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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十七章 人を攫って
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472 思わぬ敵

「おいテメェら、さっきからジロジロ見やがって、そんなにこの異世界勇者様が珍しいのか?」


「や、やっぱり異世界勇者か、国家権力の狗め、この店に、俺達町のチンピラの憩いの場に何しに来やがったんだ」


「テメェを殺しに来たんだよっ! そんなこともわかんねぇのかこのド低脳がっ!」


「へべぽぺっ!」



 地下で取引が行われているはずの怪しい何でも屋、その店内に入ると一斉に注がれる、俺達を憎悪を直接向けるかのような目線。

 とりあえず手近な所に居たチンピラをこの世から消し去り、圧倒的な力の差をアピールしておく。


 ついでに商品棚を倒したりして威嚇しておこう、ドンッと蹴った勢いで吹っ飛ぶ木箱。

 直後の光景は、よく町の商人がチンピラにやられている『果物散乱』とは程遠い、違法な『白い粉』が舞い上がるという異様なものであった。


 店内に存在している商品の大半が違法、また違法でないにしても明らかに盗品、そして買い物をしているのはお天道様の下を堂々と歩くことが出来ない連中ばかり。


 当然今の光景を見て一目散に逃げ出そうとしているスタッフ共も、それはもうガッツリと、何やらやべぇクスリに手を出している満載の顔つきをした奴から、全身にドクロの刺青をしている奴など、もう悪人キャラの見本市のような見てくれである。


 そのうちの1人、もうシャブ漬けで走ることすらままならないという感じの奴をガシッと捕まえ、倒れた棚の商品の中に放り込む……



「いぃぃっ、いでぇよっ、超いでぇよっ……」


「うるせぇ、貴様のようなゴミはこれからもっと痛々しい方法で処刑されることが確定しているんだ、この程度で泣き言吐いてんじゃねぇっ!」


「く……クソがっ……これでも喰らえっ!」



 シャブ漬け野郎が投げ付けてきたのはシャブ、明らかに有毒な白い粉の入った小袋。

 大事な大事なシャブを敵に投げ付けるとは、そうまでして助かりたいというのかこのクズは?


 まぁ良い、コイツがここのオーナーである可能性は限りなく低いどころかゼロに等しい。

 責任者の呼び出しという重責を全う出来るとも思えないし、この場で見せしめとして惨殺してしまおう。



「おいコラ、異世界勇者様に向かってそんな汚ねぇゴミ袋を投げ付けるとは、これからどういう目に遭うのかわかってんだろうな?」


「し、知らねぇよ……いくら公権力とはいえこんな所で市民に暴行を働いて良いなんてことが……」


「それがあるんだよ、残念だったな、ということで苦しんで死ねっ!」


「ひぎぃぃぃっ! ぼ、ぼぉぇぇぇっ、おぐっ……そ……そんな……ぎゃぁぁぁっ!」



 散乱した商品の中から、明らかに攻撃用と思しき紫の液体が入った小さな丸い玉を手に取り、それをシャブ野郎の口に突っ込んでカチ割ってみる。


 最初は泡が出て苦しんだに過ぎなかったのだが、徐々に口の中が溶けて……気持ち悪いから見るのをよそう。



「さてと、こういう目に遭いたくない奴はここの店長かオーナー辺りを捕まえてここに連れて来るんだ、ちなみに1分経過毎に適当に選んだ1人を殺す、サッサとしろっ!」


『へ、へいっ! 承知しやしたっ!』



 一斉に店の奥を目指す客のチンピラと店員、恐怖によって完全に支配されたその連中は裏で何やらバタバタと捕り物を演じているようだ。


 しばらくして登場したのは、縛り上げられてチンピラ共に連れられたデブハゲ、金を持っていそうなところからするにコイツがここの店長兼オーナーといったところか。



「おいっ、本当に責任者はコイツか? 間違いないんだな?」


「そうですっ、この男がここの店長で社長で管理者で、客の足元を見て法外な値段で違法アイテムを売り付ける嫌な野郎なんですぜっ!」


「ほう、じゃあ今度はその嫌な野郎に質問しよう、この店では地下で違法な取引をさせて金を儲けているんだろ? 今日も1組ご利用になっているようだがな、で、そこへ入るための秘密の入り口的な場所を教えろ」


