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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第八章 ゴーレムの城
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221 恐怖のType-G

「狙いはセラみたいだぞ、念のため風防を張れっ!」


「はいはい、どうせたいしたことないわよ」



 適当な感じで風防を張るセラ、そして上空からそこへ突っ込む中ボスのデビルゴーレム。

 風の力でその突撃は完全に封じられ、逆にゴーレムの体から角や尻尾が剥がれ落ちる。


 弱い、羽も半分取れかかっているではないか……



 そもそも威勢の良いことを言っておきながら近接武器を持たない後衛の、それも俺達勇者パーティーの中で最も痩せっぽちのセラを狙ったのだ。


 その内面はたかが知れている、きっと凄まじく雑魚なのであろう。



「マリエル、2人で羽の根元を突くぞ!」


「はい、じゃあせ~ので」


「せ~のっ!」



 俺のアタッチメントを取り付けた聖棒、そして超強力な鳥の嘴を使ったマリエルの槍。

 その2つが同時に敵の羽の根元を捉える。


 俺の方は魔力を失った繋ぎ目がポロリと剥がれ、羽が丸ごと落ちる。

 マリエルの方はもう周囲の体ごと粉々に砕け散ってしまった。


 羽を失い、さらには風防によって様々なパーツを失った中ボスは地面に墜落する。


 角も尻尾も羽も、そしてマリエルの突いた側は腕も失った中ボス、開始早々ではあるが、既に満身創痍の様相を呈しているではないか。


 ちなみに戦闘開始からここまでの所要時間は5秒から10秒といったところだ、弱すぎてお話にならない……



『ウグゴッ、ギギギ、貴様等にはここを通る資格があると認めよう、さぁ、先へ進むが良い』


「じゃあ金の鍵を出せ、というかお前を殺さないと手に入らないんじゃないのか?」


『それは、えっと……その、アレだ、先へ進むが良い』


「誤魔化すんじゃねぇよ、お前死にたくないだけだろ?」


『・・・・・・・・・・』



 ダンジョンで出現するゴーレムといっても、中ボスとラスボスに関しては命を持った魔族である。

 そして明らかに器の小さいコイツは、敗北すれども死を選ぶ気概がないようだ。


 ならばこちらから能動的に引導を渡してやろう。

 アタッチメント付き聖棒を前に突き出し、その首を狙う……



『だぁぁぁっ! ちょっと待った、いや待って下さい、すみませんでした、本当に申し訳ございませんでした! マジで調子に乗っていたと深く反省しております』


「だからどうした?」


『いえ、だから殺さないで、お願いしますだ奇跡の異世界勇者様!』



「おいエリナ、コイツを殺さずに先に進むことが出来るか?」


「……いえ、ちょっと無理ですね、そもそもこういうときには死ぬ前提で高額の危険手当も支給されていたわけですから」



「ということだ、残念だったな、来世はミジンコにでも生まれると良い、死ねっ!」


『そ、そんなぁ~っ! あべほっ!』



 魔族とはいえ所詮はゴーレムタイプ、その他の魂すら持たない連中と同様、体の繋ぎ目は大変に弱くなっているらしい。


 聖棒で突いた中ボスの首はポロリと外れ、ゴロンと音を立てて地面に落ちた。

 だがこの状態でもまだ生きているようだ、必死で命乞いを続けている。



『もう無理っす、マジで勘弁して下さい、良いじゃないですかこれで……』


「ダメだ、貴様がこの世を去らないと金の鍵が出ないんだよ、そのつまらん命と俺達の貴重な時間、どちらが大切かわかるだろう?」


『いや、つまらんって、その……へごっ!』



 地面に転がりながらも喋り続ける中ボスの頭に聖棒を当て、力を込めて一気に打ち砕く。

 頭の中にあった中枢か何かを破壊され、ようやく生命活動を止めたようだ……



 天井が空き、見え見えのワイヤーで吊るされた宝箱が降りて来る。

 今回は裏方の隠蔽が杜撰だ、部屋の隅でエリナがハンドルを操作してそれを行っているのが確認出来た。



 というかあれを降ろすだけならわざわざ情けない中ボス野朗を殺すことはなかったんじゃないか?

