213 お届けにあがりました
「勇者様、その格好はなかなか似合っているわよ」
「そうか、じゃあ魔王軍との戦いが終わったら出前もしてくれる何かの店を始めようか」
「そのフラッフラした動きじゃ信頼を得られないでしょうけどね……」
敵の総本山に侵入し、防御魔法使いを暗殺する作戦を決行する日の朝、俺は出前持ちスタイルで出発の準備をしていた。
仮の店名は『勇者じゃ軒』である、適当も良いとこだ。
そしてサリナを入れた岡持ちが地味に重たい。
よってフラフラと情けない動きになってしまう。
「ふむ勇者よ、準備は出来たか? そしたらこの石を持つんじゃ」
「今更だけどさ、本当に大丈夫なんだよな?」
「大丈夫じゃ、そして万が一何かあってもおぬしなら大丈夫じゃ」
大丈夫、というよりもどうなろうが構わないというのが正解であろう。
まぁ失敗したところで死ぬことはない、気楽にいくべきだな。
「じゃあ俺はこのまま防御魔法をすり抜けて行けば良いんだな、外は任せたぞ」
「うむ、では行くのじゃ、後ろから王国軍が後を追うでの」
いざ出陣である、勇ましい姿の王国軍、そしてその先陣を切るのはまさかの出前持ち。
傍から見れば理解に苦しむ光景である。
進軍開始直後、もう戦闘が始まった……
おそらく見張りのメカ細マッチョは王国軍の接近に気付いており、近付くのを待って仲間を集合させたのであろう。
わらわらと集まって来たメカゴリラとの戦闘は他のメンバーとゴンザレス達に任せ、俺と岡持ちに入ったサリナは防御魔法の壁を目指した。
しかし重たい、だが重たいなどという言葉をサリナに投げ掛けるわけにはいかない、ここはグッと我慢だ……
「侵入スポットに着いたぞ、サリナ、幻術を発動してくれ」
「わかりました、あと一応言っておきますが、もし敵にバレても置いて帰らないで下さいね」
「善処するよ」
「確証が得られない辺りが何とも言えないんですが……とにかくもう入っても大丈夫です」
岡持ちの上に空けた穴からアンテナのように飛び出したサリナの尻尾が小刻みに震えている。
全力で幻術を使っている証拠だ、これで敵の目には俺が普通の出前持ちにしか見えないはず。
雪が貼り付いた防御魔法の壁に手を伸ばす……表面に張ったごく薄い氷がポロポロと溶け、水に変わった。
その先は何も無いように感じる、不思議な感触だ。
1歩前に踏み出すと、俺の足が、体が、そして岡持ちが、何の抵抗もなくスッと中へ入る。
これで防御魔法の壁は突破出来た、この先には物資搬入用と思しき小さな門があり、それ以外は城壁だ。
すぐ傍に見えるその門、大きめの馬車1台がようやく通れるかどうかの門に近付く。
防御魔法に絶大な信頼を寄せているのであろうか、門の扉は半開き、全くこの世界はどこへ行っても無用心極まりない。
「入るぞ……」
門を通って町の中へ入る、あっさり侵入成功だ。
付近に出歩いている人間の姿は無いものの、かなり先から人の声が聞こえる。
何やら集会めいたことをしているようだ、拙いな、昨日ユリナと確認した防御魔法使いの居るスポットへ到達するにはそこを通ることになっているのだが。
いや、そこを通るどころではない、そのすぐ横がターゲットスポットなのだ。
これはもしかすると戦闘になってしまうかも知れないな……
そのままさらに接近する、やはり集会のようだ。
だが異様な光景である、武装した傭兵と思しき連中が地面に正座し、その前のステージで日とりのっさんが偉そうに吠えているのであった。
少し話を聞いてみよう……
『……良いか貴様等、貴様等は我々情報に携わる者を守るために生かされているのだ! 下賎な連中なのだ! ゆえに我々のうち1人を守るために何人が果てようとも構わないのだ!』
『へへぇ~っ! 承知しました!』
『現在、ペタン王国の軍勢がこの自由報道教団総本山に迫っておる! 奴等は我々による批判や指摘を受け入れることが出来ない残念な組織なのだ!』
