ムサシ、前線へと往く!!
延長教育も終わり、少尉から中尉へと昇進。
同時に前線へと赴任が決定だ。
戦闘機は96式艦戦!!
カミソリみたいな機動性を持つ戦闘機で零戦の堀越技師が最高傑作と自慢してた戦闘機だ。
だが航続性能、並びに速度が低く昭和15年には旧式化する。
時は昭和13年。
中国戦線へと赴任が決まり、ヒヨコ中尉の私のお守には歴戦搭乗員が多数配備された。
この時代は士官も少なく、私が前史の頃はやはり護衛で戦果を稼げなかった・・。
「武藤中尉、私が貴方の二番機を務めさせて頂く岩本徹三1飛行兵です。」
驚いた!!
前史では共に食卓番をしてた岩本が護衛とは・・。
彼の腕は凄まじく私の戦死時までには全海軍でもトップだったと記憶してる。
他にも懐かしい田中や坂井サブちゃん、多くの部下が私の分隊に配備された。
「諸君、我が武藤分隊にきてくれてありがとう。
私が指揮を執る武藤中尉だ!!まだ戦歴0だが諸君と共にこの戦線で頑張ろう。
頼りない点が見られたら夜にでも教えてくれ。昼間は周囲の目もあるので済まぬが容赦して欲しい。
明日から、早速の戦闘だが、岩本、坂井、両名を我が護衛に任ず。」
第13空の基地での初の夜は・・・。
宴会だ!!
「オイ、サブ。バナナの叩き売りをしろ!!」
「テツちゃん、何で知ってるの??」
「武藤中尉、明日の戦闘では敵をトコトン追い回して下さい。
背後は我等に任せて安心して下さい。」
「ウム。まずは私が昇任し貴様らを引っ張らねばならぬ。
スマンがお守を頼むぞ!!」
「「「お任せ下さい!!」」」
元刑務所の宿舎での夜は更け、消灯の放送まで宴は続いた。
翌朝0600,起床ラッパが轟き総員起こし。
私も起きてベッドを畳みシーツをピシっと揃える。
褌を新品に変え万一の戦死でも恥をかかぬ様にする。
我が武藤中隊は士官も兵も同じ食卓でメシを食う。
最初は遠慮されたが、大村を経て同じ釜のメシを食い合うと慣れてくれた。
食事が終わりクソ小便を済ませ滑走路に出ると・・。
見事に整備された我が愛機が待ってた。
ピカピカに磨かれ油一つ無い96式が・・。
周囲を回りタイヤに空気、増加タンクの取り付けや機銃弾の装填。
全てを調べコックピットに入る。
まだ零戦みたいな密閉風防では無いが見事に磨かれシミ一つない風防。
照準器も磨かれ十字線も綺麗に見える。
機銃も余計な油も無い。
全てを満足し、機を降りる。
整備兵を呼び感謝の意を伝えタバコの誉を一箱渡す。
「見事な整備だ。ありがとう。」
「いえ・・。地上では中尉の愛機は私の愛機です。もし不良ありましたらお伝え下さい。」
「ウム。気づいた事あれば必ず伝えよう。」
彼に機を任せ私は部下の待つ待機所に歩く。
司令の斎藤少佐が指揮所に来られ命令が下る。
目標は南昌空襲!!
爆撃機は無しの戦闘機のみの空襲だ。
初陣の私の負担を減らしてくれたのであろう。
総勢24名のパイロットと打ち合わせ空襲ルートを検討。
チャートに目標予定時刻を書き込み指揮台前に整列。
「かしら~~中!!なおれ!!」
先任の号令で隊員が私に注目する。
「諸君、命令を下す。目標は南昌空襲!!
爆撃機の随伴は無いので空襲では自由に空戦セヨ。
なを殲滅には拘らず随時帰還時刻までには予定地点に集合。
指揮は武藤中尉が執る。
出撃は0900、帰還は1200までにセヨ。」
坂井、岩本を伴い列線に並ぶ愛機までワイワイと騒ぎながら歩く我が13空隊員であった。
やがて0900,全機エンジン始動。
全機、南京飛行場を離陸。
作戦行動中の黒球とZ旗を眺めながら南昌を目指すのだ。
次回、初陣!!