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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第三章 また人族同士の争いですか
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165 敵軍襲来

「おいおい、どういうことだよ? どうしてあんなに沢山来ているんだ?」


「麻薬をありったけ持って来たんじゃないかしら? 売上絶好調みたいだし」


「いやいや、どんだけ気合入ってるんだよ……」



 次に来る共和国の船、つまり夕方班の1隻だけを撃沈すべく沖に出た俺達であったが、そこへ向かって来たのは50隻を超える大船団。


 しかも良く見ると貿易船ではないようだ、明らかに今朝沈めたものとは違うタイプの船である。



『ご主人様、剣とか弓を持った人が乗っていますよ、全部の船に』


「マジか、殺る気満々じゃん! 俺達が動いているのがバレたのかな?」


「いや主殿、そうだとしても共和国からここまで来るのに5日は掛かるぞ、今朝始めて今来るなど考えられない」



 ということはアレか、向こうはちょうど今日あの大船団でこの半島を攻め、上陸して制圧するつもりだったということか。


 きっと元々麻薬は住民を骨抜きにするだけのものであり、本命はこの半島の領土、単純に麻薬を売って金銭を得るだけの目的でこのようなことをしている訳ではなかったようだ。



「さてどうしようか……セラ、リリィ、それから精霊様も、とりあえず3人で攻撃を開始してくれ」


「勇者様はどうするの?」


「一旦陸に戻ってこのことを本部に伝える」



「待って、それは私が行くわ、その方が早いもの」


「そうか、じゃあ精霊様に任せたぞ、アイリスを抱えて行ってくれ、俺達は船で突っ込む」


「わかったわ、伝えたら私も攻撃に参加する、アイリスちゃん、行くわよ」


「はぁ、武器は置いて行っても良いですか?」


「それは武器ではなくフライパンだ、食事が作れなくなるから置いて行ってくれ」



 アイリスを抱えた精霊様、それからセラを乗せたリリィが飛び立つ。

 俺達も船を進め、敵の船団を目指した。



 リリィがブレスを吐きながら敵の中央を縦断して行く。

 木造の船はあっという間に火に包まれ、多くの敵兵が燃えながら海に飛び込むのが見える。



 俺達も敵船団に接近してきた、そろそろ戦闘準備を……何か飛んで来る!



