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精霊使いの異世界放浪記  作者: タバスコ
1/17

始まりの日

取り敢えず、書いて見ようと思い。書いて見ました。^^;

難しいですね書くのって。

拙い小説ですが書いた以上は発表したくて・・・ 

投稿させてください。


宜しくお願いします。


 深夜だった。

天には数万の星々が輝き、星の輝きで回りは妙に明るかった。

北にはその星に届くかと思うほどの高い山脈が連なり空を暗く区切っている。


周りは森。

高い針葉樹が立ち並び広大な大地を緑で埋め尽くしている。

広大な森の一画にポッカリと穴が開く様に空き地があった。

そこには不思議な建物が建っていた。


ピラミッドを上下に半分に切断し上半分を取り除いた様な建物と言いえば良いだろうか。


基底部は一辺が二十五メートルは有るだろう高さは二十メートル近く在りそうだ。

窓も無く入口もない石組みの建物は三十メートル級の木々に囲まれており上空から見なければ、その存在を見つける事は難しいだろう。


その夜も巨大なオブジェは森の浸食に抵抗しながらただ、そこにあり続けていた。

深夜の森は意外に騒々しい。獣の声や虫の声、風に揺れる木々の葉擦れの音。

その夜も森は弱肉強食の森の秩序を守りつつ、ある意味平和に過ぎていた。

だがその日は何時もとは何かが違っていた。

何かが満ちたのか。

あるいは星の運行の奇跡か。

何かが噛み合い。

何時もとは違う夜が誰にも知られずに訪れたのだ。


建物の南側の壁に四角い穴が開き、そこから男女がふらふらと歩み現れた。

人々が揃うと四角い穴もいつの間にか消え元の壁にもどると、

一人二人と正気を取り戻した様に周りを見回し始めた。

その数は十人。


 頭の中の泡がはじけた様に感じた。

そのとたんに視界が開け周りが見えた。

正面には三十メートルは有りそうな高い木々が起ち並び、周りには同じように今しがた気が付いた様に周りを見回す人々、後ろには大きな石の壁


訳も分からず混乱していると周りの話し声が聞こえて来た。

「ここは何処だよ」

「なぜ、こんな所に居る」

数々の疑問に答える人はいなかったが一人の男が両腕を広げて「オウル」と呟くのが聞こえた。

金髪のイケメンだ。

身長も百八十センチ近いだろう彼の広げた右腕にシルバーメタリックのフクロウが現れた。

フクロウが飛び立ち夜空に舞い上がると木々の上に飛び出しグルグルと旋回すると北に向かうが直ぐに表れた時と同じように唐突に消えた。

金髪のイケメンは周りを見回すと誰にとも無く言った。

「オウルを飛ばして周りを見たけど人の気配な無かった。北側に大きな山脈が有ったのは確認したよ」

「オウルってのは、さっきの銀のフクロか?」

栗色の髪の毛の巨漢の男が質問した、四角い顔で笑うと安心感がありそうだ。

「ああ、そうだ因みに俺はロント、あんたは?」

巨漢の男は少し考えてから困った様に苦笑いし「判らない」と答えた。


 皆で自己紹介しようと成ったが半数以上の者が自分の名前も思い出せなかった。


全員の認識としてここに居る以前の記憶が全く無いのだ。

断片的な記憶は有るが時間的な繋がりが無く最近の記憶か幼い時の記憶かも判らない

判っている事は皆、ロントの様に不思議な生物を宿している事だった。


自己紹介の代わりにお互いの精霊(皆でそう呼ぶ事にした)を出し合い判っている事だけでも話す事とした。

その中で皆の期待を集めた精霊がいた。

