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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第三章 また人族同士の争いですか
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168 雑兵部隊撃滅

 火矢から燃え広がった炎は、徐々に敵軍の居る街道の出口へと近付いていく。


 それを見た敵軍の先頭、この炎が火を吹く筒にとってどれだけ危険なものであるか認識しているのであろう。

 焦った様子でその場に立ち止まった。


 それを受け、敵軍の後列はどんどん出口付近に固まる、横は森、平野側で燃える火が消えた後に進軍を再開しようと思っているのであろう。



 だがそれは悪手である、油なんか森の中にも超撒いてあるんですよ、臭いで気付かないあたり、かなり焦っているに違いない。



 そのうちに炎は街道沿いの森に達し、ドッという音と共に敵軍先頭が炎上する。

 盛り上がる王国兵、見える位置にあった火を吹く筒が爆発したのを確認したためだ。



「見なさい、あんな所で止まるから焼け死ぬのよ、指揮官が無能だと兵はかわいそうね」


「精霊様、もしかしてその指揮官が無能といのは俺に言っているのか?」


「他に無能な指揮官は見当たらないのだけど……」


「貴様っ! 将軍様に向かってなんという無礼をっ!」


「いででっ! 何よ、しょぼい新米500人隊長の癖にっ! あいたっ!」



 精霊様に秒速3,000回転のデコピンを喰らわせておく。

 指揮官様を舐めているとこういう目に遭うのだ。



「指揮官殿、そろそろ我々が突撃するタイミングでは?」


「いやいやガンゼメドさん、まだすげぇ燃えてますから、しかもちょっと爆発してますから」


「しかし、燃え盛る炎に飛び込んで果てることこそ男の名誉なのです」


「あんたどうやって今まで生き残ってきたんだよ……」


「私ですか、私は斬られる寸前に敵が心臓発作を起こしたり、射られる寸前に小さな隕石が矢を弾き落としたり、まぁだいたいそんな感じです」


「リアル女神の加護じゃねぇか!」



 豪運、というのは実際にあるようだ、以前精霊様がカジノの麻雀で見せた意味不明な天和みたいなものか……



「ご主人様、敵の筒が3つ無事に出て来ましたよ」


「おう、あっちも豪運だな、精霊様、手前に水の壁を張ってくれ、一応セラも風防を……水壁の前だな」



 セラの風防、精霊様の水壁の順で防御を張り、敵の火を吹く筒により攻撃をそれで受けてみた。

 まんま火炎放射器だ、だが風防だけで勢いを失い、ただ草むらを燃やすだけの兵器に成り下がっている。



「精霊様、そのまま水で弾丸を作るんだ、筒ではなく後ろの箱を狙え」


「あのリヤカーみたいなのかしら、穴を開けちゃえば良いわね」



 精霊様の放った水の弾丸が箱を貫く。

 やはり中には陶器の壷、その中に液体の燃料が入っているようだ。


 ポンプでそれを筒側に押し出し、その先端で着火してこちら側に噴出しているらしい。



 装置に穴を空けられた敵兵が逃げ出す、だが後ろは火の海、横に走った所で王国軍側から大量の矢を射られ、その場に倒れ伏した。



「ガンゼメドさん、今のうちに火矢部隊のところへ行ってあの破壊した装置を燃やすよう頼んで下さい」


「承知致しました、ではその後、燃え盛る炎の中に自分が……」


「いえ、それは結構ですから、犬死にだけはしないで下さい」



 この男は筋肉団ではなく王都決死隊に推薦した方が良いかも知れない。

 でもどうせ死なないんだろうな、明らかに女神が何やら操作していそうだし……



 零れた燃料に着火するように要請している間にも、今度は10其以上の筒が森の街道を抜けて出て来た。


 どれだけ頭が悪いのであろうか、先程精霊様にやられたのと同じ位置にそれを据え、攻撃の準備を始める。

