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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第三章 また人族同士の争いですか
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169 半島縦断

 半島に点在する15の村、共和国軍に制圧されたそれらを奪還し、最終的に先端の港町に居る鉄船団を撃破するため、俺達は先日あった合戦の地から南下している。


 今は5つ目の村に居る敵軍を降参させたところだ。



「待ってくれっ! 俺達は徴兵されて無理矢理戦わされたいるだけだ!」


「そうか、事情はわかった、では死ねっ!」


「ぎぇぇっ!」



 村に駐留していた敵兵の生き残りを掻き集め、まとめて焼き殺す。

 言い訳は一切聞かない、共和国人は皆殺しである。



「よぉし、ここは終わりだな、次行こうぜ次!」


「では進軍します、この次は南西におよそ20km行った所ですね、住民は避難済みです」



 大陸側にある10の村はまだ、共和国の持ち込んだ麻薬、合成麻薬ラリポンの影響を受けていない。

 まともな思考が出来る村人達は全て脱出し、港町からの避難民と合流して王都を目指しているという。



 問題は残りの5村だ、それらは完全にシャブ漬けであり、最初に摘発作戦を行った港町と同じような状況、つまり中毒者と動けない善良な住民が混在している可能性がある。


 ゆえに一気に攻めて焼き払うということは出来ないし、敵の殲滅だけでなく被害者の救助という負担が重く圧し掛かるのだ。


 正直、厄介としか言いようがない……




「今日は6つ目の村で最後になりそうですね、着いて夕方、戦っていたら暗くなるかも知れません」


「そうだな、1日に2つか3つが限界ってことだ」


「ですがルート的に明日は軍を2つに分けることが出来ます、少しは進攻ペースが速くなるはずですよ」


「ふむ、それは有り難い、じゃあ俺は仲間の所に戻るから、また次の村で!」



 インテリノの乗る馬車に合わせて歩くのに疲れた俺は、仲間が居る前方の馬車に戻るべく小走りで前に出る。



 いや、なぜ俺以外にも小走りの兵が居るんだ?