「し、しかしお客様の秘密は…・・・いえ、何でもございません、カウンターの下に秘密の入口があって、そこから地下室の天井裏に出て客の会話を盗み聞きして、後で脅迫したりすることが出来るようになっておりまして……」


「……清々するほどに最低のクズだな」



 すぐに店のカウンターの裏を捜索すると、床板の下に地下へ続く穴が発見された。

 体の小さいサリナが先に入って様子を見ると、そのまま天井裏を歩いて移動出来そうだという。


 また、ついでに穴の中に顔を突っ込んでみたマーサによると、奥の方から人の話し声が聞こえてくるそうだ。


 間違いなくそこで敵が取引をしている、あの偽王国兵の連中、そして相手は精霊様が見たと言う、小さい馬車で路地裏に入った何者かとその仲間であろう。



「よっしゃ、それじゃこの中に……と、その前に用済みの連中を始末しておかないとだな」


「ご主人様、私が殺りたいですのっ! 例の技を試してみるときがきたんですわっ!」


「うむ、実戦で使う前に『実験台』で試しておくのも重要だからな、ここはユリナに殺らせてやろうではないか」



 店長のハゲデブを裏切り、そして俺達に引渡したことによって助命して貰えると思い込んでいる店内のチンピラおよびシャブ中共、もちろんその属性の時点で俺達が生かして帰すはずがない。


 店がなくなる前に商品をありったけ頂いておこうというのであろう、チンピラ共は布袋を用意し、それに任意のアイテムを詰め込んで退出する準備を始めている、凄まじいクズっぷりだ。


 そのうちの1匹にユリナの尻尾の先が向けられる、魔力を込めると、そのチンピラははたと止まった……



「あれ? 何だか暖か……あちっ、熱い、あっついっ! アヅイィィィッ! ギャァァァッ!」


「おうおう、あんな感じでジワジワ焦げていくのか、しかもどこから攻撃されているのかとか全然わからないんだな、これは使えそうだ」


「何だか面白くなってきましたわ、この感じでどんどん殺していきますのっ!」


「まぁ待てユリナ、今はもっと別の目的があるだろう、殺しても良いチンピラぐらいなら王都の中を探せばいくらでも見つかるんだし、サッサと始末して地下に行こうぜ」


「はいですの、じゃあバーッと」



 突如として1人が焼け死に、何事かといった表情でフリーズしていた店内のクズ共を、店長も含めて一般的な火魔法で殺害していくユリナ。


 最近は手加減ということも覚えたようだ、これまでであれば、一撃で建物を、それどころか周囲の数棟にも被害を及ぼしかねない大火力で惨劇を起こしていたはずだ。


 そでを抑え、1人1人が地味に苦しみながら焼け死ぬ程度の威力で放った火魔法を、頃合を見て精霊様が消火して回る。


 あっという間に悶え苦しむ活きチンピラの炙りがいくつも出来上がった、凄惨な光景だが、あと半日も苦しめば死ねる分、こういう連中の末路としてはまだ温いと言って良いであろう。


 とにかくそのようなゴミ共は放置、顔面が焼けてのた打ち回る店長を足蹴にして退かし、カウンター裏の入口から地下へと突入した……



 ※※※



「……こっちよ、こっちから声がするわ」


「思ったよりも端っこの方で取引してんだな、犯罪者はそういうポジションを好むのか?」


「わかんないけど、ほらここ、ちょっと遠いけどここから覗けそうよ」



 荷物の受け渡しをしているのであろう敵の声を頼りに、マーサの誘導で天井裏をコソコソと、可能な限り音を立てないように進む。


 そして示されたのは、床を囲った中に小さな穴の空いた場所、おそらく店長が設置した覗き穴だ、ここから客の秘密や犯罪の事実をコッソリ見て、それをネタに脅迫するということをしていたのであろう。


