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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十章 西方拠点
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392 丙丁

「お肉美味しいですっ! 赤身大好きっ!」

「こっちの脂身もなかなかですっ!」



 今日も宿泊所には食材が用意されていた、しかも肉は赤身をリリィ用に、脂身多めのものをカレン用にといった感じで切り分けてあり、完全に俺達の好みをリサーチしたとしか思えない状況である。


 だがあるものは食べるしかない、毒が入っているわけではないのだし、警戒して食べずに腐らせるのは人としてやってはいけないことだ。


 何者かは知らないが、こんなことをしてくれている『良い奴』には感謝しないとだな、まぁ、たぶん敵だし、最後には殺すことになるのであろうが……



「それで、本当に明日はどうやって戦うんだ? このままだと何もしないでいきなり土下座降伏されそうだぞ」


「ねぇ勇者様、それならそれで良いんじゃないかしら? 別に戦わなくちゃならない理由なんてあるの?」


「あったんだよそれが、ちょっと考えてみろ、戦わずして勝利しました、では話の盛りようがない、つまり盛って盛って盛りまくった死闘の話を王宮でして、それに基づく報酬の請求をだな……」


「確かにそうね、まぁ勇者様のほぼ10割増の武勇伝はだいたい見抜かれていると思うけど、不戦勝じゃあまり期待出来ないわ」



 ということで、翌日に控えた丙丁との戦い、それを如何にして中身のあるものにするのかという議論を重ねる。


 もちろんこのままでは拙い、相手がビビッて攻撃などしてこないからだ。

 いくら現実に戦ったとはいえ、何もしてこない相手を一方的に痛め付けただけでは不戦勝と何ら変わらない。



「あそうだ、最初に相手のターンを設ければ良いのよ、ほら、余裕があるときなんかにするじゃない『そっちからどうぞ』ってやつ、それをだいたい10秒ぐらい、相手に与えるの」


「精霊様、それでもあの2人は攻撃してこないと思うぞ、きっと必死に謝って規定時間が経過してしまうはずだ」


「大丈夫よ、ちゃんと攻撃しなかったら、無気力試合ということで罰を追加するって言っておけば、向こうだって必死になって攻撃してくるはずよ」


「なるほど、じゃあそれでいこうか、最初の10秒、相手方に『フリー攻撃タイム』をくれてやると」


「あと、攻撃してきたらしてきたで、『反抗の意思アリ』ということでお仕置き追加よ、これならどっちに転んでも面白いことになるわ」


「さすがは精霊様だ、そういうところは抜かりないな」



 作戦も決まったということで、その日のバーベキューも早めに切上げて風呂に入り、ここ2日間と同じベッドに潜り込む。


 そういえばシーツも毎日交換してあるんだよな、マリエルが食い散らかした菓子の袋なんかもしっかり片付けてあるし、恐ろしくサービスが行き届いている。


 本当に誰なのかと、そろそろ疑問に思う気持ちが最高潮に達しているのだが、もしかしたら丙丁の2人が何かを知っているのかもだ。


 明日の討伐後、新しく生まれ変わろうとしているこの村を案内させるついでに、それとなく聞いてみよう。

 まぁ、メインは温泉施設の概要についてなのだが……そこまで考えたところで旧に瞼が重くなり、意識が遠のいていった……



 ※※※



「やぁ2人共、おはよう」


『お……おはようございまーっす!』


「うむ、楽にしてよろしい、まずは昨日の約束だ、あのポンコツ馬鹿の首はどういう感じで処理したのか見せてみろ」


「こちらになります、まだ生きていて、完全に命を失うまではあと1週間程度を要します、ですがご安心下さい、その間オットーのスカポンタンは地獄の苦しみを味わっていますので」


「ほう、それはなかなか」



 白パンツで清楚系の丙が差し出したガラスケースのようなものには、温泉の原液らしき液体と、それに浸され、苦悶の表情を疲労する乙野朗の首。


 全体的に黒く変色しているし、ジワジワと泡も出ている、これはゆっくりじっくり、コトコトと貸されている最中ということで間違いないな、苦しんでいるのも一目瞭然だし、実に気分が良い。


 その首入りケースはゲートの横に置いておき、いよいよ丙と丁を痛め付ける番だ。

 俺がスッと2人の方に向き直ると、同時にビクッと痙攣し、丙に関しては半ば意識を失ってしまった。



「おいそこの丁、丙を叩き起こすんだ、お前らにも攻撃のチャンスをやる」


「チャンス? 要らないってばそんなのっ! 目を瞑っているから早めに終わらせてよ……」


「む、何か知らんが御幣のある表現だな、まぁとにかくそれはダメなんだ、お前らと『死闘』を繰り広げないと、俺達の報酬請求権とかほら、わかるだろう大人なんだからさ」


「……つまり報酬のために私達を利用する、そういうことだよね? ちょっと最低だよ」


「そうだ、だが人も魔も、お互いに利用し合って生きているんだ、それを否定するというのはナンセンスだよ、ここは黙って利用されておいて、後から機会があったら俺達を利用すればいいじゃないか、己の利益のためにな」