 ……なるほど、ウ○コしていて自分の隊に置いて行かれたのか、そして俺も同じウ○コ仲間だと思われているんだな、これは恥ずかしい、以後気を付けよう。



「ただいまっ! いやはや、小走りでも距離が長いと疲れるぜ」


「あら、ウ○コでもしていたのかしら?」


「ウ○コじゃねぇし! 精霊様こそ大丈夫か? そろそろウ○コしに行った方が良いんじゃないのか?」


「精霊はトイレなんか行かないのよ! このウ○コ異世界人!」



「汚いわね! 2人共さっきから何を連呼しているの!?」


『連呼って……ウ○コです』



 セラの放った百列拳が俺と精霊様に50ずつヒットした。

 ミラに抱っこされたカレンが迷惑そうにしている。



 その後は静かにしておき、そこから3時間ほど走ったところで次の村に到着した。

 日が傾きかけている、急いで共和国軍をぶっ殺してしまおう。



『全軍、村に突入せよっ!』



 王国軍の接近に気が付いた見張りの兵士は既に逃亡している。

 誰も居なくなった村の入口から雪崩れ込む俺達、反対側にも周り、共和国人を一人も逃がさない構えだ。



「分散して建物を回るんだ、戸棚の中とかもしっかり調べるんだぞ」



 勇者パーティーは2人1組、指揮下の兵士は4人1組になって村の建物を捜索する。

 外に居る敵は全て他の連中に任せ、俺達は隠れた奴の討伐に専念しよう。



 俺はセラと2人で組み、家や納屋を隅々まで調べていく……



「あっ! 居たわよ、そっちに逃げて行くわ!」


「任せろ、おいてめぇ! どこ行こうってんだ?」



 ここは本来誰かが住んでいる家の中だ、こんな所でクズ野郎を殺してしまうのは申し訳ない。

 襟を掴んで外へ引き摺り出し、石畳の上に転がした。



「ひぃぃっ! 堪忍して下さい、俺は職業軍人じゃないんです、国に帰れば家族が……」


「その家族だって戦争に負ければ飢えて死ぬだろうよ、先に地獄で待っていると良い、死ねっ!」


「あがぁぁっ!」



 聖棒で喉を軽く突く、まだかすかに生きているようだ、面倒だからその辺にあったハンマーで頭をカチ割っておこう。



「勇者様、次はあっちの家に行ってみましょう、結構大きいから戦果が期待出来るわよ」



 次の家はかなり裕福そうな邸宅であった。

 地元の名士とかそんな感じの方が住んでおられるのであろう。



 だが今は薄汚い共和国の兵士に占拠されている、20人以上の敵兵が武器を構えて篭城していた。

 いずれも素人のようだ、剣の握りが逆さになっている奴も居るではないか。



「お~い! もう諦めて出てきやがれ~っ!」



「ふざけるな! 俺達は知っているんだぞ、他の村では投稿した兵まで皆殺しにされたそうじゃないか!」



「……どこかで取り逃がした奴が居たようね」


「チッ、どうしようか、家を壊すのは家主に申し訳ないしな」


「あの指揮官っぽいのと交渉したらどうかしら?」


「そうだな、やってみるよ」



 篭城する兵士達の中心に居る奴はどうやら正規兵のようだ。

 明らかな軍服を着ているし、武器もしっかりしたものを持っている。



「おい、そこのおっさん! お前ここのトップだろう、ちょっと話し合おうぜ!」



「話し合うも何も、もう誰もを処刑しないというのならここから出て投降してやるぞ、どうだ?」


「わかった、約束しよう、投降した兵は絶対に処刑しない」



 それを聞いて安心したのか、馬鹿面下げた兵士共が続々とその建物から出て来る。

 おいおい、ちょっと多すぎるぞ、どこにそんなに入っていたんだ……


 実際には中に隠れていたのも含めて37名居たようだ、人様の家に大人数で勝手に押しかけるとは、常識のない連中だ。



「さぁ、建物から出たし、武器も放棄したぞ、我々を処刑しないという書面を交付せよがろばっ!」


