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1-1【生存】

新年早々、風邪を引いたかもしれません。

皆様もt体調にはくれぐれもお気をつけください。

拝啓


新緑が眩しい季節となりました。実家の父君、母君、ついでに妹に置かれましては益々ご健勝のことでしょう。

あなた達の娘、あるいは姉は何故か赤ん坊から人生をやり直し、死にかけたり、死にかけたり、死にかけたりしたけど、何とか生き延びています。

これからも遠くの地より私の活躍をお祈りください。




……いや、本当に大変だったから聞いてほしい!!


おそらく今世(今世?)の父親であろうクロノスにもぐもぐ(マイルド表現)されそうなって必死に逃げ出したはいいもののそのまま崖下ダイブした私。これはもう本気で死んだと思ったんだけど、ガサガサガサッてとんでもない爆音で木に突っ込んだ。音は凄かったんだけど、覚悟した痛みや衝撃はなくて、いつの間にかギュッと瞑っていた目を開いてそっと周囲を確認すれば枝に引っ掛かったようだった。いや、漫画か?


そんなわけで奇跡的に生存ルートに入ったんだけど、それでも私の危機的状況は変わらない。

だって考えてもみてみ?生まれたて(推定)の赤ん坊がおくるみに包まれたまま枝に引っ掛かってるんだよ?しかも鬱蒼とした森で人の気配なんてまるでない。どうにもならんてこれ。やっぱり死因が変わっただけやん?今度は餓死に。


私は泣いた。これはもう泣くしかない。いや、比喩でも何でもなく本当に泣くことしかできない。しばらくほぎゃほぎゃ泣いていたら、自分の泣き声以外の声が聞こえてきて思わずピタリと止まる。


《ェ………マ………》

《……ァ………ァ……》


「………?」


何を言ってるかは聞き取れないんだけど、確かに何かの声が聞こえる。でも、なんか人の話っぽくない……?周囲を見渡しても人影なんて見当たらない。泣くことも忘れて必死に耳を凝らす。


《ェー……ァ……》

《……ァ……ピュァ……》


それは人の声というよりはまるで鳥の鳴き声か何かのようで、しかしそれにしてはまるで頭に直接響くような不思議な聞こえ方に首を傾げる。声のほかにも鈴を鳴らすような音が聴こえるけど、これは……羽音?


《ピュァー!》

 

そんな可愛らしい声と共についに音の主が姿を現す。それは赤ん坊の私よりも小さい、背中に羽の生えた……一言で言うなれば、妖精さんだった。たぶん、妖精って言って多くの人が思い浮かべるであろうめちゃくちゃスタンダードなタイプの。


す、凄い…!!ファンタジーだ!!私、異世界転生してる!!!


思わず現状も忘れて興奮する。だって、目の前に妖精さんがいるんだよ!?しかも、黄緑のワンピースみたいな服に、服とお揃いの色の髪、そして透明……いや、角度によって違う色に見える虹色の羽根を持った妖精って言われてイメージするタイプの妖精が!!こんな実体験をする日が来るとは思わないじゃん!?


しかもよく見れば妖精さんは周りにいっぱいいた。


黄緑だけじゃなくて、濃い緑や、くすんだ緑、モスグリーンにカーキ……200色あんねんと言わんばかりの多種多様な緑の妖精さん達の中に時々ピンクとか水色の子も混じってる。


え、ていうかどこから現れた!?私こんなに妖精さんに囲まれてたのか!?あれ?さっきまでいなかったよね?いつの間にこんなに??


《ピュァッ、ピュア、ピュゥ》

《ピュィ、ピューア》

《キュイ?キュイキュー》

《ピュアピュア、ピューア》


私が頭にはてなを浮かべている間にも、何やら妖精さんたちは会話のようなやり取りをしている。なんて言ってるかはさっぱり分からなかったけど、時折視線が向けられるところを見るにどうやら私のことを話しているようだ。しばらくすれば話は纏まったようでふわりと再び浮遊感を感じる。しかし、先ほどとは違い落下することはなく、まるで見えない腕に抱き上げられているかのように優しい浮遊感だった。


そしてそのまましばらくゆらゆら揺れていたかと思うとそっと降ろされる。そこはふかふかで、まるでベッドの上にいるかのような心地良さ。そこでふっと自分の身体から力が抜けるのを感じる。どうやら私の身体は、私が思うよりもずっと強張ってたらしい。そりゃそうだ、この短時間で何度も結構洒落にならないレベルの命の危機に瀕したのだから。

 

ようやく人心地つけたような気がした。


どうやら妖精さん達は私に友好的のようで、降ろしてくれるどころか寝床まで整えてくれたらしい。あんなちっちゃい身体でしごでき過ぎんか?ありがとう、本当にありがとう。私の命の恩人だよ、いやまじで。


緊張の糸が切れたら急に眠気が襲ってくる。……いや、単純過ぎとか、もっと警戒心をとか思うかもしれないが、しょうがない私今赤ちゃんだからね。


《ェーマァー》


なんだか妖精さんに名前を呼ばれたような気がしたけど、私の重たい瞼はその重力に抗えず、そのまますやすやと眠りに落ちた。

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