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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第四章 共和国と因縁の敵
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175 主敵を追い詰めろ

「敵が見えたぞ、突っ込むけど、無駄に奇声を発するなよ!」



 うぉぉっ! とか言おうとしていたのであろうか、カレンが慌てて口を塞ぐ。

 静かに接近し、どうにか気付かれずに攻撃の届く範囲まで接近することが出来た。



 セラとユリナが攻撃魔法を放つ。


 同時にドラゴン形態に変身したリリィがブレスを、サリナはそれらの射程圏外で振り返った敵に対して幻術を掛け、自爆を促した。



『てきしゅ~うっ! 敵襲ですあごろばっ!』



 とっさに大声を上げた奴も居たようだが、残念ながら言い終わる前にセラの魔法が直撃し、首がどこかへ飛んで行ってしまった。



「俺達はこのまま突撃だ、精霊様、水壁の準備を頼むぞ!」


「しょうがないわね、10ℓあたり鉄貨1枚よ」


「何だ、珍しく安いじゃないか?」


「5万ℓ使うわ」


「やっぱ高けぇよ!」



 前衛に続いて俺とマリエルも突っ込む、敵軍は未だ混乱しているようで、運んでいた弩の方向を変えることが出来ていない。


 また、サリナの幻術も効いているようだ、一部の兵が謎の作法で切腹し始めた。



「私からもプレゼントがあるのよ、受け取ってくれるかしらね?」


「マーサ、まさかお前、敵に塩ならぬニンジンでも贈るつもりか?」


「じゃなくて魔物よ、この森は動物系のが結構居るみたいだし、500体ぐらいは操れるはずよ」


「おう、偉いぞ! 後で高級野菜盛りを食べさせてやろう」



 マーサの呼び出した魔物が隊列の中程よりも少し後ろに襲い掛かる。


 訓練された兵士相手であるためすぐにやられてしまう魔物であるが、それでも5体掛かりで1人ぐらいは倒しているようだ。


 また、魔物を相手にしている間はこちらに弩を向ける作業が出来ないというメリットもある。



「勇者様、兜に変な星が付いている兵を重点的に狙って下さい、それが伍長です」


「コイツか? おいマリエル、こういうので良いんだよな? ちなみにコイツは星2つか……」


「星が増えたり隊章に変な色の帯が付いているのはもっと上です」



 とにかく偉そうな印が付いている奴を狙っていけば良いということか。


 振り返り、改めて今まで殺してきた敵兵の死体を見る……どうやら俺は雑魚キャラばかり相手にしていたようだ、星のある奴がほとんど居ないぞ。



 マリエルの忠告により、少しは効率良く偉い奴を始末出来るようになってきた。

 だがここで、遂に弩の方向転換が終わったようだ、矢が飛んで来る……



「精霊様、水壁を、セラもその前に風防を出すんだ!」



 2階建ての防御によってようやく止まる巨大な矢。

 このまま戦い続けるのは危険かも知れない、いい感じのところで撤退しよう。



「カレン! 戻るんだ、突出しすぎだぞ!」


「わかりました! あと10人やっつけたら戻りますっ!」



 風呂で肩まで浸かって10秒ぐらいの軽いノリでそう答えたカレン。

 マーサと2人、しばらく敵陣の中で暴れた後、敵を弾き飛ばしながら戻って来る。


 これで全員下がり切った、撤退だ。



 セラ、ユリナの魔法をありったけ喰らわせ、間髪入れずにリリィのブレスを浴びせた。


 正面の敵があらかた焼け死んだところで精霊様が前に出、分厚い水壁を崩してさらにその後ろの敵を押し流す。



「今だっ、逃げるぞ!」



 魔法で弾幕を張りながら、元来た道を走って馬車のところまで戻る。


