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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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884 再チャレンジ

「よっし、じゃあすぐに村で情報収集だ、前回あまり話し掛けてみなかったケツアゴNPCを中心に回るぞ」


「ちょっと待って下さい勇者様、私達、このスタイルで村を回るんですか? 素っ裸なんですが……」


「当たり前だ、いや、しかしまぁミラは年齢的にちょっとかわいそうだな、じゃあミラだけはバスタオルで、ルビアとジェシカは罰として素っ裸のまま村を回る、それで良いな?」


『へへーっ! 承知致しましたっ!』


「よろしい、では出発する」



 3人の暴走によってゲームオーバーとなり、セーブポイントからの全裸リスタートを切った俺達。

 俺だけは衣服を見つけて着用し、年齢的にアレなミラはバスタオル、残りの2人は素っ裸のまま、ケツアゴNPCだらけの村へと繰り出す。


 はみ出しそうなおっぱいを必死で隠すミラ、攻略目標である幽霊の森へ行くのは素っ裸でも構わないと考えていたようだが、NPCとはいえ人間のような形をしたケツアゴ村人にその姿をジロジロと見られるのは、さすがに耐え難いといった感じなのであろうか。


 ルビアとジェシカは手で隠してこそいるものの、比較的堂々としているのだが……と、それについては今はどうでも良い、とにかくNPCから情報を集めるのだ、まず向かうべきは……



「ご主人様あっちです、新しくあっちの家が燃えたみたいですよ」


「おう、呪いのせいだなこりゃ、また人集りが出来ているし、そっちに行ってみようか」



 この世界における時間ではあるが、ミッション開始から1日経過してしまっているため、幽霊の呪いによってさらなる被害が生じてしまっていた。


 まぁ、どうせ死亡したのはケツアゴNPCであり、死んだところで現実世界に何か影響があるとは思えないし、もしあったとしてもどうせ死ぬのはケツアゴの何者かだ。


 これについて特にショックを受けたり、残念に感じたりする必要は一切ないのである。

 で、今回も焼け跡と、それから焼け死んだと思しきケツアゴの死体の周りに集る生存しているケツアゴから話を聞いていく……



「おいケツアゴ、お前何か知っているか? おいっ」


『かわいそうに、この家には60代の母親と、そろそろ40になるが全く働かない息子が居たというのに、こんなにも早く呪いの犠牲になるなんて』


「いや片方全然かわいそうじゃねぇだろ、で、幽霊を倒すにはどうしたら良いんだ? 攻略法とか攻略アイテムとか、そういうのあるんだろう?」


『かわいそうに、この家には60代の母親と、そろそろ40になるが全く働かない……』


「チッ、コイツはハズレか、はい次の方」


『全く、祭壇にある伝説の除霊剤(粉末タイプ)さえあれば、森の幽霊ぐらいどうとでもなるのに』


『おいおい、あの除霊剤は混ぜると危険なんだ、揺らすと爆発するし、触れるだけで死に至る、迂闊に手を出して良いものじゃないぞ』


『誰か、誰かあの除霊剤を使える勇者が居れば、例えば異世界から来たみたいな』


『あぁ、異世界勇者だったらあの除霊剤が使えるかもな、ミスって死んでも別に構わないし』



 1体のケツアゴNPCから連続で話が進む、これはイベントが進行していると考えて良さそうな感じだ。

 というか、NPCの全てが話し掛けた俺の方ではなく、素っ裸のルビアとジェシカをガン見しているのだが、それは大丈夫なのであろうか。


 まぁそれはともかくとして、進んだストーリーと建ったフラグ、それをさらに追求するため、どんどんNPCから話を聞いていく。


 そしてわかってきたこと、それは幽霊に対抗するためのアイテムである『除霊剤』とやらは、この村の外れの祭壇に奉納されているのだそうな。


 当該『除霊剤』は大変に危険なものであり、先程のNPCの話の中にもあったのだが、爆発したり猛毒のガスを出したり、混ぜるとどえらいことになったりと、とにかくその辺のモブに使えるアイテムではないとのことだ。


