899 発見した
「いくわよっ! 大精霊奇襲アタァァァック!」
『ギャァァァッ!』
「ふんっ、ケツアゴにウォシュレットを喰らわせてやったわ、どうかしら?」
「どうかしらって、飛び散った水で周囲の敵が反応し始めたんだが?」
「あら、本当ね……ちょっ、何か飛ばしてきたんだけどっ?」
「ヤバいっ! アレは不潔系の攻撃だっ、早く『水洗』しないと大変なことになるぞっ!」
「ひぃぃぃっ! 汚い汚い汚いぃぃぃっ!」
早速ピンチに陥る精霊様、というか俺達全員が敵の不潔系攻撃に暴露してしまうかも知れない、パーティー全体の危機である。
いや、そもそもこの敵は普通の敵であって、元々ターゲットに選定していたレアモンスターではないのだが?
この時点で既に、精霊様を反省させることが出来そうな気がするのだが、そうではなかろうか。
と、どうにかこうにか敵の攻撃を全て『水洗』し、清潔さをキープすることに成功した精霊様は、やけに威張り腐っている様子だ。
どうやら自分の実力が認められて、俺達がそれを賞賛するのを待っている様子だなこれは。
もちろん精霊様が強いのは誰もが知っているし、今更どうこう言うようなことではない。
そして、今のは明らかなやらかしであり、普段であれば俺からの拳骨、または尻叩きが飛んでいるような戦いぶりであったのだが……本人はそうは思っていないらしいな、普通に大成功、大勝利を収めたと言わんばかりの態度である……
「どうかしら私の実力は? 思い知ったでしょう、あんた達は私の力がなければ何も出来ないの、私が唯一無二の神、最強でありそして崇高な存在なのよ」
「ご主人様、どうして精霊様はこんなに威張り散らしているんですか?」
「シッ、カレン、余計なことは言わなくて良いからな、精霊様万歳! ここは精霊様の世界だぁぁぁっ!」
『精霊様万歳! 精霊様万歳! 精霊様万歳!』
「よろしい、では次の討伐に向かうわ、付いて来なさいっ」
『へへーっ、精霊様万歳!』
サルも煽てれば木に登るし、精霊様は煽てれば粋がって戦いを進めるようだ、普段からこうであればかなり便利な存在なのだが、この態度である以上は戦闘中以外の鬱陶しさが際立ってしまうため、このままではいけない。
で、そこからは次々とケツアゴウ○コを潰していくのだが……レアモンスターの類などまるで、1匹たりとも出現しないではないか。
ポイントが悪いのか? それとも時間帯が悪い、潮が悪い……のは釣りではないから関係がないか、とにかくケツアゴウ○コ以外が一切ポップしないのは確かだ。
きっとこkではない、どこか別の場所へ移動しないとならないのであろう、もしそうでないとしたら、レアモンスターである、ケツアゴーストとケツアゴールドでさえも、相当に低確率でしか出現しないということになってしまう。
そして、その2種類がそこまで低確率だというのであれば、それよりもさらにレア、プレミアムな存在である『ハイエーテルケツアゴ』については、本当に、めったなことでは出現しない、役満級のケツアゴであるということが言える。
そんなプレミアムなケツアゴを、このままチマチマと探していかなくてはならないのか、その可能性があると思うだけでゾッとするし、やる気がガリガリと削がれていく。
せめて場所が悪いとか、そういう理由でレアモンスターが出現しないのであって欲しいが……とりあえず移動してみることとしよう、そうするのが現状最も有効な策であるように思える……
「はいはい精霊様、この辺りの討伐はね、もうそろそろ良いかなって思うんだよね、そろそろ次の場所で、その凄まじい力を見せて欲しいと思うんだよね、どうかね」
「……揉み手なんかして気持ち悪いわねぇ、自分で自分の顔面を殴りなさい」
「ハイ喜んでっ! ぶべぽぉぉぉっ!」
「キャハハハッ、面白いわねぇ」
「後で絶対に仕返ししてやる……」
調子に乗る精霊様、それを許さないのは俺だけではないと思うのだが、この精算に関しては後回しだ。
まずはその精算をするべき対象、つまり精霊様を、キッチリ正気に戻してやる必要があるためである。
いや、精霊様は良いとして、今の俺の姿を見て、ケラケラと笑っていたのはルビアとマーサ、この2人には早速精算をして貰わなくてはならないな。
ということでまずは素早さの低いルビアを捕らえようと、バッと襲い掛かった俺に対して……ターゲットのルビアが硬直し、膝をガクガクと震わせたではないか。