 もちろん自分もアレな存在であるため、実際に憲兵に通報するというわけにはいかなかったはずだ。

 それでもショボい小悪党に対する脅しとしては十分な効果を発揮していたに違いない。


 まずは俺がということで、1人しかご利用になれないその覗き穴を用い、下の様子を確認する……見えるのは偽王国兵、つまりここまで檻を運搬してきた連中だ。


 残念なことに取引相手の姿は柱の影で見えない、だが見えなくとも、そもそもこんな穴を覗く前から伝わってきていた、相手は魔族、それもそこそこの力を持つ上級魔族である。


 そして今のところ、仲間5人が入った檻は少し離れた所に置いてあるようだ。

 大量の被害者が運ばれて来る予定であったのに対し、結果がこれだけである理由を、陸運部隊に同行していた中級魔族が必死で説明している最中らしい。


 だがこれはもうダメだな、柱の影に居る数体の上級魔族から感じ取ることが出来る怒りのオーラ、そして溢れ出す魔力、下っ端の偽王国兵はもちろん、中級魔族も皆殺しにされるのは確定だ。


 もっとも、ここで偉そうにしている上級魔族も、本拠地に戻れば下っ端で、今回の残念な結果を受けて処刑されたり、そうではないにしてもボコボコにされたりするのかも知れない。


 まぁ、上級魔族が下っ端たり得る組織というのは魔王軍、それも中枢に程近いトップクラスのエリート組織ぐらいしかないのだが……と、セラが穴から下を覗く俺の袖を引っ張る……



「ちょっと、今下はどんな感じなの? 黙ってないで教えなさいよね」


「う~む、あの雑魚偽王国兵共はキッチリ揃っているんだが、やっぱり相手の方がしっかり見えないんだよな……」


「ちょっと交代してよ、私が見たら見えるかも知れないわ」


「セラよ、場所や角度が変わらないなら見えないのも変わらないんだぞ、誰が見たって同じ……いや、敵の場所を動かしてやれば良いのか……」



 覗き穴からはちょうどユリナの尻尾の先が出せる、つまり攻撃が出来るということだ。


 先に狙いを定めておけば、偽王国兵の1匹をピンポイントで狙い、焼き殺すことが可能であるはず。

 何の前触れもなく、突如として仲間が、そして取引の相手が焼け死ぬ、それで驚き、動き出さない敵はまず居ない。



「ふふんっ、ここは私の出番ですの、さっきので感覚は掴みましたし、次はブラインドでも余裕で当てられますわよ」


「おう、だが失敗して肝心の取引相手の方に当てたりするなよ、奴等にはまだ聞かなくちゃならないことが山ほどあるんだからな」


「大丈夫ですの、それに別の意味でも大丈夫ですの、もし当たっても一撃じゃ倒れない相手ですわ、そういう感じが伝わってきますの……」


「確かに、見えなくても強いのがわかるぐらいだ、ちょっとやそっとじゃ死なない可能性が高いな、まぁ何にせよ気を付けることだ」


「はいですのっ、ではいきますわよっ!」



 先に穴を覗き込み、敵の位置取りを把握するユリナ、10秒程度で狙いを定めたようだ、人族の偽王国兵の中で1匹だけ、このままでは殺されることを察してか出口側に寄っていた奴を殺すようだ。