 そう考えるとリアルにヤバいのだが、その『除霊剤』をゲットし、使わないことにはどうしようもない。

 もちろん獲得のためにはそれなりの行動を取らなくてはならないはずだが、とりあえずチャレンジしてみることとしよう……



「よし、じゃあ村の外れだな……って、どっちの外れなんだ?」


「わからないが、とにかく村をグルッと回ってみればどうだろうか?」


「その格好でか? まるで全裸引き回しの刑だな」


「そ……それはどういう……いや、わかっている、というか期待していたことだ」


「ご主人様、縛り上げて下さい、その方が引き回し感が出て非常に良いと思いますよっ」


「しょうがない奴等だな……ミラはどうする?」


「ぜひお願いします」


「変態の極みだなお前等、まぁ、喜んでそれをやる俺もどうかと思うがな、ヒーッヒッヒッヒッ」


「一番変態の人が何か言っていますね……」


「しかも超キモいぞ主殿……」



 ということで3人を縄で縛り上げ、村中引き回し感を出しつつ村の周囲を捜索する。

 ミラはバスタオルを装備しているのだが、その上から縄で縛った姿は余計にエッチである、規制必至の光景だ。


 というか、武器だの防具だの、それから衣服だのはそう易々と手に入らないにも拘らず、なぜか縄だのロープだの、縛り上げるためのものは容易に入手出来る……というか気が付いたら手の中にあるのだな。


 きっとこれは意図的であり、ニート神が俺の仲間の縛り上げられている姿を見たいと思ってこのような仕組みにしたに違いない。


 このゲーム世界はニート神が創造したものなのだから、その程度のことは自由自在に設定したのは明らかだし、それでそうなっているということは、もうそういうことである、そうなのはそうであると、もうとにかくそうなのだ。


 と、自分でも何を考えているのかわからなくなってきたところで、ひとまず祭壇の中を確認してみようと、ミラとジェシカが話を始めた。


 ちなみに俺とルビアは後ろでその様子を眺めている、いつものことだが、こういうことは賢さの高いメンバーに任せておこう……と、ここでひとつ、俺達の冒険とは関係ないことで気になってしまったではないか。


 俺と、それから精霊様のチーム、つまりここが今のメンバーで、精霊様のチームはマリエルに、ユリナとサリナの4人である。


 ここで考えてみよう、勇者パーティーにおいて超絶天才なのはこの俺様のみ、そして賢さが高いのは精霊様を筆頭に、ここに居るミラとジェシカ、それからユリナとサリナ、つまり12人の仲間のうち、およそ半分が天才ないし賢いということなのだ。


 で、残りの6人は……残念ながら馬鹿だ、非常に頭が悪い、というかむしろ何も考えていないとか、頭の中に脳味噌が入っているのかさえ微妙な者も居る始末。


 その6人のうち、俺達で引き受けているのがルビア、馬鹿でドMで、自分では何も出来ない、ひたすら命令待ちの人間なのだが、言われたことは文句を言いつつもしっかりやるし、実に良い子である。


 で、精霊様のパーティーで引き受けているのはマリエル、類稀なる馬鹿だが、王女さまだけあってそれなりに話はわかる、あと戦闘スキルも高い。


 ついでに言うとマリエルは『コネ』だの『財力』だのでパーティーに貢献している部分が多く、それで賢さが低い分を補っているといっても良いであろう。


 そしてその他、ここで紹介されなかった4人にも非常に良い部分があり、頭が悪いというデメリットは個々の能力で十分にカバーしている、カバーしているのだが……


 問題はその4人が固まって、というかその4人だけでひとつのパーティーが形成されているということだ。

 これは非常に拙い、今どうなっているのかはエリナパパのみぞ知ることだが、無事で、かつデタラメをしていないことを祈ろう。


 ……と、それよりも本題に戻ろう、ミラとジェシカが祭壇の中から運び出したのは謎の小瓶……ではなく樹脂製の缶のようだな、大きく、赤い文字で『混ぜるな危険』と書いてある。


 これは完全にアレだ、それこそ『混ぜるな危険』の洗剤だ……もちろんそれではないと思うのだが、ニート神の奴がどこかで見たその容器を真似て創造したのであろう、容器が薄緑色をしている時点で確定だ。



「どうでしょう勇者様、これが『除霊剤』でしょうか?」


「そう……なんじゃないかな? まぁ、『混ぜるな危険』以外に何らかの注意書きが……あった、『用途は底面に記載してあります』だってよ」


「普通そこじゃないとおもうんですけど……底だけに、あいてっ」



 くだらないダジャレを吐き出したミラには拳骨を喰らわせておき、無駄に底面に記載されているという用途を確認していく。


 確かにミラの言う通り、底面には本来消費期限とか、そのような情報を記載すべきなのだ、重要な事項であり、購入を決めるキッカケとなる用法用量なは、もっと目立つ場所に書いておくべきであろう。


 で、その底面の記載によると……『悪霊一発退散!』だの『水に溶かし、物凄く薄くしてご使用下さい(下手すると人が溶けます)』だの、それから『お子様の手の届かない所に保管して下さい』だの、宣伝文句と注意書きが一緒になって書かれていた。