いや、そんなに恐かったのか? 俺が襲い掛かり、捕らえられ、鞭で尻をシバかれることなど、ルビアにとっては日常茶飯事であるはずなのだが。
……と、ルビアが見て怯えているのは俺ではない、その後ろのようだ……もしや精霊様の不興を買ってしまったのかと、ゆっくり振り返ってみると……特に何もないのであった。
「何だ、どうしたんだルビアは?」
「だ、だって……ご主人様の後ろにオバケが……でも漏らしていませんよ、私、ちょっと強くなったんです」
「おう、それは結構なことだが……オバケはどこだ?」
「勇者様、見えていないのね、かわいそうに」
「え~っと、じゃあミラちゃんがここ、ジェシカちゃんはここに移動して下さい」
『ひぃぃぃっ』
「で、この3人の視線の先が交わる場所がオバケの居場所です」
「でかしたぞマリエル、良くわからんが賢い作戦だ、で、そのオバケってのは……そうだ、この対幽霊専用武器に持ち替えてっと……なるほど、ケツアゴの霊じゃねぇか、しかもコレ、NPCじゃねぇな、リアル幽霊だ」
『ケ~ツ~ア~ゴ~や~っ』
「わかってるわそんなこと、死んだならサッサと成仏しろよな」
『せやかてお前、俺元々こういう存在やんな、わかる?』
「あ、そういう感じのノリなんだ、でも消えろよ鬱陶しい」
『……あかんわコイツ、ハゲより性質悪いやんな、ダルいわこれ』
「いやお前に言われたくねぇよ」
「あ~っ、はいはい、ちょっとそこ、同レベルの馬鹿同士喧嘩しないで欲しいですのっ!」
『うっさいわボケェェェッ!』
「何かキレられましたわね……」
突如出現したわけのわからない幽霊、喋り方が意味不明なのだが、これはナチュラルにこういう方言なのではなく、誰かに習って、これが面白いと思ってやっているだけのニセモノなのであろう、本場の人が聞いたらたこ焼きでも投げ付けられそうな程度のクオリティである。
で、その馬鹿ケツアゴ……の幽霊なのだが、ひとまずレアモンスターである『ケツアゴースト』であることは確定のようだ。
ようやく現れたその理由は定かでないが、この感じを見ると、あの幽霊の森や墓地、館で討伐してきた、元々俺達が居た世界を中心に連れ込まれた幽霊とは一線を画す存在であるらしい。
かといってボスキャラのような、そのために用意されたケツアゴというわけでもなく、どうやら『ケツアゴ世界』において死者をゲットし、ここに連れ込んだ様子。
つまりホンモノの幽霊であることはもう間違いない、喋り方は完全にニセモノなのだが、幽霊であるという、その事実は真実であるということが確定した状態だ。
で、コイツを討伐すると何か良いことがあるのかというと……先程のエリナの話の中にはなかったようだが、ケツアゴールドのように砂金が手に入るわけでもないし、何も得しないのではなかろうか?
とはいえ、このまま放っておいたとしても鬱陶しいし、本当にその方言を話す、ネイティブの方々にも迷惑になってしまいかねない。
だから殺そう、いやもう死んでいるのか、ならば消滅させてしまうこととhしよう、もちろん精霊様がやるのだが……
「ほら精霊様、そこに幽霊が居るぞ、軟弱な俺達は呪いが恐くて手が出せないんだ、力を貸してくれっ!」
「あらあら、あんた達、幽霊なんかにビビッて……ジェシカちゃんなんかおもらししているじゃないの」
「あっ、ジェシカお前! ちょっとは大丈夫になってきたと思ったのにっ」
「すすすすっ、すまない、しばらく見ていないとその……何というか慣れた感じが薄れて……」
「もう今度から幽霊と同衾しておけよ、常にな」
「それだけは勘弁してくれぇぇぇっ!」
おもらししながら正座し、反省しているジェシカに対して、上から目線でとやかく言っていると、その間に精霊様はケツアゴの幽霊、ケツアゴーストを討伐してしまったようだ。
消え行くケツアゴ、成仏したのか、強制的にこの世から排除されたのか……おそらく後者なのであろうが、とにかく危機は去った、そして精霊様は経験地を得たのであった。
これでこの場所においてもレアモンスターが出現するということはわかったのだが、その確率が極めて低いことも同じく判明したかたちである。
これは相当に気合を入れて、基本の雑魚であるケツアゴウ○コを討伐し続け、どうにかして目的の敵キャラ、ハイエーテルケツアゴをポップさせないとならない……
※※※
「ハァァァッ! 連続投石アタァァァック!」
『ギョェェェッ!』
『ギャァァァッ!』
『以下省略』