そいつはチャドと名乗った。

額が広くギョロリとした目が特徴的な背が低い男だった。

精霊名はウィング。

馬の脚にゴリラの体、両腕は鳥の翼を持ち頭が無い不完全なキメラの様な精霊だった。

この精霊の能力は『飛行』、この精霊はチャドと一緒に空を飛ぶ事が出来るらしいのだが


「無理だよ、たぶん将来的には走ったり飛べたりしそうだけど、今は無理・・・ こいつにどう命令したら良いのか全然判らないし、そもそも話が通じるのかよ?」

確かに皆同じ気持ちだった。


僕の名はディック、身長は百六十五センチ、ブレザーと紺のズボンに皮の靴。多分学校の制服だろう事からここに来る前は学生だろう。精霊はゴル、全身金色のカナブンに人の手足を付けて二足歩行が可能な甲虫って感じだ、身長は百二十センチ程でカナブンなら飛べるかと思ったが羽は無い模様

能力は『フェイクライフ』 テニスボール位の大きさの範囲内に偽りの生命を宿らせるらしいが具体的にどう役に立つのか全く分からなかった。


もっと自己紹介に時間が係るかと思ったが皆、記憶が判然とせず話す事の少ない様子ですぐに自己紹介は終わってしまった。


 女子達は寒い寒いと言いながら一つに固まり男達は壁にもたれて休んでいた、ロントはそれからも数回、オウルを飛ばし周りの確認をしていた、四角い顔の巨漢の男(彼は自分の名前をルークと自分で付けた)は何とか壁を登れないかと試していたが直ぐに諦めた様だった。


そして周りは白み始めて最初の朝日が昇り始めた。

ロントが立ち上がり皆に向かって話し始めた。

「さて、日も登ったしこのまま此処で座り込んでいてもラチが開かない,今後の方針を決めないか?」

周りを見回したが誰も文句は無さそうだった。

「俺は此処からの脱出を提案したい。オウルを飛ばして判った事だが周りには人家も無いし救出を待っても無駄だと思う。」

ルークが手を挙げて発言する。

「俺たちが此処に居るのは誰かの何らかの意図があっての事じゃないのかな? ならば数日は此処に留まってそいつ等を待った方がいいんじゃないかな。」

「もし、誰かの意図が有ったとしても記憶も曖昧な俺たちを放置している今の状態を考えろよ、そいつ等には悪意しか感じないよ、そいつ等を待つなんて冗談じゃない。」ロントはやれやれと言わんばかりに大げさに手を挙げて嘆く振りをした

「俺たちを此処に放置した奴らに捕まる前に脱出すべきだと思うわけよ」

どうだと言うように周りに同意を求めるが皆考えが纏まらないようだ。

女子の一人、確かドミニクと名乗った銀髪の少女が立ち上がりロントに言う。彼女も学校の制服だろうか僕とは違うデザインだがブレザーとスカート姿だ。「脱出って簡単に言うけど昨夜は獣の声も聞こえたし周りには民家も無い訳でしょ、安全に脱出出来るの?」

ロントはしゃがむとおもむろに手近かに有った石ころで地面に地図を描き始めた


地図には北に山脈があり山裾から南へと幾筋もの川の支流がある。

それが何かにぶつかる様に西に方向を変え一つに纏まって途中から南へと大きく曲がりながら流れている様子が書かれていた。


「ここから西に向かえば川がある。

それを辿ればいつかは人の住む場所までたどりつけるはずだよ」ロントは自信あり気に皆に言うと「体力が有る内に早く脱出を試みた方が良いと思うぜ」と言ったが皆の反応は冷たかった。


ドミニクは「川が有るのは判ったわ。でも私が聞きたいのは安全対策よ。移動するにしても一日で脱出出来るとは限らない訳だし、食べる物や寝る所を確保しながら川下りが出来るの?」