 下手に危機を察知した分、逆に『見えない敵』から真っ先に狙われることになるとは。

 なんとも哀れな奴だとは思うが、犯罪者であることに変わりはないため同情はすべきでない。


 すぐに穴から顔を離し、今度は尻尾を突っ込んだユリナ、向きを調整し、凄まじい量の魔力をその先端に込める……



『あっつっ! あ、アギャァァァっ!』


『どうしたっ!? うわっ、えっ?』

『おいっ、そいつ何で焼け焦げてんだっ!?』



 ユリナがスッと尻尾を抜き、熱くなった先端を口元に持って来てフーッと、まるで銃口から上がる煙でも吹き飛ばすかのようにしたときには、既に俺達の下で大パニックが発生していた。


 突如熱いと言い出し、たちまち外はこんがり、中はふっくらと焼かれてしまった敵のうち1匹。

 どこから誰がやったのかもわからない連中にとっては、そもそもどうしてそうなったかすら理解が出来ていないはず。


 それはもちろん、柱の影に居て姿の見えなかった上級魔族も同じことだ。

 奴等はおそらくこれが魔法によるものだとわかっているのであろうが、攻撃者の場所まで特定することは困難。


 やはり焦って動き出したようだ、そこを、ちょうど穴の横に座っていたセラが覗き込んで確認する……



「あっ、取引相手の魔族が見えているわよ、死体の横、何か調べてるみたいだわ」


「おう、それでどんな感じの奴なんだ? 俺にも見せてくれ」


「はい、ちょっと驚いたけど、これはまた子どもを買い集めた理由が恐ろしい感じの奴なのよ……」



 少し顔が青くなっている様子のセラ、驚いたというよりも恐怖を感じた、そういった方が良さそうな雰囲気だ。

 どういうことかと俺も穴に顔を近づけ、セラに言われた通り床に転がる死体の方を……とんでもないことじゃないか……


 見えていたのは何というか、そう、ドラキュラである、人の血を啜るバケモノそのままの姿、俺の知っているドラキュラのように、十字架やニンニクが嫌いなのかは不明だ。


 いや、そういえばあの格好はどこかで見たことがある……そうだ、セラとミラの故郷の村で戦ったヴァンパイアと似通ったビジュアル、痩せ細っているため少し違って見えたが、奴等はどう考えてもヴァンパイアである。


 すぐに普段から存在を忘れがちな俺のチート能力、対象物鑑定を使う。


 確かにヴァンパイアだ、痩せて血の気のない、そして覇気のない見た目だが、上級魔族の、そして最後に残った四天王と同じ種族、ヴァンパイアなのであった。


 子どもや獣人を好んで購入するヴァンパイア、そこから想像出来るのはとても口に出しては言えない、ギュッと生で絞ってその生の血をグラスに……


 考えたくもない光景だ、まるで煮干の出汁でも取るかの如く、人間の子どもを大量に消費してどうのこうのとやっているヴァンパイア、自分が犠牲になるわけではないのだが、その光景を思い浮かべるだけで吐き気と頭痛と眩暈と、あとは言いようのない怒りがこみ上げてくる。



「……とりあえずだ、敵が混乱しているうちに邪魔な連中を全部排除しようか、それはユリナがやるとして、ヴァンパイアは……5人か、よし、3人は殺して残りを生け捕りにするぞ、噛まれないように気を付けるんだぞ」


「ちなみに勇者様、たぶんだけどゾンビと違ってヴァンパイアに噛まれてもヴァンパイアになったりはしないわよ」


「そうなのか、でもまぁとりあえず噛まれたら痛そうだから用心するように、ではユリナ先生、先鋒をどうぞ……」



 ヴァンパイアに噛まれてもヴァンパイアになってしまうことはないようだが、それでも歯型が付くし血は吸われるし、最悪の場合患部から口の中の変な雑菌に感染してアレな事態になりそうだ。


 強いとはいえ俺達にとっては足元にも及ばない敵であるわけだし、そうそう噛まれたり、その他の攻撃をまともに貰ったりすることはないはずだが、回復役のルビアが檻の中であり、おそらくこちらから指示を出さないと動いてくれないということを考慮し、慎重に立ち回るべきである。


