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崩壊世界散歩  作者: 鶴野オト
3/4

「優雅に泳ぐ白鳥も水面下では必死に足をもがいている」

本の中で聞いたことがあるフレーズだ

本物を見たことがないから本当かどうかは分からない

病院の池に白鳥が来たことはなかったから


俺は歩いている

すると、遠くに人影を見つけた

急いで駆け寄る

足元の瓦礫が崩れるのも意に介さずに

瓦礫に足を取られて転んだ

見上げるとそれは人影ではなく案山子であった

十字に組まれてロープで縛り付けられた体から白いカブ頭が生えている

俺は立ち上がると案山子の右頬に触れた

崩壊で街は崩れ、人は死に、畑なんて影も形もなくなった

でも、皮肉なことにこの案山子は壊れずに畑を守っている気でいる

この案山子にもし人の目がついていたならばこんな虚しい生き方が出来ずに倒れていたことだろう

この世には見えない方が幸せなことも多い

俺は案山子の足元に雀が落ちているのを見つけた

拾い上げてみたけどピクリとも動かない

動物や人の死体はたくさん見てきたけど骨だけでなく肉体も残っているのは久しぶりに見た

俺は近くの瓦礫を避けて地面を掘って雀を埋めてやった

のをこやそほねをかたみのすすきかな

昔聞いた手向けの句を心の中に浮かべて手を合わせた

そして俺はまた歩き出した

少しすると後ろで何か物音がした

振り返るとさっきの案山子が倒れていた

彼の顔がコロリとこちらを向く


俺はふと考える

もしかしてあいつは可哀想な雀を誰かに見つけてほしかったのではないのか?

そんな強い思いを心に隠して涼しげな顔をして立っていたのではないか?

…いや違うだろう

きっと俺が地面を掘った影響でバランスを崩しただけだ

きっと…

俺は前を向き直すと再び歩き出した

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