ルークは「何も判らない状況で安全を保障出来る奴なんていないよドミニク」とたしなめる。


「川に出れば食糧の確保も出来るさ、寝床はその場で作れば良い」

ロントは楽天的に言うが皆の反応はまだ迷っているようだった。


ルークは此処で数日留まってサバイバルに慣れて十分に準備してから脱出すべきだと主張し話し合いは纏まらなかった。


 時間ばかり過ぎてそろそろ昼になろうとしたが結論は出なかった

皆が焦りだしたころに一人の男が立ち上がり皆に宣言する。

黒髪をオールバックに纏めている三十代の男だった名前は憶えて無いらしく僕たちはオールバックと呼んでいた。

精霊の名前も判らないそうだが能力は『パワー』、宿主の身体能力を数倍に向上させる能力らしい。


「俺は一人で行かせてもらうぜ」と言うとさっさと西へと歩きだした。

ルークが止めたが手を肩の高さに挙げて左右に振りながら「じゃあな」と言って歩き去って行った。

すると同じく背の高い男も立ち上がった彼も名前を憶えていなかったが精霊名のハクメンを名乗っていた。

精霊ハクメンは鹿の体に狒々の頭を持ちその顔色は真っ白だった。

紫色の長い舌を出して自分の目玉を舐める仕草で女子達に悲鳴を上げさせて楽しんでいる悪趣味な面を持つ。

能力は『英知』、とても賢そうな精霊には見えないが能力を発動すると範囲内で一番の知恵者に成るらしいが残念ながら会話は出来ない。


スポーツマンタイプの彼はリーダー候補として皆から期待されていたが彼も単独行動を主張して北へと向かい去って行った。


仕方なくロントは意見の集約を諦めたのかロントに賛同する者だけで脱出する事にした。


ロントに付いていくのは背の高いヒョロリとした男、ジョーと名乗った。

確か精霊はシャドー全身がぼやけた黒いガス状の精霊だったと思うが彼がロントに着いて行くと言った。

もう一人、僕たちはクィーンとあだ名を付けた金髪美人パメラも付いていくと言った。

彼女の精霊はおそらく僕たちの中で最も強いと思う。

自己紹介の時に彼女は精霊を出したのだがその精霊は植物型の精霊だった。

本体の根は彼女の中に残したまま、その触手とも言える棘の付いた蔓を黒々とした小山の様に出したのだが、それを見た精霊たちが一斉に宿主の中に逃げ込んだのがその精霊の実力を物語っていた。

もちろん僕のゴルも飛び込む様に僕の中に逃げ込んだのは彼の名誉の為に忘れるようにしようと思う。


ルークと行動を共にするのはチャドとドミニクそれと青地に白い水玉のワンピースを着ていて明るい栗色の髪をポニーテールに纏めた目立たない感じの女の子。

名前は判らないと言っていたが精霊はアゲハ蝶の様に見えた。


僕が一人で行くと言ったら皆は意外な者を見る様に僕を見た。

ルークとロントは僕を誘ってくれたが僕は一人が良いとさっさと南に向かった。

僕の様なチビが一人で森に入って遣っていけるとは誰も思わなかった様だが僕には自信が有った。

それは僕にある記憶の断片だ。

学生のはずの僕だが何故かサバイバル知識が僕には有った。

 その知識では森林地帯の熊を始めとする大型生物が群れを作らないのは一度に群れを維持できるほどの食糧を手に入れる事が難しいからだ


群れを作れるのはオオカミや人間の様な高い社会性が無いと効率的な狩りが出来ない。

その為に多くの大型の獣は単独行動を取る。


ロントやルーク達を見ていると纏まりがなくとても効率的な狩りが出来るとは思えなかったし僕の知識を共有しようと思ってもリーダーが上手く運用出来そうに無いと判断したからだ


