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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第四章 共和国と因縁の敵
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179 防衛成功とこちらのターン

「それじゃ、偵察に行って来るわね」


「おう、また何かゲットしてくれると助かるよ」


「隙があったらサッと頂戴しておくわ」



 共和国軍の物資を強奪し、これ見よがしに宴を開いて見せ付けた日の翌日、精霊様は早速次の補給部隊の位置確認に向かう。


 現在は日も昇り、本来なら既に攻撃が始まっているような時間である。


 しかし指揮官であったハゲデブの戦死、そして物資を奪われるという悲劇に連日で見舞われた敵はあまりやる気が無く、たまに矢が飛んで来る程度。


 さすがに暇だし、ちょっとダラダラしておこう……



 精霊様を見送り、砦の上を歩いていると、マトンの指示で何かの作業が行われている。

 気になってそちらへ歩いて行くと、向こうもこちらに気付く。



「あ、おはようございます、精霊様はもう行かれたんですか?」


「うん、今出て行った、ところでそれは何をしているんだ? 酒……じゃあなさそうだな」



「これは火を吹く筒の燃料です、敵軍の物資の中にあったんですよ」


「で、使っちゃおうってか」


「ええ、もったいないですからね」



 敵軍が使っている、いや、もう壁に阻まれることを察して使用をやめた火を吹く筒。

 しかしその燃料だけは輸送されていた物資の中にあったのだ。



 箱の中にある壷を取り出し、その中に入っている液体を酒の空き瓶に移し替えている王国軍の兵士達。


 どうやらこれを投石器で飛ばして敵軍中央を攻撃してやろうということらしい。

 ちょっと実験するというので、俺もその場に残って見学しておく……



「では瓶の口に火を付けて、4本まとめて飛ばしてみましょう!」



 マトンの指示で作動する投石器、燃料の入った瓶は飛行姿勢が安定せず、4つが思い思いの方角へと飛んでいく。


 1本は不発、もう1本は誰も居ない所で炎上したものの、残りの2本はその辺に居た敵兵に当たって起爆、合わせて10人程が火達磨になった。



「まぁ、タダで手に入れた燃料とリサイクルに回す空き瓶でこれなら上々の戦果だな」


「そうですね、あとこれなら夜中に突然使って奇襲するのも良いかもしれません」



 それは良い作戦だ、こちらは投石器を操作する兵を数人残すだけ、それだけで敵軍は危なっかしくておちおち寝ていられない状況に追い込まれる。


 真っ暗な夜中であれば投石器がどこを狙っているのかも看破されにくいし、良い攻撃手段といえよう。



「では勇者様、この兵器の大量生産に移りますので、はい、どうぞ」


「おう、頑張れよ……いや、何?」


「暇ですよね?」


「・・・・・・・・・・」



 手伝わされてしまった、燃料が何か臭いしベトベトする。

 こんなの見に来るんじゃなかったぜ!



