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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第四章 共和国と因縁の敵
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177 絨毯に乗った勇者

 目が覚める、朝か……やけに外が騒がしいな、もう戦闘が始まっているというのか?


 と思ったら違った、勝手に持ち出された魔法の絨毯が廊下で制御不能になり、暴走しているだけであった。

 犯人のカレンを乗せたまま……



「朝っぱらから何をしているんだ、早く降りろ」


「止まんないです! あ、そっちに行きそうなので捕まえて下さい」


「しょうがないな」



 飛んで来た魔法の絨毯の後方を掴み、若干引き摺られながらも何とか停止させた。

 カレンを降りさせ、クルクルと巻いて飛行能力をOFFにする。



「悪戯するから罰が当たるんだぞ、反省っ!」


「わふぅ~、ごめんなさい」



 カレンと絨毯を抱えて部屋に戻ったところで、全軍起床の合図。

 これはちょうど良かったと言えるのかどうか、微妙である。



「さぁご主人様、もう朝ご飯の時間です、早く行きましょう!」


「カレン、今日の戦いが終わったらお仕置きだからな」


「ご主人様がこのことを忘れますように……」



 無駄に女神に祈っているカレンを再び抱え、食堂へと足を運んだ。

 配布されていたサンドウィッチを非戦闘員も含めた全員分受け取り、齧りながら部屋に戻る。



「さて、戦わない4人はお留守番だぞ、おいハンナ、お前はこっちだ」


「えぇ~っ! あの大きな矢で射られたら痛そうなんですが……」


「ハンナちゃん、杖の中に入っておけば射られたりしないわよ」


「それもそうですね、じゃあお邪魔します」



 ハンナも含めた13人で部屋を出、とりあえず砦の上に向かう。

 既に多くの兵士が集まっており、防御魔法も張られているようだ。


 総務大臣とマトンが何やら話している、作戦の打ち合わせか?



「……という訳なんですよ」


「ほう、さすがに長く生きるとそういう趣味にも目覚めてくるのじゃな」



 卑猥な話をしているだけであった、スルーしておこう。



 敵軍もまだ動き出さないようだし、ちょっと暇だな……


 と、そこへ砦の上をランニングしていた暑苦しい筋肉の集団が向かって来る。



「おう勇者殿、もう敵の補給部隊を探しに行くのか?」


「いや、昨日来たばかりなんだろ? 今日はまだ1回か2回様子見だけする感じだよ、午後にな」


「そうか、ついでにダンベルかバーベルがあったら奪って来てくれると助かる、ここには筋トレグッズが用意されていなくてな」


「絶対に持ってないだろそんなもの……まぁ見つけたら持って来るよ、見つけたらな」



 くだらない話をし終わったところで、ようやく敵陣から矢が放たれる。

 防御魔法に弾き返されるのはわかっているはずなのに、本当にご苦労なことだ。



 おや、ゴンザレス達が出撃の準備をしているではないか……



「えっと、あんたらは出て戦うのか?」


「おう、砦横の崖を滑り降りて敵陣を叩くんだ」


「あんな所どうやって降りるつもりだ?」


「これに座って滑るんだ、なかなか楽しそうであろう」


「ダンボールじゃねぇか! まともなソリは無いのかこの軍には!?」



 どうして異世界にダンボールがあるのかについては突っ込むのをやめた。

 意気揚々と出撃する筋肉団、いや、何か尻尾がある小さいのも一緒だ……



「おいカレン、どこへ行くんだ?」


「ギクッ! ちょっとお散歩に……」


「ダンボール持って敵陣を散歩する馬鹿がどこに居る? まぁ、行っても良いが、ちゃんとゴンザレスの言うことを聞くんだぞ」


「わかりました! では行って参ります!」



 楽しそうに走って行き、崖を滑り降りるカレン、やりたい奴にはやらせておこう。

 というか、帰りはどうするつもりなんだ?



