27 姉妹の故郷と国境の砦
「へっぷしっ!」
「はい風邪薬、それを使えば2時間ぐらいで治るわ。」
「そんなに即効なのか?やばいクスリじゃないだろうな?」
「大丈夫よ、あ、飲むんじゃなくて紙を丸めて鼻からいくのよ。」
その服用のしかたにはかなり抵抗があるのだが…
風邪薬を使うとあっという間に風邪の諸症状は消えていった。
魔法薬馴れしていない異世界人にはよく効くようだ。
俺は昨日の宿で一人で寝させられ、風邪を引いた。馬車の中で誰かに遷せば良くなるだろうと思ったのだが、こんなに凄い薬があるとは。魔法薬万歳である。
「しかしまだ寒いな、ルビア、カレンを貸せ!」
「イヤですよ、捕まえたのは私ですから、ご主人様とはいえお譲り出来ません。」
カレンのご主人様も俺なのだが…
まぁいい、セラで我慢するか。
「セラ、抱っこしてやるからちょっと来い。」
セラを抱え、暖を取る。固いが何も無しよりも少しはマシだ。
ちなみに馬車のバランスが悪いので俺とミラが場所を代わっている。
だからセラを堪能しながらミラの揺れるおっぱいを監視することも出来るのである。
「ミラ、村に着いたら早速2人の実家まで案内してくれ。一応今の状況を説明しておきたい。」
「今の状況と言いますと、勇者様がお姉ちゃんを抱えて全身を弄っている状況のことでしょうか?」
「違う、帝国うんぬんのことだ。今やっていることを公にされたら俺の名声は地に落ちる。」
「勇者様、地に落ちるどころか既に地下に居るわよ…」
「黙れ、尻をもぎ取るぞ!」
「いちゃぁぁぁ~ぃ!」
馬車は進んでいく、もうすぐセラとミラの故郷の村に着くようだ。
王都から離れるごとにどんどん道が悪くなり、今は完全なボコボコ道になっている。
俺とセラはかなり辛いのだが、肉の厚いミラやルビアはそこまでダメージが無いように見える。
「ミラ、平気なのか?ルビアも…」
「勇者様、私は平気ですよ。最初は知り合いの商人の奴隷でしたから、勉強のために行商に付いて行ったりしました。そのときにこういうタイプの馬車に慣れました。」
今回乗っているのは王都を走る高級な感じの馬車ではなく、どちらかというと荷馬車寄りである。ちなみに幌が付いているし、片面に2ヶ所穴が空いて窓みたいになっているよくわからない馬車だ。
そして座席は固い…
「私はお尻がかなり痛いですね…でもこの痛みもなかなか良いと思います。」
ルビアはドMなので痛い方が良いらしい、今は石抱きならぬカレン抱きなので効果は抜群だろう。
回復魔法が使えるわけだし、ダメージはどうでも良いのであろう。
「よし、決めた!ルビア、カレンをミラに預けろ、その代わり俺を抱っこするんだ。」
こうして、俺の振動ダメージは解消された。
※※※
「ようやく着いたわ!ようこそ私達の故郷へ!」
汚ったない村であった。牛糞の香りがそこかしこに立ち込めている。どうも農耕用の牛にその辺でさせて片付けていないようだ。
それも凄い数である、ロードオブザウ○チである。
堆肥にするとかそういう発想は無いようである。
「勇者様、アレが私達の実家です。」
農機具小屋があると思ったらそれが自宅そのものであった。どんな生活をしているのだ?
セラとミラの両親が出てくる。
「やぁ、君が勇者殿?一杯やってく?」
この親父はダメだ。直ちに察することができるダメな親父だ。
「異世界勇者様、申し訳ありません、娘2人や、今のダメ亭主がご迷惑を…」
お母さんはまともだ、きっとセラが父親似、ミラが母親似なのであろう。
その日はセラ・ミラ姉妹の自宅に泊まっていくことになった。
砦は歩いて30分ほどの距離のところにあるらしい。というかどんだけ危険なところに村を作っているのだ?攻められたら最初に終わる村である。
この村の村長だというじいさんもやってきた。眉毛が髪の毛よりも多い…
100歳ぐらいであろうか?もはや何を喋っているのか、そもそも喋っているのか苦しんで救いを求めているのかすら判断できない、カッサカサの声である。
付き人兼通訳のおばさん曰く、村長が喋っているのは…
・帝国が攻めてくるらしいな
・今日はゆっくりしていくと良い
・おっぱいが揉みたい
という3つの事柄であるようだ。1つ目は肯定、2つ目は了解、3つ目には同意しておいた。
「こっちが私の部屋で、こっちがミラの部屋よ。」
部屋ではない、仕切りらしきものがあるだけだ。汚い漫喫かカプセルホテルがごときスペースである。
だが、散らかっている方がセラ、きちんと整頓されている方がミラのスペースであることが良くわかる。
ミラがあたふたと自分のスペースにあった本を片付けている。久しぶりに帰ってきたのだ、どうしてそんなに慌てる必要があるのか?
