7-1【迷子】
私さ、根は日本人だから察しの良さはあると思ってるんだけど。ギリシャ神話についてはよく知らないけど、ちょっと察さなくていいことまで察してしまったかもしれない。
私ってさ、元々は食べられる運命だったわけじゃん?それを逃げ出しちゃって、私がまだ生きていることにクロノスが気付いているから現状警戒心MAXな訳でしょ?で、だから、ママンはゼウスが生まれた時に石を身代わりにしようとしたけど、バレて失敗しちゃった、と。
…………これさ、本当に恐ろしい仮説なんだけど、私が思うに、これ私が元の運命通り食べられてたらママンの謀り成功してたんじゃないかって。だってね、私を食べていればクロノスに不安要素はなくなってむしろ成功体験を重ねるわけじゃん?人って成功体験を重ねると油断するんよ、私もそれで何度仕事で失敗したことか……初心忘るべからず!!
いや、今はそんなことはどうでもいい。それで話を戻すけど、ゼウスって言うなればギリシャ神話の主人公みたいなものなわけじゃん?主人公が他と違うことをしたら成功するっていうのが物語の定石なんだよ!!失敗してそれを成長の糧にするパターンもあるけど、今回絶対それじゃないでしょ。
一人でぐるぐる考えているとそれまで黙っていたメーティスが言いづらそうに口を開く。
「……ヘスティア様のせいとは言いません。今回のことはすべてクロノス様の暴走が原因なので」
「そらそう」
「ですが……ですが、ヘスティア様がクロノス様の元を逃げ出したことが無関係かと問われたら、首を縦に振る事はできません」
うん、まぁ、そうだよね。そうなるよね。別に逃げたことに後悔はないし、悪いことをしただなんて思わないし、もしあの瞬間に戻ったとしても私はきっとまた逃げ出すけど。それはそれとして良心は痛む。くそっ、なんか完全な他人事でもなくなってきたぞ。
「そして、ゼウス様も飲み込み、レア様を幽閉された今、クロノス様は総力をあげてヘスティア様を探しておられます」
「え、怖……」
次はお前だ、って?いやそれどんなホラーよ。ていうか私、そんな指名手配みたいなことになってんの?よく今日まで無事で来れたな???
「この森でのヘスティア様の捜索もすでに始まってます。以前、先遣部隊がこちらの森に遣わされました」
「ヒエッ……」
「そして若い女神が見つかったとの報告がありました」
「えっ……?」
「ですが、ニンフ上がりの神かぶれだった、と」
「ん?」
「追っ手はもうそこまで迫っているのです。次に見つけられるのはヘスティア様かもしれないんですよ!」
「へー、ソウナンダー」
あっぶねぇえええええ!!!!!それって絶対この前のおっさんのことじゃん!!!そういえばヘスティアがどうとか、ニンフがどうとか言ってた気がするわ!!!ヤバかったじゃん!!!そこまで迫ってるどころか対面しちゃってたよ!?よく回避できたな私!?マジで横文字苦手でよかった!!!ヘスティア自認してたらえらいこっちゃだった!!!!エマという名をつけてくれた親には感謝しかない!!!!!マジで!!!
「今のように逃げ隠れる生活もいつまで続けれるか……」
「隠れて……?何の話?」
いや、マジでなんの話???私、そんな追われてることも今初めて知ったのだが???私逃げ隠れる生活してたっけ?いや、見つかるのも時間の問題っていうのはマジでそうなんだろうけど。なにせ、追っ手と対面してるからね!!おっかねぇ!!
「え?だって、拠点がたくさんあるのは逃げ隠れているからじゃ……?」
「いや、普通に帰れないからだけど」
「帰れない……?」
今度はメーティスがキョトンとする番だった。なるほどね、拠点を転々としてるから、見つからないように逃げ隠れていると思われたのか。いや、マジで過去の私尽くファインプレー過ぎない!?これはもう神に愛されし……と思ったけど、その神に追われてるんだった。
「いやー、私極度の方向音痴でさ、拠点と決めた場所に戻ろうと思っても全然辿り着かなくて……じゃあ、もうここでいっか!って新たな拠点を作っていったらめちゃくちゃ数が増えたんだよね」
「方向音痴で拠点に戻れない!?」
「うん」
「炉の神という、いわば居場所の神のような方が!?」
「ほら、私さっきまで自認串焼きの神だったし……でも今はちゃんと帰れるよ!拠点いっぱい作ったら何処かしらにはたどり着くようになった!」
「それは果たして帰れると言って良いものでしょうか……」
だって、拠点なんて家みたいなもんでしょ?ほら、別邸に帰ったって帰るって言うじゃん?それと一緒だって。
「住めば都って言うし?私が家だと言ったらそこは家なんだよ」
「なんたる傲慢な主張」
しょうがないじゃん?だって帰れないんだもん。私だって帰れるなら帰ってるよ!!まぁ、そのおかげで神回避が出来たわけだけど。まさか指名手配されるとは思うまい???
明日の更新はお休みとなりますp




