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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 最後の1人
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488 第二の屋敷へ

「ご主人様、そろそろエリナが到着しますわよ、よいしょっと」


「ひょぉぉぉっ! 窓を開けるんじゃねぇっ! どんだけ寒いと思ってんだ全く」


「しょうがない異世界人ですわね……」



 クソ寒い中、ユリナが勝手に窓を開けたせいで完全に目が覚めてしまった、まさに悪魔の所業だ。

 慌てて閉めたその窓に嵌まった高価であろうガラスの向こうには、鳳凰に乗ったエリナが手を振って……後ろのダルマみたいなのは極限まで厚着をしたアイリスか……


 しばらくして鳳凰が屋敷の庭に降り立つと、アイリスをひょいっと抱えたエリナが玄関のドアを開け、バタバタと足音を立てながら俺達の居場所を探し始めた。



「お~い、エリナ~! 2階の寝室に居るぞ~っ!」


『あ、わかりました~っ! すぐに行きますね~っ!』



 さらにバタバタと、今度は昨夜ヴァンパイア共が綺麗に掃除した階段を上る音。

 ちなみに50以上も居るお供ヴァンパイアは、全て屋敷の外、雪の降り積もった屋外で野宿させてある、まぁ、死にはしないはずだ。



『コンコンッと、ここですか~っ?』


「うむそうだ、入って良いぞ」



 そう言いい終わる前にバタンと開いた部屋のドア、かなり焦った様子のエリナは、いつも通りのほほんとした表情で、極限まで着膨れしたアイリスを抱えたまま部屋に入って来る。



「ふぅ~っ、どうにか朝のうちに辿り着きました、これでお尻に棍棒を突き刺されるなどという残酷で異常な刑罰は……」


「いや、朝のうちではあったがかなり遅かったからな、お前を尻棍棒の刑に処すか否かはこれから検討するところだ」


「ひぃぃぃっ! せ、せめて棍棒じゃなくて綿棒ぐらいでお願いしますっ!」


「麺棒か、麺棒なら調理場にありそうだな、よし、朝のうちには来たが遅かった罰として尻麺棒の刑に処す」


「何だか私の言っている『綿棒』と違うような気がするんですが……」



 冗談はさておき、故ヴァンパイア爺やの執務室にあった転移装置らしきモノに関してエリナに説明する。

 尻が気になって話が頭に入っていない様子だが、とにかく実物を見せることとしよう。


 エリナの手を牽いて目的物がある部屋に移動し、かなり目立っているそれを見せる……途端に反応し、サッと装置の横へ移動、隅から隅までジロジロと観察し出すエリナであった……



「ふ~む、確かにこれは転移装置ですね、行き先の座標は……ちょっとこの辺りの地図を持って来てくれませんか」


「あ、それなら外の雑魚パイア共が持っていたな、精霊様、すまんが奴等に一撃ブチかまして地図を強奪して来てくれ」


「わかったわよ、1匹2匹殺すかもだけど勘弁ね」



 窓から出て行った精霊様、数秒後には数匹の雑魚パイアが悲鳴を上げる……いや、良く考えたら別に一撃ブチかます必要などなかったのではないか? 平和的にお願いすれば地図ぐらいすぐに差し出したはずだ。


 まぁ、やってしまった、というかおそらく精霊様が殺ってしまったものは仕方ない。

 味方は減ってしまったが所詮は雑魚、逆にここで一発立場をわからせる行動に出ることが出来た、そうも捉えることが可能である。


 血に染まった地図を携えて戻った精霊様からそれを受け取り、机の上に広げてこの転移装置の行き先となる座標を確認する。


 ……どうやら四天王城ではないようだ、城から程近くではあるが、小さな四角が描かれているということは誰かの屋敷なのであろう、地図上ではこの屋敷もそのような記載がされているし、ほぼそれで間違いなさそうだ。



