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彼女は乱戦では最強

戦場の中心で――ただ一人、優雅に舞う影があった。


ドレスのような艶やかな黒衣。

蠢くのはスカートの裾から覗く漆黒の蜘蛛脚。

金糸のような髪をふわりと揺らし、女妖魔・エルザミナは楽しげに呟いた。


「戦いなんて、くだらないよ」


「ボクが求めてるのは、勝ち残りじゃない――」


抱きかかえた繭。

その中にいるのは、ちいさな少女――フラウ。


無垢な瞳。

声なき微笑み。

くすぐったそうに身を震わせるその反応――それが、たまらなかった。


「ほら、じっとして。……キミの全部、ちゃんと“包んで”あげるからね」


エルザミナの指先が糸を引く。

繭はさらにぬめりを帯び、密着度を増す。

肌着の上からでも輪郭が浮かび上がるほど、しっとりと貼りついた糸が、彼女の肌を這うように絡む。


「……ん、ほら、くすぐったい?」


舌をそっと這わせる。

鎖骨から首筋、耳の後ろまで、ぬるぬるとした糸の膜越しに味わう。


そのたびに、フラウはびくびくと小刻みに震える。

声は出さない。ただ、唇がふるふると揺れて、頬が染まっていく。


「ふふっ……キミ、ホントにキレイ。……どこを舐めても、すごく甘い……」


エルザミナの声は蕩けそうだった。


糸は甘い体液を含んでいる。

それがフラウの身体に絡みつくたび、彼女はさらにしっとりと濡れていった。


髪の毛は滴るように艶を帯び、繭の中の空気さえもねっとりと濃くなっていく。


「大丈夫……ボク、君を“食べない”って決めたから……」


その瞬間、会場の端から放たれた雷撃が、エルザミナめがけて飛来した。


「繭なんて作って油断しやがって!」


だが、雷撃は繭の表面に触れるや否や――粘性の糸に包まれて霧散した。


「……んー、ごめん。ボク、お前らに構ってる余裕ないの」


蜘蛛脚が宙を舞う。

瞬間、戦士風の受験者が糸に巻き上げられ、呻く暇もなく空中で吊るされる。


「……静かにしてくれる?」


さらにもう一人が突撃を仕掛けたが、ドレスの裾がふわりと翻ると同時に、周囲に広がった糸の糸が足を絡め取り、地面に叩きつけた。


――誰も、繭に近づけない。


エルザミナは、すでに他の存在が見えていなかった。

彼女の世界には、フラウだけがいた。


「ねぇ……このままさ、ボクの糸で君の全部、包んじゃったらどうなるかな……?」


繭の中、フラウの肌が糸と汗と甘液に濡れ、衣服の薄布さえ透かしてしまう。

肌の上で蕩ける感触に、彼女は小さく震え続けた。

けれど逃げなかった。

目をそらさず、ただ微笑んでいた。

その無垢さに釘付けになる。


「…………っ」


エルザミナは舌を引いた。


(……だめだ、これ以上は……キミを壊しそう)


蜘蛛の脚を広げる。

繭の外側に張り巡らされた粘糸が、彼女たちを覆うように包む。


残された試験の時間。

エルザミナはただ、繭を抱きしめながら、その中で身じろぎ一つせず過ごし続けた。


まるで卵を守る母蜘蛛のように。


そして試験終了の鐘が鳴る。


教師たちが集まった会場中央には、蜘蛛の巣に絡め取られた複数の受験者たち、

そしてその中心、艶やかに輝く繭が鎮座していた。


「…………」


繭の糸がほどける。


中から現れたのは――エルザミナ。

そして全身ベトベトに濡れた、フラウだった。


髪がしっとりとまとわりつき、衣服は甘く透け、頬はわずかに紅潮していた。


「……な、なによそれはあああああああああっ!!」


場に鳴り響いたのは、アメリアの怒声だった。

雷鳴よりも鋭く、そして。

嫉妬よりも痛切な叫び。


こうして、学園の入学試験は前代未聞の“衝撃”とともに――幕を閉じた。

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