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給食のことだけを考えていた

 ――――――今、オレには生死にかかわる超重要な問題がある! それはズバリ、今日の給食なのだ!


 オレとしたことが、今日に限って献立表を見忘れてた~~~~~。うぬぬぬぬぬ、広林ひろばやし結希ゆき今生の不覚ぅう! ………ま、いいや。教室にも献立表はあるし。


 でも、どうして見忘れちゃったのかな~? いっつも、朝起きたら最初に見てるのに。あ、そうだ。寝坊して見てる暇が無かったんだ。でも、まさかの8時起きはないよね~ごはんもろくに食べれなかったし~


 ………お腹すいだあぁぁぁ………


 何でこんな日に限って1,2時限目が卒業式練習なんだろ。ずっと座ってるだけなのに、目が回りそう……がんばれユキ! ファイトだオレ! 給食まではあと二時間だ……長い。


 ツラい……8時起きはないよねぇ


 あー、早く式練習終わらないかな。いっそのこと今日が早く終わらないかな、給食の時以外。


 でも、どうして卒業しきってこんなに形にこだわるんだろうね。どっかのホームレス家族みたいに、校長先生が「解散!!」て言った瞬間にみんな、それぞれの明日へって感じだったら楽なのにね~。


 第一、卒業証書授与って、言いにくいし、わざわざ一人一人前に出てかみ切れ一枚もらいに行く必要ないじゃーん。代表の子が一人だけもらって、それで終わりでいいじゃん。前の小学校じゃそうしてたし。なんでー?



 まー、二年生のオレたちにとっちゃ、どっちにしてもつまらないんだけどね。



 あ、三年生退場だ。ずっと拍手してなくちゃいけないんだよ。一番外側の席に座ってるから、体育館のちゅーおうを通ってく三年生の顔はほとんど見えないんだけど、とにかく、これが終わったら式練も終わりってことで、がんばてね、あたし。




 ……やっと終わったー! 長かった。でも、あとは教室に戻って、残りの三時限目と四時限目を終わらせるだけ。何の授業だっけ? そうだ、数学と美術だ。ま、チョロいね。バリバリ理系のアタシには、円周の定理なんてアサメシ前………今はヒルメシ前、なんちって。美術は……てきとーでいいや。芸術なんてものは自由な心の動きから産まれるもんだて。


 「ユキりーん、疲れたね~」



 「そーだねエミリー」


 おお、愛しのエミリー(本名、糸川枝実梨 14歳)よ、オレの最愛なる幼き日の馴染みよ……今はできるだけ話したくないんだけどなぁ、というよりも、腹筋を使いたくないんだけど……


 「というかさー、先生の話長くなかった?」


 「そうだね~」


 「来賓の方々からの挨拶とか、練習なんだからいちいち先生がしゃべらなくてもいいのにね」


 「そうだね~」


 「しかも、それほど今の三年に思い出無いんだけど」


 「そうだね~」


 「……ねぇ、話聞いてる?」


 「うん、聞いてるよ」


 「嘘でしょ」


 「そうだね~」


 「こらっ、ユキりん!」


 ごめんごめん。でも、オレにとっては今が正念場なのだよ。分かっておくれ、エミリー。そう、きっとキミなら分かってくれるはずだ。そう、オレとキミは以心伝心とかなんとかという仲ではないか。期待しているよエミリー君


 「ねぇ、今日の給食って何だっけ」


 ノオォゥ! そうきたかエミリーよ。それは今のオレに一番聞いちゃいけないとこだよ。逆転ごぼう抜きだよどストライクだよ。まさかキミからそんな不意打ちがくるとは思わなかったよ。まさか、おれとキミとの間にも目には見えない隔たりが生まれていたというのか! ティラリーン 花から牛乳~


 「今日は知らないよ~」


 「えー、ユキりんが給食チェックしてないなんて、今日は雪でも降るんじゃないのー?」


 へいへい、アタシが悪うござんしたよ。アタシが寝坊するのがいけないんでござんすよ。でも、三月の雪ならまだ珍しくないんじゃない? それともただの嫌がらせ? あたしの名前がユキだから~?