 気を付けようと心に決めたところで、ユリナによる人族の敵、即ち偽王国兵の始末が完了した、あとついでに陸運部隊に同行していた中級魔族もブチ殺したらしい。


 ということで残るはヴァンパイアの5人、全員野郎であるがゆえ手加減など要らない、殺すべきは殺し、生け捕りにするにしても完膚なきまでに叩きのめしてやろう。



「ご主人様、もう行けますのよっ!」


「おうっ、じゃあマーサ、覗き穴の周りをブチ抜いて下に降りられるようにしてくれ」


「はいはいっ!」



 既に袖を捲って準備万端であったマーサの一突きにより、穴の空いた床の周りは一気に崩壊、そこから飛び降りた俺達は、慌てふためいている敵のヴァンパイア5人と対峙する。


 それと同時に、地下室の隅に置かれていた檻が吹っ飛ぶようにして破断、中から被害者を演じていただけの、本当は超強い5人が姿を現す。


 ヴァンパイア共は全てを悟ったようだ、旧聖国領での被害者を逃がしてしまったという襲撃も、その被害者がなぜか5人だけ残ったことも、そしてたった今、取引相手や部下が突然焼死したことも、全てが俺達によって仕組まれていたものだと。



「き……貴様等は一体何者なのだ? 矮小な存在の貴様等が、高貴な種族である我らヴァンパイアに楯突くとどうなるのかぐらいはわかっているのだろうな?」


「おいおい、偉そうなこと言いながら足が震えてんぞ、てか漏らしてんじゃねぇのか? で、その高貴な種族のお前等がどういう無様を晒すか、ちょっと見てみようぜ」


「何をっ! おのれ貴様等、我らに対してその口の効き方、この場で成敗してくれるわっ! キィェェェッ!」



 誠に滑稽な奇声を放ちながら飛び掛って来る5人の、いや5匹のヴァンパイア。

 確かに元々は魔族の中でも上位なのであろうが、栄養失調でガリガリの状態ではその本来の力も発揮出来ないのであろう。


 良い感じに重なっていた2匹をセラの風魔法が切断、1匹を精霊様の放つ水の弾丸が貫通。

 残りの2匹は俺が足蹴にして地面に転がし、逃走を防ぐため膝をカチ割っておいた。


 ヴァンパイア共はもちろん、千切れたり何かに貫通された程度で死んでしまうことはない。

 というか風の刃で綺麗に真っ二つとなった1匹は、その上半身のみならず下半身も未だに活きが良い有様。


 それをユリナが焼き払っていくのだが、ほとんどが炭になった状態でもまだ生の部分が生きているという、途轍もない生命力を発揮しているではないか。


 俺はサリナと2人、合流した被害者役の仲間達の健康状態を確認しつつ、殺害予定の3匹がこの世を去るのを待った。


 ユリナの魔法で完全に炭化し、リリィとマーサによって踏み崩されたところで、ようやく敵ヴァンパイアの反応が索敵から消える、不死ではなかったのだが、それにしては本当にしぶとい連中だ。


 これならどんな拷問をしても簡単に死なれてしまうようなことはないはず、生きていさえすれば回復魔法で元通り、というわけにはいかないもののある程度は治癒する、つまり責め放題、情報吐かせ放題ということである。



「よし、じゃあそこで苦しんでいる2匹を引き摺って、一旦屋敷へ帰ることとしよう、こいつらなら人身売買の黒幕に程近い存在だと思うからな」


「……最悪の結果じゃないと良いんだけど」



 誘拐された子どもや獣人を買っていたのがヴァンパイアであったことは、この先に待ち受けているであろう事件の結末が悲惨なものである可能性を地味に向上させている。


 そうではないと良いのだが、今は何とも言えない。

 とにかくこの2匹を締め上げて、北の魔族領域に居るという本来の買い手の情報を引き出そう……

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