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精霊使いの異世界放浪記  作者: タバスコ
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命の大切さ

 ルークの決断により私たちはロントの後を追う事に成った。


夜が明けて十分な食料や水は無かったがそれでも私たちは西へと進んだ。

私の精霊のクーちゃんは私が指定した対象を追跡できる能力が有る為、今からでもロント達の後を追う事が出来た。


クーちゃんがニョロニョロと進む後を私達はゾロゾロと着いていった。

皆はこれからの事が不安なのか黙り込みただ足を動かしていた。


お昼頃だろうかチャドが空を見上げて「おい、あそこ」と空を指さした。

皆が見上げたが何を指しているのか判らなかった。

チャドがじれったそうに「ほら、あそこに木の実が生っているだろ! 」

と指さされやっとそれと分かった。

随分と高い枝に実がなっている。

良く見ると周りの木も同じ木のようで十五メートル程の高所に木の実が生っていた。


何とか手に入らないかと思っているとポニーが任せてと木の幹に両手を当てた手の甲から蝶の羽が生えると精霊の能力を発動したのだろう。


ポニーの精霊の力は屈折だ。

その力で幹を先日と同じように九十度に曲げた、ゴウっと云う音と共に高い木がまるで伐採されたように倒れた。

実の生っている枝が地面近くまで下がって来たので皆で捥いでいくがその実はとても食べられそうにない位に固い殻に覆われていた。

木目の様な外皮をしており物凄く固く、そして重かった。

ルークが近くの岩に実を叩きつけて割ってみると中から果汁が出て来た。

慌てて飲んでみると、ほんのりと甘く喉を潤すのに十分な量が有った。

果肉も外皮と比べて非常に柔らかくバターの様な食感だった。

近くの小枝を折ってスプーン代わりに使い食べたがベリーよりも濃厚で明らかにカロリーが高そうだった。


夢中で木の実を採取したがそれを持ち運ぶ方法を考えなくては成らなかった。

蔓で籠を作ろうと成って私とポニーちゃんの二人で蔓の籠を作った。

網目が荒くてもこの木の実なら落ちないだろう。


籠に木の実を詰め込むと結構な重さに成ってしまった。

籠作りで余った蔓でチャドが何やら作って居たがその目的が直ぐに判った。

チャドの精霊ウィングに木の実の籠を背負わせてウィングに引綱を付けた。

この引綱をチャドは作って居たのだ。

何時もチャドの周りをウロウロしているだけのウィングだったがチャドに引綱を引かれると大人しくチャドの後を着いて歩いた

ルークは籠を背負う覚悟をしていたが助かったと素直にチャドに礼を言った。

ポニーちゃんが重くは無いのとウィングに話しかけるとチャドが平気だよとウィングの代わりに返事をしていた。


水分と食べ物が手に入ると途端に皆、元気になった。

たっぷりと栄養を取ったせいだろうか足取りも軽くなったようだった。

先を急ぐ必要も低くなったので早い目に寝床の準備を始めた。

私とポニーちゃんが薪を集めてルークとチャドが寝床の準備をしてくれた。

倒木を組み合わせて葉の茂った枝で覆い屋根を作ってくれたので雨と風の心配が減った。

焚火を囲み木の実の夕飯を済ませると自然と話しが弾んだ。

「今日はチャドのお手柄だったな。」ルークが木の実を見つけたチャドを褒めるとチャドは「いやいや、ポニーや皆が協力したから上手く行ったんだよ」と言った。

その通りだと私は思った。

初日は失敗したけどやっと上手くチームが周り始めた実感が有った。


ルークは「食べ物の心配も当分無いし、ロントの後を追えば確実に川には到達できるだろう。例えロント達に追いつけなくてもこのチームなら森からの脱出もきっとやり遂げられると思うよ」

何時も慎重なルークが笑顔でそう言うと安心感が有った。

皆もにこやかだった。

このまま上手く遣っていけると私も思った。

結果的にルークの決定が正しかったのだろう。

明日は今日と同じようにロントの後を追い、川を目指す事で意見は一致したので後は他愛無い雑談で終始した。

久しぶりに笑った気がした。

疲れと気持ちが緩んでいたのか眠気がしてきたのでさっさと眠った。

焚火の番で睡眠は順番に取る事を初日に決めていた。

最初はルーク、次にチャド、私が三番目、ポニーは最後に焚火当番を遣る事に成っていた。

チャドに起こされて私は一人で焚火の番をしていた。

一人で焚火を見ていると此処に来てからの事が思い出された。

まだ二日しか経っていないのに目まぐるしく運命に翻弄されている様に感じたし濃密な二日間だったように思い出された。

少しずつ周りが明るく成ってきたのでポニーちゃんを起こして私は寝る事にした目をつぶるとポニーちゃんが悲鳴を上げた、びっくりして飛び起きるとポニーちゃんが抱き着いてきた。

