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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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875 供給停止作戦開始

「え~っ、この中へ入るとケツアゴ―レムがすっげぇ出ます、万が一にも正体がバレないように、目立たず、ゆっくりと、自然な感じで移動して下さい、みたいな感じ?」


「そうだな、では前回同様我が先頭に立つ、それで、このシスコンバレーは我が故郷でもあるのだ、なるべく破壊しないように、被害を最小限にするよう努めて欲しい」


「うるせぇ馬鹿、誰に向かって指図してんだこのケツアゴが、俺様は勇者様だぞっ!」


「なんと態度の悪い……」


「喋ってねぇで早く行けよ、お前がちゃんとした『味方キャラ』だってこと、まだ俺達が認めたわけじゃないってのを忘れんなよ」



 この地の出身であることが判明した、というか見るからにわかってしまったケツアゴ刑事、俺達は態度を硬化させ、一緒に行動しつつもディスり、場合によっては小突くなどして痛め付けている。


 しかしこんな野郎をいじめていても埒が明かないため、ひとまずそろえた60人の腰蓑軍団、改めケツアゴ軍団を、確認してある60本のケーブルにそれぞれ向かわせ、切断を、ニート激は作戦を実行するのだ。


 その作戦もここまでは安全、この地域に連れて来られた、この地域に住むジャングルの民が、自称最先端の時代遅れキャラとして、腰蓑と打製石器の槍を中心に生活している空間なのだから。


 そして、ここから先、良く奴隷が回さされているグルグルやるやつの真下、保守点検をする際に入って行くべき穴から先は、もはや人ではなく、ケツアゴのケツアゴによるニート神のための世界。


 そこへ足を踏み入れるには相当の覚悟と、それから自分をケツアゴだと、非魔導式のゴーレムどもに誤認させるだけのビジュアルが必要である。


 俺は前回のジェシカに引き続き、今度は尻丸出しのマーサを肩に抱えて、前回と同じ突入口から通路へと入った……



「よしっ、じゃあ移動すんぞ、マーサ、ちゃんとやれよ」


「何をしなきゃなんないの私が? てかお尻寒いんですけどっ」


「なぁに、引っ叩けば暖かくなるさ、それっ!」


「ひゃいんっ! ま、まぁそれなら良いけど……あ、ほら、置いて行かれるわよっ」


「おっと、じゃあ俺達も出発だ」



 マーサを肩に抱えたまま、ついでに万が一に備え、後ろの監視もしておくようにと次げて通路へ入る。

 相変わらずの暗さだが、今回は人数が多い、すぐに明かりが灯り始め、前回よりも遥かに明るく、快適な旅路となった。


 で、俺とマーサが居るのは最後尾、どうしても前に出たかった仲間を除き、ついでに先頭を歩くケツアゴ刑事が余計なことをしないか監視する役割の者も除き、ほとんどの勇者パーティーメンバーが最後列に位置している。


 ついでにエリナパパもだ、こういう場所では先に回り、最初に『利益の元』を発見して独占しようとするのが悪魔本来の行動だと思うのだが……敵が敵だけに慎重になっているようだ、まずは保身が大切、それが悪魔であり、ユリナとサリナもなぜかかなり引き気味出歩いているのであった。


 そんな感じでまっすぐに進んで行くと、前回の探索で確認した巨大な施設に……と、そこへ到着する直前に、マリエルのパンツだけが無駄に落ちていた通路の脇を通る。


 結局あのパンツは何であったのか、後にマリエル本人に聞いてみたところでも、バッグから替えのパンツを取り出して、目印として置いておくような余裕はなかったとのことだし、結局謎のままということか……



「ほらあんたっ、もう到着したわよっ」


「……ん? あぁすまんすまん、じゃあマーサ、ケツアゴフェイク係はこれでお終いだ、帰りも頼むぞ」


「頼むぞじゃなくてご褒美!」


「しょうがないな、ほら、ちょっと前に敵から奪った白桃の四つ割、とりあえず15kgくれてやろう」


「やったっ、3時間分じゃないのっ!」


「いやお前どんだけ喰らうだよ白桃……」


「食べさせて、もう手を使うのも面倒だし」


「はいはい、ほれウサギさん……って、ちょっと待て、敵が来るぞっ」


「任せてっ! 白桃こそケツアゴであれっ!」



 突如としてやって来たケツアゴーレム、しかも逸れて1体だけ、いますどういうつもりなのだろうか。

 で、その姿に気付かなかったのは60人のケツアゴフェイク部隊、完全に仲間の偽ケツアゴだと思っていたらしい。


 そしてこの『非魔導式』であるゴーレム共は、俺の能力でも敵であり、それが接近しているということを察することが出来ないのである。


 もちろん今現在、敵に向かって白糖の割れ目の部分を向けているマーサも、そして野菜も果物もそのままでは食べないものの、焼肉のタレとしては非常に有能だなと、1人で考えているカレンも、その接近に気付いてはいなかった。