 50人程の敵が追い掛けて来たものの、半分は魔法に当たって死に、残り、つまり馬車を隠してある辺りまで生き残った強者であるが、全てサリナの幻術に惑わされて自殺した。



 それ以上の追跡がないことを入念に確認し、馬車に乗り込む。

 ちなみに索敵を使い、忍者的な偵察兵が居ないこともチェック済みだ。



「よし、出発しようか、このまま裏道を抜けて先回りだ」



 全員が乗っていることを確認し、馬車で狭い裏道を行く。

 10㎞程走ると街道との合流、敵はまだかなり後ろのようだ。


 追い越し作戦成功である。




 念のため確認したが、負傷している者は居ないようだ。


 今回は敵の後方を攻めたため、その混乱に乗じてかなり一方的に攻撃することが出来た。

 これで10万以上は居たであろう敵兵の3割ぐらいは削ったはず。


 先は長そうだが、このまま地道に戦っていくべきであろう……



「主殿、次はどうする?」


「そうだな、日が暮れるまでにもう一度奇襲を掛けたい、どこか良い場所が無いかな?」


「しかし、確かこの先には野営にちょうど良さそうな開けた場所があったはずだぞ」


「マジか、となると敵はそこで停止する可能性が高いな、俺達はその先に隠れよう」



 ジェシカの言った通り、かなり開けた平野に出た。

 いつも御者をやっているため、かなり道を覚えてしまっているようだ。


 そして、ここを越えるとそろそろ王国領、俺達がいつも利用している旅の宿はこの先馬車で2時間程の所であることも同時に教えられる。


 いつも俺が眠りこけている辺りだ、知らないのも無理はなかったか……



「主殿、ここに馬車を隠せば良いか?」


「いや、すまないがもう少し先にしてくれ、平野から離れないと絶対探しに来るぞ」


「わかった、ではこの先にある草むらまで走ろう」



 平野の王国側入口からおよそ1km先の草むらに馬車を隠し、同時に野営の準備をする。

 荷物を降ろすのは最小限、敵に発見されたらサッと逃げられる態勢だ。



 非戦闘員以外の全員で平野の手前まで移動し、しばらくそこで待つ。

 真っ暗になった頃にようやく敵の持つ松明が見えた。


 30人~50人程度のグループに別れ、それぞれ大きく間を取って食事の準備等を始めているようだ。



「またかなり広がっていますの、特殊魔法には相当に警戒しているみたいですのね」


「残念だったなユリナ、でもまたぶっ放すチャンスはあるさ、楽しみはそれまで取っておくんだ」


「はいですの!」



 しかし敵の見張りは数が半端ではないな。

 このままだと馬車を隠してある所まで回ってくる奴が出てもおかしくないぞ。


 ここはもう少し先へ進んで、すぐに戻れるリリィと精霊様だけで夜襲を掛けるべきかな……



 一度馬車に戻り、出してあった荷物を全て片付ける。


 疲れたジェシカに代わってルビアに御者をさせ、俺とリリィ、それから精霊様を残したメンバーで再出発した。



「2人共、ここも一撃離脱にするぞ、攻撃したらすぐに反対側に抜けるんだ」


「またぐるっと回って戻るんですね」


「うむ、走っている馬車に負い付いたら乗り込んで次に停まれそうなところを目指すぞ」



 一度の攻撃は一撃で良い、リリィは途中で眠くなってしまうかも知れないが、精霊様は夜の間ずっと、何度も攻撃を仕掛ける予定だ。


 敵軍に恐怖と睡眠不足を与えてやろう。



 俺はリリィに乗って空に舞い、予定通り比較的人数が多いと思われるグループを焼き尽くし、野営地上空を南に抜けた。


 精霊様は小さいグループを2つ、水の弾丸で蜂の巣にしたようだ。



 南の空で合流し、そのまま平野を迂回して馬車を探す。



「お、あれだろ、ユリナの尻尾が光っているぞ」


「もう野営スポットを見つけたみたいね、降りましょ」



 敵が付いて来たりしていないのを確認し、着陸して仲間と合流する。