 そしてルビアによると、中身の粉末からは凄まじい魔力、それから精霊様のような不思議な力を感じるのだとのこと、おそらく魔導の力や霊力など、現実世界で幽霊に対抗出来る力をそのまま持って来ているのであろう。


 粉末の入ったボトルは1升よりもさらに大きく、幽霊の森からボスが居る館まで、花さか爺さんの如く撒き散らしながら進んだなとしても量は十分であるはず。


 希釈しろとの記載だが、その注意書きは、無視して、超濃厚な状態で幽霊に対してブチ撒けつつ進んで行くこととしよう……



 ※※※



「ご主人様ぁ~っ、ホントにこんなので大丈夫なんですか~っ? あいては幽霊ですよ、恐い怖い、ホントに恐い……もうおもらししそうなんですが~っ」


「そうか、じゃあルビアはお仕置きだな、そして大丈夫だ、この『除霊剤』を信じるんだ」


「信じるんだって、このボトルがもう安っぽくて……ホムセンでめっちゃ並んでそうなビジュアルで……」


「俺もそうだとは思うが、文句は言わないように、俺が転移前に居た世界ではそのボトル、結構強力な薬剤の証だったんだぞ、ホムセンで買えるし、まぁ安くはあるがな」


「そんなこと言っても~っ」


「うるさいっ、ほら、もう一度森に入るぞっ」


「いやぁ~ん」



 嫌がるルビア他2名を無理矢理に引っ張り、幽霊の森へ二度目の突入を果たす……外のマップは昼であったが、やはりこのマップにおいては完全な真夜中。


 入ると、すぐにジェシカが悲鳴を上げて、幽霊がこの場に、確かに居るということが判明した。

 ミラもルビアもそちらをみて悲鳴を上げるのだが、3人共尻を引っ叩いたら大人しくなる。


 しゃがみ込んで、『除霊剤』のボトルを上に掲げつつガタガタと震えているミラ、俺にそれを受け取り、幽霊に向かって投げ付けてくれというのであろうか。


 だが俺には幽霊が見えないため、そう依頼されても何も出来ない、全く使えないキャラなのだ。

 ここは3人のうち誰か1人、どうにか立ち上がって幽霊に立ち向かって欲しいのだが……



「おい誰か立てっ! 頑張れっ、個々が正念場なんだっ、ミラ、ルビア、ジェシカ!」


「うぅっ、主殿……もう……漏らしました……ガクッ」


「おもらしして気絶してんじゃねぇぇぇっ!」



 水溜りを作りつつ、その場に倒れ付したジェシカ以外にも、ミラとルビアはそれぞれ勝手におもらしをしてひっくり返ってしまった。


 こうなったらもはや霊の見えない雑魚キャラの俺1人で戦う他ないのだが、どうしたら良いのか、どのようにしたら戦うことが出来、幽霊など討伐することが出来るのかわからないのだが……とにかく盛り塩でもしておこう。


 せっかく粉末状の『除霊剤』なのだ、これを盛り塩にしてしまえば、それこそ接近して、他人様の自宅玄関から乗り込んで来るような失礼な心霊にも対抗出来るのではないかということだ……



「ハァァァッ! 悪霊退散! 盛り塩マウンテンアタック!」


『・・・・・・・・・・』


「クソッ、何が起ってんのかまるでわからんぞ、おいルビア、お前が一番大丈夫そうだ、起きろっ!」


「……ん? あっ……私、おもらしして……お尻ペンペンでしょうか……」


「当然お尻ペンペンだ、だがその前にひとつ、幽霊はどうなった?」


「幽霊、幽霊は……凄いっ、粉々になってその辺に散らばっていますよっ、もう全部『討伐済み』って感じですっ」


「そうか、そこそこ効いているようだな、この『除霊剤盛り塩マウンテン(電池別売)』は」


「何なんですかそれ……凄くセンスなさげな見た目なんですが……」



 盛り塩がめっちゃ効いた、もちろん塩ではなく変な薬剤なのだが、とにかく効いているのであればそれで良い。

 ルビア以外の2人が目を覚ましたらすぎに移動しよう、もちろんこの盛り塩を掲げての進行だ。


 今の盛り塩で使用した薬剤はおよそ10分の1程度だし、このまま進んで3つのダンジョン、即ち森と墓場、館を攻略しても、幽霊対策としては十分であろう。


 まぁ、あまり効きすぎて、全く持って心霊現象の類が生じないというのは少しアレではないかと思うな。

 少しぐらいはこの3人をビビらせて、それに対する罰を与えるというかたちで、俺様の優位性を確立するための行動を取りたいところなのだ……



「よっしゃ、じゃあこの盛り塩メインで行くぞ、ルビアも、ミラもジェシカももう大丈夫だな?」


『う、うぇ~い……』


「じゃあ出発……と、その前に、全員おもらししやがったな、どこか安全に待機出来る場所で、かつ泉とかがある場所を探すぞ、そこで休憩しつつお仕置きだっ」


『うぇ~いっ!』



 ようやく、二度目にしてようやく森の入口付近から移動し始めることに成功した俺達、ひとまず休憩出来る場所を探し、泉(全回復する)の畔の安全地帯を見つけて、そこに腰を下ろした……