「危ないっ! 矢が飛んで来ますよっ、早く隠れて!」


「ウソだろう、まだ1kmぐらいはあるぞ、しかも矢というよりも槍だなこれは……」



 巨大な矢が空を覆わんばかりにこちらへ襲い掛かる。

 俺達は何とか船室の裏に隠れたが、ドレドの船は穴だらけになってしまった。


 距離がありすぎて反撃も出来ないし、隠れて接近するのを待つしかない。



「勇者様、リリィちゃんが戻って来ますよ!」


「何だろう? 疲れたのかな、にしても早すぎだろう……」



 船首側の甲板は既に無数の矢が刺さって使用不可になっているため、船尾側の隙間に着陸するリリィ。

 上に乗っているセラが焦った様子だ。



「かなり高く飛んでいたのに矢が届いたわ、何だか変な機械で飛ばしているみたいなの」


「リリィのブレスよりも射程が長いってことか?」


「倍以上ね、もう攻撃どころではなかったわ、それに……」


「それにどうした?」



「あれと同じ船が後ろにまだ居たわ、水平線が見えなくなるぐらいに」


「……やべぇじゃん」



 そう言っている間にも、敵の放つ矢の雨は次々とこちらの船に突き刺さる。

 このままでは撃沈されてしまう、ここは一旦退こう……



「セラ、風防でこの矢を防げるか?」


「大丈夫よ、ただかなり大きく張らないとだし、正直5分も持たないわ」


「それで良い、ユリナ、今見えている船団だけでも焼き払うんだ」


「わかりましたの!」



 まずセラが、それに続いてユリナが甲板に出る。

 セラの風防によって一時的に飛んで来る矢を防ぎ、その間に火魔法を発動させるユリナ。



 閃光と同時に僅かな熱を感じる、敵までの距離が近い分、こちらにも多少は被害がありそうだ。

 数秒後、爆風と共に風防が一部崩壊し、俺達が裏に隠れている船室の屋根が吹き飛ぶ。



「あぅ~っ、私の船がぁ~っ」


「ドレド、ちゃんと直してやるから我慢しろ、今は一旦港へ戻るんだ」



 船を反転させ、港を目指す、途中でルビアを抱えた精霊様と合流することが出来た。


 今の爆発、それから矢達磨の船を見て状況は察していたのであろう、ルビアを船に降ろした後も飛び立とうとはせず、そのまま一緒に撤退する。



「この矢、敵は巨人でも雇っているのかしら?」


「いや、おそらく巨大な弩でも積んでいるんだろう、射程が桁違いなんだ」


「あらそう、面白そうだし、ちょっと様子を見てくるわ」


「おいおい、気を付けろよっ!」



 敵の兵器に興味を持った精霊様、1人で勝手に偵察しに行ってしまった。

 まぁやられてしまうことはないであろうが、怪我とかしないで欲しい。



 しばらくすると遠くの空でスコールのような落水が確認出来た。

 結局攻撃を仕掛けているじゃないか、何がちょっと見てくるだよ……



 精霊様は俺達が港に帰還する直前になってようやく戻る。

 いつものようにニヤニヤしていない、普通に真顔だ。



「とんでもないモノを見てしまったわ……」


「敵の船団だろ、かなりの数が居るんだってな」


「そっちは攻撃して50隻ぐらい沈めたわよ、でもね、その後ろに変なのが居たのよ」


「変なのって、怪獣とかか?」


「鉄の船、煙突から煙噴いてたし、近付いたらリリィちゃんのブレスみたいなので攻撃されたわ」


「マジか!? 数はどのぐらいだ?」


「もう数え切れない、1,000以上は居たはずよ」



 鉄の船というのは読んでその如くであろう、そして煙突からの煙は蒸気機関か?