 しかも初心者なのか、かなりもたついているようだ。



「あれはもう攻撃して良いのかしら?」


「良いんじゃないかな、知らんけど……」


「じゃあ潰してしまうわね」



 連続で発射される精霊様の水弾丸、時折兵士も貫きながら全ての火を吹く筒、いや、そのメインである燃料タンクを破壊していく。


 そこへようやく、火矢が俺達の頭上を通り過ぎた。


 燃料タンクが破損した地点に突き刺さる火矢、急激な燃焼を起こし、生き残っていた兵士諸共火の海となる。


 王国軍兵士はかなりの盛り上がりっぷりだ。焼け死につつある敵に投げ掛ける野次はもう放送できないレベルである。



「あの兵器のサンプルが欲しかったんだが、この調子だと全部燃え尽きてしまいそうだな」


「勇者様、もしかしたら共和国に攻め込んで制圧してしまいさえすれば、この装置の技師を捕らえることが出来るかも知れませんよ」


「お……おうっ!」



 そう言ったマリエルの目には『領土』と書いてあったような気がする。

 結局この異世界、自領を拡大して利益を得ることが出来さえすればあとはどうでも良いのだ。



 まぁ、俺が元居た世界も今でこそ人権だとか何だとか平和なことを言っているが、一昔前はこういう感じであったに違いない。


 今のマリエルの言動を責めることは、俺にも、そして周囲の人間にも到底出来ない……




 その後、3回にわたって逃げ延びた火を吹く筒の部隊が森から現れたものの、それを殲滅して30分、次が現れる気配は一向にない。



「火を吹く筒は終わりかな? そろそろ全軍突撃しても良いかも知れないぞ」


 街道の出口を見ると、敵、筒を持っていない敵が奥の火災を逃れたエリアで待機しているのが確認出来る。


 そういった連中が来ているということは、もう敵軍の最前列に固まっていたという火を吹く筒は終わり、あとは一般の兵士しか残っていないということなのであろう。



 さて、虎の子の火炎部隊を失った敵はどう動くのか、しばらく観察してみよう。




 ……もちろんヤケクソであった。



 森の街道から一斉に姿を現した敵が整列する。

 その数は元の1万から7,000程度まで減少しているようだ。


 そして、並んでいる敵兵にはあまりやる気が感じられない、というか並ぶのが遅すぎだ、相当に練度が低い。



「なぁ、あいつら普通に雑魚じゃね?」


「主殿、その可能性はかなり高いぞ、ブリブリ共和国が軍事大国という話は聞いたことがないからな、きっと適当に徴兵したのであろう」


「つまり兵器だけは魔族から貰った最新のもの、で、中身は完全な素人集団ということか」


「そんな感じだろうな、見ろ、指揮官らしきおっさんもかなり苛立っているぞ」



 というか指揮官も相当に馬鹿なんじゃないのか?

 メインの攻撃手段が全損した後にまだ戦うとか、これは正気とは思えないぞ。



 しばらくして、ようやく整列を終えた敵軍が点呼を取り始める……



『番号!』


『1、2、3、4、5、6、7、欠、欠、欠、欠、欠……』



『おいっ! 欠の者はどうしたっ!?』


『ハッ! ほとんど逃げましたが、自殺した者も多くございますっ!』


『バッカモンッ! 根性が足らん、自殺した奴は死刑じゃ!』


『既に死んでございますっ!』




「おいジェシカ、あれってさ、相当弱いだろ?」


「弱いとか以前にもう組織として終わっているな、どれだけ急ごしらえの軍なのだ……」



 静かな王国軍の後方から高らかな笑い声が聞こえる。

 なんと、いつもは大人しいマトンが笑い転げているようだ。


 こんな無様な軍を見せられたのでは仕方がないかも知れんがな……



 で、そんな笑われるような状況にも関わらす、敵軍は攻撃を仕掛けてくるようだ。



『全軍、突撃じゃぁ~っ!』



 指揮官のおっさんの号令、バラバラと動き出す敵兵。

 誰も武器を抜いていないようだが、あのおっさんは抜刀許可を出さなかったのか?