と思ったらわかった、ミラが本を落としたのである。カバーは真面目な本だが中身は全てエッチな本であった。それは慌てて片付けますよね…
その様子を、仕切りの上からセラが見ていた。
勝ち誇ったような笑みである。
「ミラ、またそんな本を隠し持って…後でお母さんに言いつけておくわ!干し柿の横に吊るされることね!」
「ま…参りました、お母さんには黙っておいて下さい。」
珍しくセラがミラに勝利したようだ。秘蔵のエッチな本を一冊献上されたセラはご満悦である。
王女様も泊まるということでミラとお母さんが必死に片づけをしている。
俺とルビアとリリィ、それから姉妹のダメ親父は一杯やることにした。
他はミラの蔵書であるエッチな本の鑑賞会をしている。カレンすらも興味津々だ。
「いやぁ、俺は戦えないから帝国が攻めてきたら家を捨てて逃げるしかないんだよな。まぁ、そのためのボロい家なんだわ!」
違う、家がボロいのはお前がろくに働かないからだ。
姉妹の親父は上機嫌である。なんといっても勇者パーティーを宿泊させ、その報酬が国から出るのだ。
さっきまで高級な酒のカタログを見ていた。いくつかマルが付いている、きっと通販で頼むつもりだ。
そもそも今飲んでいるのも俺達が土産として持ってきた酒である。究極のダメ人間だ。
「そうだ勇者殿、我が家に伝わる伝説の武器を持って行くか?細い剣がたくさん付いていて強そうなのだが、イマイチ使い方がわからんのだ。勇者殿なら使いこなしてくれると思ってな。…ほら、これだ。」
千歯扱きじゃねえか!普通に農業で使えや!
使い方を教えてやると、ダメ親父は大層喜んでいた、今までどうやって脱穀していたというのだ?
夜、昨日の宿よりも寒い、隙間風とかではなく壁に大穴が空いているのであった、せめて塞げよ。
もはやこれは野宿となんら変わりのない状況だ。
だが今日はベッドではない、そんなものこの家には無いのだ。
およそ布団とは呼べない代物の中で、ルビアとマーサに挟まれて幸せな夜を過ごした。
「おい、今度はルビアが向こうを向け、マーサはこっちだ。あとルビア、他人の家で全裸で寝るのはやめろ。」
マーサの尻尾に飽きたので、今度はそのおっぱいと、反対側はルビアの尻を堪能することにしたのだ。
どちらもパーティー中で最高クラスに柔らかい逸品である。
その夜は、交互に向きを変えさせ、完全に寝落ちするまで弄り続けた。
※※※
「じゃあ、ここからは歩いて砦に向かいます。ありがとうございました!」
手を振る姉妹の両親に別れを告げ、最終目的地の砦に向かって歩き出す。
どうも山を登っていく必要があるようだ。運動不足の俺にはかなり堪えるであろう。リリィの背中は荷物で一杯だしな。
「おいセラ、ホントに30分で砦に着くのか?こんな山の中で、砦なんてあるようには思えないのだが?」
「ちゃんとあるし大体30分で着くわよ、大体だけれども…」
「30分過ぎたら1分経過するごとにミラにカンチョーするからな。」
「勇者様、何故私なんですか?お姉ちゃんにしてくださいよ!」
「わかった、連帯責任だもんな、2人共覚悟しておけよ。」
後ほんの少しで砦に着くというところになって30分が経過した。
精霊様とリリィが面白がって2人にカンチョーしたため、歩けなくなってしまった。
こんなところで荷物を増やさないで欲しい。
「お~い!勇者パーティーだ~っ!救援に来たぞぉ~!」
砦の門が凄い音を立てて空いた。中から知らないおっさんが出てくる。
ここは騎士の女の子とかが出てくるべきなのだが、どうしてこんなに汚いキャラを設置したのだ?