それなら皆には悪いが単独行動の方が、気が楽で良いと思った


 しばらく南に歩いていると脱水症状だと思うが左の側頭部が痛い。

途中で見つけた水苔を地面から剥がして手で包み絞る様にして水分補給したが全く足らなかった。

腐った倒木の皮を剥がして中にいた何かの幼虫を食べたりしながら移動していると森の開けた場所にベリーの木が群生しているのを見つける事が出来た。

貪る様にベリーを食べたが酸味が強よく一度に沢山は食べられなかった。

贅沢は言えないだろう。

ポケットの中にもベリーを詰め込んだ後、更に南へと向かう。


僕が南へと向かった理由は最初にオールバックが西に向かったからだ。

恐らくは彼もサバイバル知識が有ったのではないかと僕は思っている。

そうじゃないと記憶もない状態でこんな森林地帯を単独行動しようだなんて誰も思わないと考えたからだ。

僕だって此の知識が無ければルークなりロントなりの仲間に成っていたと思う。

西に向かったオールバックがサバイバル知識を持っているなら恐らくその後を追っても食べ物はもう彼に独占されていて手に入れられない可能性が高い。


 ある程度南へと向かいそこから西に方向を取り川に出る積りだ。

しかし、ロントの様に直ぐに脱出を試みるのではなく僕は僕の精霊ゴルの事をもっと理解しようと思っていた。

この森を脱出するカギはゴルにあると僕は思っているからだ。


手の届く枝に鳥の巣を見つけた。

中は空っぽでもう使われて居ない様子だったので鳥の巣を手に取ってみた。

少し湿っていたので頭の上に乗せて乾かしながら移動する事にした。

夜には火が必要だがその穂口に使うのに丁度良い。


たいして進んだとは思えなかったが早い目に寝床の準備を始める事にした。


大きな木の周りに拾った枝を扇状に掛けその上に枯れ葉を敷き詰めた。

簡単な物だが雨風は凌げるだろう。


次に火の準備に取り掛かった。

鳥の巣は何とか乾いていたので一安心だった。

擦切り方式で火を起こそうとしたが力が足らす上手く行かない。

仕方なくゴルに手伝わそうとしたが上手く意図が伝わらす時間ばかりが過ぎて行く。

手取り足取りして何とか手伝わせる事が出来た時にはもう真っ暗だった。

それでも小さな炎を手に入れる事は出来た。

炎を見ていると安心感と今後の自信が沸き上がって来た。

こうして最初の一日が過ぎて行った。


 野生動物は火を怖がる習性がある。

また夜行性の獣は特に夜目が効く分、炎の明かりと周りの暗闇との差があり過ぎて炎の周りが見えにくい。

焚火の匂いに依って獲物の匂いが判りづらくなるなどの理由で焚火の周りには近寄らないはずだ。

ささやかな自己防衛だがそれでも焚火を切らす訳にはいかない。

昨夜は確かに獣の声を聴いたのだから。


焚火は放っておくと二時間と持たずに消えてしまう為、僕は基地の前で焚火の番をしながら夜を明かす事にした。

ゴルは僕の隣でおとなしく一緒に焚火を見ている。

何度か薪をくべて火のお守をしながら昼間に摘んだベリーの実を食べた。

薪がパチパチと爆ぜる音や森の梢が風に揺れる音を聞いていると無性に眠く成ってくる。

何とか耐えようとゴルに話しかけた。


ハクメンが何故北へ向かったのかとかルークの事やロントの事を話したがもちろん返事も無いし相槌も無いけど一人で喋っているよりゴルに話しかける方がずっと良い。


何時の間にか話す事も無くなりただお互いを見つめあっていた。

黙って見つめているだけだが何かが伝わる様な気がしていた。


昨夜、ゴルがクィーンの精霊を見て僕の中に逃げ込んだ時、確かにゴルの恐怖を僕も感じた様に思う。

僕たちは何処かで繋がっていてお互いの気持ちを理解出来るはずだと僕は思っている。


それは単純な言葉では無いのかもしれないが、きっと分かり合えると信じたい。


明け方近くになってうつらうつらとしているとゴルに起こされた

焚火の火が消えかけているので慌てて薪を継ぎ足した。

繰り返し同じ行動をしているとゴルにも何を遣っているのかが判るようだった。


昨日摘んだベリーは夜中にすべて食べてしまったので朝食は抜きだ。

基地を出てまた南に向かって進む事にした。


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