 カレンを見送った後、俺は暇なので砦中央付近に戻り、偉そうに椅子に座っていたマリエルにちょっかいを出しておく。



「勇者様、遊んでいて良いんですか? 偵察とか行かないとやってる感が出ませんよ」


「ふ~む、確かにそうだな、ここで評価を落として勇者パーティーの歳費を減額されちゃ敵わん、ちょっと行って来るよ」



 ということでリリィを呼び出したのだが、遊び疲れてスタミナ切れらしい。

 兵士に頼んで干し肉を分けて貰い、とりあえず咥えさせておいた。



「リリィ、午後には出られるようにしておけよ」


「は~い、お昼ご飯を食べたら頑張ります!」



 弱ったな、それだとこの午前中はやってる感が全く出ない。

 何か良い考えが……そうだ、魔法の絨毯を使おう。



 絨毯を広げ、宙に浮かせる。

 周囲の兵士が好奇の目で見ているが、それは気にしないでおこう。


 とにかく出撃だ、しかし飛び立とうとした瞬間、小さな何かにストップを掛けられる。


 いや、人間としてのサイズは普通か、小さいのはおっぱいだけだ。



「ちょっと勇者様、面白そうだから私も連れて行ってちょうだい」


「セラ、これはただの偵察だぞ、位置がバレるから攻撃は禁止だぞ」


「わかったわ、早く乗せてよ」



 そう言いながらも既によじ登っているセラ。

 ベルトを掴んで引き上げてやった。



「はい、しゅっぱ~つ!」


「楽しそうで何よりですな……」



 俺とセラを乗せた絨毯は、崖伝いに敵陣の後方まで到達する。

 ちょっと本陣の様子を見てやろう、一番奥のテントが指揮所だな。



「見て勇者様、変なマッチョが筋トレしてるわよ、あのバーベル、何キロあるのかしらね?」



 バーベルを見つけてしまった、ゴンザレスへのお土産として持ち帰る必要がある……



「セラ、マッチョの周りを確認するんだ、護衛とか居ないか?」


「見た感じ居ないわよ、というかあのマッチョに護衛が必要だとは思わないわ」


「……確かに、よし、マッチョを殺してバーベルを奪うんだ」


「殺すのは良いけどバーベルを奪う必要はあるの?」


「男と男の約束があってだな、とにかく襲撃だ!」



 慎重に近付き、マッチョの首にセラの魔法をお見舞いする。

 雷は音が凄いからNG、今回は普通に風の刃を使用した。


 マッチョの首がすっ飛ぶ、どれだけ鍛えていようとも、こんな細腕で貧乳の魔法使いに殺されてしまうのだ。

 魔法というものは実に恐ろしい。



「殺ったか、ちょっと降りてアレをゲットしよう」



 絨毯を地表付近に降ろし、マッチョの死体からバーベルを奪……持ち上がらないではないか!



「勇者様、バラバラにしてパーツを積み込みましょ、勇者様の残念な腕力じゃソレは持ち上がらないわよ」



 クソッ! よりにもよってセラの前で大恥を晒してしまったではないか、この金属片めっ!


 仕方が無いので懸命にバーベルを分解し、次々とそのパーツを絨毯に積み込み、再び飛び立つ。

 何だかスピードが出なくなってしまった、一度砦に戻ろう。



 砦に戻る途中、ちょうど帰還しようとしているカレンと筋肉団の姿を捉えた。

 帰りは普通に崖を登っているようだ、全員敵の首を沢山持っている。



 俺達と筋肉団、砦に帰着したのはほぼ同時であった。



「ゴンザレス、お目当ての品が手に入ったぞ」


「おうっ! お前ら、勇者殿が小指用のダンベルをゲットしたくれたぞ、喜びの舞を踊るんだ!」



 気持ちの悪い踊りを披露する筋肉達。

 何だ小指用のダンベルって、普通にバーベルだし、350kgって書いてあるぞ……



 戦利品をゴンザレスに渡し、カレンを回収してマリエルの所に戻る。



「どうでしたカレンちゃん? 結構ガッツリ戦っていたみたいですが」


「う~ん、どうも敵の動きが変でした、退いた方が良い場面なのに無理矢理突っ込んで来たり、とにかく前にしか出ませんでした」



「おう勇者殿、それは俺達も同じ感想だ、昨日から急にそんな感じなんだ」


「そうなのか、昨日か……敵軍に補給があったんあだよな」



 いつの間にか来ていたゴンザレスも同じことを言う。

 昨日の補給に際して敵軍に何か訓示的なものでもあったのか?