 本当に、全く持って違和感を生じさせず、ごく自然に接近して来た敵のケツアゴーレム。

 俺が振り返った瞬間には、マーサがケツアゴに見立てた白桃を、そのケツアゴーレムの前に掲げているところであった……



『ウッ……ウゥゥッ……異物? と判定して良いかどうか、規定サイズより遥かに小さいケツアゴが存在しています、コンセンサス、コンセンサスを求む……』


「おっ、何か知らんが集まって来やがったぞ、もしかしてケツアゴーレムの中で話し合って、今マーサが掲げている白桃が……四つ割りのものじゃな……片ケツになってんぞそれじゃ」


「そんなこと言ったってしょうがないでしょっ、あんたがくれたのがこの最初から割ってある桃だったんだからっ、悔しかったら次はホールの桃を渡すことね、それだったら私ももうちょっと頑張るわよっ」


「生意気なウサギめ……」



 と、マーサと喧嘩している暇ではない、その手に持った4分の1にカットされている白桃を、まじまじと見つめている感じのケツアゴーレム共。


 そんなに眺めて何が変わるのだとツッコミを入れたいところではあるが、非魔導式にして自我のない、単なるロボット的な何かにそれを言ってもまるで伝わらないことであろう。


 ここはひとまず様子を見つつ、ケツアゴーレム共の鑑定結果を……それが今出て、すぐ発表されるようだ……



『え~っ、このケツアゴはホンモノであるか、それともニセモノであるかの議論について……投票中……投票完了、集計中……メモリが不足しています、他のタスクを閉じて……エッチな本をバックグラウンド再生するのをやめます、処理続行……集計結果が出ました、ご利用ありがとうございます……賛成多数により、この半分しかない非常に小さいケツアゴは……セーフッ!』


『セーフッ!』


「……ど、どうなったわけ?」


「大丈夫みたいだ、マーサ、しばらくその白桃を掲げつつだな、そう、そのままだ、そのまま俺の前を歩いてくれ、そうすればもう担がなくて良いからな」


「いやんっ、楽だから運んでよっ、ねっ」


「う~む、その代わり後ろの監視はちゃんとしろよ、あと定期的に尻をモミモミしてやるから覚悟しておけ」


「それもいやんっ、もっとキツめにして欲しいの、こうガシッと、ハード系で……」


「あ、はいじゃあもう一度作戦を説明しま~っす」


「ちょっと無視してんじゃないわよっ!」



 ドMウサギ然とした言動を撒き散らすマーサは良いとして、ここでもう一度、俺の口から……というのは少し拙そうだな、まぁ、ミラに代弁させるか。


 で、おそらく一般的にはおっぱいが好きで好きで仕方ないこの原始人共が、そのミラからの説明を聞かないわけはない。


 視線こそ顔を見るよりもかなり下になってしまっているのだが、それでも一字一句聞き漏らさぬよう、言葉だけはシッカリと耳に入れているようだ……なお、理解しているとは言っていないこを付け加えておこう。



「……で、そのマップに記した目的地に到着したら、すかさず貰った魔法の石を投げる、そうすればお姉ちゃ……私の姉が込めた魔法が発動します」


『ウォォォッ!』


「あとはですね、線が確実に切れているのを確認して、もし大丈夫そうならその切り口には一切触れずに、そのまま脱出する方向で動いて下さい」


『ハイッ、敵に襲われたとかの場合についてなんですがっ、その際には助けて貰えますかっ?』


「助けるわけがありません、あなた方の生命よりも重要な権益は沢山ありまして、獲得可能なお宝だの何だのを獲得すればもうこっちのものですから、それに際しての犠牲だったと思って、諦めてあのバケモノゴーレムに殺されて下さい」


「そっそんなぁ~っ」



 まぁ、正直腰蓑軍団については特に問題はない、俺はそう思っているのだが……他の仲間達にとっては、もうその辺のキモい変態と何ら変わらない存在。


 今が真冬であることを一切感じさせないそのような格好で、しかもそれこそが最先端の、新式の生活様式にマッチした何かであると思い込んでいるのだが……と、今はその連中を通路ごとに派遣していくのが先だな……




