464 誤算は突然に
「さて、どんな攻撃からいこうかしらね?」
「おいおいちょっと待てよ、俺としてはお前みたいな可愛らしい子、引っ叩いたりしてはいけないと思っている、だからここは穏便に済ませようじゃないか、金ならいくらでも払うぞ、王女マリエルがな」
「あら、予想以上に効いているわね、これなら楽チン、やったわっ!」
「えっと、何のことでしょうか?」
「いえいえこちらのことよ、それで、お金払って降参して、二度と魔王軍と敵対しないと約束してくれるのよね?」
「あぁ、ん? あれ? え~っと何だっけ? 魔王軍? 俺馬鹿だからわかんねぇぞ……」
俺が魅了され、戦う意思を喪失している感じを出していると、初球からいきなりクリティカルな要求をしてくる四天王アンジュ。
そういうのはもう少し段階を踏んだ方が良いと思うのだが、功を焦るこの女にはそれが通じないらしい。
よってその場は適当に誤魔化しておいたのだが、この後も度々同様の要求をしてくるに違いない。
うっかり口を滑らせて言質を取られぬよう、演技を続けつつも慎重になっておく必要がありそうだ。
そしてもうひとつ注意すべきは、アンジュが未だに魔力を高めた状態、つまりはいつでも強力な魔法攻撃を放つことが出来る状態にあるということ。
骨抜きになって何も出来ない俺をボコボコにし、圧倒的勝利を飾ろうと目論んでいるのは間違いないが、さすがに魅了された演技の範囲内でそれをまともに受けようとは思えない。
というか、喰らえば一撃でアウトの可能性もある、これまでのように重傷を負うとかそういう次元ではなく、防御せずに受ければ一瞬で消滅。
いや、もしかしたらこの世界に俺が存在していたこと自体を、転移時に遡って無効とされるような、つまり俺という勇者が生きていたことすら人々の記憶から消し去ってしまう、完全消滅となりかねない。
アンジュが全身に纏っている魔力はそのような突拍子もない、わけのわからない結果を想像させる程度のものなのだ、まさに桁違い、異常なのである。
と、そこで蚊帳の外にされていたもう1人の女性、おそらく次に戦うことになるのであろう赤髪のヴァンパイアが口を開く……
「あ、あのっ、私はちょっとお邪魔みたいなので……その……今日は帰りますねっ!」
「あぁどうも、えっと……空とか飛ぶんだ……」
背中の黒い羽をバサバサと羽ばたかせて宙に浮かび上がるそのヴァンパイア、次第に高度を上げ、部屋の高い天上付近にある、最も大きなステンドグラスの前まで移動する。
そこで羽と両手をバッと広げる、次の瞬間、ステンドグラスは粉々に砕け散り、その破片がキラキラと輝きながら舞う。
完全にガラスを失った窓枠にスーッと消えて行くヴァンパイアの女性、完全にラスボス級のキャラによる退場演出だ。
物語中盤で顔見せのために現れたラスボスが、余裕をかましながら主人公達の前から姿を消す、その類の行動なのである。
「……あ~あ、またガラス修理しなきゃ、あの子、いつもああやって退場していくのよね」
「え? 敵とか誰も居ないときでもか?」
「うん、留守中に来て書き置き残しつつガラスを粉々にしていくこともあるわよ、普通に玄関から帰ったことは一度もないわ」
「迷惑な奴なんだな……」
しかしここで迷惑なのはアンジュにとってのみだ、俺達に取ってはラッキー。
今のヴァンパイア女性の一連の行動により、気が抜けたアンジュの魔力が落ち着きを見せたのである。
ここから攻撃魔法を発動しようという場合には、おそらく一定のタメが必要になるはず。
その隙を突けば魔法をキャンセル、場合によっては昏倒させることも可能であろう。