 強制労働がちょうど終わりを告げようとしていた頃、偵察に出ていた精霊様が帰還した。

 今回のお土産は缶詰がぎっしり入った木箱である、うむ、豆系が多いようだな。



「で、どうだったんだ、敵の輸送部隊は近くに居たか?」


「それがね、帰り始めていたのよ、どこかでUターンしたみたいだったわ、おそらく……」


「前回の物資強奪を伝えられたと?」


「うん、もう間違いないわ、輸送部隊よりも半島側を馬で走っている敵兵が居たもの、普通に殺したけど」



 おそらくソイツが伝令兵なのであろう、昨日俺達が敵軍の物資を持ち帰ったのを見て、港町に居る船にこれ以上何も送らないよう伝えに行ったに違いない。


 そして途中で出くわした次の輸送部隊にも戻るように言ったのであろう。



「帰ろうとしていた輸送部隊の連中はどうしたんだ?」


「そっちも皆殺しよ、物資は今持って来たの以外全部置き去り、馬はリリースしちゃった」


「そうか、でも街道沿いならわかりやすいし、また筋肉団に持って来て貰おう」



 無駄に砦の上をランニングしていたゴンザレスを捕まえ、街道沿いに置き去りにされている物資について伝える。


 ゴンザレスは部下の中から30人を選出すると、そのまま砦から降り、今度は敵陣の真っ只中をランニングして南へ消えて行った。



 ……1時間後、セラと共に敵を眺めながらのティータイムを楽しんでいるところに帰って来るむさ苦しい集団。


 馬は精霊様が逃がしてしまったため、自分達で馬車を牽いているようだ。

 殺到する敵兵を蹴散らしながら、砦の下まで辿り着く、それに対し、こちらからはロープを下ろしてやる。



「おう、全て結び付けたぞ! 上げてくれっ!」


「りょうか~い! いくぞっ、せ~のぉっ!」



 次々に引き上げられる物資の入った木箱、そして、それを呆然と眺める敵兵。

 もうほとんど戦意を喪失しているようだ、この隙に総攻撃を、などということはしてこない。



「見ろっ! 今回は酒が多いぞ、しかもかなり上等な奴だ!」



 ラベルには『祝 敵軍陥落!』と書かれている。

 おそらくこの物資が到着する頃には砦を落とせると踏み、あらかじめ送って来たのであろう。


 だが、残念なことに陥落するのは共和国軍の方だ、で、『祝』になるのはこちら。


 その場に居た兵士が1人1本酒瓶を持ち、敵に向けてその事実をアピールしてやった。



「さてさて、今日はこの酒で戦勝の前祝だな!」


「待つのじゃ勇者よ、それは明日になりそうなんじゃ」


「どうしてだ?」



「帝国の新皇帝から伝書が来ての、明日の朝には山越えしている帝国軍が敵の背後を突くそうじゃ」


「おう、ならそれで一気に殲滅だな」



 実は、俺達がここに着くよりも少し前に帝国も動き出していたのだという。


 険しい山を何日も掛けて抜け、砦を迂回して敵の南側、つまり後方に出る作戦を取ったらしい。

 つまり、明日の朝には挟み撃ちが出来るということだ。


 既に疲弊し切っている敵はひとたまりもないであろうな……



 その日はそのままダラダラと過ごし、夕食を取って風呂にも入って寝た。

 明日の朝が楽しみだ……



 ※※※



 朝だ、というかまだ明け方なのだが、外から『うぉぉぉっ!』みたいな絶叫が響き渡っている、実にやかましい。



「……誰だ大騒ぎしているのは?」


「おはよう勇者様、どうやら帝国軍が到着したみたいなの」


「まだ薄暗いのにもう攻撃しているのか?」


「だって、砦の下に居るのは敵だけだもの、同士討ちの心配は無いはずよ」


「それもそうか、ちょっと上に出て様子を見ようぜ」



 この騒ぎでも平気で寝ているルビアやマーサは放置、他の皆も面倒だというので、俺とセラだけで部屋を出て砦の上に出た。



「おう勇者殿、珍しく朝が早いじゃないか」


「この騒音で寝ている奴の方がどうかしているんだ、公害レベルの音だぞ」



 やって来た帝国軍は5,000だという、残念ながら今の帝国ではこれが精一杯だそうな。

 だが勢いだけは十分なようで、街道脇の山から続々と姿を現し、敵陣に突入して行く。