「おかえりなさ~い、ご飯出来てますよ~」


「ありがとうアイリス、リリィはまた飛ばないとだから3倍食べさせてくれ」


「はぁ、ではお肉の缶詰を3つ、肉サンドウィッチもあと2つ作りますね」



 夕食を取り、しばらく休憩した後に第二波攻撃を行う。

 続いて第三波、第四波と、繰り返し一撃離脱の奇襲を掛けた。



「リリィ、まだ眠くないか?」


「あと2回ぐらい大丈夫です、今日は頑張っちゃいますよ~っ!」


「そうか、じゃあ次は30分後だ!」



 追加で3回攻撃を加え、第七波を終えて帰還する頃には空が白み始めていた……



 ※※※



「で、あなた達が睡眠不足になってどうするの?」


『すみませんでした』



 調子に乗って夜通し攻撃を仕掛けた俺達は、結局1時間も寝ることが出来なかったのである。


 眠い、セラの説教が頭に響く、リリィは正座したまま眠りこけているようだ。



「もうダルいわね、残りは王都に戻ってからやっつけましょ」


「何を言っているの精霊様は? まだ敵が5万以上居るんでしょうに」


「だって疲れたし……」



 とりあえず俺達は馬車に戻ってもう一度寝る。

 偵察にはカレンとマーサが行ってくれるらしい。



 しばらくすると、馬車に全員が乗り込んでくる音……



「ん……敵が動き出したのか?」


「はい、かなり眠そうでしたけど、あとなかなか起きない人はそのまま殺されていました」


「相変わらずデタラメだな、まぁ良いや、勝手に数を減らしてくれるんだしな」



「勇者様、ちょっと長めに移動するから、それまでしっかり寝ておくことね」


「へいへい、おいルビア、膝枕するんだ」


「昨日はお風呂に入っていないからダメです」


「何だよ、シケてやがんな……」



 仕方が無いので真ん中の床に布団を敷いて寝た。

 リリィはミラに寄り掛かって、精霊様は中に浮いて眠っている。



 馬車の振動が心地良い、すぐに目を閉じ、意識をどこかへやった。



 ……気が付くと森を抜け、平野を進んでいる馬車。


 完全に王国領に入ったようだ、いつも使っている旅の宿は既に通り過ぎ、トンビーオ村から王都までの道程を半分以上来た地点に居た。



「あ、ご主人様が起きましたよ」


「おはよう勇者様、もう昼食の時間よ」



「ん~っ、よく寝た、しかしここは完全に平地だな、どこに隠れるつもりなんだ?」


「この先に岩場があるみたいなの、ちょっと街道からは外れるけどね」



 セラから手渡された缶詰を開けて食べていると、確かに岩場のようなものが見えてきた。

 馬車は道を外れ、そちらの方へ向かっていく……




 しばらくして到着した岩場は、思いの外大規模なものであった。

 馬車どころかドラゴン形態になったリリィが背伸びしても隠し切れる。



「おぉ、なかなかの隠れ場所じゃないか、街道を通って来る敵から見つかることはなさそうだな」


「しかもここからなら特殊火魔法で狙い放題ですの」


「そうだな、次はユリナの魔法で攻撃しようか」



「その前に、私とリリィちゃんでまだ森の中にいる敵を襲撃して来るわ」


「おう、いってらっしゃい」



 飛び立つセラとリリィを見送る、もう1つの航空戦力である精霊様は……まだ寝ていた、馬車の天井にへばりついており、降りるときには見落としたようだ。



 南の森から火柱が上がる……


 セラ達が攻撃を始めたようだが、ちょっとやりすぎじゃないか?

 明らかに山火事になるレベルの炎を撒き散らしている様子だ。



「勇者様、お姉ちゃん達はきっと調子に乗っていますよ、本来ならもう帰って来ても良い時間なのに」


「確かにまだ攻撃しているようだな、いい加減に……お、帰って来るぞ」



 高速で近付くリリィ、行くときよりも帰るときの方が速いようだが、何かあったのか?