「おっとすまない、手が滑ってしまった、大丈夫……死んでいるようだな」



「おい待てよっ! 殺さないんじゃなかったのか!? もしかしてだまし討ちにするつもりか?」


「いや、今のは事故だよ、誤ってお前らの指揮官を殺してしまった、ほら、過失責任を認めてその辺で拾った岩石を全員にやろう」


「何をっ! がぁっ!」


「ごへっ!」



 大きめの石を拾い上げ、それを使って次々と敵兵を撲殺していく。

 しかし、敵兵達はすぐに逃げ出してしまった、これは降伏も無効だな。



「セラ、逃げた奴を魔法で殺せ」


「ええ、降参しておいて逃げ出すなんて非常識極まりない連中よね、惨たらしく殺してあげるわ」



 一撃で殺せる首ではなく、あえて胴体を狙って逃亡した敵兵を討っていくセラ。

 馬鹿共はもがき苦しみ、モザイクが必要な姿になって転がっている。


 止めを刺してやる必要はなさそうだ、このまま放置しておこう……



 指揮官らしき男の首を切り落とし、村の中央付近に居るインテリノの所へ向かう。

 こちらに気付いたようなので、持っていた首を放り投げてやった。



「ほい王子、お土産だぞ」


「あ、これはいい兜をしていますね、正規軍の下士官といったところでしょうか」


「デカい邸宅で仲間に囲まれて偉そうにしていたからな、おそらくここに駐留している敵の指揮官だろう」


「そうでしたか、で、どうします? 塩漬けにして持ち帰ることも出来ますが」


「そんな気持ちの悪いもの持ち帰りたくないぞ、確認が済んだら破棄してくれ」



 インテリノは部下に首を渡し、部下は兜だけ取って中身を捨てる。

 顔も名前もわからない下士官だし、兜を持って帰れば良いと判断したのであろう。



 それを眺めている間にも、周囲では絶え間なく敵の悲鳴が響き渡っていた。

 だが、それも最初よりは疎らになってきているようだ、敵の数が減っているのであろう。



「もうこれ以上捜索に行かなくてもいいかな? ちょっと疲れたぞ」


「はい、そろそろこの村も片付きそうです、この後は専用テントで休んで下さい」



「じゃあセラ、先に仲間を集めて休憩しようぜ」


「そうね、お風呂に入って夕飯を食べたいわ」



 近くをうろついていたガンゼメドに頼み、村中に散らばっている勇者パーティーと指揮下の兵を集めて貰った。



 用意されたテントに装備を置き、これまた軍が用意してくれた風呂にも入る。

 食事は安定のサンドウィッチ、それと今回から導入した缶詰だ。



 さて、移動と戦闘の繰り返しで疲れてしまったな、さっさと寝よう……



 ※※※



 翌日は朝日の昇る前から移動、今日はインテリノとモニカの母親に総大将を分け、俺達はインテリノのチームに配属された。



 半島の西ルートから2つの村を解放し、その後、距離的に先に到達するであろう合流地点で待機するのが俺達の使命である。



「さぁインテリノ、早く出発しましょう!」


「姉上、本来なら勇者殿の部隊は向こうのチームだったのですよ、それを姉上が……」



 実は、マリエルがインテリノと離れたくないと駄々を捏ね、そのせいでもう1つのチームよりも出発が遅れているのであった。


 ゆえに少々急ぎ気味で次の村を目指す、ここからは15kmぐらい離れているらしい。


 ちなみにわがままお姫様は全く反省しておられないご様子だ、後でお仕置きしておこう。



 しばらく馬車を走らせると、次の村が見えてきた……



「おい、誰も居なくないか?」


「本当ね、もう逃げ出したのかしら?」



 昨日の件で、どこかの村から逃げ延びた敵兵が居たことがわかっている。

 そういうのがここにも訪れ、慌てて撤退したのであろうか?


