ムサシ、新鋭機で飛ぶ!!
あれから二か月。
堀越さんも中々審査に合格されない12試を見限りそうになり既に腹案を設けて設計済だったそうで。
主翼は強度を上げ機体のパンチ穴も防いで強化。
エンジンは金星1300ps。
>後に1750psまでアップ。
機銃は13粍機銃を4門。>新開発の7,7粍機銃の拡大版。>実史では無いバージョン。
エリコン20粍は重過ぎるとして却下され陸攻に配備。
太くなった機首は逞しく、スターターモーターも装備されたので整備員の苦労は減る。
主翼は機銃搭載部位から大きく折り畳めるので艦載時には配備機数も増やせると艦隊からも好評。
特にGと対立してた柴田少佐は自分の理想が具現したと大喜び。
逆にG少佐はフテ腐れたと聞く。
翼面荷重は堀越技師に任せ、着陸時には翼前面ストラットとフラップで落とす様に変更。
パワーがあるので多少の装備も大丈夫。
また急降下時に操縦かんが重くて引き起こせないと言う話も聞くので油圧アシストを設ける。
横空滑走路に引き出された新鋭12試は力強いフォルムで周囲を圧倒する。
「機体は前作より強化してありますのでまずは600kmを限度に急降下して下さい。
最高速度は550kmは保証します。
運動性能は96に劣りますが、その分、パワーと速度、上昇性能で頑張りました。」
堀越技師の説明を受け、私は新しい新鋭機に乗る。
スターターモーターが装備されたので機動ボタンを押すとクインクインとモーターが回る。
ペラが回りだしたら・・コンタクト!!と叫び、点火スイッチを入れるとエンジン機動。
ウム、誉ほどでは無いがこの時代では最強のエンジン、更に改良の余裕があるので三菱も頑張るそうだ。
エンジンが暖気するとストッパーを外しタキシング。
狭い横空の滑走路なので端までタキシングしブレーキをかける。
>なをブレーキは新型のデスクブレーキである。
在空機は全て着陸済。
無電も良好で横空の管制官から離陸許可を得て発進。
無電の雑音防止は電纜にゴム被膜を施す事で避けられたと言う。
機はグングン加速し200m弱で離陸。
高度2000で速度計測開始。
「コチラ武藤、これより速度計測開始。地上でも計測ヨロシク。」
「リョ。こちら横空。」
少し突っ込みエンジン全開。
クオォォォ~~ンと言う加速音と共に新12試は飛ぶ。
メーターはグングン回り320ノットを計測!!
生産ラインになると多少は落ちるだろうが、それでも580kmは出そうだ。
この時代なら世界一の速度だな?
地上でも320ノット計測と大騒ぎだ。
続いて急降下。
高度6000まで上げて3000で引き起こす予定。
60度の傾斜で急降下し速度計を見ながら加速。
320を振り切り450ノットまで出た・・。
両翼には・・皺はナシ。
振動ナシ。ウム、文句ナシの三拍子。
もう充分と思い計測を止め引き起こすとパワーアシストで適度に重く感じる程度。
操縦かんを戻すと水平飛行・・。
運動性能は零戦21型には劣るが52型丙よりは遥かにマシ。
速度や強度を考えれば充分であろう。
柴田少佐が地上で大喜びしてるそうだ。
審査を切り上げ滑走路末端でフラップを下げストラットを出すとかなり落ち着いて着地出来る。
艦上機としても充分合格だろう。
これぞ私の求めてた新鋭機だ。
後に零戦と呼ばれる新鋭機が産声を上げた一瞬だった。
タキシングし、列線に機を止めると基地在留の隊員が大騒ぎだ。
今までの12試だと速度も変わらず図体がデカイだけだったのが、一気に100km近くアップ。
急降下でも見事な速度を計測。
そして整備員泣かせだった機銃も同じ13粍となると整備兵は大喜び。
後に改良されドラム給弾からベルト給弾に変更。
1門辺り300発装填可能となるのだ。
坂井サブちゃんや岩本テツも理想のファイターになりますと大喜び。
細かい設計変更を経て正式に零戦12型として正式採用されるのは昭和15年、春の事だった。
柴田武夫少佐の案こそが筆者の求める零戦でした。
源田実案で誕生した零戦が実史の零戦です。
これからは実史とは違う大戦になります。