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彼女の作戦は絶対

S級教室の中央、魔導図面が展開された机を前に、アメリアは脚を組み、鋭く言い放った。


「……まず、ルールの再確認をするわよ」


生徒たちの視線が自然と彼女に向く。


「自分達のダンジョンを作成する事、それが基本」


「自分達のダンジョンを作成した者だけが、他のダンジョンを攻める権利が得られる」


「敵のダンジョンを攻略するには、眷属や魔物を退けボスを戦闘不能にすればいい」


「攻略された側は戦力・魔力の一部を奪われる」


「仮に攻略されたとしても、魔力や戦力が残っている限りダンジョン再作成が可能」


一人の生徒が手を挙げた。


「アメリア様、奪った戦力の扱いは?」


アメリアは微笑する。


「クラスを越えて眷属登録が可能。授業も共に受けられる。……フラウを連れ戻すには、これ以上ない制度よ」


静まり返る教室。

彼女の口元だけが、冷ややかに笑っていた。


「うちのダンジョンは、魔力強度を限界まで高めた迷宮型。罠と偽の通路で構成された、完全な耐久型」


壁面には、迷宮の立体構造が浮かび上がっている。

各所の魔力供給線と、発動符の連結図も明示されていた。


「維持には膨大な魔力が要る。大抵の攻撃には耐えられるけど複数の攻略部隊から連続して攻撃を受ければ、いずれ崩壊する」


「かと言って他のダンジョンへの攻略に総力を割けば、我々の拠点が手薄になる。そこを突かれれば、魔力不足で自壊するわ」


生徒たちは息を呑む。


「だから、偽情報を流す」


アメリアが立ち上がる。


「我々は全員防衛に専念すると他所には吹き込むわ。強固な迷宮で籠もる気だと思わせれば、下位チームは下手に攻めてこないでしょう」


指を鳴らす。

その瞬間、分身魔法によって生まれた自身の幻影が、複数の魔導投影端末に分散され、他クラスへの「外交的説明」が始まる。


「その間に――選抜した少数精鋭で、エルザミナのダンジョンを攻略する」


教室がざわつく。


「攻略対象は“王室”構造のワンフロア。複雑な罠はない。防衛は生徒眷属主体。ボスも明確」


「奴らは油断している。居心地のいい“部屋”を作っただけ。戦場ではない」


そう言って、アメリアは視線を鋭くする。


「フラウを奪い返すには、今しかない」


「……いい? 私の命令は絶対。逆らうつもりなら、今ここで潰す」


誰一人として異を唱えなかった。

アメリアの統治は、もはや絶対支配に近い。


「作戦開始は、次の鐘が鳴った直後。選抜部隊は私に続いて転移口へ。残りは予定通り“守ってるふり”を続けなさい」


冷たい笑みを浮かべて、アメリアは最後に付け加えた。


「さあ――奪いに行くわよ。私の、フラウを」

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