【プロットタイプ】哀愁
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
上手い回答が出来ない人間なので、感想欄閉じてます。
これは読者様の問題ではなく、私の問題。
詳しく知りたい方は代表作の『作品と作者の注意点』に書いてあります。
注意事項2
お酒のCMって、何時見ても懐かしさを覚えさせるなんですよ。
怖がりながらも、もっと浸るべきだった。
子供の頃の祖父母の家が恋しくなる。今戻っても、あの時感じた感触というのは得られない。だからセピアがかった記憶を頼りに、動画を探す。色褪せた、渋いCMを探す。
酒のCMは良いものが多い。対象が大人に限定される為、見れば見る程奥深い。燻した味がする。其れに哀愁漂うマンドリーノの音色が響くと、もう胸を掻き毟りたくなる。
「それ……とんと見なくなったな……」
熱心にCMを見詰めていたら、唐突に瑠衣が声を掛けてきた。視線の先はスマホの画面に注がれており、興味を持っているのがよく分かる。
惚けた顔をしていると私の隣に座る。視線が続きを読む待ち侘びていた。だからまた再生ボタンを教て、共に眺める事にした。
私の祖父母の家は何処か古びていた。何処にあるのか分からない時計がチャイムを鳴らして時を告げる。長い廊下が何処までも広がっていて、歩く度に床が軋む。物置にしている奇想の部屋は日本人形やオルゴール、異国の調度品が置かれていた。
あの頃はその一つ一つが不気味だった。どうしようもなく怖かった。あの寂しげな夕陽に誘われ、閉じ込められそうで、逃げられなくなりそうで。
でも今はそれが恋しくて仕方がない。また触れたくて仕方がない。戻れない事を悔やむ程に。
ボンボンと鳴り響く振り子時計の音は感傷を誘い、軋む廊下は成長を示し、奇想の部屋は調度品に混ざって戯れたい。
けれども叶わぬ願いだった。今同じ様に戻っても、あの時の感性のままに浸る事は出来ないだろう。余りにも私は歳を取り過ぎた。怯える事が出来なくなった。
「祖父母の家の雰囲気に似ているんだ。色褪せたこの渋さが、物悲しさが」
胸に抱えて置きたくて仕方がない。
分かるかなぁ。私だけかなぁ。そう思ってしまうのは。其れを求めて同じ様な匂いのする洋館を探してしまうのは。
「俺も、実家の陳列部屋を思い出す。古今で感性が違い過ぎて、同じものは得られないが」
瑠衣の声は何処か寂しそうだった。やはり、このCMは心が揺さぶれられる。
あぁ……珈琲が飲みたいなぁ……。
酒のCMは良い物が多い。という感想を残して置きます。
対象が大人、其れも年齢を重ねたら人に限定されるので、まぁ渋い。飽きがこない。味がする。
なんであんな『哀愁』を表す詩が上手いのだろうか。素朴で優しい話し声が、歌声が多いのだろうか。
そうしてあのセピア色の光景を眺めていると、祖父母の家を思い出すんです。
あの時は夕暮から夜に掛けて、全てが怖かった。
橙に染まった廊下も、何処からともなく響くボンボンとした時計の音も、異国の調度品が並んだ物置部屋も。
でも今は恋しくて仕方ない。
同じ様に帰っても、あの時と同じ感性で物が見られないと分かるから。
私が洋館や本屋や美術館を求め続けるのは、感傷に浸りたいから。
情緒的執筆を続けるのは、記憶の保管を行いたいからかも知れません。