 ※※※



「ひぎぃぃぃっ! 痛いっ! 痛いです勇者様!」


「何だミラ、もう許して欲しいのか?」


「……いえ、もっとぶって下さい、お姉ちゃんにはナイショで」


「そうか、じゃあ今までの倍のパワーでお仕置きしてやるっ!」


「きゃぁぁぁっ!」


「ご主人様、私の番はまだですか?」

「主殿、私も尻丸出しの状態で待機しているのだが……」


「まぁ、少し待て、というか単に待っていないでちょっと仕事しろ、この先のマップを調べるんだ、さもないと盛り塩(移動式)でも対抗出来ないぐらい大量の幽霊に襲われるぞ」


『ヒィィィッ! そっ、それはダメなので頑張りますっ!』


「勇者様……お尻痛いです……」



 ミラにお仕置きしつつ、ルビアとジェシカにはマップの確認を進めさせる……というか森のマップはどこから出て来たのであろうか、まぁ良い、確認さえ出来ればそれで構わないのだ。


 そのまま十数分程度、そろそろミラも許してやろうかと思ったところで、ようやく残りの2人がマップへの進行すべきルートの記載を終える。


 どうやらどこが『出易い』のかはわからず、とにかく恐いのは嫌なので最短ルートを調べ、可能な限り早く目的地へ到達することが出来るよう考えたのだという。


 もちろん『何も起らなければ』最短のルートだ、何か起れば、というかそんな楽なルートがあることを創造者であるニート神が知っていれば、地獄のような追加ミッションの地獄が用意されているのであろうが……



「う~ん、とにかくそのルートで行くしかないか……と、ルビア、次はお前がこうなる番だっ!」


「いでっ……お尻痛いです……」



 ミラを退かし、次はルビアにお仕置きしつつジェシカと話をする……ちなみにジェシカは次のお仕置き待ちであり、全裸で正座してこちらを見ているので話に集中出来ない、おっぱいがナイスすぎるのだ。



「主殿、ここと、それからここにボスキャラが居るのではないかと、そう考えているのだが……どうだ?」


「う~む、まぁアレなんじゃね? 居るなら居るで、どうせ幽霊だし、盛り塩で弱体化させて、それから戦えば良いんじゃね?」


「幽霊……なのだよな……しか盛り塩はあるとして、武器の方はどうするというんだ?」


「武器……そうだ武器か、ここまでの心霊? は盛り塩で一撃だったけど、もしかしたらここから先に持ち込まれている幽霊、結構強力なのかも知れないからな、武器はないとやべぇよな……でも金はないと……」


「そうですね、私達のせいでゲーム内通貨も全てロストしてしまいましたし……こうなったらもう『造る』しかなさそうですね」


「通貨偽造か、やってみる価値はありそうだな」


「いえ、そうじゃなくて、武器の方をです、気軽に色んな法益を犯すのはやめて下さい」


「すみませんでした……」



 通貨の偽造を提案したことについて無駄に怒られ、その後武器の製造について話し合う。


 まずはその武器を使う仲間、少なくとも普段から杖のみを用い、それで打撃攻撃をすることもないルビアはパスとして、残り3人の中からの選抜だ。


 で、長物を使う俺の武器はその辺で拾った棒で良い……良くはないのだが、ミラとジェシカがその体で話を進めてしまっているため、あまり反論などしないこととしよう。


 そしてなるべく俺が選ばれないように……と、ここでジェシカの提案だ、この状況下で提案すると、その時点で一撃採用なのだが……



「ここはミラ殿、つまり片手剣ということだな、武器として使う素材の量も少ないし、それを、この対心霊盛り塩用の『やべぇ薬剤』で作成していくのはどうか?」


「おう、じゃあミラはどうだ?」


「私は『何か利益を得る』とか『反対給付とかなく無償で物を支給される』のであれば何でも良いのですが」


「」わかった、じゃあこの盛り塩系のアイテムで何か造っていこう、作成は……あの村にもちょっとした武器屋ぐらいはあるだろうな、そこへ行こう」


『うぇ~いっ』



 とにかく武器の確保だ、盛り塩(的な何か)で幽霊を討伐することが可能なのはわかった、その素材を用いて、幽霊をバスターする最強の武器を作成していこう……

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