 まぁ、この件に関しては戦っているうちに何かわかってくるであろう。



「そういえば腹が減ったな、そろそろ昼食にしようぜ」


「賛成です!」



 既に配布が始まっていた昼食を受け取り、アイリス達が待機している部屋に戻る。


 砦の城壁に敵の矢が当たる音、それから防御魔法を飛び越えた矢に射られた味方の悲鳴が響き渡っているが、そんなものは気にしない。


 この戦は長丁場になるのだ、まったりいこう。



「ありゃ、皆さん戻って来たんですね、戦争が終わったんでしょうか?」


「まだだぞアイリス、絶対に外に出るなよ」



 皆にサンドウィッチを渡し、缶詰も開けて昼食にする。

 午後の偵察はカレンが俺と一緒に絨毯、セラとリリィが別働隊として出ることとなった。


 また、精霊様が敵の次なる補給部隊を探しに行くそうだ。

 夕方には戻ると言ってすぐに出発した、見つけたら何かパクっておいてくれよな!



「セラ、そっちはどうせ目立ってしまうからな、気を付けるのであれば攻撃しても良いぞ」


「わかったわ、見えないぐらい高く飛んで雷を落としてやるわね」


「それじゃこっちからも見えないだろ、偵察の意味が無いぞ……」



 また何か調子に乗ってくれそうな予感である、砦に被害を出すような真似はしないで欲しい。



「ご主人様、私も偵察に行きたいですの、攻撃もしたいですのっ!」


「ユリナは本気で何するかわからんからダメだ、むしろサリナの幻術の方が今は欲しい」


「そんなぁ~っ、ですの」



 ユリナに何かやらせるとそれこそ砦が壊滅しかねない。

 余裕が出てきたらレーザー火魔法ぐらいは使わせてやるが、それまでは我慢させよう。



 ということで昼食タイムを終え、俺とカレン、セラとリリィの2つのチームで出撃する。



「わぁ、ちゃんと乗れました! 朝試したときはどうかなっちゃったのに、不思議です!」


「不思議じゃない、俺の操縦テクニックの賜物だ、讃えるが良い!」



「調子に乗った勇者様が敵陣のど真ん中に墜落するのを楽しみにしておくわ」


「おいセラ、余計なことを言うんじゃない!」



 これがフラグになって本当に墜落したらセラの責任だ。

 だがそんなことはない、俺の操縦テクニックは世界一なんだからな!



 ※※※



「カレン、背中合わせで戦うぞ! 何としても向こうの崖まで後退するんだ!」


「わかりました!」



 結局墜落してしまった、敵陣のど真ん中に。


 幸いにも火を吹く筒や弩が設置されているエリアではないものの、よく訓練された強兵が大挙して押し寄せて来る。



 しかしどうしてコントロールを失ったんだろう、俺の操縦テクニックは……危ない、斬られる寸前であった。


 余計なことを考えるのは後にしよう、俺の操縦テクニックにも疑いの余地はないわけだしな。



 かなり崖に近付いたところで、ようやくセラとリリィがこちらの状況に気付いたようだ。




「カレンちゃん大丈夫~っ? 今助けるわねっ!」



 救出のために急接近するセラとリリィ……え? カレンだけ拾って行ってしまったのだが?