「う~む、これはまたヴァンパイアの屋敷なのか? 精霊様、重ね重ねですまないが、今度は雑魚パイアを1匹持って来てくれ、出来るだけ賢そうな奴をな」


「わかったわ、てかどの雑魚パイアでもあんたよりは賢いから大丈夫よ」


「酷いことを仰る……」



 再び窓から飛んで出て行った精霊様と、再び聞こえてくる雑魚パイアの悲鳴。

 すぐに襟首を掴まれ、半ば首が絞まった状態で1匹が運ばれて来た。



「おいお前、ちょっと聞きたいことがあるんだが、この地図上のここ、この建物はまた偉いヴァンパイアの屋敷なのか?」


「どこだ? ここは……うむそうだ、カーミラ様の部下の1人、都合が悪くなるとやたらに『○○の陰謀だ』と主張して、さらに純粋なカーミラ様にそれを信じ込ませるとんでもない奴の屋敷だ」


「陰謀論者かよ、面倒臭そうな奴だな……」


「ああ、コイツのせいで適当な罪を着せられ、反逆者として処刑されたヴァンパイアは数知れずなのだ、ついこの間も城の花瓶を自分で落として割ったのに、それを別の取り巻き野郎が世界の滅亡を目論んでやったことだと主張、その取り巻きヴァンパイアは処刑されてしまったそうだ」


「いやそんなの信じるとか、カーミラって奴もたいがい馬鹿だぞ」


「馬鹿なのではない、あの方は本当に純粋なだけなのだ、全く悪くないっ!」


「そうかそうか、じゃあお前はもう用済みだ、邪魔だからどっか行けっ!」


「ぎゃぁぁぁっ!」



 ナイスシュート、俺が蹴飛ばした雑魚パイアは、完全にゴールの枠、ではなく窓枠を捉え、高価なガラスを破壊することなく外の雪原に戻って行った。


 地面に激突する凄い音が鳴り響いたが、まぁ極めて生命力の高いヴァンパイアだ、予想される最大の身体的被害である『全身を強く打った』程度で死んだりはしないであろう。


 邪魔者が居なくなったところで改めて地図に向き直る、そこで見る四天王城の位置から転移先であるとされた敵の屋敷は程近い。


 だがその周囲には他にも、ここやその屋敷と同じような四角のマークが点在しているではないか。

 しかもその大きさは城へ近付くに連れて徐々に大きくなり、あたかも所有者の権力レベルを表現しているようだ。


 それがもし、全て四天王であるカーミラの取り巻きヴァンパイア共の邸宅だとしたら、おそらくそれぞれに転移装置があり、さらに城の近くにある別の、さらなる権力者の屋敷へと順番に繋がっているのではなかろうかといったところ。


 もちろんそのようなことはなく、純粋にここの爺やと転移先の陰謀論者だというヴァンパイアが非常に仲良しで、たまたま転移装置でお互いの執務室を繋げていたという可能性がないとは言えない。


 いや、陰謀論者などに仲良しな友達など居てたまるか、ふざけて突拍子もない説を唱え、皆を笑わせているのであればともかく、他人を蹴落としたり自分を有利にする目的で意味不明な主張をしている奴が孤独でないということは考えにくいのだ。



「よしっ、とにかく準備を済ませたら転移してみよう、行くのは俺達と、それから盾代わりにする雑魚パイア5匹ぐらいで良いだろう、おいエリナ、そのぐらいの人数なら一度に転移出来るよな?」