 まぁエリナにはエリナの考えがあってのことであろう、それか魔王軍には何らかの決まりがあるのかも知れない。



 とにかく中ボス攻略は完了だ、セーブポイントは……この部屋の中にあるのか……



 普通に考えればボスにチャレンジする部屋の手前にあるのが妥当と言えるセーブポイント。

 だがここに限ってはボス討伐後に到達出来る位置に存在していた。



 おそらくだが、さっきの野郎はもう負けること前提でそこに置かれていたのであろう。


 もし俺達が中ボスの手前で一時帰還しようとした場合、エリナはもう少し先に進むことを強く勧めたはずだ。

 アイツには死んで欲しかったんだろうな、きっと……



「さて、これ以上行くと帰りが遅くなってしまう、今日はここまでとしよう」


「あ、じゃあ私も遊びに行って良いですか?」


「エリナ、お前敵だろうに……」


「良いんですよ、もう私が表立って戦うことはないんですから」


「まぁ良いか、じゃあ帰るから入口に転移してくれ」



 エリナのアイテムを使って洞窟の入口に戻る。

 ドレドの船に乗り込み、また2時間弱の時間を掛けてトンビーオ村へ戻った……



 ※※※



「おかえりなさい、あら、エリナさんも来ていたんですね、ということは……」


「ただいま、そう、エリナも……そうか、そうなると暗黒博士も付いて来るんだったわ」



 噂をすれば影、エリナのバッグから出て俺の肩に飛び乗る不気味な人形。

 真剣にそろそろ勘弁して欲しいのだが?



「あらあら、やけにレベルアップしていると思ったら、勇者さんから漏れ出た異世界の力を吸収しているみたいですね」


「何それ? ヤバくない?」


「大丈夫です、吸っているのは漏れ出したものだけですから、小動物にペロペロ舐められているとでも思っていただければ良いと思いますよ」


「ヤダよこんな小動物! マジで気持ち悪いわ、海にでも捨ててこよう、離岸流に乗せてやるぜ」


「たぶん塩でガビガビになって帰って来ると思いますよ、深夜に」


「・・・・・・・・・・」



 真夜中にこんな薄気味悪い輩が枕元に立つ、しかも塩でガビガビとは。

 おそらく一晩中うなされるに違いない、海に捨てるのはよそう、環境に悪そうだしな。



 背中に貼り付いて俺の異世界なんちゃらを吸収しようとするクズ人形をどうにかしようと悪戦苦闘しているうちに食事の準備が出来たらしい。


 諦めて皆と食卓を囲み、帰りに村の商店で購入した酒を飲む。


 ……そうだ、エリナを酔わせて大魔将の情報を吐かせようじゃないか。



「エリナ、今日はゲストなんだから遠慮するな、さぁもっと飲むんだ!」


「おっとっとっと、零れちゃいますよ……ちなみに酔わせても重要な戦闘情報は出ませんよ」


「何で? そんなに酒強いの?」


「じゃなくて魔術的なアレをアレして絶対に喋れないようにロックを掛けていますから、無理に喋ろうとするとアレなことになってしまいます」


「……良くわからんがすまんかった」



 アレとは何で、どのような感じのアレになってしまうのであろうか?


