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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第二十四章 最後の魔将
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144 王都南門での圧勝

 企業魔将軍の第一部隊2万との戦闘が王と南門付近で開始された。


 あみだくじで大ハズレを引いた俺達勇者パーティーは、、駄王の指揮下に入って戦うことになってしまったものの、とりあえずは自由にやらせて貰っている。



「危ねぇっ! おいセラ、魔法を撃つときは前のことも考えろ!」


「あらごめんあそばせ、次こそは当ててやるわっ!」


「待てコラ、俺を狙うんじゃないっ!」


 ニヤニヤしながら攻撃してくるセラ。

 今は戦争中なんだぞ、少しは真面目にやりなさいよ。



「しかし下級魔族ってこんなに弱かったか?」


「というか勇者様、先程中級魔族を殺してみましたが、何かもうスライム以下の手応えでしたよ」


「……これが修行の成果か」


 修行によって俺達のステータスは爆発的に上がっている。

 とはいえ感覚的にはそれ以上の何かを感じざるを得ない。


 実戦で今の力を使うのは初めてだ、目に見える以上に強くなっていることを身をもって体験した。



「お、ようやく駄王が便所から戻ったようだ……俺を呼んでいるのか、ちょっと行って来る!」


 中衛をマリエルに頼んで戦線を離脱し、駄王の下へと向かう。

 ろくでもない話だったらブチ殺してやる。



「何だ、どうして俺を呼び出したんだ?」


「おぉ、ゆうしゃよ、今回はちょっとこの2人に手柄をやりたいのじゃ」


 駄王の後ろに居たのは、モニカとその母親であった。

 ついこの間叔父が反乱に加担し、賠償金だの何だので没落したモニカの家。


 今回の簡単な戦で活躍させ、その汚名を雪がせようという考えなのであろう。

 これなら協力してやっても良いな。



「よっしゃ、それならモニカと家臣を敵将のところに案内してやろう」


「すみません勇者さん、当家のためにわざわざ」


「良いってことよ、どうせ俺達が大将首を取るわけにもいかんからな」



 モニカの母親は本陣に残し、モニカと30名程の家臣団を引き連れて仲間の元に戻る。

 そして皆にも今回の作戦を伝えておく。



「敵将はこの一番後ろだ、俺達で道を切り開いて一気に進むぞ!」


 カレンとマーサが先頭になり、ミラとジェシカが横を、討ち漏らした敵を俺とマリエル、それから後衛組で始末しながら進む。

 取っては投げ千切っては投げ、といった感じだ。


 ちなみにモニカだけは馬ではなくリリィに乗って貰った。

 それを中央にして守りながら、後ろは家臣団が固めている。



「よっしゃ、敵軍の後方が見えてきたぞ! もう少しで敵将の首だっ!」


 分厚い敵軍の後方はほとんどが中級魔族のようだ。


 だが今の俺達にとって、下級魔族と中級魔族の違いなどわからない。

 どちらにせよ雑魚にしか感じないのである。



 群衆を抜ける、居た、1体だけ上級魔族だ。

 人間とアイアイみないな動物のハイブリッドのような姿、目がキモい。


 しかも大将の癖に焦り顔で移動式玉座から飛び降り、ケツをまくって逃げようとしている。



「おい待てコラ! 大将がトンズラしてどうするつもりだ?」


『ひぎぃぃっ! 我は知らない、関係ないっ! ただ魔将様に命令されてここへ来ただけだっ!』


「問答無用だ、殺してやるからちょっと来い」


『ぎぃぇぇぇっ! 頼むから見逃してくれぇっ!』


「うるせぇ奴だな、モニカ、こいつと一騎打ちをするんだ」



「えっと、上級魔族ですよね? ちょっと勝てるとは思えないんですが……」


「大丈夫だ、コイツはそんなに強くないタイプだ、心配ならこうしておくっ!」


『あぎゃぁぁっ! いでぇぇっ!』


 3本ずつあった長い手足の指を全部へし折ってやる。

 ついでに両肘と右膝も潰しておいた、これなら一般兵でも勝てそうだ。



 意を決したモニカが前に出、マリエルに習って上達した槍を構える……



「はいでは公平で公正な試合開始!」


『全然公平じゃねぇぇっ!』



 先程から文句ばかり言っていた敵将、なんとこのフェアな一騎打ちにも物言いを付けてきたのである。

 だがな、もうゴングは鳴っているんだよ。



「やぁぁっ!」


 次の瞬間には飛び出したモニカ。

 中段に構えた槍が敵の珍を貫き通す。


 そのまま捻りを加え、ナニかをもぎ取ってしまった。

 正直言って寒気のする光景だ、これは何度見ても慣れない。



『あぁ……がっ!』


 抜き取った槍にナニかが突き刺さったまま、さらに敵に残された左の膝を突き刺す。

 これで立って歩くことが出来なくなったな。


 さらに両肩、太股と次々に槍が入る。

 痛みに耐えかねた敵将はその場に崩れ落ちた。



 しかしそのまま、首も落とさずにモニカが戻って来るではないか……


「勇者さん敵将を討ち倒しました、コレを掲げて勝鬨をあげましょう!」