「う~ん、まぁ大丈夫だと思いますよ、後半ちょっと出力が足りなくなって大変なことになるかもですが」


「どうなるんだ?」


「転移に失敗してグズグズでドロドロの肉塊が向こうに送られるんです、まぁ、失敗するといってもその程度ですから、特に危険ということはありませんね」


「普通に激ヤバなんだが……」



 通常、グズグズでドロドロの肉塊にされてしまった場合、そこから生還出来る可能性は極めて低い。

 というか勇者パーティーの中で、それで助かりそうなのはユリナとサリナ、あとは精霊様ぐらいのものだ。


 だがエリナ曰く、俺達12人と盾用ヴァンパイア5匹、合計17人の転移で、そういう目に遭うのはせいぜい最後の1人なのだという。


 つまり、ヴァンパイア共の方を後で転移させるようにすれば、俺達が被害に遭う可能性は全くのゼロということになる。


 もし最後の1人がグズグズだのドロドロだのになってしまった場合は、気が向いたらルビアの回復魔法を使って救助してやることとしよう。

 気が向かなかったらそのまま便所にでも流してしまえば良い、死なない限りはそのうち再生して戦線に復帰するはずだ。



「じゃあそういうことで早速準備開始だ、サッサと終わらせて、昼食後には出発するからな」


『うぇ~い!』



 準備といっても特にやることはない、ミラと、せっかくやって来たアイリスは食事の支度、ユリナとサリナで連れて行く盾パイア5匹の選別、そして俺は……地下の宝箱でも開けてみよう。


 ちょうど暇そうにしていた精霊様を連れ、宝箱をこじ開けるための工具を用意して地下室へと向かった……



 ※※※



「カレンが見つけた宝箱ってのはこれかな?」


「随分古臭いわね、カビ臭いし、とてもお宝が入っているようには思えないわ」


「でもほら、ちゃんと『魔王軍謹製耐火宝箱』って書いてあるぞ、鍵もダイヤル式で高級なやつだ」


「イマドキはナンバーキーだと思うんだけど……」



 地下室にあったのは、見てくれこそRPGなどでありがちな古の宝箱だが、実際は金庫のようなシステムのものであった。


 もちろんダイヤルの番号など知りようがない、ダイヤルをどうにかしたところで今度は鍵がない。

 ゆえにその辺にあったマイナスドライバーのようなものを筆頭に、大泥棒式金庫解錠セットを用いてどうにか……なるようなモノではないようだ。



「クソッ、こりゃちょっと手強いぞ、精霊様、もうこじ開けるから手伝ってくれ」


「そうね、中身もイキそうだけど、どうせたいしたモノは入っていないでしょうし、ガツンとやっちゃいましょ」



 ということで俺が宝箱を押さえ付け、精霊様がその上蓋を弾き飛ばすようにして一撃を喰らわせる。

 バカンッと軽快な音を立てて外れ、壁に直撃してめり込む宝箱の蓋、手元に残ったのは下部分のみだ。


 で、その中身は……油紙に包まれた文書のようなものが入っていた、魔族固有の字で書かれ、俺にも、そして精霊様にも読み解くことが出来ないその文書、これはユリナかサリナ、或いはエリナに見せるべきであろう。


 そこへやって来たのはちょうど暇をしていたエリナ、宝箱を破壊した際の音を聞き付け、何があったのかと様子を見に来たようだ、手にはなぜか綿棒が数本握り締められている。



「おうエリナ、ちょうど良いところに出現したな、ちょっとこっち来い」


「ひぃぃぃっ! どうかこの『綿棒』で許して下さいっ!」


「何言ってんだお前は? 遅くなった罰として尻に突き刺すのはその『綿棒』じゃない、うどんとかを伸ばす凄まじい太さのやつだ……だがこの暗号めいたものを解読してくれるというのであれば、特別に刑を免除してやろう」


「えっ!? やります、やらせて頂きますっ! どれですか? これですねっ!」



 俺の手にあった謎の言語で書かれた文書を奪い取るエリナ、すぐにブツブツと声に出して読み始めたということは、そこに書かれている内容を理解しているということだ。


 だが徐々にエリナの様子がおかしくなる、おかしいといっても焦っているとか、危険を感じているような雰囲気ではなく、どこか嬉しそうな、遂に発見したかといった表情である。



