第104話 火曜日、旧友との再会
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火曜日。週の始まりという佳境が終わり、すれ違う人達の表情にちょっとした余裕が漂っている。
そんな少し火照るような日にわたしは充実した一日を過ごしていた。
「わあー、すっごいおいしそう! ハンバーグがじゅわぁーってしてるよ!」
「ふふん。腕によりを掛けたからネ。たくさん食べて!」
いつもより十分ぐらい遅い時間に起きて、少しだけ凝った昼食を作って、シャーナちゃんと一緒に食べる。
腕が骨折していたとしても料理だけは手を抜けないのだ。まあ腕に負担の無い範囲でだけど。
「う、うーん…………」
「わたしが見守っているから、お昼寝しようか」
そうして昼食を食べてしばらく遊んでいると、シャーナちゃんの瞼が半月のように閉じ始め。やがて真昼の泡沫の中に包まれていくのだった。
任務や怪我のことがあってしばらくの間、シャーナちゃんと一緒に遊べなかった。
だけどシャーナちゃんは変わらずわたしを『おねえちゃん』と呼んでくれるし、ごはんも美味しそうに食べてくれる。
その姿が本当に、本当に――――嬉しかった。
「…………ありがとう、シャーナちゃん。おやすみなさい」
「うーん……むにゃむにゃ…………」
か細げな呟きと共に柔らかな頭を撫で。寝い入る彼女を見送ると、わたしは部屋を後にした。
そうして自室へと戻る途中。通り道である戦闘課の廊下を歩いていたところで、ふと見知った顔が目に入った。
「あれ、ハトじゃん。オッハー!」
「ここで会うのも珍しいな。息災にして……は、なそうだな」
まるで真夏の海の一番星を思わせる小麦色の肌に短い金髪の気怠げなレディ。
生真面目が服を着て歩いているような厳格な雰囲気を漂わせる紺黒な古風女性。
ララベルとアイラ。十芒星・紅星が襲撃して来た時に共に戦った、天門台防衛部隊の隊員の二人が手を振っていた。
「二人とも久しぶり!」
「エレン支部長から話は聞いているぞ。前回の任務では大活躍だったみたいだな。防衛部隊の元同僚としてアイラも鼻が高いぞ」
「そんなことないよ〜、もジュリアちゃんやメイアちゃんも凄かったからネ。ところで二人はどうしてここに? それにその格好は?」
二人の服装を見てみると。別にホシが攻めて来ているという事もないのに何故か普段の制服ではなく戦闘スーツを着ていたのだ。
そんなわたしの疑問にララちゃんかからからと笑いながら答えた。
「これ? 今からシュミレータールームで訓練をするだけで別に変な事は起きてないよ! アッハッハッハッハ!」
「へー、やっぱり防衛部隊のみんなも頑張ってるんだ。これならこの街の守りは安心だネ」
「…………ッ」
――――その時、さっきまで朗らかだった二人の顔がまるで苦虫を噛み潰したかのように少しだけ強張った。
二人の表情からはとても大きな感情――――深く、そしてとても大きな【屈辱】の感情が垣間見える。
そしてその表情の意味を、今のわたしは理解できなかった。
「え、どうしたの? 二人ともすごい怖い顔だけど……」
「うーん、ウチらのコレを説明するのはちょっち難しいんだよねー」
「………そうだな。ハト、せっかくだからこの後の防衛部隊の訓練を見に来てくれないか? そこでならアイラ達のこのモヤモヤの意味を伝えられるかもしれない」
「え?」