 さて、こちらも動き出す頃合だ。



『前衛中央は突撃! 他は前進して応戦せよ!』



『ぜんしぃ~んっ!』



『よっしゃ俺達は突撃だ! 行くぞ!』



 規定通り、俺達の軍だけ突撃、他は余裕があると見て前進し、まばらに向かって来る敵を迎え撃つようだ。



 面白いことに、敵軍の総大将と思しき60過ぎのおっさんよりも、こちらの総大将である9歳のインテリノの方が遥かに良い行動を指示しているのだ。


 これが戦争ばかりしている国とそうでない国の違いなのであろうか……



 さて、いつも突出しがちなカレンを抑え、今回はさらに猪武者のガンゼメドも面倒を見なくてはならない。

 補佐官なんだからあまり前に出るのはやめて欲しいのだよ。



「セラ、一番前で鉄の盾を持った兵士の前に風防を張るんだ、進軍にあわせて前に出してくれ」


「わかったわ、とにかく死なないようにすれば良いのね」


「その通りだ、ちなみに女神の加護で助かったことにするからな、調子に乗って事実をバラすなよ」



 先頭が鉄の盾を持って突撃し、他もその後に続く俺達の部隊。

 ちょっとだけ腰が引けているようだ、ここで梃入れしておこう。



『皆さんっ! 大将首を取った方には凄いご褒美が待ていますよっ! 国から……』



 一気に進軍速度が増した、部隊の最前列に居るのは貴族の次男以下、つまり不遇な連中だ。

 ここで手柄を立てて自分で家を立ち上げ、生涯貴族として良い暮らしをしようという気概が見受けられる。



 一番先頭に立った兵が敵軍の全面とぶつかる。

 敵は剣を抜いていなかったようだ、そのまま斬り殺し、先へ進んで行く俺達の部隊。



 これは楽勝だな、敵は戦い方もわかっていない、というかむしろ移動する風防の圧に耐えられず、転倒して起き上がれなくなっている始末だ。



 最初に上陸して来た木造船団の連中もやる気が無かったが、今居るのはさらに弱い、ただ無抵抗の地域を蹂躙するためだけに集められた雑兵なのであろう。



「指揮官殿、敵将が逃げて行きますぞ」


「早すぎだろ、まだ戦い始めたばかりじゃないか」


「情けない、というか熱さが足りない男ですな」


「あんたはもう少し冷まして下さいよ……」



 現在は敵軍の半ば程まで進んだ地点、未だこちらに死傷者は出ていない。

 この辺りまで来ると、戦わずとも敵が勝手に避けるようになってきた。



 このまま進めば……おっと、強そうなのが出て来たではないか。



 ゴリラみたいなのが数十体、鎖に繋がれて暴れ狂っている。

 その鎖が取り払われ、周囲の敵兵を殺しながらこちらへ向かって来た。



「ガンゼメドさん、あれはあんたが殺っても良いですよ、何だか似てるし……」


「感謝致します! やっと相応しい死に場所が見つかりましたよ!」


「いや、あの……死なないで下さいね……」



 突っ込んで行くガンゼメドはそんなの聞いていない。

 ひたすら前に進み、変なゴリラを殺戮している、しかも強い。



 先行してしまったガンゼメドに追い付いた俺達も、直ちにゴリラの討伐にかかる。

 どうやら元は人間のようだ、変なクスリで強化されているらしい。



「指揮官殿、またゴリラが現れました、どうしますか?」


「う~ん、そうですね……カレン、マーサ、あのゴリラは何秒で全部殺せる?」


「60秒です!」


「いや、また出て来たわよ、90秒掛かるわね」



「どうでも良いが頼んだわ、俺達は前進するから、後で追い付いてくれ」



 2人が了解したのを確認し、残りのメンバーは先へ進む……



 100m程先に盾、鉄の盾が2つ落ちている。

 誰かがやられた、そして盾を拾う余裕も無く部隊が前進して行ったはずだ。



 見ると、左の肩から下が完全に失われ、倒れている兵士が2人。

 攻撃を受けた際に耐え切れず、腕ごと盾を持って行かれたようだ。



「生きているぞ、ルビア、傷口だけ治療するんだ!」


