8-2【変化】
「でも、間接的な勝利の知らせってそんなのできるの?」
「…………そうですね、それを実現させる為にもヘスティア様にお願いがあります」
どこか緊張した面持ちで佇まいを正すメーティス。え、待ってなに怖い怖い怖い怖い怖い!それはヤバい前振りじゃん!私どんな無茶振りされるの!?
「そのペンダントをお貸しいただきたいのです」
「ペンダント……?これ?」
思っていたより普通のお願いに拍子抜けする。この世界で生まれてからずっと肌身はなさず持っているほんのり温かいペンダントを指させば、メーティスはこくりと頷いた。
「それは先ほども言った通り、レア様のご加護そのものと言っても過言ではありません。レア様のご加護を持ち帰る、それこそヘスティア様を手中に収めた何よりの証拠になるのです」
なるほどね、遺品を持ち帰ってそれを証拠とするってあれか!!つまり、これを身代わりにすればワンチャン私は安全圏にいたまま……?これは希望の光が見えてきたのでは……!?
「……分かった、これはメーティスに預けるよ」
「!!、お願いした私が言うのもなんですがよろしいのですか?私はあなたを騙してペンダントを奪う悪人かもしれませんよ?」
「あのね、本当に騙すつもりの奴はそんなこと言わずにさっさと受け取るもんだよ」
私が快諾してペンダントを外して差し出せば、少し戸惑ったように……というか、本当にいいの?って感じで受け取らずに聞き返してくるメーティス。そんなところに人の良さがにじみ出てると思うんだけど、よほどメーティスの中では苦肉の策だったことが伺える。これで、この態度すら私を騙すためのものだと言うなら、私は完敗なので喜んで掌で転がされてやるよ!!
「それに貸してってことは返してくれる気はあるんでしょ?」
「えぇ、必ずご兄弟を吐き出した後に回収いたします……!!」
「うん、じゃあそれを信じるよ」
きっとママンもね、加護が私を直接的な危険から遠ざけてくれるなら本望だと思うの。加護って多分そういうものでしょ?なんか違う気がするのは否めないけど。首元がスースーして心許ないのは気のせいってことにしておこう!面倒事や危険が回避できるなら、全然メーティス信じるよ!今のところ私のリスク低いし!
「ヘスティア様……!!」
感激しているようなメーティスに若干良心が痛む。ごめん、普通に打算ありきの信用だし、ペンダント渡したらワンチャン、メーティスに全部押し付けられるのでは……?とか思ってごめん!!
「で、でも、これでメーティスがクロノスに持っていって、信じてもらえるの?」
「そこは私に考えがあります」
いたたまれなくなって話題を変えればどうやらメーティスにはまだ更に作戦があるらしい。指名手配捕まえました〜!これ証拠です!って知らん奴に言われても信じられなくない?いくら本人しか持ち得ないものを持ってきたとてじゃん?そういえばメーティスとクロノスの関係ってどんなもんなんだろ。
「私がクロノス様の腹心に変化します」
「へんげします???」
待って、一気に何を言われているのか分からなくなった。へんげします???へんげって変化???変装とかではなく変化???唐突に何を言っている???今までバトル漫画の心理戦みたいな空気醸してたのに、急にファンタジー路線にギュンッて舵切るやん???面舵いっぱいすぎるだろ。
「へんげ?へんげします、とは?」
「私はこのように何でも変化することが出来るんですよ」
そう言うメーティスの姿が揺らぐ。……揺らぐ!?えっ、なにこれ私は何を見せられている!?人の姿が揺らぐって何って思うじゃん?マジでこれ揺らいでるとしか表現できないんだよ。3Dなのに2Dみたいな動きしててマジで脳がバグる。
そうしてメーティスはあっという間に、茶髪のおさげからプラチナブロンドのストレートヘアになって、顔の造形も変わり、黄色にもオレンジにも見えるような瞳の美少女に変わってしまった。
「すごい!!全然違う人になってる!!」
「全然違う人、というかこれはヘスティア様の姿ですよ」
「……え?私ってこんな顔してんの!?」
衝撃の事実、私ってこんな顔してたんだ!?いや、生まれてこの方サバイバル生活だったからね、鏡なんて見てないんよ。水鏡があっただろって?甘いな、常に薄暗いこの森では水面にうまい具合に反射しないんだよ。人生ってままならない。
「ご、ご自身のお顔をご存じない……!?」
「だって見る術がないもん」
「た、確かに……」
物凄いカルチャーショックを受けました、みたいな顔をされてしまった。いや、でもわかる。流石に野生児過ぎるよな。私だって出来るなら文化的な生活がしたいよ!!
「で、なんの話してたっけ?」
「私がクロノス様の腹心に変化するという話です!」
雪を喜べない度に大人になったのだと実感しますe