 これを受けた敵はもう悟りを開いてしまったようだ。

 その場に座ったままで斬られる者、直ちに降参する者、全員悉く目が虚ろである。



「おっと、勇者も来ておったか、こちらからも加勢するぞ、ほら、弓を取るのじゃ!」


「おいババァ、俺は弓なんて使ったことがないんだ、後ろに飛んでも知らないぞ」


「そんなことあるわけなかろうっ! ほれ、ここを引っ張ってじゃな……」



 総務大臣は俺に密着し、手取り足取り弓の使い方をレクチャーしてくれる。

 どうしてババァはお仏壇の臭いがするんだろうな……



「勇者様、下手くそ!」


「セラは直球だな、もう少し言い方ってもんがあるだろうに」


「勇者よ、おぬしはもうやらんで良い、矢の無駄じゃ……」


「はいはい、最初からわかっていただろうにそんなこと」



 俺が何度か放った矢は、全て砦の壁際、敵のいる位置には遠く及ばない地点に突き刺さった。

 走り幅跳びでももう少し遠くに着地しそうな飛距離である。


 ちなみに、なぜかセラはセンスがあるようだ、周りの連中に褒められて喜んでいる。

 これは気に食わないな、ちょっと悪戯してやろう……



 弓を目一杯に引き絞り、狙いを定めていたセラ。

 そこに背後から近付いてカンチョーをお見舞いしてやる。



「はうっ! ちょっとっ、何をするのよ!?」


「何をって? カンチョーだよ」


「全く、勇者様のせいで矢が変なところに……あっ!」



『敵軍指揮官、戦死確認!』



 セラがあさっての方向に放った矢は大きく弧を描いて飛び、偶然にもハゲデブ少将の後任を務めていたと思しき指揮官の頭に突き刺さる。


 帝国軍の攻撃を受け、奥のテントからこちら側に避難している最中だったようだ。



「今のは私の手柄ね!」


「いや、俺がカンチョーしたからだろ、感謝するが良い」



「おぬしら、ふざけておるのか真面目にやっておるのかわからんの……」



 セラが、いや俺のお陰で敵の指揮官が死亡したことにより、辛うじて戦う気力が残っていた精鋭中の精鋭達も完全に諦めたようだ。


 その場に立ち尽くすか、砦側に向かってノロノロと逃げ始める。


 他方、やる気満々で攻め込んで来た帝国軍の兵士は徐々にこちらへと押し寄せ、まるでプレス機にでも掛けるかの如く共和国軍を砦の壁付近に圧縮した。



「敵の生き残りは……全部降参したようだな」


「うむ、武器も捨てたようじゃし、我々の勝利じゃよ」


「ちょっとマリエルを呼んで来るよ、勝鬨を上げないとだろ?」


「そうじゃな、では頼むぞ」



 一旦砦の中へと戻り、部屋でまったりしていたマリエルの腕を掴んで引っ張り出す。

 砦上部の一番高くなったところへ連れて行き、そこで勝利宣言をさせておいた。


 下に居る帝国軍の兵士もそれに呼応し、辺り一面が絶叫に包まれる……やかましいからもう少し静かにやって欲しいところだがな。



 これで砦の防衛戦はカタが付いた、今日は祝勝パーティーだ。

 その後のことは明日にでも会議をして決めるのであろう……



 ※※※



 戦闘が朝の内に片付いてしまったため、その日は夜の宴までダラダラと過ごした。



「ジェシカ! ジェシカは居るかっ? おぉ、居るじゃないか、会いたかったぞぉ~!」


「父上、気持ち悪いし加齢臭が凄いから近寄らないでくれ!」



 増援に来た帝国軍の中にはジェシカパパも参加していたようだ。

 加齢臭どころかずっと山の中を行軍して来た泥だらけの服装でジェシカに抱きついている。


 リアルに臭いので先に風呂へ入るよう、遠回りにお勧めしておいた。

 部屋中に消臭の魔法薬を撒き散らしておこう……



 そして夕方になり、今朝までは敵が沸いていた砦の下に祝いの席が設けられた。

 降参した敵兵達には巨大な穴を掘らせてあり、今は指揮官クラスを除いた全員がその横に座らされている。


 雑兵は宴の余興としてこの場で生き埋め処刑、指揮官クラスは王都、それから帝国の帝都に分けて連れ帰り、残酷な方法で公開処刑するらしい。



 恨めしそうな顔でこちらを見る敵兵の横で乾杯し、料理にも手を付ける。