「ようこそ異世界勇者殿、マリエル王女殿下、ささっ!中へどうぞ!」
「おや?後ろの2名はぐったりしているようだが、大丈夫でありますか?」
「ああ、この2人は無策につき罰を受けただけだ、気にしないで欲しい。」
ふざけてカンチョーされましたとは言えない、適当に誤魔化しておく。
「この砦の守備は1,500人と聞いていたのだが、そこまで多くないように見える。まだ到着していない兵が居るのか?」
「いえ、現在半数の兵が食中毒を起こし、順番で便所にてキバっております。皆ウ○コがシャーシャーだとのことです。」
自信満々で告げる内容ではないと思うのだが…
「何を食ったんだ?」
「行商人が持ってきたという、珍しいキノコを夕飯に使いました。」
「ここの連中は帝国人の姿を見たことがあるか?」
「いえ、全員田舎者につき見たことがありません。」
おそらくその行商人というのは帝国兵だろうな。人数が多かったからこのぐらいの被害で済んだが、仕官だけでそのキノコを食べていたらこの砦は終わりであったはずだ。
「あっ!見て見て、やっぱりセラとミラだっ!」
女性兵士が何人か駆け寄ってくる。セラとミラもそっちに行ってしまった。
どうやら村の友達らしい。近隣の町や村で戦える者は女子共関係なく徴兵されているようだ。
国の兵士を出せば良いのに、駄王は何をしているというのか?ああ、酒飲んで寝てるのか。
「全く、徴兵されてきた者共は呑気で困っているのですよ。帝国が攻めてくるというのに…」
「良いだろう、今ぐらい好きにさせてやるべきだと思うぞ。」
「ところで俺達の部屋はどこだ?案内して欲しい。」
「ハッ!大部屋と個室、どちらに致しますか?」
「大部屋が良い、王女や精霊様もそこに泊まるわけだから一番良い部屋にしてくれ、あとパーティーで秘密の会議をしたいから遮音性の高い部屋で頼む。」
別に王女も精霊様も関係ない、俺が良い部屋に泊まりたいのだ。ここ2日程酷かったからな、あと遮音性も会議ではない、エッチなことをしたいからである。
「わかりました、ではこちらの部屋をお使いください。」
うむ、スウィートルームである。これはなかなか良い、屋根も壁もある、穴が空いていたりもしない。
早速ベッドの場所決めをする。遊びに行ってしまった姉妹の分も決めておこう。
「俺はいつも通りカレンとルビアと3人で寝る。」
「じゃあ私はその隣ね、セラちゃんは反対の隣にしておきましょう。」
「よし、どっかに行った2人が戻ってくるまで待機だ、その後は皆で砦を探検しよう。」
「ふふっ、この砦の弱点を魔王様に教えてあげようかしら…」
「精霊様、マーサを鞭で打って良いぞ。あと服が破れると困るから全裸にしてやれ。」
マーサが処刑されている間にセラとミラが入ってきた。
「よし、マーサのお仕置きが終わったら皆で砦を全部回るぞ。」
※※※
砦は狭苦しかった。さっき入ってきたのと反対側、つまり国境側は谷になっており、そこを塞ぐ形で作られたのがこの砦のようだ。
「両隣は高い山だな…セラのおっぱいも見習った方が良いんじゃないか?」
「寝ている間にお股の突起物をもぎ取るわよ。」
「なら俺はその前に貴様の残り少ないおっぱいをもぎ取る、右と左、どっちが良い?」
セラは逃げ出した。
「リリィはここから飛び立つことにしよう。あ、地面に名前は書かなくて良いぞ。」
「カレンはここから飛び降りていくことにしよう、でも帰りはどうしようか…」
「大丈夫です、地味に登ってきます。」
それはかなり格好悪いのだが、本人がそれで良いならよしとしよう。
「マリエルはあの真ん中の椅子だ、指揮官っぽさが出て良い感じだろう。俺はその横に立つから何でも聞いてくれ、エッチなことでもちゃんと答えるぞ。」
戦闘になった際のポジションは決した。後は敵と後続の味方がやってくるのを待つだけだ。
敵が近づいてきたら砦の兵士が教えてくれるらしい。
そうなったらセラとミラは兵士を何人か連れて村に戻る、村の友達を連れて行くべきだろう。
砦の中は通信兵が走り回っていた。オンライン会議とか無いから大変だね。
戦争が近いので何ともいえないが、そんなに急ぐ必要があるのだろうか?
外側の部屋の壁に空いている窓というか穴からは弓矢が放てるようになっている。
食事や談笑などしながら気が向いたら敵を射るのであろうか?
砦の一番高いところにマリエルの紋章が入った旗を掲げる、しかも直筆サイン入りである。
これで誰が見ても王女が大将であることがわかる。
ちなみにこの旗は砦の兵士の中でMVPを決めてその者にあげることとなった。
兵士達は超気合が入った、だが空回りだけはしないで欲しい。
ついでに精霊様とリリィが付くポジションには賽銭箱を置いた。どちらの方が多く賽銭を集められるか競う予定だ。もちろん収益は全て俺の懐に入る。貨幣を装備することによって俺の防御力は格段に上昇するはずだ。
「よし、これで一通り回ったな。」
「ご主人様、拷問部屋には行っていないのですが?」
「そこは行かなくても良い。」
「…クッ、殺せ!」
せっかく練習したのにこんなところで使ってしまって良いのであろうか?