「腕はどうしますか?」


「もう諦めるんだ、死ななかっただけでも儲けもんだぞ!」



 前方を見ると、今俺達が戦っていたゴリラと同じような連中が、前列の盾を持った兵士に襲い掛かっていた。


 かなりの数が居るようだ、しかもセラの風防を突き破って攻撃を仕掛けている。

 このままだと前列の兵士に死人が出かねない……



「おい、あのゴリラを重点的に叩くぞ、一般兵には避けて進むように伝えないとだ!」


「今それを伝えるのは勇者様よっ!」



 そうであった、今回は俺が指揮官なのだ、一番前で戦っている部隊にゴリラ的な連中との直接戦闘を避けるように伝えないとならない。



『全員、ゴリラは可能な限り避けろっ! 狙われた場合は逃げても構わん、とにかく攻撃を貰うなっ!』


 ようやくこの一言を伝達することが出来た、今までなら何も言わなくとも全員わかってくれる要素である、だが、普段から戦うわけではない一般の兵士にとっては言わなくてはわからないことなのだ。


 これは完全に俺の責任である、次からは頑張ろう……



 そして、そのたった一瞬の隙に、新たに5人の兵士が重傷を負い、その場に倒れ伏してしまった。

 すんません、後で酒奢るんで許して下さい。



「勇者様、全ゴリの討伐が終わりました、先へ進みましょう!」


「わかった、ではこのまま前進だ!」



 ミラが前進だと言うのでとりあえず前進した。

 やべぇ、俺指揮官だったわ、俺が決めないといけなかったかも知れんな。



 その後、しばらく前進して行くと、ようやく敵の本陣と思しきテントが見える。

 先程騒いでいた大将はあそこに隠れているに違いない、一気に攻め落とそう。



 だいぶ後ろのゴリラを討伐して負い付いて来たカレン、マーサと合流する。

 敵の本陣を示し、一般兵と一緒に突撃するよう指示しておいた。


 どうしても突撃したいガンゼメドもそこに加わるらしい、一番前に出て良いよと伝えると、何だか知らんが凄く喜んでいる、変な踊りを披露しているではないか。



『敵本陣に向かって突撃っ!』



 俺の号令で、元々のパーティーのみでなく軍の連中まで動き出す。

 今日は既に同じようなことを何度かやったが、未だに慣れない光景である。



 敵本陣の前に待機していた敵兵が逃げ出す。

 セラの魔法でそれらを撃ち殺し、丸裸になったテントへ突っ込む。


 先頭のガンゼメドが剣を使ってテントを切り裂くと、そこには体育座りして震える先程のおっさんの姿があった。



「待て、降伏じゃ、貴様等の方が数が多いゆえ敵わなんだ!」


「よく言うよ、あれだけ最新兵器を持って来ておいて中身は素人集団だもんな」


「ぐぅぅっ! とにかく降伏じゃからな、もう戦闘をやめて武器を収めるんじゃ」


「てめぇらが先に武器を置けよ、そのぐらい当たり前だろ?」



 相当な馬鹿野朗だ、もしかして戦闘の停止を宣言すれば王国軍が武器を鞘に収め、その隙に攻撃したり、逃げたりすることが出来ると思ったのかな?



「勇者様、この馬鹿はどうする?」


「縦ロールと同じように敵軍に無様な姿を晒してやるんだ」


「じゃあ、髪の毛を全部毟っておくわね、覚悟なさいっ!」



「へっ? あ……あがぁぁぁっ! ぎぃやぁぁぁっ!」



 元々かなり少なかった髪の毛を毟り取られる敵将のおっさん。

 薄気味悪い叫び声を上げ、失神してしまった、おもらし(大)も忘れてはいないようだ。



「臭せぇおっさんだな、よし、これを引き摺り出して敵にアピールするぞ!」



 おっさん指揮官を引き摺り出し、敵軍に俺達の勝利をアピールす。

 ここぞとばかりに降参し、武器を捨てる敵兵達。


 本当に雑魚ばかりだったな、装備もバラバラで練度も低い、明らかに兵士向きではないデブとかも普通に混じっている。


 これで本当にこのバリカン半島全体をキープし、帝国まで攻め落とすことが出来るとでも思っていたのであろうか?