『へへぇ~っ! 全くその通りにございます!』
『我々による権力に対する批判は絶対正義、しかしそれに対する権力側からの批判派邪悪な弾圧である! それを良く心に留め、死ぬまであのクズ共と戦うのだ!』
『へへぇ~っ! 自由報道教団は正義! 王国は悪にございます!』
何だアレは、強面の傭兵達が臭そうなおっさんに平伏している。
これが洗脳教育の賜物というわけか、全くどうしようもない連中だ。
あの傭兵達に真実を伝えてもまるでわかってもらえないであろうな、もうこの戦争で皆殺しにするしかない……
『ご主人様、あまりジロジロ見ていると不審に思われますよ』
「おう、そうだな、じゃあ急いで防御魔法使いを探しに行こう」
一旦下に置いた岡持ちを再び持ち上げ、群集の横をそそくさと通り過ぎる。
ただでさえ怪しい見てくれなのにこれ以上目立つわけには行かない。
演説が行われているステージの後ろにある石造りの建物、ユリナの見立てではその中心ぐらいの位置に防御魔法を発動している人間が居るという。
入口には棍棒を携えた傭兵が2人、仁王像の如く立っている……
「ちわ~、出前お届けにあがりました~」
「出前? 中で誰か頼んだのか? まぁ良い、通れ」
「ありがとうござぁ~っす」
普通は通さないだろこんな不審人物。
戦争中で、ましてや敵軍がすぐそこまで迫っているんだぞ。
そんな状況で出前とか、まず頼む奴は居ないであろう。
だがこれもサリナの幻術の効果と、それからこの2人の傭兵が信じられない馬鹿であるということに助けられた結果だ。
通してくれるというのであれば有り難く通らせて頂こうか。
入口から建物に入る、中は完全に1部屋で、数人の傭兵と武器を持っていないおっさん。
そして中央では両手を広げた魔導士風のジジィがブツブツと呪文を唱え続けている。
あのジジィが防御魔法の使い手で間違いない、周りの傭兵は邪魔だが、奴を殺してすぐに離脱してしまえば戦わずに済むかも知れないな……
と、そんなに上手くはいかないようだ。
唯一武装していない偉そうなおっさんがこちらをじっと見ている。
「おいそこの出前持ち、お前だよお前、このクズが! このホールは飲食禁止だ、このクズが!」
「いえ~、確かにここへお届けする予定だったんですが~」
「おいクズ、誰の名前で注文が入っているんだこのクズ! というか怪しい奴だな、この非常時にこんなクズの出前持ちが来るとは思えん」
鬱陶しいおっさんが俺の怪しさに気付いてしまったようだ。
それと同時に、周りに居た傭兵達も俺のことを疑いの目で見始める……
「そういえばコイツ、どうしてこんなに岡持ちが重そうなんでしょうけぇ?」
「あと右手に持っている棒切れはなんなんすかね?」
「う~む、実に怪しいクズだな、変質者の類かも知れん、取り押さえて調べろ!」
『ご主人様、もう戦うしかありませんよ』
「……しょうがないな」
「おいそこのクズ、寛大な俺様が最後にチャンスをやろうではないかこのクズめ、その岡持ちの中身を見せ、棒切れをこちらに渡して調べさせろ、さすれば殴るのだけは勘弁してやるぞ、このクズ!」
「岡持ちが重たそうなのはな……中に悪魔が入っているからだよ……」
「何だとっ!? 正気かこのクズがっ!」
「でさ、この棒切れはさ、そのでブツブツ言ってるジジィに死をお届けするために持ってんだよっ! 死ねやぁぁっ!」
傭兵も、それからクズクズやかましいおっさんも飛び越え、まっすぐに防御魔法使いを目指す。
前に突き出した聖棒がジジィの首に突き刺さり、かえるの潰れるような音と共にその詠唱が止まった。
これで町全体に張られた防御魔法の一部が損壊したはずだ。
「あぁっ! ディフェンスG27号が殺られてしまった! おいこのクズ、何をしてくれるのだ? これでは外の敵が……」
「というか俺様がその敵のエース、異世界勇者様だ、平伏して死ね!」
「あがぁぁぁっ! 待て、待ってくれ! 金も情報も好きなだけやる、だから俺だけは見逃してくれ、おい兵共、早く俺を守らぬかこの薄ら馬鹿がっ!」