「意味がわからないし、まさかあなた、自分が賢いと信じている馬鹿ね……でも良いわ、攻撃はする、けどそれで怪我したからって怒らないでよねっ! ほらヘイリーン、起きてっ」



 何か知らないが元気っ子タイプの丁にディスられてしまったではないか、賢いと思っている馬鹿? 俺はそれには該当しないな、だって『賢い』のではなく『天才にして究極』なのだから……



 それからしばらくして、ようやくはっきりとした意識を取り戻した丙と、無駄にやる気満々になってしまった丁を引き連れ、昨日乙を始末した丘へと向かう。


 途中、2人は丁の話によって今回の勝負、というよりも蹂躙に、自分達のターンが与えられるということを確認していた、しかし、それを知って余計にビビッてしまったようだ……



「ティーナ、良く考えてみて下さい、この方達、私達が攻撃したら、その報復だと言って残虐な方法で処刑を……」


「大丈夫よ、怪我しても文句は言わないって約束したもの、アレが四天王様の言っていた異世界勇者みたいだし、女神に背くようなことは絶対にしないはずだわ」


「だと良いんですが……というかアレ、本当に勇者なんですか? あんなのが正義を振りかざして暴れていたら、それこそこの世の終わり、人も魔も揃って滅亡ですよ……」


「だよね、魔王様がアレをどうにか排除しようと躍起になってるのも頷けるよ」


「おいこらそこの丙丁、全部聞こえてんだよっ!」


『ひぃぃぃっ! どうか命だけはっ!』



 後ろでセラとルビア、それから精霊様がクスクス笑っている、そして前でもジェシカが。

 だがジェシカよ、お前は俺の間合いに入っているのを忘れるな、後ろからサッと迫り、鎧の下からはみ出た柔らかい尻に手を添える……



「喰らえジェシカ! 尻肉捻り潰しっ!」


「いったぁぁぁっ! 痛いぞ主殿、笑って悪かったから、頼むからここで捻り潰すのだけはやめてくれっ! いやぁぁぁっ!」


「どうだ、参ったかっ!」


「参った、降参だ降参、だから歩けなくなるようなことはやめてくれ……あ、それは続けて……」


「ふんっ、正義は必ず勝利するのだ」



 解放したジェシカの尻肉をポヨンポヨンしながら丘を目指す、今度は後ろから突き刺さるような視線が……丙と丁が『なんて野郎だ』と言わんばかりの顔でこちらを見ている……


 そこから少し歩いたところで、ようやく丘の上に到着した。

 さて、この辺りで今日の勝負、俺達全員対丙丁2人のアツいバトルを始めることとしよう……



 ※※※



「じゃあ最初の10秒間、いや2人居るから20秒間にしようか、そこがお前らのターンだ、チャンスを与えられたことに感謝しながら、なるべく周囲の自然に被害を及ぼさない攻撃方法を選択して使用すること、わかったな?」


『わ、わかりました……』


「では準備が出来たら教えてくれ、ここで1分間の作戦タイムとする、はい、よーいスタートッ!」


『えっ!? ちょっとそんな急に……』



 慌ててしゃがみ込み、作戦を立て始める丙丁、もちろん何をやっても無駄なのだが、ここで一矢報いてやろうということなのであろう、真面目に相談をしている。


 が、30秒もしないうちに2人共立ち上がる、どうやら話がまとまったようだ。


 作戦会議にしては早すぎる終了なのだが、仲間同士の2人であること、それに何をやっても勝ち目などないことを考えれば、サッと終わらせて攻撃を始めるというのも良い選択肢といえよう。


 立ち上がった2人は俺達に向かって垂直に並ぶ、黒パンツ、物理攻撃主体の丁が前に、白パンツで魔法攻撃主体の丙が後ろに、といった感じである。


 果たしてこれで何をするつもりなのか……



「い、いきますよっ! ティーナ、準備は良いですかっ!」

「準備完了! 私達の全身全霊を込めた一撃、見せてやるんだからっ!」



 どうやらコンビネーション技を使うようだ、まずは後ろの丙、全身の魔力を掌に集中させ、それを発射……することはなかった、前に立った丁にそのまま注ぎ込んだではないか……


 次いで丁も全身の力を解放、丙の分と合わせた魔力が、その小さな体から溢れ出さんとばかりに渦巻き、それは丁の纏うオーラとなって可視化する。



「いっくよぉぉぉっ! でぇぇぇぃっ!」


「……!? 拙いっ!」



 拳を突き出し、勢い良く飛び出した丁、狙いはもちろん俺だ、そのスピードは予想を遥かに超え、とっさに反応した俺は、うっかり聖棒を構え、それで受け止める姿勢を取ってしまった。


 だが直前で気付く、もしこのまま突っ込んで来る丁を受け止めたらどうなるか?