目をパチクリさせていると。他の皆も起きだした。

何が有ったとルークが聞くとポニーちゃんは西を指さし幽霊がいると言った。

白みかけた森の一画に朧げな影が有った。ユラユラと揺れながらそれでもハッキリと此方を見ている視線を感じる。


チャドがあれはシャドーじゃないかと言った。

確かロントに付いていったジョーの精霊の事だ、何故ここにシャドーがいるのか判らなかったがルークを先頭に皆で近づいて行った。


初日に見た時より小さく成っている様に思えたが近くで見ると確かにシャドーだった

私達が近づくとシャドーは後ろに下がり付いて来いと言うように私達を誘導した。

怪訝に思いながらもシャドーに着いて行くと其処には食い荒らされたジョーの死体が有った。


ポニーと私は思わず悲鳴を上げた。

ルークは唸りチャドは目をそらした。

私達を案内したシャドーは何も語らず少しずつ体が小さく成っていきそして最後には消えた。

多分最後の役目を終えたのだろう、私たちにジョーを発見させると言う最後の役目を。


ジョーの頭部は無かった。胸部も半分食べられた様だ、手足は残っていたが引きちぎられたのか胴体から離れた所で発見された。


私達がジョーだと判断したのは残された衣服に見覚えが有ったからだ。

ジョーを襲ったであろう獣の足跡が残っていたがその大きさが尋常では無かった。

大きなルークの足がすっぽりと収まる大きさだった

足跡から推察すると牛に近い体格を持って居るのかも知れない。

初日から聞いていた獣の声の主がこの足跡の主だとすれば今まで無事だったのは幸運意外の何物でもないだろう。


すっかり食欲も無くした私達はそうそうに出発しようとしたがポニーがお墓を作ろうと言い出した。

ルークは少し悩んだようだが「そうだな」と言い死体のそばに穴を掘りだした。

お墓を作ろうと言い出したポニーだったが死体に触る事は出来ないでいた。

結局、ルークとチャドが穴にジョーの体を入れて近くの大きな石を墓標代わりにその上に置いた。

ポニーはその前に膝を着いて祈りの言葉を小さく唱えた。


墓標の向こうに私達のキャンプが小さく見えた。

五十メートルも離れていない。大きな声を出せば聞こえたかもしれない距離だった。

ジョーは私達に気づいて居たよね?

『もう少しだったのに』と思うと涙が出て来た。


昼近くに成ってようやく私たちはロントの後を追う事に成った。

あそこにジョーの死体が有ったのだからロント達に何かが有ったのでは無いかと私達は心配していた。

私はロントを追跡するようにクーちゃんに頼んだのだがクーちゃんはクルクル回るだけで進もうとしない。

ルークが「どうした? 」と私に聞いて来た。

「判らないわ、ロントが居ないのよ。」

昨日までは簡単に追跡出来たのに今日に成ってロントの行方を完全に見失っていた。

「居ない?」ルークが怪訝そうに聞く。

「クーちゃんがロントを見失った見たいなの」私は愕然としながら答えた。

ルークは少し考えてから「ハクメンは追えるか? 」と聞いて来た。

私は北東を指さして「こっちの方向よ、北に向かったはずなのに東にそれている見たい」

ルークは次に「ディックは? 」と聞いた。

私は南を指さして「こっちよ」と答えた。

次にルークは「ジョーは? 」 と聞いた。

私はまじまじとルークを見た。

ジョーは昨夜、死んでいる。

ルークは「探して見てくれ」と再度、私に頼んだ。

クーちゃんにジョーを探すように頼むとロントの時の様にクルクルと回って行方を掴めない様だった。

「ジョーは居ないわ」

私はどんな顔をして答えたのだろう。

クーちゃんが追跡できるのは生きている人だけの様だ。

私は初めてこの能力が嫌な能力だと思った。

ルークはパメラを調べる様に言った。

「パメラはこっちに居るわ」と私は西を指さした。

「最悪のケースは避けられたな」とルークはほっとした様だった。

オールバックはもう探せなかった。

安易に西に向かった人はすでに三人が犠牲に成ったのかもしれないとルークは言った。

「つまり西が一番危険な道って事? 」ポニーがロントに聞いた。

「多分そうだろう、しかしパメラが生きている以上、このまま放置は出来ない危険だが救出に向かおうと思う。」

ポニーと私は不安そうな顔をしていたと思うが何も言わず、チャドがルークの考えに賛成した。

私達はパメラの後を追った。

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