やれやれといった感じで再び玉座に着いたアンジュの前に立ち、とりあえず魅了されているフリを続ける……
「それでさ、お前は宿敵魔王軍の大幹部だけどさ、それでも可愛いから叩きたくないと思って、どうだろう、ここは話し合いで解決など」
「良いわよ、こっちが一方的に有利な内容なら、それから話し合いの後ボッコボコにさせてくれないかしら? 一応実力、武力で勝ったってことを対外的にアピールしたいのよね」
「う~ん、ボッコボコか、まぁ他の仲間、つまり女の子達に手を出さないってんなら受け入れても良いかもだけど……」
「言ったわねっ! だったらこれを喰らいなさいっ!」
俺が完全に魅了されていると思い込んでいるアンジュ、玉座に着いた状態から跳び上がり、拳に魔力を込めたパンチを繰り出す。
これは魔法なのか物理なのか、魔力の塊をぶつけて敵を葬り去る感じゆえ、どちらかと言えば魔法攻撃なのかも知れないが、高く跳ねたアンジュが俺の目の前に到達するまでのごく短時間で、その実態を完全に把握することは出来なかった。
だが、ひとつだけ俺にも、そして周りを囲む仲間達にもわかったことがある。
アンジュはモーションを始めてから一瞬だけ、拳に魔力を集中させるために停止したのだ。
もしそれがなければ、俺がアンジュの動きを察知したときには既に手遅れ。
回避や完全な防御は叶わず、ただダメージを軽減するための受身を取るぐらいの行動しか出来なかったはず。
そして周りの仲間達も、その攻撃から発生する衝撃波や飛び散った破片などの飛来物、そういったものをまともに浴びて大ダメージを負っていたに違いない。
全ての攻撃要素をどうにか回避出来るのは、着弾点から最も離れた後衛の位置で比較的素早い精霊様と、前には居るものの恐ろしく素早いマーサぐらいのものか、カレンも動きは速いが、この状況では避け切れないであろう。
そんなアンジュの攻撃に一瞬の隙が出来たのは不幸中の幸い、周りの仲間はとっさに身を引き、俺は例の力、緑色に輝く賢者だの仙人だのといった連中が振るっていたのと同じ力を拳に溜め込む。
刹那、アンジュの魔力を纏った拳と、俺の突き出した緑色のオーラを纏った拳がぶつかり合う。
凄まじいエネルギーの爆発、一般人がこの場に居れば、今の熱量だけで黒焦げ、いや燃え尽きてしまうかも知れない。
その生じた凄まじい力は、俺の足を床にめり込ませ、敷いてあった黒とピンクの小さなタイルを浮き上がらせる。
なかなかの押さえ込みだ、だが次の瞬間にはその圧力も終わりとなった。
全く攻撃に集中していた、まさか俺が反撃をしようなどとは夢にも思わなかったアンジュ、そのわりと小さな体が、衝撃に耐え切れず弾き飛ばされたのである。
吹っ飛び、高い天井に直撃、バウンドして壁に、さらに反対側の壁に……スーパーボールか何かでしょうか? とにかくそこら中にぶつかり捲りながら落下するアンジュ、敵ながら大丈夫なのか心配だ。
「……はぎゃっ! ほげっ! ふごっ……きゅぅ~っ」
「おう四天王さんよ、ナイス着地だぞっ!」
「上下間逆ですが、天地無用じゃなくて良かったですね」
「な……何なのよ一体、全然魅了されてないじゃないの、しかも魔力じゃない変な力が……」
5回、6回と壁でバウンドしたアンジュは、もといた玉座へ綺麗に、しかし逆さまに着地した。
上になった足は半開き、尻尾は絡まり、食い込んだパンツが丸見えになっている。
それでもまだ動くことが出来る、普通に喋る、そして当たり前のように起き上がって来るのはさすがとしか言いようがないが、とにかく俺による先制攻撃、いや先制カウンター攻撃は成功したのだ。