「あ、はいじゃあお前こっちね、こっちには敵がいないと良いな、死なないと良いな、ま、でも俺はお前に死んで欲しいと思っているがな、心底」


「クソッ、そ、そんなこと言うのであればお前が行けっ、この変質者がっ!」


「すまないな、俺様は指揮官なんだよ、指揮官ってのはこういう場所でドカッと構えて待機して、たとえ現場の派遣部隊が酷い目に遭っていても、『信号、ロストしましたっ!』とか何とかいう報告を受けて、それでも表情ひとつ変えずに次の指示を出していく感じのが望まれているんだ」


「良く考えたらその光景、そこそこにクズよね……とにかく早く行きなさい、タイミングがズレると敵に察知される危険が高まるわ」


「そうだぞオラッ、サッサと行け、度胸がある奴は先に行ったぞ、ここでブルッているお前等のような臆病者共と違ってな」


「クッ、クソッ! 行ってやろうじゃねぇかっ!」

「おうっ、俺は臆病者じゃねぇってとこを見せてやるぜっ」


「単純な奴等だな……さて俺達は戻ろう、地上で敵を迎え撃つ準備をするんだ」



 ケーブルの断線を狙いに行った60人の元腰蓑軍団、それらをここで待っていてやる義理はない、というか、奴等の装備であれば普通にここを抜けることが可能、つまり自力で帰還することが出来るのだ。


 というかそんなことも出来ないような雑魚キャラ、いくらジャングルで飼っているだけの下等生物とはいえ、魔鳥の奴も要らないというであろう。


 つまり、これは奴等に与えられた『試練』でもあるのだ、俺が意地悪で置いて行くとか、捨て駒にしてしまっているとかそういったことでは断じてない。


 で、その元腰蓑軍団がどのぐらいの時間で作業を終え、帰還を始めるのかはわからないが、とにかく俺達は急ごう。

 急いで外に出て、ニート神の奴が出てきた際に後ろから頭をカチ割りに行くことが確実に出来るよう、準備を進めていくのである。


 そのためにはまず、この摩天楼の中央付近にある、あの高い尖塔を有する建造物に接近し、その付近に身を隠しておく必要があるのだが……接近の方はどれぐらいの難易度なのか、そこを調査しておくのを忘れた。


 まぁ、最悪の場合は『停電』の騒ぎに乗じて忍び込めば良いし、そういった状況にあれば、もう見張りの何匹か程度はブチ殺しても構わないはず。


 どうせニート神の本体が出て来るのは一番最後、この地にあるケツアゴ―レム共では対処出来ない、手に負えないような事態になった際に、ようやく面倒臭そうな顔で出現する感じなのであろうから、騒ぎのスタートからそれまでの時間にどうにかするのだ……



「うむ、脱出成功だ、もうケツアゴを偽装しなくても良いぞ」


「やれやれ、もうこの汚らしいマスクを被るのはイヤだな、これで最後にして欲しいものだ」


「てかどうしてそんなの被ったんすか平気で、いきなりそんなの渡されたら、もう普通にこのケツアゴを殺すって感じの行動が妥当だと思うんすけどね」


「いや、私はね、この未知の技術を手に入れるためならほぼ、何でもするよ、もちろん悪魔の一族の不利になるようなことは、たとえこの身を引き裂かれようとも絶対にしないがな」


「何というか、目的に対してはまっすぐっすね……まぁ良いや、とにかく摩天楼の中心部へ向かいましょう」


「あ、それであればもう一度、このケツアゴマスクを装備しなくてはならない、中心部にはケツアゴ―レムが大量に居るからな」


「・・・・・・・・・・」



 諦めたような表情をチラッと見せるエリナパパであったが、その顔はすぐにケツアゴマスクの下へと隠れた。

 まぁ、これに関しては仕方ない、異物と認識されぬよう、どうにかして……と、ミラが良いものを持っているようだ……


 なんと、ロングコートを作る際に余った布を用いて、ケツアゴ刑事の顔を刺繍した、何やら非常にリアルなものを用意していたらしい。


 それがケツアゴマスクと同等の効果を持つかどうかが怪しかったため出さなかったのだが、これから先のことを考え、一度見て貰おうと考えたようだ。


 で、それを見たケツアゴ刑事の反応は……もう少し立体的なケツアゴであれば、場合によっては騙すことが可能になるかも知れないとのこと。


 見た目だけではなく、それがケツアゴであるかどうかを総合的に判断しているらしいケツアゴ―レム共を騙すには、それだけではまだ不足しているということである。


 となると……ここはもう少しアレンジして、すぐに使えるような感じへと持っていくこととしよう……



「はいご主人様、これ、こんな感じでどうでしょうか?」


「おぉっ、ルビアはおっぱいの部分に『ケツアゴの布』を垂らして、それでケツアゴをイメージしたのか、これならいけるな、しかし……それはセラには出来なろべぽっ!」


「勇者様を挽肉にして、捏ねてケツアゴのアゴ部分にしましょ」


「ちょ、そ、それだけは……」



 このままでは殺されかねない、ということで頭をフル回転させて作戦を立てる。

 まずはおっぱいでケツアゴ感を出すことが可能なメンバーを集め、それに不可能キャラを……二人羽織しかないな。


 先程の作戦で作ったロングコートを用い、俺はルビアと、そしてミラがセラを、マーサが精霊様を、マリエルがユリナ、ジェシカがサリナ、あとはカレンとリリィなのだが……小さいので俺とルビアのコートの中に入れてしまえば良い。