※※※
風呂はまさかの男女別であった。
こういうイベントなんだからせめて風呂ぐらい女性兵士達と一緒に入りたかったのだが…
見渡す限り筋肉である、細身なのは俺と新人っぽい兵士ぐらいのものだ、気持ち悪い。
「勇者殿、この戦いに勝算はあるのですか?どうもこの人数差では…」
敗北主義者が何やら言っている、処刑ですよ処刑。
「帝国人を見たことがあるそうですね、どのような敵なのでしょうか?やはり、強いのですか?」
いえ、超弱いです。
「とにかく帝国兵は腰抜けだしこの戦いには絶対に負けない!」
大本営みたいなことを言ってしまった。まぁいい、実際負けはしないのだからな。
さすが勇者様などと賞賛の声が聞こえてくるが、ムキムキのおっさん達に褒められて喜ぶ俺ではない。早く女の子達に囲まれたい、さっさと上がろう。
部屋に戻ると既に女性陣は戻ってきていた。特別に先に入らせてもらったらしい。何故俺はそうならないのだ?異世界勇者だよ俺?どうもこの世界は勇者には厳しいようだ。
マリエルがカレンとマーサの尻尾を乾かしていたので指導してやる。
「いいかマリエル、カレンは尻尾の付け根を触ると気持ちよくなる、マーサは尻をぶっ叩いてやると良い。」
まずはカレンの方から手本を見せる、尻尾の付け根は本当に弱いのである。あまりやりすぎると脱力してふにゃふにゃのダメ狼になってしまうので、そんなに長くやらないようにと注意しておいた。
マーサの方は簡単なので手本は省略した、尻丸出しになって準備万端で待っていたマーサに肩透かしを食らわせてやることが出来、大変気分が良い。
ミラがルビアの髪を乾かしていたのでちょっかいを出し、その後はリリィと遊ぶ。
「ご主人様、一度全力ブレスの試し撃ちがしたいんですが、今からやって良いですか?」
「そうだな、外に行って実験しよう。守備隊長にも伝えてくる。」
外に出ると、既に兵士がわらわらと集まっている。ドラゴンのブレスを見る機会など滅多に無い、というかここに居るような一般人には生涯無い。
皆が目を見張る中、大きく息を吸い込んだリリィが炎を放つ。
「これは3回ぐらいで全滅させられそうだな…精霊様も何かやってみるか?」
「わかったわ、出せるだけ水を出してみる。こっちには来ないようにするから安心してちょうだい。」
渓谷はダムに変わった、黒部ダムとか池原ダムとか、その次元だ。こっちは一回で戦闘が終わりそうな勢いである。
それを見ていた兵士達は勝利を確信したのであろう、祝勝会の店を予約し始めた。
居酒屋に向けて走る通信兵、どんだけ扱き使われているのだ?
※※※
「え~、それでは勇者パーティーエッチな本鑑賞会を始めます。」
部屋に戻った後は、昨日発見したミラ秘蔵のエッチな本の確認である。
セラが勝手に持って来ていたのだ、ミラは縛って猿轡を噛ませてある。
「ご主人様、この本は私も同じ物を持っています。」
ルビアが言う、確認すると変態本であった。
「ちなみにこっちはシルビアさんの書いた本よ!」
変態本であった。
「勇者様、この本もすんごいアレですよ。」
変態本であった、というか悉く変態本であった。
他のメンバーは昨日のうちに確認していたのであろう、嬉しそうに俺に報告してくる。
一方のミラは真っ白に燃え尽きて魂が別の異世界を旅行している。
「セラだけでなくミラまで変態だったとはな…」
「勇者様、ミラはむっつり変態スケベなのよ。今後はこのネタでいじっていく方向で調整するわよ。」
積年の恨みを晴らすセラ、遂に証拠が挙がったのである。今後の姉妹の上下関係は正常なものに戻るのかも知れない。
「よし、かわいそうだから今日はこのぐらいにしてあげよう。」
「イヤよ!今日はこの変態ミラを徹底的に責め抜いて姉の尊厳を取り戻すのよ!」
「そうか、じゃあマリエル、昨日セラがミラに献上させていた本を出してくれ、この後はそれを重点的に確認しよう。」
「はい、『ご主人様におねだりしたい秘密のお仕置き全集 第6版』ですね。」
セラの魂は異世界に旅立った…