与えたダメージの方はそこそこ、今のを10回繰り返さないと『やっつけた』とは言い得ない程度であるが、敵を驚かせ、混乱させることに成功したのだから良しとしよう。
起き上がり、再び俺の前にやって来たアンジュ、頭から足まで、怪訝そうな顔でジロジロと眺めてくるのだが、そんなに見られると恥ずかしいのでやめて頂きたい。
「うむむむっ、私の徹底したリサーチによると、異世界勇者は馬鹿でマヌケでエッチだから他の男共よりも遥かに魅了され易い、10分と持たずに支配出来るって結果が出てるんだけど、違うの?」
「フハハハッ! 俺にもかつてはそういう時代があったさ、だが今の俺は一味違う、今こんなに可愛らしいサキュバスの前に立っていても……」
「立っていても?」
「こうだぁぁぁっ!」
「ひゃっ!? 危ないじゃないのっ……って、ちょっと、あの待って……きゃぁぁぁっ!」
話している最中に、不意打ちで聖棒を振り下ろしてみた、とっさに避けたアンジュであったが、尻餅をついてしまった。
当然追撃である、聖棒に触れ、その効果で大ダメージを受けたアンジュは、まるでバネのように跳んで後ろに逃れた、いや、痛みで飛び上がっただけか。
「もうっ! どういうことなのよ一体?」
「どういうこともこういうこともあるか、まぁ秘密を教えてやらないこともないが、それはお前を張り倒して縛り上げた後だ、皆、そろそろ畳むぞっ!」
『うぇ~い!』
「何よもうっ! こっちだって負けないんだからっ!」
ここで本格的な戦いが始まる、今までのはお互いに様子見、それでもアンジュの方は大ダメージを負ったのだが、とにかく本気で、正々堂々とぶつかるのはこれからだ。
まずは今最も警戒されているであろう俺が先頭に立ち、例の力を限界まで宿した聖棒を前に突き出して牽制する。
あまりやりすぎると強烈な眠気に襲われ、それこそ敗北してしまうのだが、ここのところ何となく『倒れないギリギリ』の感覚が掴めてきたような気がしているのだ。
もちろん聖棒に込めている例の力を使って攻撃するなど、何らかの形で霧散させてしまうようではその後が続かない。
ゆえに無闇に使ったり、飛ばしてしまったりは出来ないのだ、今ある分を見せ玉のようにして、さもこの力が無尽蔵にあるかのように振舞うべきなのである。
そしてその思惑通り、俺を最も警戒して距離を取らんとするアンジュ。
俺の後ろからはマリエルが槍を突き出し、両サイドからはミラとジェシカがジリジリ詰めていく。
カレンとマーサはいつも通り後ろへ回ったようだ、後ろからは後衛組がキッチリ狙っているし、これでほぼほぼ包囲は完了、あとは俺以外の誰が仕掛けるかだが、それは敵の動きに応じて決めることとしよう。
そのためにもまずは、アンジュがどちらかへ動くように仕向けなくてはならない。
このままではいつまで経っても膠着状態だし、せっかく包囲したのにこちらから動くというのも馬鹿馬鹿しいため、向こうから立ち位置をズラしてくれると助かるのだ。
というわけなのだが、ここで軽く挑発したらどうなるかな? それに乗ってこちらへ来るか、それとも冷静に、俺が何かを仕掛ける可能性を考慮して後ろ、そして横にズレて予想される攻撃の射線上から離れるか、とりあえずやってみよう……
「おいどうしたよ四天王第二席さんよ、こんな棒切れにビビッてんのか? 思っていたより遥かにヘタレだな」
「ヘ、ヘタレとは人聞きが悪い、ビビッてるんじゃなくてちょっとね、何というかアレなだけよ、前情報になかった要素が多すぎて……」
「そうか、それは大変だったな、で、これからどうするつもりだ?」
「どうするって言ったってね、それはもうアレよ、何とか実力で勝利するのよ」