 酒も食材も全て敵から奪った共和国のものだ、ちなみに毒が入っていないのは確認済。



「では精霊様、そろそろクソ共の処刑を始めていただいても構わないかの?」


「任せなさい、存分に死の恐怖を植えつけてやるわ!」



 そこからはもう見ていない、とりあえず敵兵の悲鳴や命乞いのみが宴のBGMとして響き渡っていた。


 適当に酒を飲み、翌朝一番で作戦会議だとの話を受けて部屋に戻る。

 このまま進軍か、それとも一度王都へ戻るのか、出来れば帰りたいところだが……



 ※※※



「ではこのまま半島先端の港町に居る敵船を打ち払う方針で決定じゃ!」


「Boo~、Boo~!」


「何じゃ勇者よ、ブーイングなどしおって、何か別の策があるとでもいうのか?」


「いや、普通に帰りたいだけだ」


「なら少し黙っておれ」


「・・・・・・・・・・」



 実は、この会議の途中まではもう帰る流れだったのである。


 しかし途中で忌々しい金色の伝書鳩がやって来たことにより状況は一変した。

 なんと、王都の研究所が共和国の鉄船、どころか燃料である詫び石の弱点を発見したというのだ。



「良いか、この図を見るのじゃ、これが鉄船の艦橋、これが煙突、そしてこの間の狭い部分に弱点が存在しておる」


「どういう弱点だ? そこだけ装甲が薄いとかか?」


「そうではない、まぁ、あれじゃ、あの石の特性による何とかかんとかでの……」


「おいババァ、てめぇ理解してないだろ色々と」


「いやはや、年寄りにはちと厳しい話での」



 こんなのが今回の将軍、というか平時においては王国全体のブレインなのだから笑えない。

 結局、鉄船および詫び石の弱点に関してはマトンが代わりに行う。




「え~っと、まず皆さんはあの石がエネルギーを取り出すことが出来るものであることはご存知ですよね?」



 なんと、それすら知らない輩が大半であった。

 メールも電話もない世界では情報の伝達が遅い……



「とにかく、あの石1個で出る力を1としますと、なぜか10個集めたときに11の力を発揮するんです」


「つまり10個単位で使えば1.1倍のエネルギーを抽出することが出来る、ということだな?」


「ええ、そしてあの鉄船はその力を最大限に利用して航行しています」



 鉄船の艦橋と煙突の間には、5個ずつにしてある詫び石を左右から接触させ、10個セットにして炉に送るための装置が入っているのだという。


 で、そこを狙って破壊してしまえば燃料炉に詫び石を送れなくなった鉄船は航行不能に陥り、同時に火を吹く筒に燃料を送り込むためのポンプも停止するとのことだ。



 つまり、その時点であの鉄船は後ろに弩が乗っかっただけの浮遊物と化すのである。

 それを撃沈するのは実に簡単なお仕事であろう。



「そういうわけじゃ、敵の足と攻撃手段さえ止めてしまえばどうと言うことはない、幸いこちらにも奪った弩があるしの」


「なるほどな、で、具体的にはどうやって攻撃するんだよ? 言っておくがリリィの戦力だけじゃ全部相手にするのは無理だからな」


「それはホレ、以前の報告にもあったが、港町の敵を一望出来る崖じゃ、その上に弩を引き上げて狙うのじゃよ」


「……別に構わんが無理はすんなよ」



 作戦はそれで決まりらしい、崖の上に弩を引き上げるのも至難の業だと思うし、果たしてそこから敵船の一部をピンポイントに狙うことが出来るのか? という疑問がある。


 どうもまた俺達が必死で戦わないとならない事態に陥る予感がするのだが……



「とにかく昼食後に出発じゃ、各員指揮下の兵にそう伝えておくように、解散!」



 一度部屋に戻り、仲間達にも今の会議で決まった作戦を伝えておく。

 もちろん当分は王都に帰ることが出来ないということに関しても。



『Boo~、Boo~!』


 今度は俺がブーイングを浴びせられてしまった……



「とにかく決まってしまったものは仕方が無いだろう、さっさと準備を済ませるぞ」


「今回は本当に転進が多いわね、次で最後になれば良いんだけど」


「そうだな、でもまさかこのまま敵国に攻め入ろうなどとは言わないだろうよ」