 「確かねー、今日の給食は、コッペパンとスパゲッティ、海藻サラダだよ」


 「シットッタンカイ!!」


 シットッタンカイ!! じゃあ何故聞いた


 「うフフフフフー? ユキりん怒った?」


 怒るわー! ……ハッ、まさかこやつ、あたしがオレが寝坊してろくに朝ご飯食べてないことを知っていて?


 「あたしとユキりんの仲じゃ隠し事なんて通用しないよー」


 恐るべしエミリーさんよ。さすがおさなの馴染みなだけありますな。竹馬の友を弱点を突いて操るとは。でも今回は、仕返しをしてあげられるほどの体力は残っていないのだ。残念けど今回は見逃してね~


 「ふーん。じゃあ、一ついいこと教えよっか。今日の給食、おやつにいちごタルトがついてるよー」


 「わーい、いちごタルトいちごタルト~……エミリーさんいえエミリー様!!、一個ちょうだい~!?」


 「えー、いや」


 「そこを何とかエミリー大明神様!! 今日はお腹が空いて空いて死にそうなんです~」


 「だからこそ~、いや」


 「ムキ―――エミリーのいじわる!!」


 あひ―――……もういいよ、たぶんユミちゃんかカトリーヌにもらえるもんねー。むふぅいちごタルト、いちごタルト~。オレの心はいちご色~



 「おーい、広林」


 む、その声は、むしやブラザーかい? まさかブラザーまでもオレの腹筋を酷使させようと接近してくるというのかい? 嫌な予感がする。


 「ん、どしたのブラザー?」


 「いや、ちょっと連絡があってさ。つーか、そのブラザーってのは何なんだよ。別に俺はおまえの兄弟じゃないぞ」


 「いや~、ブラザーはブラザーだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ~。因みに兄の方のブラザーね」


 「よく分からん。勝手に渾名をつけるなよ」


 むぅー、しつこい。


 「お前もな」


 ウヘヘー。ほんで、連絡って何?


 「ああ、委員会のことだけど、女子の図書委員は図書室に集合だってよ」


 「あひ~、忘れてた~。今日からは休み時間に書庫の整理するんだった~。お腹空いてるのに力しごと~……ブラザーさんよう、ここはいっちょう一肌脱いで、あっしの代わりに図書室の天下を取ってきてもらえませんかのう」


 「何言ってんだよ。図書室の天下って何だ。別に手伝ってやってもいいけど、今日は俺もクラス委員の仕事があるからいけねぇよ。悪ぃな。ま、昼休みには俺も顔出せると思うから」


 ああ、ブラザーさんも、オレと隔たり無く会話ができる人だけあるな~。本当にこの人はかるーくうけながしてくれちゃうなー うーむ、しかし、ブラザーさんも大変なんすなぁ。がんばてね~。


 「そんじゃあ、そういうことでよろしくねっ」


 あ、ブラザーさん、全力で走ってった。……あ、こけた。重ね重ね大変だねぇ。それじゃあオレも、図書室行って天下取ってこようかな。


   いちごタルトが待っている。




   勇者の旅立ちに興じて



 燃えさかる 空と太陽


 荒れ狂う 母なる海


 あなたはどこへ行くというの 地図も持たぬまま


 旅立つ世界は 混沌の宇宙 深淵にすくう闇


 あなたはなぜ行くというの 愛し日々を残して


あなたが闘うのは 目に見えぬ敵


あなたが守るのは 目に焼き付いた 幸せだった日々


止めはしない 煽りもしない ただ分かって欲しい


わたしが願うことは あなたの無事だけ 生ある帰還だけ



 荒んだ この心


 枯れ果てた 愛の大地


 あなたは果てへと行くのでしょう すべての敵を倒すまで


 あなたはだから行くのでしょう 勇気だけに身をまかせ


希望はある きっとまだある そう それがあなた


太古より 天をも照らす その光


  

あなたが知るのは はかない条理


あなたが得るのは すべての悲しみ


だけど あなたは選ばれた そのすべてを弔うために


我らが讃えるのは その勇気 かがやく心



わたしがただ願うのは いつかの暖かな笑顔 

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