「凄いっ! リリィちゃんはホントに上手ねっ」
「新記録ですっ、一撃で27匹もやっつけましたっ!」
「27匹って、そこまで数を数えられるのも凄いです……」
「おいコラ、それはカレンがお馬鹿なだけだぞ、もっと勉強しなさい」
「うぅっ、余計なことを言ってしまいました……」
精霊様だけに頼ることなく、一般的な雑魚キャラであるケツアゴウ○コをガンガン討伐していく仲間達。
もちろん参加するのは遠距離からの攻撃に向いた仲間であるセラとユリナ、楽しんで投石がが出来るカレン、リリィ、マーサの5人だけだ。
俺は今のところやることがないため、比較的頑丈な椅子を使って、やることがなくて手持ち無沙汰なサリナの尻尾を弄り回して遊んでいる。
ミラは疲れたようで寝ているし、それに釣られたルビアものんびりと過ごしているし、あとはマリエルなのだが……精霊様に付き従って何かしているようだ、まるで信者のようだな。
「……なぁサリナ、マリエルは大丈夫なのか、あんな感じで?」
「どうでしょうか、一応権力欲に支配される術式は、私と姉様、もちろんマリエルちゃんにも掛かっていますから……人族の身だとそれを弾き返すのは厳しいかもですね」
「つまり、マリエルは耐えてはいるものの、若干その影響下にあると、その可能性が高いということだな?」
「そうなります、あとご主人様、もっと尻尾の先端の方を……あうっ……」
俺がサリナで遊んでいると、リリィが持っていた小石を投げ尽くした3人が戻って来た。
どうやらレアキャラを引き出すことは出来なかったらしい、皆一様に残念そうである。
特にマーサ、これは上手くいくのであろうと、小石を投げ続ければ、きっとレアな敵が出るのであろうと思い込んでいた頭の悪いウサギが、一番ショックyを受けている様子だ。
で、それに反応したのがマリエルであった、いつもマーサを可愛がっているのだが、今回も泣きそうなマーサに反応して、付き従っていた精霊様をポイ捨てしてこちらへ向かったようだな……
「大丈夫マーサちゃん? 勇者様にいじめられたのかしら? 最低ですよ勇者様、許し難いですっ!」
「ちょまっ、俺のせいにするんじゃねぇよ、なぁマーサ」
「え~んっ、このアホのせいでレアキャラ出なかった~っ!」
「おぃぃぃっ!」
「ほら勇者様のせいじゃないですか、反省して下さいっ!」
「えぇ……ギョエェェェッ!」
マリエルによる制裁を受け、肉片人なってしまった俺は、それに気付いたルビアによる適当な治療で元に戻ることに成功した。
一方、俺に冤罪を仕掛けたマーサはこちらを見て笑っている、あいつめ、わざとやったのだ、後で、いやマジで落ち着いたら厳しいお仕置きを食らわせてやろう。
で、残りの戦闘メンバーは精霊様と、それからセラとユリナ、あとはドラゴン形態に変身し、狭い中で無駄に暴れ回っているリリィなのだが……やはり一向にレアキャラがポップする様子はない、どれだけレアだというのだ。
と、そこで出現した違う色のケツアゴ……頭にウ○コが乗っていないではないか、これは……金色だし、『ケツアゴールド』とかいう奴に違いない。
「おいっ、出たぞレアキャラが、目的の品ではないが、コイツは砂金を落とすんだろう?」
「そうみたいですっ、先程は幽霊の姿に危うくおもらしするところでしたが、今回は今回で、うれションしそうな勢いですっ」
「ミラ、あんたそんなこと言っているとお尻を叩くわよ」
「結構、ここは私に任せてっ、ハァァァッ!」
凄まじい攻撃、そのピポイントに集中しているから良いのだが、そうでなければこのゲーム世界が崩壊していた、いや、元の世界もタダでは済まなかったであろう強烈な攻撃。
それを放ったミラは、反動で動けないほどに消耗してはいるものの、特に怪我などはないらしい。
今のは凄まじい攻撃である、金に目が眩んだ、自らも、そして周囲も一切省みない最低の攻撃である。
で、そんあ攻撃を喰らったケツアゴールドは……なんと、金の延べ棒に変化しているではないか。
砂金をドロップするどころか、凄まじい価値を持つ24金の延べ棒、そんなものがどうしてアイテムとして出現したのかはわからない、だがおそらくは……
「勇者様、この敵はオーバーキルすればするほどに、ドロップする金の量が増えて、それなりのものになるようです」
「ほう、じゃあさ、精霊様も含めた俺達全員で、全力の攻撃を喰らわせたらどうなるんだ? もちろん一撃でな」
