を覚まし、動くなんて可愛らしい表現では済まないほどに暴れたのです。まるで一番拘束の弱まる受け渡しの時を見計らったかのように。
……いえ、私の考えすぎなのかもしれません。私が実際にこの目で見たわけではないので詳細は分かりませんが、レア様からお話を聞く限り、それほどまでのタイミングの良さでした。そうしてヘスティア様はクロノス様の手に渡る前に、レア様の手から零れ落ちてしまったのです。
もし、そのまま地面に落ちていたのであれば、ヘスティア様はただ飲み込まれるタイミングが本来より少し遅くなっただけだったのですが、それでは終わりませんでした。クロノス様がいらっしゃったのはオリンポス山の上、そんな場所から宙へ放り出されたヘスティア様はすぐに地面に着くことはなく、そのまま崖の下まで落ちていってしまったのです。
ヘスティア様が落ちていったのは『帰らずの森』と呼ばれる深い森でした。獣や魔物が跋扈して、イタズラ好きの精霊が帰り道を閉ざしてしまう……そんな森です。生まれたばかりのヘスティア様が生き抜くのにはあまりに過酷な環境であることは明白です。そうでなくとも一番高いとされるオリンポス山から落ちて地面に叩きつけられたのであれば、いくら神の子といえど生存は難しいでしょう。
事実、クロノス様はすぐにヘスティア様への興味を無くされてしまわれたようで、その時ヘスティア様の行方を追うようなことはしませんでした。我が子を生まれてすぐに丸呑みにしてしまうほど予言を恐れていたあのクロノス様が、です。状況はそれほど深刻で、レア様は悲しみの涙に暮れました。見ているこちらの心が痛むほどに。
それからというもの、毎年生まれてくる我が子をクロノス様は毎度飲み込み続けました。レア様はそのたびに悲しみに暮れましたが、誰もクロノス様を止める事は出来ませんでした。
第三子であるヘラ様を飲み込んだ辺りからでしょうか、クロノス様の様子が更におかしくなったのは。ある日突然、ヘスティア様を探すよう、帰らずの森への探索を命じられたのです。落ちてすぐは死んだと思っていたクロノス様でしたが、次々産まれてくる我が子を見て不安になったのでしょうか。あるいは、ご尊父であるが故の、ヘスティア様が生き残っている微弱な気配を感じ取っていたのかもしれません。真相は分かりませんが、クロノス様は我が子を飲み込む傍らで、ヘスティア様が捜索される日々が続きました。
そして先日、ついに第六子であるゼウス様も飲み込まれてしまいました。レア様はこれ以上我が子を飲み込まれないようにと、ゼウス様の身代わりとなる石を用意しましたが、ヘスティア様の件で慎重になっていたクロノス様に見抜かれてしまいました。怒り狂ったクロノス様はゼウス様を飲み込んで、ヘスティア様の探索をより一層力を入れるように命じられました。そして、レア様をタルタロスへと封じてしまったのです。
しかし、その前日に私、知恵の神メーティスはレア様より密かに呼び出しを受けておりました。