振り下ろした聖棒は頭を庇ったおっさんの右腕に直撃し、肉が裂けて骨も粉々になったようだ。
それでパニックを起こしたおっさん、命乞いをするか、それとも手下をけしかけて俺を襲わせるか、どちらか一方を選ぶべきだと思うのだがな。
ちなみに棒立ちしていた傭兵達はここでようやく動き出す。
これも洗脳教育の賜物か、指示がない限りは一切動くことが出来ないらしい。
襲い掛かる傭兵……思っていたよりも遥かに強い、聖棒の一撃では絶命せず、腹に穴を空けながら再び向かってくるではないか。
もはや自分が死ぬことも、それから負傷による痛みも感じていないようだ。
ひたすらこのゴミのようなおっさんや自由報道教団に忠誠を誓い、その身が果てるまで戦い抜く所存らしい。
おそらく幼少期より外部からの情報流入を遮断され、この総本山の中で言われていることのみが絶対的真実だと思い込んで育ってきたのであろう。
ネットも電話もないこの異世界において、情報操作というのはここまで効力を発揮するものなのか……
攻撃を仕掛けてきた傭兵全員に2発、3発と突きを浴びせ、完全に動かなくなったのを確認する。
今この建物の中で生き残っているのは俺とサリナ、それからこのクズのおっさんのみ。
大小垂れ流しで震えながら後退りするおっさんからは、もう一切の威厳を感じない。
先程まで威張り散らしていたのが嘘のような、生まれたての小鹿並みの震えっぷりだ。
『ご主人様、こんな奴は早く殺して逃げましょう、増援が来たら大変ですよ』
「そうだな、だがサリナ、そろそろ岡持ちを持つ手が限界だ、出て来て自分で歩け」
『うっ……これ結構楽だと思ったのに……』
1人だけ楽をしようともそうはいかない、岡持ちの蓋を開け、中に居るサリナを引っ張り出してやった。
さて、早く逃げよう……と、おっさんを殺すのを忘れていたではないか。
「ひぃぃぃっ! 来るな、来るんじゃない! 助けてくれぇぇぇっ!」
「誰が貴様のような薄汚い輩を助けるというんだ、懺悔して後悔して、それから苦しんで死ねっ!」
おっさんの残った左腕、それから両脚の太股に聖棒を突き刺す。
大量に出血し始めた、このまま放っておけばいずれ死に至るであろう。
留めは刺さず、そのまま建物を出る。
外は既に大騒ぎだ、とりあえず最初に入って来た門を目指そう……
※※※
「ご主人様! 後ろを見て下さい、さっき演説を聞いていた傭兵達がこっちにきますよ!」
「きっと防御魔法の壁が壊れた所を目指しているんだろうな、ほら、こっちからは王国軍が来たぞ」
「両軍がぶつかる所に巻き込まれたくないですね……早めに王国軍に合流しましょう!」
走るペースを上げ、王国軍の方へ向かう、向こうも俺達に気が付いたようだ、手を振ると最前列の兵が反応を返してくれた。
先頭の王国兵の中には他のパーティーメンバーも筋肉団員も見当たらない。
ということはまだ外でメカの連中と戦っているのだな。
俺達はここよりもむしろそちらに合流すべきであろう。
すれ違いざま、王国軍の兵士に頑張れよと声を掛け、俺とサリナは最初に侵入した門から町の外へ出る。
その門は先程とは別の部隊によって周囲を破壊され、かなり巨大な穴と成り果てていた。
これならば大軍が突入することが出来るであろう、一気に攻めて敵軍を殲滅し、ついでに首魁もぶっ殺してくれるとありがたい。
「見えてきたぞ、凄い数のゴリラだ!」
「苦戦してるみたいですね、私はルビアちゃんと一緒に負傷者の救護に当たります」
「わかった、じゃあ俺は後方でお茶でも……」
「ご主人様、真面目に戦って下さい」
「すんまそん」
サリナに怒られてしまったため、休憩は返上して戦闘に参加する。
この間マリエルが発見した倒し易い敵のみを狙って薙ぎ払い、足を破壊して行動不能に追い込んでいく。
しかし敵の数が多い、見渡す限りでも1,000以上は居るんじゃないか?