 おそらくそういう船を動かすというのであればもう蒸気船しかあるまい。



「で、リリィのブレスみたいなのって、特徴は?」


「変な筒から火を吹いていたのよ、人族が5人で操作していたわ、水を掛けても消えないし、意味不明よ!」


 あれだ、ギリシア火だ、おそらく火炎放射みたいなタイプのやつなのであろう。

 何にせよ、敵がかなり厄介な兵器を持ち込んでいることは間違いない。




「お~いっ! 勇者殿、大丈夫かぁ~っ!」


「中身は大丈夫だ! だが船がヤバい、どうしたら良い?」



 港ではシールドが出迎えてくれた。

 港の裏側に造船ドッグがあるとのことなので、とりあえずそちらに船を回す。



「おう勇者殿、これはまた派手にやられたな」


「矢の雨だったよ、修理にはどのぐらい掛かりそうだ?」


「う~む、これは1日掛かるぞ、まず材料が足りないからな」



 ゴンザレス達でもそれほど時間がかかるというのは相当だ。

 よく見ると矢のせいか爆発の衝撃か、竜骨にヒビが入っているではないか。


 これは本当に重傷だ……



「ドレドは船の所に残るんだ、一応ハンナも置いて行く、ハンナ、敵が来たら惜しみなく魔法を使えよ」


「うぇぇぇっ! 怖いですよぉ~っ!」



 セラの杖から姿を現した弱虫ハンナ、既に泣いている、あと、当然おもらししている。

 今回は相手が大魔将でないと知って自信満々だったのだが、結局これですか……



「ゴンザレス、ちょっと緊急作戦会議をしなくちゃならん、他の参加者を本部に集めてくれ」


「おうっ! これは相当なピンチだな、軍が来るまで持ち堪えないとだ、すぐに会議をしようではないか」



 ハンナとドレド、それから船の修理をする数名の筋肉団員をその場に残し、俺達は町の中にある作戦本部へと向かった。



 麻薬の摘発作業を一時中断し、本部テントに集まる各組織の代表者。

 まずは実際に敵と接触した精霊様の話から会議が始まった。



「え~っと、今精霊様が言ったのは以前魔王様が欲しがっていた原子力何とかってやつなんですかね?」


「マトン、そこまでじゃないぞ、それのもっと原始的なやつだ、使っているエネルギーが違う」


「良くわかりませんが、とにかくかなりの脅威であることは確かですね」



「それとな、船だけでなく火を吹く兵器もかなりヤバいはずだ、軍が来てもそれの射程にだけは入れちゃいかんぞ」


「水を掛けても燃え続けるというのは困りものですね、とにかく、王国軍は海には近づけないようにしましょう」



 その王国軍がここへ到達するまでにはまだ2日ある。

 それまではここに居るメンバーと連れて来た寡兵だけで敵に対処しなくてはならないのだ。


 だが、正直言ってそれは無理である、最悪の場合、救助した人々を連れて撤退、というのも止むを得ないであろう。



「精霊様、敵の位置と進行速度からしてここへ到達するのはいつになりそうだ?」


「そうね、手前の木造船団が明日の朝、鉄船は明後日の昼ぐらいかしらね」


「マトン、王国軍はいつ頃だ?」


「おそらく明後日の夕方です、暗くなってからの到着かも知れません」


「持ち堪えられるとは思わないな……やはり俺達が退いて、内陸で軍と合流するか?」



「しかし勇者殿、敵の上陸を許したらその後はどういうルートで進軍してくるかわからんぞ」


「そうだな、だが敵国が欲しいのはこの半島だろう、それ以上は進まないと思うんだ」


「ふむ、つまり僕達は半島の付け根部分に集合し、改めてそこから進軍するということか」


「ああ、終点まで来てやれやれと思っている敵を皆殺しにするんだ」



 敵は陸上でも巨大な兵器を持って進軍するに違いない。

 となるとかなりその行軍スピードが落ちるはず、逃げるだけなら何とかなるであろう。


 逃げ切り、王国軍と合流した後はこちらのターンだ……



 その後は翌日に決行する撤退作戦について話す。


 明朝、日が出る前から非難を開始し、起き上がれないような重症の者は元気なものが運ぶ。

 俺達は明日到達するはずの木造船団と戦い、その後は追いかけるように撤退すれば良い。



「では早馬を出してこちらへ向かっている軍を停止させます、今ならまだ良い感じの所で合流出来る位置で止められるはずです」


「うん、結果的には一時この半島を失うことになるが、闇雲に戦って全滅よりはマシだろうな」



 そういうことで作戦は決まりだ、テントを出ると既に辺りは暗くなっていた。