「おいセラ! 俺も助けろよっ!」


「ちょっと待って! 2人乗せたらリリィちゃんが飛べなくなるわ、引き続き崖に向かって走ってちょうだい!」


「マジかよ!?」


「そんなこと言ってる間に敵が迫っているわよ!」



「ん? あ、あぁぁあああぁっ! 勘弁してくれぇぇっ!」



 丸めた絨毯を抱えているため、1人ではうまく戦うことが出来ない。

 ここはもう逃げる他なかろう、必死で走って崖まで辿り着き、これまた必死でよじ登った。



 敵兵は鎧が重くて登って来られないらしい、崖の手前に殺到しており、その様子はさながらゾンビ映画の如くである。


 時折矢も飛んで来るが、位置的に余裕で弾き返すことが可能である。

 セラ達が迎えに来るまでここで待機だ……お、早速戻って来るようだな。



 飛来したリリィとその上に乗るセラ。


 まずは崖の下に溜まっている敵兵をブレスで一掃し、そのまま俺の方へ向かう。

 崖にへばりつくようにして横に陣取った。



「おまたせ勇者様、さ、まずは絨毯をこっちへ」


「はいよっ、じゃあ次は俺が……」


「いえ、定員オーバーになるわ、もうちょっとここで待ってて」


「えぇぇっ!?」



 飛び去っていくリリィ、砦の方を見ると、この2人に指示を出しているのはジェシカのようだ。


 アイツ、この間魔ダコに襲われたときの復讐のつもりか。

 横で笑い転げているルビアとマーサも同罪だな……



 再びリリィが飛来するのを待ち、今度は上に居るセラにガッチリしがみつく。

 もう一度何か仕掛けようとしていたようだが、それだけは断固阻止してやる。



 近くに居た敵を焼き払いながら砦に戻り、どうにか敵陣からの大脱出が成功した。

 今のだけで映画を1本創れそうなレベルだ、ブラック絨毯・ダウンと題しておこう。



「どうだ主殿、ハラハラ断崖ツアーは楽しかったか?」


「あ、ジェシカてめぇ! 後でこの絨毯の実験台にしてやる、どうして墜落したか検証するんだ」



 今日の交戦が終わって、精霊様も帰って来たら実験を開始しよう。


 どうして午前中は平気で午後になって落ちたのかを突き止めておかないとだ。

 じゃないと危なっかしくて乗っていられん。



 そのまましばらく茶など飲んでサボる。

 日暮れ時、徐々に砦への攻撃が終息し始めた。


 真っ暗になる頃には敵陣も火を焚き、食事の準備をしているようだ。



「あ、精霊様が帰って来ましたよ、何か大きな箱を持っています!」


「どうやら戦利品を持って来たようだな、敵の補給部隊を見つけたということか……」



 砦上部に着陸する精霊様、その前に敵が食事を作っていた焚き火を消して回るという嫌がらせも忘れてはいない。



「ただいま、敵の輸送部隊はここまであと3日ぐらいのところに居たわよ、それからその次が船で港に来ていたわ」


「ふむ、大体5日に1回ペースで来る感じか……で、その箱は?」


「見なさい、『食糧』と記載されているのを選んで奪って来たのよ!」


「さすがだ、早速だが開けてみようぜ」



 箱の中身は肉と野菜が半々、全て乾燥させたものであった。


 肉はカレンとリリィが4割ずつ、野菜はマーサが半分、そして残りの肉2割と野菜少々を他のメンバーで分け、余りは王国軍に寄付しておく。



「さて精霊様、夕飯を食べた後で良いんだが、ちょっとこの絨毯に関して確かめたいことがあるんだ、手伝って欲しい」


「何か問題でもあったのかしら?」


「時折暴走するんだ、朝カレンが悪戯したときも、午後もエラい目に遭った」


「そうなのね、まぁ操縦テクニックの問題かも知れないけど……」


「いや、俺のテクは世界一なんだ、それぐらいは常識だろう?」


「・・・・・・・・・・」



 砦の中へ移動し、夕食を受け取る。

 それを齧りながら実験スタートだ。



「まずはジェシカ、お前乗ってみろ」


