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プロローグ【誕生】

あけましておめでとうございます。

『我が子を食らうサトゥルヌス』という絵画をご存知だろうか?


知らないというそこのあなたは、調べるなら自己責任で調べてほしい。結構ショッキングな絵が出てくるから。具体的には赤子をムシャァって食べてる男の人の絵。


多分、ネットで見かけたことある人も少なくないんじゃないだろうか。私もその存在を知ったのはネットからだった。そして少し気になって調べたらサトゥルヌス=時の神クロノスだという。時の神って響きかっこいいよね。


つまりクロノスが我が子を食らっているところを描いた絵なんだけど、なんでそんな話をするのかって?


それは私が今まさにそのクロノスの“我が子”に転生したからである。


え、待って?流石に人生ハードモード過ぎない?






********************






“この世界に生まれて”一番最初の記憶は、暖かい母の記憶。柔らかな腕に抱かれて、優しい声を聞いた気がする。


「愛しい私のヘスティア」


ゆらゆらと揺らされるのは心地良くて、母のプラチナブロンドが揺れ、パチパチと遠くで火が爆ぜる音がした。微睡みの中、見上げた母が微笑む。しかし、その少し青みを帯びた深い緑の瞳は何処か悲しそうに見えて、小さな手を目一杯伸ばす。伸ばした手を掴まえて、優しく包むように握ってくれる母の手はとても大きく見えた。


「どうかあなたのゆく道が暖かなものでありますように」


そう言って額に落とされる唇と、同時に聞こえてくるシャラリという涼やかな金属音。どうやらペンダントのようなものを掛けられてたようで、先についているペンダントトップがじんわりと暖かい。


「さぁ、クロノス様……あなたのお父様に会いに行きましょうか」


そう言うと母は立ち上がって、私を抱いたまま何処かへ向かい始める。


クロノス……クロノスかぁ……なんかカッコイイ響きだなぁ……時の神様みたい……。


そこまでぼんやりと考えて、ふと疑問を抱く。あれ?いや、待って?何がどうなってる?私、赤ちゃんになってる?あれ?あれぇ???


一瞬で大パニックである。赤子の身体である私は勿論、大泣き。ごめんね、マミー。別に泣きたいわけじゃないけど、身体が言うことをきかなくてね。……いや、やっぱりわけ分かんなすぎて普通に泣きそうかも。


というか、マミーとか言ってみたけどこの人母親で合ってるよね?私の記憶にある母親の顔とは大分違ってるんだけど、こんなに優しく産まれたて?産まれたてなんか?わかんないけど、赤ちゃん抱いてんだから母親だよね?


……だめだ、マジで意味が分からない。一旦落ち着いて状況を整理してみよう。


私は平成に生まれ令和を生きていた、どこにでもいるような極々普通の成人女性だった。まぁ、ちょっとオタクではあったけど、それもあの時代珍しいことでもない。本当に特筆することのない、職場と自宅を往復し、休日は趣味を謳歌する……ごめん、ちょっと盛った。休日はSNSとかサブスクとかで時間溶かしてたわ。でも、そんなThe現代人な日常を送っていた。


仕事は行きたくないって毎朝唱えてたけど、嫌いじゃなかったし、周囲の人間関係だって別に悪くなかった。むしろ、気の合う趣味仲間とかもいて、なんだかんだ言いながらもそれなりに人生満足してたと思う。


だというのに、今は何故か赤ん坊になっている。いや、本当に意味が分からないと思うけど、私が一番意味分かんないと思ってるからね?どうして?なぜ?これが飲み込める人間いる?こうなる直前の記憶もなさ過ぎてマジでなんでこうなってるか分からないけど、寝て覚めたら赤ちゃんになってるとかラノベかよ。……ん?


はっ!!これ、オタクなら誰しも一度は憧れるシチュエーションなのでは?と思ったが、当事者になって分かる、こんなんパニックにしかならんて。第二の人生楽しむぞ〜とかならんて。どうして、ラノベの主人公達すんなり受け入れられるの?普通に恐怖体感だよ?しかも何が怖いって、幼児くらいであれば子供の頃思い出す懐かし〜とかなるかも知れんけど、流石に赤子の記憶無さすぎて違和感しかない。


今一度声を大にして言いたい。どうしてこうなった!?まぁ、実際に私の口から溢れるのは元気な泣き声だけなんだけど。元気な女の子ですよ〜、じゃないんだわ。死んだ記憶もないのに転生?いやいや、それ転生とはいわなくないか?


じゃあ、これは?……夢だな。いや、普通に考えて夢だろ。オタクであるが故に転生という発想が先に来てしまったが、こんなあり得ない状況どう考えても夢なんよ。これが噂の明晰夢ってやつか。感覚がリアル過ぎて気持ち悪い。夢なら身体が縮んだ違和感くらい感じないようにしといてよ。


夢と開き直れば涙は止まっていた。代わりにやってくるのは眠気で。赤ちゃんの身体って素直〜!というか夢の中で眠たくなるって何?と思いながらも抗えない眠気に身を任せる。


ウトウトとしながらもどうにも胸がざわついて落ち着かない。なんか私、大事なことを忘れてる気が……。というかこれどこに向かってるんだっけ?確かママン(仮)は、父親のところへ行くって……そう、確かクロノスって……。私が意識を保てたのはそこまでで、襲い来る睡魔に身を任せて意識を手放した。

有識者の皆様におかれましては思うところはあると思いますが、そんなことを言い出すとそもそもヘスティアは現代人が転生してないという話になってhしまいますので、あまり神話の厳密さにとらわれず、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。

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