 外で待っていた仲間に今の話を伝え、ハンナとドレドが待つ造船ドッグへと向かう。



「あ、おかえりなさい、会議はどうでしたか?」


「明日の朝、手前の船団と戦った後に陸路で撤退する」


「あらっ、それじゃあ私は……」


「船が動きそうなら修理を切上げてトンビーオ村に戻るんだ、護衛はハンナ、アイリスも連れて行ってくれ」


「わかりました、メインの機関はもう大丈夫だそうなんで、外側は諦めてすぐに出ます」



 ハンナとアイリスを載せたドレドの船は、急遽修理作業を止め、直ちにトンビーオ村に向けて出航した。


 何があるかわからないということで、念のため精霊様が護衛として同行する。

 トンビーオ村に着き、そのまま飛んで戻れば明日の朝には帰還出来るとのことだ。



「それじゃ、俺達はもう一度本部に戻ろう、明日の準備をするぞ」


「勇者様、準備って何をするのよ?」


「酒樽に油を詰めるんだ、それに火を付けてリリィが高空から投下する」


「それで敵の船を燃やすということね」


「そうだ、投下地点はセラが決めるんだぞ、ついでに雷と竜巻を使っても構わん」


「わかったわ、敵はかなり広がっていたから竜巻は効果が薄いかもだけど、雷で1隻ずつ潰すのは何とかなりそうよ」



 敵船団はかなり船同士の距離を取り、炎上した船があっても燃え移らないようにしているらしい。


 そしてそうなると、攻撃範囲の広いセラの特殊風魔法で生じる竜巻でであっても、一撃で巻き込める船の数が少なくなってしまう。


 一度竜巻を放つとしばらく離れなくてはならないことを考えた場合、雷で単発攻撃していった方が良さそうなのは確かだ。


 まぁ、その辺りは本人の判断に任せよう……



 作戦本部に戻った俺達は、早速小さめの酒樽と油を手配し、筋肉団員に手伝って貰って樽爆弾を作成する。

 油を詰め、導火線を付けるだけの簡単なお仕事だ。



「リリィ、これは一度にいくつ持てそうだ?」


「5個ぐらいですね、それ以上持つと高く飛べなくて矢が怖いです」


「うむ、では何度も行ったり来たりして攻撃を続けるしかないな」



 無理は良くない、欲張ったせいで被弾し、治療のために戦闘に参加出来なくなっては本末転倒だ。

 樽爆弾は一度に5つ、全て投下し終わったらもう一度取りに戻ることとした。



「ご主人様、私の火魔法はいつ使ったら良いんですの?」


「そうだな、ユリナは本当に最後だ、港に近付いた敵船が集中してからの方が効率が良い」



 付近の地形からしてこの港以外の所には上陸出来ないはずだ、敵船団は間違いなく接岸のために集中する。

 そこでユリナの火魔法を使い、残った船を一気に始末しよう。



「でだ、セラとリリィ以外のメンバーは敵が上陸するまで隠れるぞ、どうせ手前で弩を打ち込んでくるだろうからな」


「その間は一切反撃しないってことですね」


「そうだ、居留守作戦を使うのがベストだろう、上がって来たら一気に掛かるんだ」



 これで仲間内での作戦会議も完了である。


 本部テントでは救助した人の搬送態勢も確立しつつあるようだし、逃げる方も心配する必要はなさそうだ。



 ちなみにウォール家は撤退組の防御のために、モニカの家の連中もその先導をしなくてはならない。

 明日ここに残って戦うのは俺達勇者パーティーと筋肉団だ。



 そこで風呂の順番が来たと告げられたため、本部近くで接収した比較的綺麗な建物の風呂に入る。

 どうやら元々公衆浴場だったようだ、人々が麻薬に溺れて以来、全く使っていなかったようだな。



 風呂の窓から外を見ると、広場では今日捕らえられた麻薬の売人達が火炙りにされていた。

 処刑しているのは救助された住民のうち元気な者、皆ノリノリである。


 明日には故郷を捨てて逃げなくてはならないのだし、ここで鬱憤を晴らさせておくのは正解であろう。



 風呂から上がり、僅かな食欲を無理矢理増幅させて栄養を取る。

 とんでもない光景を見せられた日の夕食は実に不味い。



「じゃあ寝るぞ、明日は暗いうちに起きるからな」



 用意された宿舎で布団を敷き、すぐに目を閉じた……



 ※※※



 翌朝、まだ暗いうちから作戦の準備を始め、空が白み始めてきた頃にはそれが整った。

 あとは飛び立って敵に攻撃を加えるだけである。



「セラ、リリィ、準備は良いか?」


「任せなさい、もう全てOKよ!」