額に冷や汗を光らせながら後退りするアンジュ、こちらから見て左後ろ、カレンが張っている方に向かった。
おそらく背の高いマーサは辛うじて確認出来ているものの、小さいカレンはそこに居ないと思っているのであろう。
下がった先で爪武器の短い間合いに入るアンジュ、まるで捕食動物が潜んでいるとは知らずに歩く小動物。
カレンが一歩踏み出し、アンジュの背後に一撃を加えんとする……
「えぇぇぇぃっ! あっ!」
「きゃっ、嘘でしょっ!? 髪の毛が……」
だがその危機察知能力は異常な高さを誇っていた、風圧なのか振動なのか、とにかく何かを感じ取り、背後から迫った見えていないはずの攻撃を回避するアンジュ。
カレンの爪に引っ掛かったピンクの髪がハラハラと舞う、本当に惜しい、紙一重であった。
とはいえハズレはハズレ、すぐに体勢を立て直したアンジュは、またしても拳に魔力を集中させ、それをy床に叩き付ける。
カッと光り、それと同時にタイルが、まるで手榴弾の中に小石でも詰めてあったかのように飛散、その中心の間近に居たカレンはひとたまりもなく、地面に伏せることしか出来ない。
そこへ今度は七色に光る魔力を凝縮した何かをぶつけようとするアンジュであったが、すぐに反応したミラによってカレンは引っ張られ、間一髪でその場から退避させられたのであった。
再び炸裂する床、今度は炎と氷に雷、さらには無駄に水や砂粒を撒き散らしながら、爆風を伴うわけのわからない爆発が巻き起こる。
火水風土、そして氷と雷の魔法を全部乗せた欲張りセットのようだ、あんなものをまともに喰らったら戦闘不能に陥るのは必至、最悪の場合全回復までに数時間を要する重傷を負うかも知れない。
「何で避けるのよっ! もう誰でも良いわ、あんたが喰らいなさいっ!」
「きゃっ! いやぁぁぁっ!」
そう考えていたところでジェシカが喰らった、しかもモロにだ。
吹っ飛ばされ、壁に思い切りぶち当たってしまったのだが、鎧を着ていたお陰で重傷は免れたようである。
フラフラと立ち上がったものの顔が赤い、先程の悲鳴が女の子女の子していたのは聞こえていたのだが、まさかそれが恥ずかしくて戦闘中に赤くなっているのではあるまいな。
しかしこれでカレン、そしてカレンを退避させたミラ、ジェシカの3人がアンジュ包囲網から離脱。
残った俺とマーサ、それと前に出たマリエルで3方向を囲むも、明らかに隙間だらけである。
精霊様とリリィには前に出て貰おう、そうしないと壁を抜けられ、後ろでいつでも魔法を撃てる状態にして待っているセラやユリナに攻撃されてしまう。
後衛に居た2人にアイコンタクトをし、前に出るよう指示を出す。
特に巨大なドラゴンの姿を取っているリリィは必要だ、後ろの守りが薄い連中を守るために、強靭な壁として活躍して頂きたい。
そして、俺は今一度アンジュの気を散らす作戦を取ろう、先程ヴァンパイア女性が意図せずしてやったようにだ。
最初のカレン、次いでジェシカと、2人を簡単に排除し、調子に乗り始めたアンジュ、再び隙を作り、こちらが攻撃するチャンスを獲得したい、そのためには話し掛けるのが一番であろう……
「なぁ、お前の魔法凄くない? ウチのユリナも4種類はいけるんだけどさ、氷と雷も、ついでに言うと全部同時に出せるのはヤバいと思うわ」
「あら、他からはまとまりがないとか言われるのに、まさか敵に褒められるとは思いもしなかったわ、でもっ!」
「あいでっ!」
「やんっ!」
「痛いですのっ!」
「バレバレでしたか……」
褒めて煽てて、その隙に攻撃を仕掛ける作戦を、アイコンタクトだけで立てた俺達。