「ただいまっ! 大変よ、精霊様を起こして!」


「どうした? 森に飛び火したんじゃなかろうな」


「……正解よ」


「精霊様は自分で起こすんだな」



 何とか精霊様を目覚めさせたセラ、土下座して頼み込み、森の消火に行って貰ったようだ。



「さて、セラ、リリィ、何か言い訳はありますか?」


『ありません……』



「ミラ、2人にお仕置きするから手伝ってくれ」


「わかりました、さぁリリィちゃん、お尻ペンペンよ!」


「ひぇぇっ!」



 ミラがリリィを捕まえたため、俺はセラを押さえ込む。

 靴を脱がせて強烈な足ツボマッサージを喰らわせてやった。



「いだぁぁっ! いでっ、いでっ!」


「おいセラ、反省したか?」


「どうして私はお尻ペンペンじゃないのよ!?」


「お前は喜ぶだけだろうが!」



 反対側の足も指圧し、グデグデになったセラをその辺に放置する。

 そこへ森の消火を終えた精霊様が帰って来た。



「全く、敵よりも木の方が燃えていたじゃないの、どれだけ適当に攻撃したわけ?」


「反撃してきたから横に逸れて攻撃したのよね、で、うっかり……」



 それでも火事の効果により、敵が持っていた火を吹く筒はかなりの割合で全損したという。


 なんだかんだ言って一定の効果は得られたようだ。

 精霊様曰く、敵兵も3割近く焼け死んでいたらしい。



「さっき見た感じだとあのインフリーとかいう奴は健在だったわ」


「しぶといな、あれだけ攻撃したんだから一度ぐらい被弾しろよな」



「でも次の攻撃は私の番ですの、開けた場所だし、狙って確実に仕留めますわ」


「そうだな、ユリナの一撃に期待しよう」



 そこからはしばらく岩陰で休憩とした。

 適当におやつ代わりの缶詰を開け、皆でまったりする。



 2時間程度をそのままダラダラと過ごした後、精霊様が偵察に向かう。

 敵はどこまで進んでいるであろうか……



「お、思ったよりも早く帰って来たぞ、以外と近くに居るみたいだな」


「うん、ちょっと土埃が見えているし、もうすぐ見えるはずよ」



 精霊様が帰還する、敵軍はここから3kmぐらいの地点を進んでいる最中で、火を吹く筒を失った分その速度が増しているという。


 負傷兵は全て置き去りにしたようで、歩ける者しか居なかったそうだ。

 本当に薄情な連中である。



 しばらくすると、小高くなった丘の上に到達した敵の姿が見えた。

 縦だけでなく横にも広がり、今度は弩を前列に出して進んでいるようだ。



「ユリナ、準備をしておけよ、インフリーはどの辺りにいるかわからんけどな」


「1人だけ明らかに偉そうでしたの、わかると思いますわ」



 念のためデフラにも前に出て貰い、岩陰から敵軍の様子を監視する。

 インフリーの乗った人力車は……あった、目立ちすぎだろ、狙って下さいと言っているようなものだ。



 徐々に近付く敵、俺達が居る岩場の横に前列が到達し、通過していく。

 一番端の奴からここまでは1kmも離れていない、見つからないように注意しなくては……



「それじゃ、あの人力車を狙って攻撃しますわよ」


「うん、最後に確認をしておこう、デフラ……どうしたんだデフラ?」



「えっと……あの人力車に乗っている奴、私の兄じゃなさそうです、よく見てみて下さい」



「よく見てみても目が悪くてよく見てみることが出来ないんだ、よく見てみることが出来るリリィに良く見てみて貰おう、リリィよく見てみてくれ」


「変なこと言ってると舌を噛みますよ」



 岩場の水溜りでサボっていたリリィが上がって来る。

 人力車の様子を確認し、首を横に振った……



「あれ、お人形ですよ、服だけ昨日の人のを着せてあります」


「ちくしょうめ! どこ行きやがったんだ!?」


「森の消火のときには確かに本人だったわよ、一般の兵士に紛れているに違いないわ」