「ちなみにセラ、火種は持ったか?」


「……忘れたわ」



 樽爆弾を生で投下するつもりだったのであろうか、せめて火だけは付けて貰わないと困るぞ。

 瓶に入れた火種をセラに持たせ、出撃させた。


 敵船団はまだ見えないものの、おおよその位置は把握出来ている、南の空を見守りながら、攻撃第二波用の樽爆弾を運び出す。



 5分程待つと、空に雷が光っているのが見える。

 ここからの距離はまだかなりある、出来ることなら敵の数を大幅に減らして欲しい。



「おはようございます、私達はこれで撤退しますね、頑張って下さい」


「おう、マトンも気を付けろよ、戦えないんだし」


「ええ、どうせ参謀なので隊の中央に居ますから、基本的には安全なはずです、ではご武運を」



 担架を持って町を出て行く一団を見送った。

 この町に残っているのはもう俺達と筋肉団、それから助ける価値のない麻薬中毒者だけである。



「おう勇者殿、ちょっとこれを見てくれ、トーチカを作っておいたぞ」


「すげぇな、どうやってこんなもの作ったんだよ?」


「巨岩を運んで来て素手で削ったんだ」


「意味がわからん……」



 5m四方ぐらいの広さがあるトーチカが10基以上も並んでいた、ここに入ってしまえば弩による艦砲射撃など何でもない。


 俺達はそのうち2つを借り、パーティーを半分に分けて中へ入った。

 のぞき窓からリリィがこちらへ飛んでくるのが見える……



「おかえり、どうだ、樽爆弾は命中したか?」


「3発当たったわ、1発は完全にハズレ、もう1発は船べりに当たったけど、ちょっと小火を起こしただけだったみたい」


「当たった3発の威力はどうだった?」


「甲板を突き破って中から炎上していたわ、あれは沈むわね」



 なかなかの威力らしい、しかし5発投下して3発当たっているのであればたいした成績だ、こういうのは意外と命中しないらしいからな。



「あ、それと精霊様も帰って来たわよ、今は敵の前方を狙っているみたい」


「わかった、引き続き攻撃して、弩がここを射程に入れる前になるべく撃沈してくれ」



 再び攻撃に向かうセラとリリィを見送り、トーチカへ戻る。

 ようやく覗き窓から敵船の姿が確認できるようになった、まだまだ遠いな。



「ご主人様、私だけ船の様子が見えません、何とかして下さい」


「カレンがチビだから悪いんだぞ、ほら、抱っこしてやるから外を見ると良い」



 背が低く、覗き窓に目線が届かないカレンを抱き上げ、外を見せてやる。

 セラの魔法による落雷と樽爆弾で炎上する船を見るのが楽しいらしい、尻尾の動きでわかる。



「あ、船が真ん中に集まってきていますよ」


「上陸の準備だろう、どれどれ……いや、まだ遠いな、リリィ達があと一往復するぐらいは待とうか」



 再び帰還したセラとリリィに、次の攻撃で一旦切上げ、精霊様と共に戻るよう伝える。

 樽爆弾が10個以上無駄になりそうだが、取っておけば後で使えるかも知れないな。



 かなり敵が近付いたお陰か、すぐに攻撃を終えて戻って来るリリィ、その後ろに眠そうな顔の精霊様も居る、そういえば1人だけ徹夜だったか……



「ユリナ、ここから敵の中央付近を狙えるか?」


「もういけると思いますの、一度ここから出て港の突堤に立ちますわよ」



 念のため帰還したばかりのセラに頼んで風防を張って貰う。

 トーチカを出て港に向かい、突堤の先端に立つユリナ。



 火魔法の火球が敵船団のど真ん中に直撃し、周囲に居た船を100隻以上焼き尽くした。

 どうにか火災を逃れたものも、一部は爆風で半損しているようだ。



 セラとユリナがトーチカに戻り、その後は息を潜めて隠れておく。



「そろそろここも敵の射程圏内に入るだろうな、良いか、皆絶対に出るなよ、存在がバレそうな行動は慎むんだ」



 そのとき、ザァーッという音が聞こえる、敵の第一射が岸に到達せず、近くの海に矢が落ちた音である。

 次は地上への落下音、そしてその次で、ようやくトーチカの壁に矢がぶつかった。



 そのまま何度も射掛けてくる敵、周囲の建物が破壊されていくのが見える。

 だがまだ待機だ、上陸されてからが本当の戦いだからな。



 しばらく後、港に接近する船影、やっと上がって来るようだ……

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