 気になるところではあるが、今夜は泊まっていく予定の、そして明日も案内係を務めるエリナがアレになってしまうのは拙い。


 ちょっとアレだがここは我慢しておこう。



「ところでエリナ、あとどのぐらい探索を続ければダンジョンボスに辿り着くんだ? それぐらいは答えても大丈夫だろ」


「そうですね、あと丸1日、いや出現する敵との実力差も考えると明日の午後には辿り着くかも知れません」


「そうか、今回は無駄なトラップがあったりとか迷路になっていたりとかじゃないからな、まぁ楽なのは良いことだよ」



「でもダンジョンボスに関しては少し注意が必要というか何というか……」


「ん? 今日の感じなら楽勝だと思うんだがな」


「う~ん、強さ的にはそうかも知れませんが」



 気にすることはない、いくら敵が搦め手でこようとも、今日戦った敵を基準に考えた場合にはその差を埋めることは出来ないはずだ。


 いうなれば超賢いアリがすげぇ馬鹿な象に勝てるかという話だ、まずもって勝てはしないであろう。



 ということで翌日の目標としてはダンジョンの踏破、そして余裕があれば城の方も少し見学してみようということに決まった。


 それでも夕方にはこのコテージに戻りたい、万が一上手く進むことが出来なかった場合には早めに切上げて帰還するつもりである。



「よっしゃ、明日は早めにここを出ることにしよう、さっさと寝るぞ」



 風呂にも入り、エリナの分も含めた布団を敷いて皆で潜り込む。

 とりあえずは日の出前に出発するつもりでいよう……



 ※※※



 翌日、結局完全に日が出るまでグダグダと過ごした後、島に移動して再び昨日中ボスを討伐した部屋に転移する。


 中ボスは弔われることなく、細かく砕かれて燃えないゴミの袋に3つに分けて詰め込まれていた。

 明後日がゴミの日なのでそこでだしてしまうらしい、よほど嫌われていたんだな……



 この先には小部屋が2つ、そして3つ目の部屋にダンジョンボスが居るそうだ。

 小部屋にはそれぞれタイプの違うゴーレムが多数待ち受けているという。


 昨日の中ボスはDから始まったからな、次はEだ、きっとそうに違いない。



 根拠のない確信を胸にボス部屋奥の扉から先に進む。

 敵は出現しない、その代わりすぐに1つの宝箱を発見した。



 ……いや、宝箱ではなく普通の一斗缶だ、そこの方に少しだけ油が残っている。



「あら、これはダンジョンボスの飲み残しですね、ちゃんと片付けるように言ってあったんですけど」



 などと呟くエリナ、油を飲むのか? だとしたらここのダンジョンボスはメカゴリラみたいなマシンタイプなのか?


 だとしても既に対応策は確立出来ている、エリナは見ていないが、俺達は前回の自由報道教団との戦いでイヤというほどあのマシンとの戦闘をこなしてきたのだ。



 一斗缶は無視して先へ進む20分程度歩くとようやく最初の小部屋に到着した。

 洞窟ダンジョンには似つかわしくない小さなドアが付いている、鍵は掛かっていないようだ。


 そのドアを開け、中へ入る……机が並んだ現代的なオフィスがそこにあった。

 洞窟ゆえ窓は無いものの、隅っこに置いてある観葉植物がオフィス感をより強調している。



 というかあの複合機みたいなのは何だ? 明らかにコピーとかFAXとか出来そうなのだが……



「ねぇ勇者様、ひょっとしてあれがここで待ち構えているゴーレム?」


「だと思うよ、何でゴーレムの癖にネクタイまでしてるんだよ……」



 雑に創られたゴツゴツの体、しかし十数体居る全てのゴーレムの顔部分には銀縁のメガネ、さらに首にはネクタイ、皆机に向かって良くわからない作業をしている。


 と、そのうちの1体が立ち上がり、こちらへ近付いて来た、戦闘準備だ。



『なんだねチミ達は、ここはオフィス土くれ、関係者以外の立入は禁止だよ』


「うるさいメガネ野朗、俺達は関係者だ、というか襲撃者だ」


『あぁ、変な奴の対応をしてしまった、また仕事が遅れる、また課長に詰められる……もう死のうかな……』



 下を向いてブツブツと何かを呟き出すメガネゴーレム、非生物の分際で相当にストレスが溜まっているようだ。

 というかゴーレム企業の社畜なのか?