 で、もちろん1人だけ余ったエリナパパは、これまで通り恥ずかしく、そして不潔なケツアゴマスクを被る。

 これは仕方のないことだ、おっさんはおっさんらしく、そういう扱いを受忍する義務があるのだから……



「おうケツアゴ刑事、こんな感じでどうだ? ケツアゴ感を出している仲間以外には姿が見える者も居ないし、普通に騙せるだろうこれで?」


「うむ、クオリティの面では少しホンモノのケツアゴに及ばないが、先程までよりはかなりイケている、一生そのまま生活することを、ケツアゴライフを送ることをお勧めする」


「ざっけんじゃねぇよボケが、よし、じゃあリアルケツアゴのお墨付きも得たということで、とっとと先へ進もうか」


『うぇ~いっ!』



 ということで出発、普通に通りを行き、このケツアゴだらけの摩天楼、その中心部を今度は地上から目指すのだ……



 ※※※



「……おっと、早速ケツアゴ―レムのお出ましだ、コイツは何か色が違うし……ちょっとデカいな」


「それは戦闘タイプのものだ、迂闊に近付くと、仲間でも葬られることがある攻撃的なケツアゴ―レムだな」


「マジか、おいルビア、ちょっとそのケツアゴから離れて歩け、俺達はイマイチ前が見えていないからな」


『私なんか真っ暗です……』

『私も―っ』


「しばらく我慢しろ、じゃあルビア、ちゃんとやってくれよ、大丈夫だな?」


「ご主人様、逆に気が散ります、あと顔を出したら見つかりますよ」


「すみませんでした……」



 視界を奪われると不安になる、しかもその失った分の視界を任せているのがルビアというのもまたアレなことだ。


 結果として余計なことをして余計なことを言い、無駄に怒られてしまったのだが、とにかく気を付けて欲しいという気持ちは伝わったはずである。


 で、他の仲間達も今のところは平穏無事に……と、顔が見えないように隙間からコッソリと……ダメだ、ルビアの横チチが邪魔でイマイチ前の様子が見えない、しかし唯一見えたのは……ケツアゴマスクを被ったエリナパパが、その戦闘タイプだというケツアゴ―レムによってモロにガン付けられている場面であった……



「何なのだこやつは、私のことをジロジロと……破壊してしまって構わないか?」


「ちょ、ちょっと待って下さいっす、ほら、殴るならこっちの、同じ顔、同じケツアゴのを用意しましたから」


「用意しましたって、この悪魔に我を殴らせるつもりなのか?」


「当たり前だボケ、お前のような敵かも知れないトンデモ野郎は殴られて当然なんだよ、そんなこともわかんねぇのかこの薄らハゲた頭は? アレか、中にウ○コでも詰まってんだろ脳みその代わりに、ぜひその汚ったねぇケツアゴからブリブリ排出してどうぞ、で、ほら、これなら殴って良いっすよ、知らんけど」


「やめたまえ、もし我に攻撃を加えれば、この悪魔もただでは済まないぞ」


「どういうことだよ? もしかしてケツアゴお前、実はめっちゃ強いのか?」


「強くはない……今はな、だが我が殴られれば他のケツアゴ共はどう思う? ケツアゴの仲間割れが発生していると、そのようなことをしでかすのは壊れたケツアゴだと、そしてそのようなケツアゴは排除しなくてはならないと、そう思考するに決まっている」


「……なるほど一理あるな、エリナパパ、ちょっと向こうの路地裏に移動して、そこでボコボコにしてやって下さい、ケツアゴーレムから見えないように」


「承知した、来い、この気持ちの悪い生物めが」


「・・・・・・・・・・」



 しばらくの後、ケツアゴのマスクを被った悪魔と、そして素顔の状態でケツアゴであり、そのケツアゴをボコボコにされ、ひん曲げられた馬鹿が戻って来る。


 そして悪魔の方のケツアゴから情報提供が……どうやらこの先には抜け道があり、そちらは比較的ケツアゴーレムの数が少ないらしい。


 そこを通って行こう、そうすれば、比較的スムーズに摩天楼の中心を目指すことが出来るはずだ……

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