 魔族にとっては触れるだけでも大ダメージのこの聖棒、それにあり得ないスピードで突っ込んでしまうのだ。


 最悪殺してしまうかも知れない、もし死にはしなかったとしても、深刻な後遺症や長い期間に渡る昏睡状態など、介護なしでは生きられない状態に陥ることも考えられる。


 それはアウトだ、丙から恨まれる程度では済まないし、場合によっては俺達が勇者パーティーとしての活動を停止し、丁が元気になるまで付きっ切りで面倒を見てやらねばならない可能性も低くはない。


 何よりも、その状態でベッドに転がる丁を見ているのは耐えられないことであるはずだ……



 と、突進する丁の到達までの間に、まるで走馬灯の如くそこまでのことが頭に浮かんでしまった俺。

 すぐに聖棒を引っ込めるも、与えられた残り時間はそれで限度一杯であった。


 突き出した丁の拳が、その凄まじいスピードを維持したまま俺の鳩尾に入る……



「ほげぇぇぇっ! や……やられた……」


「ちょっと勇者様大丈夫!? そっちの子もっ!」


「だ……だいじょ……うぶっ、おぇぇぇっ!」


「ダメね、ルビアちゃん、先に勇者様から治療してあげて、こっちの子は気絶しているだけだわ」


「な……なん……か……負けた……みたいで……」


「いえ、この感じは普通に負けているわね、WINNERはこっちの元気っ子よ」


「・・・・・・・・・・」



 まさかの事態である、とっさに俺が危険を回避したためとはいえ、まさか味方であるはずのセラによって俺の敗北宣言が出されるとは。


 まぁ良い、突っ込んで来た丁は気を失っているし、すべての魔力をその丁に委譲した丙も身動きが取れず、その場にへたり込んでいる。


 治療が終わり次第、さっさと2人を縛り上げて、改めて俺達が勝鬨を上げるのだ、もちろん俺達の圧勝として。

 予想外の一撃を喰らったのは俺だけで、全体的にはほぼノーダメージなのだからな。


 というか、勇者パーティーは常に勝者でなくてはならない、このひとつの事象を挙げ、敵に対して『内容では勝っていたよね』とか言わせてはならないのである。


 とにかく、今は治療を受けることに専念しよう、あまり余計なことを考えていると治るものも治らなくなるに違いない。


 そこからは全体重をルビアの膝枕に預け、半ば眠ったような状態で全回復を待った……



 ※※※



「……ん? はっ!? 寝ていたのか、で、どうなった?」


「ご主人様以外は全員ノーダメージで戦闘終了です、ご主人様以外は勝者となりました、それからご主人様以外は……」


「ルビア、調子に乗っていると夕飯を抜きにするぞ、デザートは1週間支給停止だ」


「ひぃぃぃっ! ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」



 必死で謝罪するルビアを無視して周囲を見渡す……まだ戦闘のあった丘に居るようだ。

 すぐ脇に敷かれた布には、未だ意識の戻らない丁と、頭に冷たい水の入った皮袋を乗せられた丙が寝かされていた。


 丙の方は意識の混濁と発熱程度の症状らしいし、丁も心配する必要はないそうだ。

 とにかくどうにかなったな、色々と危なかったが、最後は丸く収まったといえよう。



「よいしょっ、じゃあ宿泊所に戻ろうか、この2人は担架でも作って乗せて行くぞ」


「あぅぅぅ……わ、私は起きられます……」


「そうか、じゃあ馬車まで歩いてくれ、無理そうなら遠慮せずに途中で言うんだぞ」


「はぁ~い……」



 丙には身長が同じぐらいのジェシカが肩を貸してやり、丁は即席で作った担架に乗せ、村のゲートの前に停めた馬車へと向かう。


 一旦宿泊所へ行き、丁が目を覚ますのを待ってこの後のことを決めよう。

 丙はそろそろ大丈夫そうだし、場合によっては1人だけ連れ出して村を案内させるのもアリだな……


 馬車に乗り込んだ俺達は、念のために丙も座席に寝かせ、村の中へと戻って行く。

 途中、丙がスッと体を起こし、心配そうに仲間である丁を眺めていた。



「こら丙、お前は大丈夫なのかよ? ちなみに丁も何ともないらしいから、あまり心配しなくて良いぞ」


「私はもう大丈夫です、魔力の回復は早い方ですから、でもティーナはちょっと遅めなんですよ、少し分けてあげても良いですか?」


「構わんが、お前ら魔力を他人に分け与えたり出来るのか? それって練習すれば俺達にも可能なことなのか?」


「ええ、特にスキルを用いてということではありませんので、練習すればその辺の人族にも可能ですよ、ただ修練を積まないと変換効率が悪くて大損になります」