 しかしこれでEから始まる名前を付けるとすれば……うむ、エリートゴーレムと名付けよう。

 人間の言葉がわかる時点でゴーレムの中ではかなりのエリートだろうからな。



「とにかくお前さ、死にたいなら今ここで死ねっ!」


『へっ!? あっ!』



 対応した社畜エリートの首に聖棒を突き立てる。

 エリートとはいえやはりただのゴーレム、簡単に外れた首はそのまま地面に落下した。



 地面にぶつかった拍子に高い音を立てて粉々になるゴーレムの首、どうやら頭の硬い奴であったようだ。

 そんなんだからストレスを溜め込むんですよ。



 その光景を目の当たりにし、奥で机に向かっていたゴーレムが次々に立ち上がる。

 集団で襲い掛かって……いや、我先にと逃げ出すようだ。



「逃げましたね、本当に情けない連中です」


「というかエリナ、ここのダンジョンに出てくる敵、正直弱すぎるぞ」


「予算不足でまともなのが作れなかったんでしょうね、造形よりもパワーに拘って欲しかったんですが……」


「ちなみに城の中に入ってからもこんな感じなのか?」


「いえ、それはないと思いますよ、さすがに本丸には相当のリソースを割いているはずですから」


「期待しておく……いやそれもおかしな話だな……」



 逃げ出そうとしたエリートゴーレムの大半は前衛組だけで簡単に片付いた。

 ちらほら残って机の下でガタガタ震えている奴も居るが、見つけ次第セラが魔法を使って処分している。


 あとは任せてこのまま先に進もう。

 この部屋にはたいしたお宝も無さそうだしな。



 部屋の奥の扉から退室し、再び一本道を歩き出す。

 すぐに残りゴーレムを始末していたセラとユリナも追い付いて来た。



「見て下さいですのご主人様、奴らのメガネ、フレームは純銀製ですのよ」


「おっ、多少は儲けになりそうだな、全部回収して来たか?」


「もちろんですの、人族が使うには少し大きいですが、鋳潰して売ればなかなかの金額になりますの」



 残念なことにこれが現時点でのこのダンジョンにおける最大の収益だ。

 そういえば今回は金で出来た何かを見ていない、せいぜい金の鍵ぐらいか、鍍金だろうけどな……



 その先も目ぼしい宝は見つからず、あっという間に次の小部屋に到着してしまった。

 今度は扉が無い、その代わり小部屋の天井は果てしなく高いようだ。



「暗くて上が見えないな、きっと落ちて来るタイプだ、警戒しておけよ」


「でもご主人様、何か鳥みたいなのがゆっくり降りて来ますよ」


「あ、そっち系できたか、まぁ良い、さっさと潰して先を急ごう」



 今度はカラス、いや灰色だしハトか、とにかく鳥の形を模したタイプのゴーレムらしい。

 羽をパタパタと上下に振りながらゆっくりと高度を下げてこちらへ来る。



 F……Fか、フライングゴーレムとでも名付けよう、ちょっと無理矢理な気もするが俺の中で勝手に決めたアルファベット順の名付けは何よりも重要なのだ。



 で、20体程居たうちの5体はその羽の動きに耐えられず、空中で分解して落下してしまった。

 そのまま地面に叩き付けられ、もう粉々である。



「勇者様、全部降りて来るまで待っていられないわよ、もう攻撃しても良いかしら?」


「う~ん、微妙なところだな……」



 放っておけばいずれ全てが自壊して落下しそうな気がする、それをわざわざ攻撃するというのは魔力の無駄に他ならない。


 今は少し待って、確実に地面に到達しそうな者が判明したときにそれを撃ち落せば良いであろう。

 時間も大切だがそれよりも魔力残量の方が大切だからな。



 そのまましばらく天井を見上げながら待機する。

 完全な形で地面に降り立ちそうなフライングゴーレムは……ゼロであった。



「また欠陥商品かよ、まともに戦えたのは入口の鎧だけじゃないか」


「良いじゃないか主殿、あまり強くて大きいのが出て来たら誰かさんがビビッて使い物にならないからな、ププッ」