「おう勇者殿、作戦は上手くいったようだな、さっさとこの不快な偽ゴリラを片付けようではないか」
「そうだな、ちなみに中に居た人間の敵はかなり強かったぞ、早く俺達が行かないと被害が凄いことになりそうだ」
「やはりか、ここの連中の強さは筋肉業界でもかなり有名だからな」
筋肉業界というのがどういう業界で、何を生業としているのかいまいちわからないものの、とにかく可能な限り早くここのメカゴリラを殲滅すべきだという見解は一致した。
そこからはひたすらにゴリラを討伐していく。
特に町の中へ増援に向かおうとする奴を中心に叩いていった。
中に居る王国兵では到底このメカゴリラには勝てない、無様に虐殺されるだけのワンサイドゲームになってしまうからな。
1時間以上は戦ったか、別の所に居たゴンザレスが俺のところへやって来る……
「おう勇者殿、俺達もかなり慣れてきたようだ、ここは任せて、勇者殿達は中の王国軍に加勢してやってくれないか」
「わかった、じゃあ俺達は行くよ、ゴリラもそうだが、要人の警護も忘れないでくれよな」
「おうっ! 任せておくんだ!」
ということでその場を離れ、もう最初はどういうもんだったのかもわからない程ガバガバにされた物資搬入口から町の中へ入る。
気が付くと敵の防御魔法は疎らになっていた、穴だらけで他の所からも用意に侵入出来そうだ。
これは王国軍が善戦しているということであろう、そうに違いない。
しかしその予想は大きく外れたのであった……
※※※
「何だこれ……皆死んでいるのか?」
「ウソみたい、さっきすれ違った人達ですよ……」
門を通ってすぐ、つい1時間前に挨拶を交わした王国軍の兵が物言わぬ死体となって出迎えた。
この1時間で突入して行ったのは3万以上であるが、この入口付近だけでかなりの数が死んでいる。
きっとここで衝突した、最初に演説を聞いていた傭兵達が殺ったのであろう。
強いのは聞き及んでいたが、まさかこれほどまでの被害が出ているとは……
「勇者様、この人まだ生きてます!」
「おうっ、ルビア、すぐに治療するんだ」
「えっ? あ、はいっ!」
死体の間に埋もれ、辛うじて意識を残したまま生存していた王国兵。
ルビアの治療を受けさせながら事情を聞く。
「とにかく……傭兵……強い……」
「他の連中はどこへ行った?」
「防御魔法使いを……狙って……」
「奥へ行ったんだな、それでここはお前らが引き受けたと」
「そう……だ」
そこまで答えて気を失ってしまった王国兵、あの傭兵達もここをスルーした部隊を追って奥へ行ったということか……
その負傷兵は建物の影に寝かせ、俺達はそのまま町の奥へと向かう。
隙間だらけになっている上空の防御魔法ではあるが、それを確認して以降、さらにその数が減ったというようなことはない。
序盤は不意を突いて術者の殺害に成功していたものの、敵方が本格的に対応した今となってはそれも叶わないということか。
むしろこの入口と同じ光景がそこかしこで広がっている可能性が高い。
このままでは逆に王国軍が殲滅されてしまうではないか。