 

 実は本命が別にあるとか? いや、考えすぎだな……



「指揮官殿、とりあえず本部へ戻りましょうか、我々のアツい勝利を伝えるんです!」


「あ、じゃあガンゼメドさん、この敵将を運んで下さい」


「えっ? そのような大役を私に任せて頂けるとは、よろしいのですか?」


「もちろん、だってコイツ、ウ○コ漏らしてるんですよ、ちょっと触れないんでお願いします」



 ガンゼメドが敵将のおっさんを引き摺り、武器を捨ててその場に待機している敵兵の間を通って本部へ帰還した。



「おつかれさまです勇者殿、今回は我々の勝利ですね、このまま一気に半島を奪還しましょう」


「そうだな、でも王子、その前にいくつか確認しておきたいことがある、縦ロールはどこに居る?」


「あの女でしたらすぐそこのテントに収容してありますよ、拷問しますか?」


「いや、俺が行けばすぐに答えるはずだ、では行って来る」



 1人で本部テントを出、縦ロールが居るという収容テントに向かう。


 テントの中に居たのは数名の兵士と縦ロールのみ、他に捕虜などは取っておらず、先程のおっさんも別の所に運んだようだ。




「おい縦ロール、ちょっと聞きたいことがあるんだ、もちろん正直に答えるよな?」


「脅すのはよしなさい、それと、質問に答えたらまた食事を提供すると約束しなさい」


「相変わらず態度がデカいな、死にたくなかったらちゃんと答えろよ」


「ひぃぃっ!」



 縦ロールに聞きたいのは1つだけではない、まずは残りの共和国軍について確認しておく。



「……鉄船に乗っているのは正規兵ばかりよ、半島を侵略するための雑魚とは違うわ」


「じゃあそれがまだあの港で待機しているということか?」


「そうね、あなた達が行ったら攻撃してくるはずよ、負けて死になさい」



 生意気な奴め、もう一度引っ叩いてやる必要があるな。

 だが今は失神されても困る、デコピンだけで良いにしておいた。



 もう1つ、共和国はこの敗戦を受けてどう動くのかについて聞いてみる。

 だが、そもそも負けることを想定していなかったらしい、ゆえにこの後残りの敵がどう動くのかはわからない。



「まぁ良いや、俺達はこのまま半島全土を奪還するから、お前は王都に連れて帰って貰うんだな」


「イヤよ、解放しなさいってばっ!」


「舐めんじゃねぇよ、立場を弁えるんだな、今の時点で殺されていないだけでも有り難く思え」


「ぐぅぅっ!」



 プライドが高いせいか、現状を全く受け入れることが出来ない縦ロール。

 王都で晒し者にされれば少しは考えが変わるであろうか?




「勇者殿、ちょっと本部に集合して頂いても良いですか?」



 そこへインテリノがやって来た、何か重要な話があるらしい。

 すぐに本部へ戻り、主要人物が全員集まったところでインテリノの話を聞く……



「偵察兵から報告がありまして、半島先端までの間にある15の村が敵に制圧されているそうです」


「そういう村々も麻薬だらけなのか?」


「いえ、そのうち大陸側の10村は普通に暮らしている小さな村です、住民達も避難したそうで、今こちらに向かっているとのことです」


「つまり、それらを奪還しながらあの港町を目指すということだな?」


「ええ、そうなりますね」



 今日はこのまま兵を休ませ、出発は明朝ということに決まった。

 色々と回り道をしなくてはならないのは面倒だが、こればっかりは仕方が無い。



 どうせ敵はここへ来たのと同じ、雑兵ばかりの部隊であろう。

 そんなのはさっさと片付けて、本命の共和国正規兵と戦うのだ……

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