「……で、結局何なんだその文書は?」


「これはっ、これは間違いなく伝説のアイテムの機能を復活させる呪文ですっ!」


「伝説のアイテム? どこにそんなのがあるってんだ」


「あら、もう忘れてましたか、私が狐獣人の里でガラクタとして購入して来たあのアイテムの正体を」


「ガラクタとして購入……あっ! あの紙袋のことか、中身は見てないんだが、アレが伝説のアイテムなのか?」


「その通りです、今は持って来るんでちょっと待ってて下さい」



 そう言ってバタバタと走り去って行ったエリナは、すぐに何やら奇怪な紋様をした箱のようなものを携えて戻る。

 いや、箱の表面に見えているのは紋様というよりも素材そのものの繋ぎ目のようだ。


 6つの面がそれぞれほぼ正方形に近いと思しきその箱は、長方形をした無数の木片によって構成されているらしい。


 そして、その1つの面には何やら鍵のようなもの……ダイヤルではない、イマドキのナンバーキーだ、にしてもキーの数が多いような、あとイマドキのアイテムにしてはえらく古いような……



「じゃじゃんっ、これはですね、おそらく魔界の神々がこの世界に降り立った際に忘れていったものだと思うんですが、私の力じゃ到底壊せないし、パスワードもわからないしで困っていたんです、で、この「復活させる呪文』を打ち込めば、装置が動作してカシャカシャッと開くはずなんですよ」


「へ~、で、中身が何なのかわかっているのか?」


「う~ん、振るとカラカラいうんですけどね、とにかく呪文を入力して開けてみましょう、え~っと、すぺぺぺぽはけぱくくけえあほやね……」


「……復活させる呪文ってそういう感じのアレなのかよ」



 それが復活に関する呪文なのかそうでないのかと言われれば、間違いなくそうだと答えるしかない呪文であるが、どうしてこの異世界にてこういう感じの呪文で復活する何かがあるのか。


 まぁ、これまでもたまにそういうモノは見てきたし、今更驚くほどのことでもない。

 で、呪文を入力し終わったエリナの手の中で、その四角い箱のようなアイテムが光り輝き、次いでパラパラと、長方形の破片に分裂して崩れ去る。


 エリナの手に残ったのは比較的大きな、ルビーのような赤い宝石であった。

 表面に何か文字のようなものが書かれているとのことだが、小さすぎて読むことが出来ないらしい。



「それで、どうすんだよその宝石?」


「……たぶんですけど何か凄いものだと思うんで持っておきます」


「ホントに凄いのかな……」


「いや、だって四天王様の直属の部下のお屋敷で、宝箱にしまい込まれていた呪文で開く神々のアイテムから出てきた宝石なんですよ、凄いに決まってるじゃないですか」


「まぁ良いや、もしかしたらそのうち冒険のキーアイテムになるかも知れないからな、どこかの扉に嵌め込んで封印を解くとか、強力な古代兵器のコアだったりとかな」


「夢は膨らむばかりですねっ、でも出来ればもっと凄いお宝とか何とかに変わると良いですねっ」



 そもそも現時点で高く売れそうではあるのだが、嬉しそうに宝石を握り締めるエリナからそれを取り上げてしまおうなどとは到底思えない。


 まぁ、小さくて読むことすら出来ないという表面の文字辺りをメインとして、おそらく今後、それは魔王軍を壊滅させる前なのか後なのかはわからないが、俺達の冒険に何らかの関わりを持ってきそうな予感のするアイテムではある。


 そんなことをして遊んでいる間に、ミラとアイリスは昼食の準備を終え、配膳を手伝うよう伝えに来た。

 他の仲間達がやっていた出発の準備もほぼ終了したようだし、とりあえず昼食を取ることとしよう……



 ※※※



「……じゃあ盾用の5匹のヴァンパイアは選別し終えたんだな?」


「はいですの、そこへは行きたくないとか、アイツと関わるのは死んでもイヤだとか、皆やたらに抵抗してきましたので、結局あみだくじで同行者を決定しましたのよ」


「どんだけ嫌われてんだよこれから行く屋敷の主は……」


「それはそうですの、変な陰謀論を唱えて、うっかり信じるようなお馬鹿さん達を味方に付けて、それで利益を得ているような奴ですので、普通の感覚であれば話すどころか近付きたくもないですわ」