「その場合はおそらく……50メートルの公式プール、およそ3杯分の金がゲット出来ますね」
「この世の全てじゃねぇかっ! よし、精霊様の件はちょっと保留だ、あのゴールデンケツアゴ? じゃねぇ何だっけ、とにかく金の奴を捜すぞっ!」
『うぇ~いっ……何か趣旨が変わりすぎているような……』
とにかく、精霊様がどうのこうの、この世界がどうのこうのより、必要なのは金であり、文字通り『金』なのである、大変に貴重で、不変的な価値を持つ品だ。
そんな金塊のような、というか金塊を吐き出すケツアゴを捜索すべく、俺達はマップの中を行ったり来たり、時折ケツアゴウ〇コの塊を消滅させながら移動する。
なかなかレアキャラが出現しないな、先程ケツアゴ―ストらしきのは1匹見つけたのだが、それはミラが怖がる前に、セラがスッと討伐してしまったのでもう居ない。
ちなみにそのゴーストからはたいしたアイテムもドロップしないようで、ほぼほぼ単なるウ〇コと同等の収穫しか得られないのがわかってしまった。
で、さらにしばらく捜索していると……何やら儚く輝くケツアゴが、ボヤボヤと行き先の方に出現したではないか。
クソめ、奴もゴールドではないようだな、あんな奴に構っている暇ではないが、一応討伐しておくこととしよう。
「ほら精霊様、あっちの変なケツアゴもブチ殺すんだ、経験値だし、倒せば皆から賞賛されること間違いなしだぞ」
「ふふんっ、あんな奴、ここからでも一撃で屠ってあげるわ、それっ……あら? 外れちゃったじゃないの……」
「おいおい勘弁してくれよな、最強の、無敵の精霊様なんだろう? 世界を統べる存在が、あんな雑魚そうな奴への攻撃を外すなんて恥ずかしいっ」
「あの、勇者様、アレって……」
「どうしたマリエル? あの儚げなケツアゴが欲しいのか? 捕獲して家で飼いたいのか?」
「いえそうじゃなくてですね、ほら、いきり立って突っ込んで行った精霊様が……」
「ヒギィィィッ! 痛い痛いっ! ギブッ! もう無理、触らないでぇぇぇっ!」
「……あっ、もしかしてアレが当初の目的だったあの……何だっけ?」
「ハイエーテルケツアゴ、とかいうレアモンスターですね、精霊様が普通に負けています」
攻撃を外しただけかに思われた精霊様だが、実は外したのではなく、一切効果がなかっただけのようだ。
そして接近し、直接的な攻撃を仕掛けようと試みたところで、無様に捕まってもがいているのが現状である。
まぁ、ダメージの方は想定通りそこまで大きくないようだが、ケツアゴのケツ部分が精霊様の顔に近すぎ、それによる圧迫感と精神的なダメージが凄まじいものであることは容易に想像することが可能だ。
しかも全力を出しても『精霊系統の攻撃が一切無効』であるそのレアケツアゴに対しては、精霊様の行動の全てが無効化されてしまうため、抵抗することそのもの自体が無駄な状態。
そして関節をキメられ、しかもケツアゴを彩るジョリジョリの無精髭でジョリジョリされ、ついでにベタベタと全身を触られまくっている。
これがキツくないと言えば一体何がキツいのであろうか、そう思ってしまうほどのキツい目に、今現在精霊様は遭遇しているのであった……
「ちょっとあんたたちっ、見てないで助けなさいっ、ほら、私のために働きなさいっ」
「わかりました……あれ?」
「ちょっと待てカレン、精霊様だぞ、あんなのは『ちょっと面白いネタ』に決まっている、本当はあんな敵楽勝で始末することが出来るんだ、それをあえてしないで俺達を笑わせてくれているんだよ、わかるか?」
「えっと、つまり……どういうことですか?」
「指差してゲラゲラ笑ってやるのが正解だってことだよ」
「わかりましたっ!」
ここで全員、気持ちの悪い、淡い輝きを放つ儚げなケツアゴによって拘束され、継続して(精神的)ダメージを与えられ続ける精霊様を笑ってやる。
まぁ、あと数時間、いや数日間はこのままでも大丈夫であろうし、ここは精霊様の目を覚まさせ、俺達の存在にたいして深い感謝の気持ちを植え付けるため、心を鬼にして放置するのだ。
で、当の精霊様は……何やら怒っているようだが、状況が状況だけに言葉になっていない。
ちょうどユリナとサリナがテーブルセットを用意していたため、そこに席をひとつ借りて座らせて頂く。
まぁ、この光景をしばらく眺めておくこととしよう、少し休憩もしたかったし、何よりも精霊様が雑魚キャラ如きにヤラれているのは、それこそ神罰の類だと言って良いものだからな……




