8 婚約の行方
「ちょっと!待ちなさいよ!」
えー!無視ですか?全く、こっち見ないし、しかも王子殿下なんで、こんな足速いの!
ドレスで歩きにくいっていうのを差し引いても早すぎる。超人なのだろうか。
前世なら絶対オリンピック選手になって余裕の笑みで金メダル取ってそうだわ。なんか、ムカつく。
もう、良いや、ドレス邪魔だし、裾持って走ろう。
ハァーハァー、ようやく追いついた。いやー、疲れた。体力無いな。
「殿下、待ってください!話を、聞いてください。」
「なんだ?今から、父上に報告に行くと言って‥‥」
話し終わらない途中で王子殿下の顔が見事に真っ赤に染まった。なんか、リンゴみたいに赤くてかわいいな。なんでそんな照れてるんだろう。
「リーン!貴族令嬢なんだから、男に足を見せるな。」
あ、そーいえばそうだった。この世界では、足見せちゃいけないんだよね。もし、ショーパンとか、ミニスカートとか履いたらみんなおもしろそうな反応しそうだな。
ちょっと足が出てるだけでこんな反応するなんて、まだまだお子様だね。しょーがない、言うことを聞いてあげよう。
「失礼しました。以後気をつけます。」
「ああ、そうしてくれ。それで、婚約をしないって話なら聞かないからな。」
「どうしてですか?別に私じゃなくても、良いじゃないですか!」
「いや、俺はお前が気に入った。ついでに言うと、さっきの俺の試験にも合格だし、言うことはない。」
「試験ってどう言うことですか?そんなの殿下の前で受けてませんよ!」
「だから、言ってるだろ。俺、独断の試験だ。俺に微笑まれて嫌そうな顔をする女なんて今まで見たことないからな。だからリーンが俺の婚約者だ。」
なんだこれ?理不尽すぎるじゃない!。しかも意味がわからないし、そんなに顔に出てたかな?
「それに、リーンの無礼も婚約者ってことで免除してやるよ。」
それについて言われると何もいえないなー。
もう、婚約するしか、道はないのかな。まあ、でもヒロインと会うまでだし、一つだけ条件つけさせてもらえば何とかなるかな。
「わかりました。婚約結んでも良いですよ。そのかわり一つ条件をつけさせてください。王子殿下にもし、わたし以外に好きな人ができたら、婚約破棄してください。」
「良いだろう。まあ、そんなことはあり得ないが。それと名前、ジンと呼べと言っただろう。」
「流石に王子殿下を呼び捨てにはできません。」
えー!すごい睨まれてるんですけど、こわ!
「名前で呼べ。」
やっぱ、皇帝陛下の息子だわ。貫禄あるもん。
「じゃあ、ジン様でよろしいでしょうか。」
「いや、ジン。」
拗ねてるみたいで可愛く見えてきた。
こんな可愛いいのは反則だ!
「ジン!これで良いでしょ!」
「つっっ!!もう行くぞ!!」
そう言って、わたしの手を握って執務室に入った。咄嗟のことで反応できずにそのまま手を繋いだままの状態なので、余計に恥ずかしく感じる。
「父上、お話中、失礼します。改めましてご報告させていただきたいと思います。リーン・アスガルド嬢と婚約をさせていただきたく思います。許可をいただけないでしょうか。」
「ジン、よくやったの。許可しよう。公爵もそれで良いな。」
「はい。私はリーンが認めたのなら何も申し上げることはありません。」
「リーン嬢これから大変なこともあると思うが、そなたなら乗り越えられるだろう。頑張りなさい。」
いや、できればやりたくないんだけどな。まあヒロインと出会うまでの話だし、なんとかなるか。
「はい。承知しました。」
「ジン、リーン嬢これから2人でこの国のさらなる発展のために努力してゆくのじゃぞ。」
「「はい!」」
「それでは、公爵。今日はこの辺りで失礼するぞ。見送りは結構。ジン帰るぞ。」
「はい。父上」
また、あの貼り付けた笑顔だ。私あの顔苦手だな。
そのまま帰るのかと思ったら、急に殿下、もといジンが近づいてきた。
耳元で、
「今日は、楽しかった。ありがとう。また、来るね。」
と言われて、くすぐったくて恥ずかしくなった。なんか、ジンって本当に12歳なのか、疑わしく思ってきた。
その後は、夕食を食べて、お風呂に入り早めに眠ることにした。
今日一日で私の頭は、すごく疲れた。キツすぎる。
これからのことは明日考えよう。そう思い、眠りについた。