「おう、確かに不快な奴だよな、新興宗教団体の教祖みたいで気持ち悪いぜ」



 昼食を取りながら、これから戦うことになる可能性が高い敵のヴァンパイアに関して話をする。

 というか、考えれば考えるほどにウザそうな野郎だ、きっとデマを撒き散らしながら味方を増やしているに違いない。


 食べ終え、今回は同行しないヴァンパイア共に食器の片付けとその他掃除等をするように命じ、アイリスとエリナにはゆっくりしておくよう伝えて転移装置のある故爺やの執務室へ移動する。


 お供する5匹の雑魚パイア(盾)には、俺達に続いてすぐに転移すること、少しでも遅いと思ったらボコボコにすることなどを告げ、まずはパーティーメンバーだけで転移先を目指す。


 光に包まれ、しばらくしてどうにか目が慣れると、先程までいた部屋とは違う、どこかの物置小屋のような場所に移動していた。


 すぐに転移して来た5匹の……いや4匹になっている、最後になった1匹はグズグズのドロドロ、100時間以上じっくり煮込んだ肉のような質感に成り果てているではないか。



「ご主人様、このヴァンパイアの人はどうしますか?」


「放っておけ、どうせそのうち元に戻るだろうよ、じゃ、俺達は先に行くからな、サッサと復活して戦線に戻るんだぞこのゴミ野朗」


『ぶ……ぶちゅーっ』



 まともに喋ることも出来なくなった溶けかけのヴァンパイアはその場に放置し、物置らしきその建物を出た。

 眩しい、真っ白な新雪が晴れた空に浮かぶ太陽の光を反射している、このままでは日焼けしてしまいそうだ。


 と、再び目が慣れ、周囲の景色が見えるようになった。

 どうやら広い庭の隅に設置された農器具小屋のようなものであったようだ、目の前に広がる一面を雪に覆われた庭、中央の噴水は寒さで凍り付いてしまっている。



『誰だお前等はっ!?』

『侵入者だっ! 庭に侵入者が居るぞっ!』

『本当だ、てかどうしてヴァンパイアじゃない奴が多いんだ?』

『そんなの知るかっ! とにかく殺すぞ!』



 早速見つかってしまったようだ、どういうわけか庭に居たのは4匹の雑魚パイア。

 しかし村で出会ったような連中とは異なり、栄養不足でガリガリになっている様子はない。


 おそらくはこの屋敷の主、陰謀論者だという面倒臭そうな奴の子飼いなのであろう。

 この場で全員消滅させてやっても良いが、こちらもヴァンパイアの手駒は4匹、ちょうどいい数なのだ。



「よし、じゃあヴァンパイア1号、お前に決めた、行けっ!」


「え? 我にどうしろというのだ……」


「お前が戦うんだよっ! そんなこともわからないのかこの腐った脳みその馬鹿がっ! ちなみにそっちの雑魚共、お前等の中からも1匹選んでコイツとタイマンしろ、どっちかが死ぬまでな」


「な、何だとっ!? ヴァンパイア同士を殺し合わせてどうしようというのだ?」

「待てっ、奴等は何者かの陰謀で動いているに違いない、ほら、この間預言者様が言っていたアレだ」

「まさかっ!? だがそれ以外に考えようがないな、きっと謎の組織が影で暗躍しているに違いない」

「仕方ない、ここは俺が出よう、お前等は敵に不正の事実がないか良く見ておいてくれっ」



 無駄に話し合う4匹のヴァンパイア、どうやら『預言者様』というのがこの屋敷の主、そして陰謀論で体臭を煽動する馬鹿野郎のようだ。


 こちらの手駒と向こうの選手、両者が前に出たところで、単なる侵入者の俺達と、巨大な陰謀に巻き込まれていると信じて止まない馬鹿共のアツいバトルが始まった……

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