「わかった、念のため言っておくが、危なかったら……」


「おう、3番目ぐらいに助けてやるぞ」



 ビビりまくりジェシカさんのライディング……普通に飛んだ、特に問題はないように思える。



「何だ、やはり主殿のテクがアレなだけじゃないか、ほれ、簡単だぞ!」


「ぐぬぬ……次はルビアだ、早く交代しろ」



 ルビアが乗った途端、絨毯はグルグルとその場で回転を始め、終いには地面に落ちてしまった。

 途中で振り落とされたルビアは目を回して倒れている。



「ルビアはダメか、じゃあ次、マーサ」


「ふふんっ、この私の身体能力に掛かればこんな……え? きゃぁぁっ!」



 凄まじいスピードで直進した絨毯は壁にぶつかる直前で急停止し、乗っていたマーサだけがめり込んでいる。

 緊急衝突回避なんちゃらか……



 しかしマーサの奴、身体能力でどうにかなるならカレンだって乗れているはずだ。

 そこまで回る頭が無いのは非常に残念である。



「で、結局乗れたのはジェシカだけか、どう思う精霊様?」


「だいたいわかったわよ、この絨毯の仕組み」


「本当かよ? 適当なこと抜かしてると尻を引っ叩くぞ」


「失礼しちゃうわね、でね、この絨毯はパワーで飛ばしてブレインで操作するのよ」


「横文字を使うな、ウチのメンバーには馬鹿が多いんだ」


「それよっ! お馬鹿には飛ばせても操作出来ないの、それでひっくり返ったりするのよ」



 そういうことか、早速マリエルを乗せて試してみると、もう絨毯の拒否っぷりが半端ではなかった。


 振り落としたマリエルに角を使ってビンタし、上に乗っかって悪態を付く絨毯、完全に舐められているようだ。



「つまりさ、俺とセラぐらいの知能で飛んでいたときはどうにかなったけど、午後はカレンの馬鹿さ加減で墜落したってことだな?」


「その通りよ、カレンちゃんもそうだけど、このパーティーには乗れない子も多いと思うわ」



『ぐぬぬっ!』



 1人では乗れない判定のセラ、カレン、リリィ、ルビア、マーサが悔しそうな顔をしている。

 ちなみにマリエルは絨毯に調教され、椅子の代わりにされたままだ。



「明日からの偵察は俺1人、またはもう1人これに乗れる誰かを連れて行くことになりそうだな」


「はいっ! 私が行きますのっ!」


「ユリナはダメ! お座り!」


「はいですの……」



「そしたら姉さまの代わりに私が行きます」


「うむ、じゃあ俺とサリナでペアだな、幻術で敵を誤魔化せるし、かなり偵察向きだ」



 敵の補給部隊が来るのはまだ3日後、それまでは敵軍の様子を監視し、要所要所でピンポイント攻撃を仕掛けていくという作戦が無難であろう。




 翌日の朝から、早速サリナと2人で絨毯に乗って出撃する……



「なぁサリナ、こんな敵の真上を飛んでいるのに見つからないなんて、どういう幻術を使っているんだ?」


「普通にモザイクを掛けているだけです、見つかってないんじゃなくて、気味悪がられているだけですよ」



 本当だ! 下に居る敵兵がやたらにこちらを指差している!


 サリナにお願いし、もう少しまともなカモフラージュに変えて貰う。

 さすがにモザイク処理された何かがそれを飛んでいるのは目立ちすぎだ。



 敵軍から『消えたっ!』という声が聞こえてくる、今度は上手くいったのであろう。



「ご主人様、せっかくですから敵の本陣も覗いてみませんか?」


「お、良いねぇ、指揮官の替えパンツを全部燃やしてやろうぜ!」



 本当に見つかっていないのかを注意深く確認しながら、敵軍の最後列にあるテント群を目指す。

 あそこに指揮官連中が固まって居るはずだ。



 さて、敵の総大将はどんな奴かな……

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