 準備を済ませ、配布された昼食を食べてから出発する。

 砦には後からやって来た帝国兵が一部残って守備を続けるそうだ。



 馬車は南へ向かって走る。

 ある程度行った所からは、ついこの間も通った半島の街道に出た。



 港町に到着するのは明日の夕方になるそうだ……



 ※※※



「やっと到着か……」


「もう弩を持った部隊が崖を登っているわよ、私達はどうしたら良いのかしら?」


「そうだな、リリィ……は寝ているのか、俺とセラ、あとは精霊様……も寝てるじゃねぇか」



 俺とセラだけで馬車を降り、総務大臣達のところへ向かった。

 王国軍は全軍が崖の裏に隠れ、動いているのは崖を登っている狙撃部隊だけである。




「では勇者よ、弩による攻撃が始まると同時にそちらも動くのじゃ」


「わかった、それまでは上空で見つからないようにしておけば良いんだな」


「うむ、その辺は任せるでの」



 リリィに乗って攻撃を加えるのは俺、セラは崖の上に登り、雷魔法で敵を1隻ずつ潰していく運びとなった。

 精霊様はどうするか知らないが、おそらく攻撃に参加してくるであろう。



「ん、そろそろ弩の設置が終わるみたいだな、リリィと精霊様を起こそうか」


「私はハンナちゃんを杖に入らせるわ、その方が魔力も命中精度も高まるし」



 寝ぼけ眼のリリィをドラゴン形態に変身させ、上に乗って飛び立つ。

 海からかなり離れた位置を旋回飛行しながら攻撃開始を待った。



 崖の上で赤い旗が振られ、直後に弩の周りに居た兵士があわただしく動き出す……



「始まったかな、じゃあリリィ、行くぞ!」


『ふぁ~い、眠いです……』


「じゃあ鞭を入れてやろうか?」


『行きます、大丈夫です、目は覚めました!』


「よろしい」



 まずは弩の射程から外れた位置に居る敵船の中で、角度的に手頃なものに狙いを絞って攻撃を仕掛けた。



 これまでは艦橋狙いであったが、今回はその後ろだ。

 より鋭角で突入することが要求されるハードなミッションである。



 艦橋と煙突の間にリリィのブレスを捻じ込む……あっという間に炎上する敵船。

 攻撃の命中を確認した後、直ちに急旋回して元の角度で離脱する。



『あれ? 帰りは敵が火を吹いてきませんよ』


「火を吹く筒もすぐに使えなくなるのか、これなら注意するのは攻撃前だけで良いな」



 突入する際には敵もそれなりに応戦してきたのだが、離脱時は何もしてこなかった。


 甲板の上の兵があせているところを見るに、やはり攻撃しないのではなく出来なくなってしまったと考えるのが正解であろう。



 そこからは効率が良かった、急角度で接近し、攻撃後は後ろの弩に注意するのみで、敵船前方を優雅に飛びながら再び上昇、そして次のターゲットに狙いを絞る。




『ご主人様、次はあっちの派手な船を狙いませんか?』


「派手なの? どこだ?」


『結構沖です、というかちょっとずつ遠ざかっていますね』


「逃げるつもりだな、派手ってことは旗艦かも知れない、すぐに行くぞ!」



 リリィの言った通り、遥か沖に派手派手の鉄船が1隻、しかもどう考えても逃げ出している動きだ。

 接近し、これまでと同じように攻撃を加える。



「これで逃げられまい、リリィ、ちょっとこの件を報告しに戻るぞ」


『今ここで沈めちゃわないんですか?』


「ああ、敵将が乗っている可能性が高いからな、出来れば生け捕りにしたい」



 念のためもう一度攻撃を加え、船体後方に設置された弩も全損させておく。

 反転して戻る際、艦橋で慌しく動く人影の中に見覚えのある人物を見つけた。



 インフリーだ! 奴め、こんな所に居やがったか!



 転移して逃げる様子はない、いや、ここが転移のホームであり、これ以上どこかに行くことは出来ないのかも知れない。



 急いで陸に戻り、そのことを報告した。

 さて、可能な限りの兵力であの船を襲撃してやろう……

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