「仕方が無い、ユリナ、適当に攻撃してしまうんだ」


「う~ん、前にある弩と後ろの攻城兵器、どっちを狙うべきですの?」


「弩の方が無難だろ、アレさえなければ出て戦えるからな」



 敵軍後方には破城槌がいくつも運ばれているが、あんなもの城がなければ何の役にも立たない、寺の鐘ぐらいは突けるかもだが。



「なら前列に喰らわせてやりますの、岩陰に隠れていて下さいまし」



 一番大きな岩の裏に隠れ、閃光と衝撃をやり過ごす。

 10分以上そのまま待機し、土埃が収まるのを待ってから様子を見る……


 さすが平野だ、敵軍は狙われた前列だけでなく、中程までが爆風で吹き飛ばされ、倒れている者は大半が死んでいる様子である。


 平気なのは後方の一部のみ、丘の影になっていたため爆風や飛来物の直撃を免れたようだ。



「よしっ! 出て戦うぞ、一気に殲滅するんだ!」


 魔力をほとんど使い切ったユリナを残し、それ以外のパーティーメンバーで岩陰を出る。

 まだ地面が熱いがそれは我慢だ。



 混乱している敵軍後方を目指す、初手はセラの落雷と精霊様が出した大量の水、さすがに気が付いたようだな……



『敵だっ! 敵が来たぞっ!』


『戦えぇ~! 戦わない者は死刑じゃ~っ!』



「そう言いながら指揮官っぽいのは逃げているわね、あっちを先に殺しましょ」


「うん、じゃあ俺達は向かって来る奴を始末するよ、インフリーを見つけたら教えてくれ」



 嫌々、といった感じでこちらに走って来る敵を次々に殺す。

 負傷している者も多く、一撃一殺でテンポ良く殲滅することが出来る。



「クソッ! どこに居るんだインフリーの奴、もうちょっとしっかり顔を見ておくべきだったぞ」



 どれだけ殺してもインフリーは現れない、敵の数は残り1万かそれ以上、その中から探し出すのは至難の業なのかも知れない。



「勇者様、逃げ出した偉そうなデブ共はほとんど片付いたわよ」


「おう、インフリーはそっちには居なかったんだな?」


「ええ、知らないおっさんばかりだったわ」



 となるといまだこの兵士達の中に紛れているのか、それとも先程の攻撃で死んだか……或いは森から出ずにそのまま逃げたか?



「拙いです勇者様、囲まれ始めましたよ!」


「あっ、本当だ、まだそこまで考えを巡らせられる奴が居たか……岩場とは逆に突破しよう!」



 俺達をぐるっと囲んだ敵軍のうち一箇所を選定し、そこにカレンとマーサを突っ込ませた。


 弓で狙われているようだがあの2人には関係ない、全て避けるか叩き落としながら、全員が通れるぐらいの退路を開いている。


 後方から詰めて来た敵兵もサリナの幻術で骨抜きになってへたり込んだ。

 横はリリィと精霊様が牽制しているため近づくことが出来ない。



「突破するぞ! ミラとジェシカは前で露払いだ、ルビアは俺とマリエルで守る!」



 開いた退路を一気に駆け抜ける。


 だが、もうすぐ外に出られそうだ、といったところでカレンが止まってしまう……



「どうしたカレン?」


「ご主人様、あれを見て下さい!」


「あれって……うむ、絨毯が飛んでいるな、意味がわからんぞ」



 カレンの指差した方向には、なんと空飛ぶ絨毯、しかも人が乗っているようだ。



『ご主人様! 乗っているのは昨日の人です!』


「インフリーか、やはり雑兵の格好をしていやがる」



「私が追いかけるわ! ここを突破したらリリィちゃんも来て!」



 飛び立つ精霊様、俺達は再び包囲網からの脱出を試みる。

 ようやく外に出たとき、精霊様は未だ絨毯とのデッドヒートを繰り広げていた。



 インフリーめ、今度こそ逃がさないぞ……

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