 とりあえず全ての建物を確認してみるものの、直近まで誰かが滞在していた形跡はあれども人影は全く見当たらない。



「王子、もうここは良いにして次へ行こう」


「そうですね、居ないものは仕方がありません、兵をまとめて出発しましょう」



 再び移動である、次の村もそう遠くは離れていないとのことなので、ここと同じ状況に……なっていた。

 人っ子1人居ないぞ、しかもこっちは食糧等を略奪済みだ。



「ここもですね、まだ焚き火が燻っています、一足遅かったというところでしょうか」


「残念だったな、まぁ、とりあえず合流地点に向かおう」



 またしても収穫ナシで村を出た。

 敵は慌てて逃げたであろうし、合流地点までの道程で負い付くようなこともなさそうだな……



 移動中の馬車の中では、セラが地図を見ながら合流地点の確認をしている。



「あそこを曲がればこの半島のメイン街道みたいね、その先の開けた所で合流するみたい」


「おぉ、撤退するときに通ってきた道に出たか」



 しばらく進み、道を外れた草原のような場所で行軍を停止する。

 まだもう1つのチームは到達していないようだ。



「予定よりもだいぶ早く着いてしまったな、次の村は近いのか?」


「本気出せば今日中に攻め落とせる距離ね、ただ、次は麻薬汚染地域よ」


「そうか、でも攻めることは出来るんだよな……ちょっとインテリノ王子と相談して来るよ」



 インテリノの馬車の方へ向かう、テントを張っていない、というか未だ馬車の中で地図を見ているではないか。


 どうやら俺と同じことを考えているようだな。

 やはり先へ進むのが得策であろうし、それを検討しているのなら賛成しておこう。



「あ、勇者殿、ちょっとこのまま次の村まで進みたいと思っていますが、よろしいですかね?」


「俺もそれが良いと思うぞ、連絡係だけ残してすぐに出るべきだ」


「では出発しましょう!」



 座り込んで携帯食を食べながら雑談していた兵達に号令を掛け、行軍を再開した……



 ※※※



 2時間程馬車を走らせると、ようやく次の村が見えてきた。

 ここにも見張りの姿は見受けられない、また逃げられたか。



 と、そこへ強烈な悪臭、とてもこの世のものとは思えない臭いである……



「うわっ! 何だこの臭いは? おい精霊様、屁をこくんじゃない!」


「精霊はおならなんかしないの、この臭いは外から入ってきたものよ」


「ちくしょう、誰だこんな臭っせえ屁をこいたのは、軍法会議ものだぞ!」



「そうじゃなくてさ……村の中、アレが原因だと思うわ……」


「……何だよアレは、うっ、おぇぇっ!」



 腐り果てた人間が山積みにされているではないか、おそらくここの住民であろう。

 共和国軍が入って来たときか出て行くときかわからないが、とにかく人々を皆殺しにしたようだ。



 インテリノの乗った馬車が近付いて来る。



「勇者殿、この村はもう諦めましょう、すぐに出ないとヤバそうです!」


「間違いない、それでどうする? 先へ進むかさっきの所に戻るか」


「この先にも野営出来る場所があります、そちらへ向かいましょう」



 その村は速攻で離脱した。

 あんな所では野営どころか野○ソも出来はしない。



 次の野営地に到着し、とりあえず早馬を出して後続の軍に俺達の場所を知らせる。

 何だか疲れ切ってしまった、今回は本当にとんでもない光景を見がちだな……



「しかし、どうもこの先の村は全部あの状態な気がするぞ」


「ええ、念のため明日もう1つ確認して、同じであれば残りは切り捨てて港へ向かいましょう」


「だな、とにかく今は後続との合流が先だ、あと風呂と寝床もな」



 野営の準備を進めていると、もう1つのチームが合流してくる。

 こちらも早いな、やはり敵は逃げ去った後であったようだな。



 念のため、その辺をちょろちょろしていたモニカに話を聞いてみると、やはりそうらしい。

 しかも俺達のように惜しいタイミングではなく、とっくに逃げた、というような感じであったそうだ。



 討ち漏らしの敵というより、元々戦果報告用の偵察兵が紛れ込んでいた可能性が高いな。


 敵の偵察兵は最初の方の村で俺達の襲撃に遭遇し、離脱して他の村に退避勧告をしに行った、という流れであったと考えるのが妥当なはずだ。


 しかしそうなると既に敵の本拠地、港に停泊しているであろう鉄船にもその情報が届いている頃のはずだ。

 ちょっと拙いかも知れないな……




 モニカとの話を終え、皆の所へと戻る、ちょうど風呂の準備が出来たところのようだ、先程の村で染み付いた悪臭を洗い流そう。


 食事を受け取りに行っていたというセラが戻ったところで全員が揃い、風呂に入る……



「しかし、2つ目の村は惜しかったわね、もう少し早ければ敵に遭遇出来ていたのに」