「何だとジェシカ! お尻ペンペンをを喰らえっ!」


「きゃっ! あでっ! いたぃっ! もっとっ!」


「と、先に進まなっくちゃだったな、ジェシカは帰ったらまたお仕置きな」


「くぅっ、ここでお預けを喰らうとは……」



 変態ジェシカは放置プレーの刑に処し、さらに洞窟の奥へと進む。


 進むに従ってそこかしこに一斗缶が見受けられるようになってきた、どれだけ油が好きだというのだここのダンジョンボスは……



「全く、本当に汚い、というかアレは汚いのが好きなんですよね」


「どんな奴だよ、良くクビにならないな」


「そうして欲しかったんですが、勇者さん達が来たら殺してくれると思ってそのままにしてあります」



 誰がそんなだらしない奴を採用したというのだ? カラクリ女王はそういう輩に価値を見出すおかしな女王様なのか?



「はい到着です、ここから先はチャレンジャーの皆さんだけでどうぞ」


「何だ、エリナは入らないのか? そういうルールは無かっただろ」


「いえ、純粋に入りたくないだけです」


「どうして?」


「この中に居るのがちょっと、特に裏側の造形とか妙にリアルで気持ち悪いんですよ」


「裏側?」


「とにかく入ればわかります、では後程!」



 風のように走り去って行くエリナ、何か訳アリのダンジョンボスなのであろうか?

 とりあえずボス部屋に入ってみよう……



 目の前には質素な感じの木で出来た扉、そこに開いた穴に金の鍵を挿し込み、回して解錠する。

 ドアを開けると、むわっと生暖かい空気が漏れ出した、地味に臭い、排水溝のような臭いだ。



「ご主人様、臭いです、こんなとこイヤです!」


「ミラ、カレンにタオルを貸してやるんだ、カレンはそれを口に当てておけ」



 渋い顔のままタオルを受け取ったカレン、それを口元に当ててゆっくりと深呼吸しつつも、視線はそこかしこに移動している。



「何か居ますね、沢山」


「うん、索敵には反応があるぞ、かなりの雑魚だがな」



 と、部屋の奥の暗がりから何かがこちらへやって来る……奴がダンジョンボスのようだ、そこまで強くはない、強くはないが……その姿を見たルビアが失神してしまった……



 Gだ、ゴリラではなく台所に出現しがちな方のGである。

 しかも巨大、全長2m以上はありそうだ。



「ゆ……勇者様、あれはちょっと……」


「落ち着けミラ、良く見るんだ、体が石で出来た偽者だ!」



『その通り……我はこのダンジョンの主、ストーンゴーレムType-G也』



「いや、大層なお名前だけどお前Gじゃん、ゴ○ブリじゃん、きめぇよマジで」


『黙れ! 本来は害虫魔将の座を狙っていた我が、物質タイプというだけでこんな閑職に……』


「だからどうした? お前の存在意義なんてその程度ってことだよ」


『ぐぅぅっ、これまで苦渋を味わい、辛酸を舐め、ついでに一斗缶のそこに残った油をペロペロして過ごした我の屈辱、貴様等にも感じさせてやろうぞ!』



 最後の一斗缶うんぬんに限っては完全にGの習性だ、どうしてあんなに油が好きなんだろうな?



 さて、そんなことを考えている暇があったらこの気色悪いGを何とかしないとだ。


 その場でシャカシャカと足を動かすなど意味不明な行動を取っているダンジョンボス、何をしようというのだ? Gだけに突進して来るのは最後の最後、追い詰められた後なのか?



『出でよ、我が巣の仲間達よ! 土くれより形を成し、いざこの者共を地獄へ送らん!』



 ザッと、そこらじゅうの地面が盛り上がる、石や砂が宙に舞い上がり、それはやがて巨大な10体のGに姿を変えた。


 細部まで拘り抜いた実に精巧な造りだ、足に毛が生えているところまで。

 とても土くれから出来ているとは思えない、完全にただの巨大Gである。



 これは……これとは戦いたくない、真剣に……

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