「この道をまっすぐ行った所に索敵の反応がいくつかあるぞ、とりあえずそっちを目指そう」
建物の影で敵の姿は見えないものの、50程度がその位置に留まっているようだ。
それもかなり強い、おそらく傭兵部隊の精鋭であろう。
「ちょっと拙いどころの騒ぎではないな、セラとルビアは肉弾戦になったら勝てないかも知れない、皆で守りながら進むんだ」
「あら、そんなに強いのね」
「筋肉団の一般団員クラスの奴がゴロゴロ居る……」
「・・・・・・・・・・」
ついでに近接戦に弱いユリナとサリナも内側に寄せ、後ろを精霊様、横を俺とマリエル、前は前衛の4人で守備しながら敵に近付く。
「居ましたよご主人様、敵が沢山居ます、あとこっち見てますよ」
「バレていたか、もう向かって来やがったぞ、戦闘準備だ!」
特に騒ぎ立てることなく、真顔でこちらへ駆けて来る傭兵の一団。
凄く不気味な光景だ仲間とお互いに会話するということすらないらしい。
接敵、最初にぶつかったミラの攻撃を剣で受け止める傭兵。
だが当然武器の性能が違う傭兵の剣はポッキリと折れ、ミラの剣がその胸元に食い込んだ。
明らかに致命傷だというのに、叫び声すら上げないのか……
そのまま折れた剣で攻撃を仕掛けようとする傭兵の首をミラが刎ね飛ばす。
その光景を見た他の傭兵は……特に何事もなかったかのように突進を続けた。
そのまま乱戦になる、セラやルビアに敵の攻撃が届かぬよう、マリエルと協力して両脇を固めた。
俺達は防御主体、攻撃はその内側に居るセラとユリナが担当する。
前衛は各自手近な敵を潰し、一番後ろの精霊様は後方を警戒しながら時折水の弾丸を放つ作戦だ。
「ぐっ! 勇者様、コイツはかなり強いです!」
「こっちもよ、私のパンチを喰らって起き上がってきたのが居るわ!」
「マジかよ、ちょっと気合入れて戦ってくれ」
「ちなみに勇者様、この人を見て下さい」
「どうしたマリエル……キモッ! どうなってんだ一体?」
マリエルの特殊な槍で突かれ上半身を残してこの世から姿を消した傭兵の1人、なんとまだ戦おうとしているのだ。
千切れた体を引き摺り、武器を手に取ってこちらへ進んで来る。
本当に気持ち悪い、もはや心のないメカゴリラの方がマシなぐらいだ。
「お~う勇者殿! 大丈夫か?」
「ゴンザレスか、これが大丈夫に見えるなら目医者に行け!」
「やはり苦戦しているようだな、どうやらその連中は狂ってしまっているようだ」
「それど頃の騒ぎじゃない、もう殺戮マシーンだよこいつらは」
「う~む、このままだと敗北は必至だ、撤退命令を出させるべきだな」
「間違いない、これ以上一般兵の犠牲を出したら戦争どころか国の存続に関わるぞ」
せっかく防御魔法に穴を空け、敵の総本山に突入した王国軍。
だがもはやこれまで、一時退却し、体勢を立て直すほかないであろう。
すぐにゴンザレスが伝令を飛ばす、少し待つと城壁の外で撤退の狼煙が上がった。
白兵戦で勝ち目がないことは明らかだ、これはもっと別の作戦に出なくてはならないな。
走って逃げながらそんなことを考える。
だが何をもってすればこのイカれた連中に勝てるというのであろうか……