後ろから飛び掛ったマーサ、リリィを乗り越えるようにして魔法を放とうとしたセラとユリナ。
だがアンジュには全てお見通しであったようだ、3人にはそれぞれ地面から生えた土魔法の出っ張りに弾き飛ばされ、セラとユリナの魔法も霧散してしまった。
さすがは四天王第二席、恐ろしい強さと素早さ、そして戦闘慣れもしているようだ。
正面からぶつかって歯が立つ相手ではないことはもう明らか、だが俺達にはもうひとつ、最後の秘策が残っている。
攻撃を終えて元の警戒姿勢に戻ったアンジュに対し、俺は緑色のオーラを纏った聖棒で斬り、いや殴り掛かった。
もちろん俺如きの素早さでは簡単に回避されてしまう、だがこれはフェイク。
その後ろからマリエルが、俺の脇腹を掠めるようにして槍を突き出す。
敵どころかむしろ俺に刺さりそうなのだが、この攻撃も直前で察し、ヒラリと回避してしまうアンジュ。
当然ですがこれもフェイクです、本命はアンジュの真後ろから鞭のようにしなりながら迫るリリィの長い尻尾、そのフェイクを回避したところで死角から飛び出すカレンである。
「やぁぁぁっ! 二度目のチャンスですっ!」
「なっ!? あなたいつの間にっ……と、嘘ちょっと待ってっ! イヤッ、尻尾が……」
一番最初に攻撃を受けてダウンし、ミラによって退避させられたカレン、そしてそれ以降、ルビアが回復魔法を使っていた感じはない。
だがそれもフェイク、アンジュが見ていたのはサリナの魔法で映し出された幻術のルビア、ホンモノはその幻術の影で、負傷したカレンをせっせと治療していたのである。
俺達のことを良く調べ、ルビアが回復魔法の使い手であることを把握していたアンジュであるが、またしてもその事前リサーチが裏目に出た、この戦いで二度目の誤算、そして最初に続く二度目のピンチだ。
サリナによる幻術は、カレンとジェシカがダメージを負った直後から展開されていた。
そしてアンジュがそちらを、幻術の偽ルビアをチラチラと確認していたのを俺は知っている。
もちろん微動だにしない偽ルビア、それを見たアンジュはこう考えたはずだ、『ガチでヤバめの重傷を負わない限りは回復しない』と。
だからマーサとセラ、ユリナを吹っ飛ばしたとき、魔法を土魔法のみに限定して威力を抑え、下手にダメージを与えて3人が全回復するのを防いだのだ。
そのまま俺達が諦めるまで、ジワジワと重なる生傷の痛みに耐え兼ねてギブアップするまで、地味な攻撃と、それから俺達の攻撃に対するカウンターを重ねていこうと考えていたはずのアンジュ。
今はもう、カレンの爪武器に尻尾を絡め取られ、首元にマリエルの槍を突き付けられ、全く身動きが取れない。
セラとユリナも再び攻撃魔法の準備をしたし、精霊様は無駄に指の骨をゴキゴキと鳴らして威嚇している。
「さて、完全に詰んだと思うんだけどな、まだ何か抵抗めいたことしてみるか?」
「……ちょ、とりあえず尻尾はやめて、何かめっちゃピリピリするし、ね、お願いだからさっ」
「ダメだな、カレン、この女が少しでも怪しい動きをした、またはしそうだと判断した場合は容赦なく尻尾を引っこ抜いてやれ」
「はーい、じゃあもっとギュッと引っ張っておきます」
「ひぃぃぃっ! 痛い、それ超痛いからっ!」
カレンはさらにアンジュの尻尾、悪魔の尻尾のピンクバージョンであるその細い尻尾を引っ張り、まるでドライヤーの持ち手に電気コードでも巻くかの如くグルグルと爪武器に巻き取っていく。
もう完全に動きを封じられたアンジュ、どうしてここで降参を宣言しないのだ? 慎重な性格だと思ったのだが、これはまだ何か打開策があるということか……