「なるほど、練習を重ねれば良いんだな……ルビア、はさすがに貰う方専門が良いな、セラ、ユリナ、サリナ、ちょっとやってみたらどうだ?」


「あ、私やってみます、幻術攻撃が通用しない敵と当たったとき、私だけ何も出来ないのはちょっとアレなんで、せめて姉さまとかに魔力の供給をしようと思います」


「そうか、じゃあサリナは確定として、セラとユリナも話だけぐらいは聞いておけよ、もしかしたらすげぇ役に立つかもだからな」


「暇だったら付き合うわ、暇だったら」

「面倒臭いけどやってみますの」



 サリナ以外はあまりやる気がない様子の『魔力融通訓練』、これはまた落ち着いたらやれば良いであろう。

 そんな話をしている間に丙から丁への魔力供給は終わり、少しすると丁が目を覚ます……



「……あれ? 私達……そうだっ! あの男だけはやっつけたんだった! やったぜ!」


「もしもし、その男ならここに居ますよ、さすがにあの程度で死んでいたりはしませんよ」


「げぇぇぇっ! す……すみませんでしたっ!」



 飛び上がって土下座する丁であったが、馬車内の世論はその丁に同情的である。

 こいつら、未だに俺が敗北したなどという不当な見解を採択していやがるのか……



「おーい、もう着くから荷物を降ろす準備をするんだ~っ」


「わかった~、、よし、今日で一旦ここの宿泊所ともお別れだ、明日からはもっと良い場所に移動するからな、馬車から持っていく荷物は最小限にしろよ」



 宿泊所に到着した俺達は荷物を降ろし、すぐにバーベキューの準備を……今日も食材がてんこ盛りだ。

 しかもこれはアレだな、丙と丁の食べる分も追加されている感じだな。



「おい丙、丁、お前らここに毎日食材を運び込んだり、ベッドメイキングをしている奴が誰なのか知っているだろ? 直ちに答えないと叩くぞ」


「えっ? 知りません、本当です」

「私も知らない、てかこの宿泊所、来たの初めてだし」


「そうなのか……まぁ、でも食材は食材だ、今日も有り難く頂いておこう」


「ちょっとあなた達、正体不明の者が用意した食材を毎日食べていたというのですか? だとしたら正気を疑いますよっ!」


「いや、そんなこと言ったってな……」



 こちらには精霊様という強い味方も居るし、毒物やその他ヤバいモノに関してはカレンやリリィ、マーサだって気が付くはず。


 そういった仲間を持たない連中にとってはおかしなことなのであろうが、この程度は俺達勇者パーティーにとっては些事。

 金もないため、喰えるモノは喰えるときに喰っておく主義なのだ。



「とにかくお前ら、今日はもう疲れたし動けないだろう、明日、朝からこの村全体を案内して貰うぞ、というか、鎖で繋いで牽き回してやる」


「何かもうあんまり怖くないね、良く考えたら私達の勝ちだもん」

「そうですね、良く考えればですが、私達の攻撃を受けて吐きそうになっていた人ですもの、もう何の脅威も感じません」


「き……貴様等ぁぁぁっ! 覚悟は……ん? ミラとアイリスか、どうしたんだ?」



 俺がブチ切れて丙丁の2人を超絶フルボッコ処刑しようとしていたところ、食事の準備を終えたらしきミラとアイリスが宿泊所の中へと入ってきた。



「勇者様、そろそろ昼食兼夕食の支度が整いますから、バーベキューコンロの周りに用意した席に着いて下さい」


「わかった、よしお前ら、食事を取らせてやるからこの俺様に感謝するんだぞ、わかったか?」


「はいはい」

「えぇ、そのぐらいは素直に感謝しておこうと思います」


「・・・・・・・・・・」



 完全にコケにされてしまった俺であるが、明日1日、この2人にはとんでもない罰を与え、再び服従の気持ちを取り戻させることとしよう。


 そう思いつつ宿泊所の建物から出る、バーベキューコンロの周りに設置された席は『勝者用』として肘掛けの付いた豪勢なもの、そして『敗者用』として粗末なものが2脚。


 ……おかしい、勝者用の椅子が1つ不足しているではないか、もしかするとアイリスが数え間違えて……違った、コンロからかなり離れた場所に、『圧倒的敗北を喫した誰かさん用』と書かれたみかん箱が、それはもう見事にポツンと設置されているではないか。


 素直にみかん箱を使用する道を選んだ俺は、リベンジを誓い、復讐の鬼となる道を同時に選択したのであった……

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