「誰かさんが無理矢理チーム編成を変えたせいだな、さて、誰のせいでしょうか?」



「は~い、このマリエル、一生の不覚です……」



「精霊様、マリエルの尻を抓るんだ、俺は頬っぺたを抓る、セラとミラは脇腹な」


「あでででっ、ごめんなさぁ~い」


「明日はこのようなことが無いように」


「はぁ~い」


「よし、じゃあもう上がろう、夕食を取って寝るぞ」



 風呂から上がり、軽く食事を取って就寝である、明日も朝が早いな……



 ※※※



 翌朝、また日の出前から行軍を始め、2時間程で次の村へ到着する。

 到着した、というかもう手前で状況を察し、入るのをやめた。



「臭っせぇ! ここもかよ、もうこの先の村も全滅と判断して良さそうだな」



 偵察に遣った3人の兵士が腕で大きなバツを作りながら戻って来る。

 凄いしかめっ面だ、とんでもないハズレ役を押し付けてすみません。



「王子、さっさとここを離れよう、臭すぎて死人が出るぞ」



 インテリノは鼻を抓んだまま無言で首を縦に振る。

 空いた手でジェスチャーをし、撤退の合図を出す。


 残り3つの村は無視し、このまま今日中に半島先端の港町まで軍を進めることが決定した。

 臭いの元から早く遠ざかるため、直ちに馬車を出発させる……



「ねぇ、あの港町にはこういう村から逃げ出した敵兵も溜まっているのかしら?」


「だろうな、でも雑兵だし、そこまで気にすることはないだろうよ」


「そうね、問題は敵軍の正規兵だものね」


「あと、船に搭載されている火を吹く筒な、射程も長そうだし、相当厄介な兵器だぞ」



 船載型の火を吹く筒は本当に脅威だ。

 そして、それを持った鉄船が港に停泊しているとしたら、安易に近付くのは危険である。


 どうにかして無力化する方法を考えないといけないな……



 そんなことを考えていると、抱っこしていたカレンの耳がピクリと動く。



「ご主人様、森の中に何か居ます! ちょっと追い掛けて来ますねっ!」


「あいだっ! おい、俺の太股をジャンプ台代わりにするんじゃないよっ!」



 俺の脚を蹴って窓から飛び出すカレン、俺達が使っているもう1台の馬車からはマーサが飛び出したようだ。

 意味も無くジャンプ台にされたマリエルが悶絶しているのが見える。



「まてぇ~っ!」

「待ちなさいよっ! このウスノロ!」



 不審者を挟み撃ちにして捕まえた2人、マーサが小脇に抱えているのは……どう見ても忍者である。



「何だコイツは?」


「敵の偵察兵じゃないの? あ、ハゲているわね」



 マーサのパンチで虫の息になっている忍者、中身はハゲ散らかしたキモいおっさんである。

 騒ぎを見て駆けつけたガンゼメドに身柄を渡しておいた。


 きっとアレが俺達の姿を確認し、港に居る敵軍にその位置を伝える使命を帯びた偵察兵なのであろう。

 そして、村から敵軍を逃がしたのも同一人物かも知れない。



 忍者を連れて行ったガンゼメドが戻って来る……



「指揮官殿、不審者は後方で回復魔法使いが治療し、目を覚ましたら拷問するそうです」


「了解です、まぁ、何かわかる頃にはもう港に着くでしょうな」


「ですね、では港が見えたら我々は直ちに突撃を致しましょう!」


「うん、それはダメです、おそらく壊滅しますから」



 無謀な作戦を提案してくるガンゼメドを宥め、先を急ぐ。

 もしかしたら他にも忍者が居て、既に俺達の動きを敵に報告しているかも知れないな。



 そこからさらに3時間以上行軍したところで、ようやく海が見え始める。


 ……真っ黒な敵の船が港に停泊している、凄まじい数だ。



 軍の中央に居たインテリノの馬車がこちらへ向かって来る。

 どこで停止するか相談しようというつもりなのであろう。



「勇者殿、この地図を見て下さい、これだけの兵を隠せそうなのはこの崖の後ろぐらいなのですが……」


「わかった、そこに軍を進めて、少数精鋭で敵の様子を見に行こうか」


「では、あそこの細い道を入って下さい」



 言われた方向に部隊を進め、指定された崖の裏手に出る。


 偵察班は各部隊から3名ずつを出して欲しいとのことであった。

 俺とセラ、それから目の良いリリィで行くこととしよう。



 他の部隊から出た偵察班と合流し、崖の上に登る。



「おい、何だよあのデカいバケモノは……」


「タコ……かしら? お食事タイムのようね……」



 喰われているのは村から逃げたと思しき敵兵達。

 それを正規兵らしいきちんとした格好の兵士が取り囲み、見張っている。



 バケモノに仲間を喰わせて何をしようというのだ一体?

 これは火を吹く筒と同等かそれ以上に厄介な敵との戦いになりそうだな……

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