「おいモニカ、ソレは違う、珍ではなく首を取るんだ」


「あら、そうなんですね、てっきりこれがシンボルだと思っていましたよ」


 確かにシンボルではあるが見栄えは良くない。

 というか幻術でモザイク処理をするサリナの苦労も考えてやれよな。



「では念のためもっと痛めつけてから首を切りますね、万が一にも抵抗されないように」


『あがっ! うごっ! ぼへぇっ!』


 仰向けに倒れた敵の腕や脚、それから胴体までを突き刺し始めるモニカ。

 もうとんでもない光景だ、今日一番仕事をしているのはモザイク班のサリナである。



「モニカ、そろそろ良いだろう、短剣は持っているか?」


「ええ、ではこの家宝としている剣で、ちなみに物置で見つけました」


「何が家宝だ、サビサビじゃねぇか!」


 モニカは明らかに切れ味の悪そうな短剣を掲げ、敵の首に狙いを定める。



『待ってくれ……殺さないで……あげっ!』


「あら、変な所に当たってしまいましたね、ではもう一度っ!」


『あぎゃっ! ごぼぉえっ! ぶへっ!』



 もうわざと外して楽しんでいるようにしか見えない。

 胸や腹、耳などを斬り付けられて悶える敵将、次第に力を失ってきた。



『……もう……早く……殺して、くれ……』


「あらあら、ではこうやって、鋸みたいにしましょうか」


『ぼぉげぇぇっ!』


 血塗れになりながら首を引き切っている。

 モニカは思ったよりもずっとヤバイ奴のようだ。



「さて、ようやく勝鬨をあげることが出来るな、帰りはモニカが先頭で行くぞ!」


 敵将討ち取ったりの声を上げ、リリィに乗ったモニカが首を掲げながら自陣に戻る。

 露払いはリリィのブレスだ、大量の敵を焼き払いながら来た道を戻っって行く。



 俺達が帰り着く頃には戦闘もほとんど終息し、あとは残った雑魚敵を始末していくのみとなっていた。

 手を挙げて降伏の意思表示をする魔族を次々と惨殺している兵達の姿が見える。


 とりあえず俺達は駄王の所で戦果報告をしよう……



 ※※※



「王よ、敵将の首をお納め下さい」


「うむ、大儀であった! ではこのカタログギフトを持ち帰って後で報酬を請求するが良い」


「へへぇ~っ! 有り難き幸せにございます!」


 王国では最近、無駄に金のかかる論功行賞を一切取りやめ、活躍した貴族には報酬のカタログギフトを渡して後日送付することにしたようだ。

 非常にスマートな手法である。


 早速カタログを開き、没落貴族向けページの『お家再興』に丸をつけるモニカとその母。

 これで家の心配をしなくて済むわけだが、シルビアさんの店で働くことはまだ続けるという。



「ところで駄王、もう他に活躍させたい貴族とかは居ないのか?」


「う~む、総務大臣よ、どうじゃ?」


「そうですな、今のところは特に大丈夫じゃ」



「では次に来る3万はこっちで引き受けるよ、セラ、リリィ、ユリナ、殺ってしまって良いぞ」


「わかったわ、じゃあ今から行って壊滅させてくるわね!」


「早く行きますの! 敵軍消滅作戦を決行しますわよっ!」


 ノリノリの3人、セラとユリナがリリィに2人乗りし、すぐに飛び立って行った。

 一応皆で王国の旗を振って激励しておこう。



「それでババァ、今日はここに野営するのか、それとも帰って良いのか?」


「うむ、一応2日か3日はここで待つことにしようかの、まだ次の敵が来ないとも限らないしの」


「わかった、夕食をそっちで用意してくれるのなら俺達も残ろう」


「がめつい異世界人じゃのう」


「どっかの行政機関が無策なせいで貧乏なの、勇者パーティーはっ!」


「酒ばっかり飲んでおるからじゃ」


 残念ながら言い返せなかった、全くその通りでございます。



 その後は降伏して捕虜になった下級魔族や中級魔族を使って必殺技の練習をしておく。

 あまり役には立たない行為だが、必死に命乞いをしているキモい魔族を殺すのは面白い。


 しばらくそうして遊んでいると、遥か南の空に巨大な爆発が見えた。

 同時に竜巻と雷雲が出て来たのが見える、煙の柱も上がっている。


 セラ達がこちらへ向かっていた敵の第二軍を攻撃したようだ。



「あれはもう皆殺しってやつだな、ここまで辿り着く敵は居ないだろうよ」


「ええ、あそこまでやられて生き残るのはノーマンぐらいでしょうね」


「だがたぶんまだ居ないんだろうな……」


「どうでしょうね、一応警戒だけはしておくべきですよ」



 最大の敵ではあるものの、下っ端ゆえにどこで投入されるか見当が付かないノーマン。

 攻めて来る敵軍の中に紛れ込んでいるのを見落としたら大事だ。



 そのまましばらく待つとリリィがこちらに飛んで来るのが見える。

 何やら少し急いでいるような感じだが、まさかもうノーマンが……



「ただいまっ! ちょっと聞いてよ勇者様っ!」


「どうした? 一旦落ち着いて話すんだ」


「それがね、調子良く攻撃して魔力をほとんど使い切ったの」


「ふむふむ、で?」


「そしたらそのかなり南にもう1つ敵軍が行進してたのよ」


「数は?」


「知らない、数えられないし」


「セラじゃダメか、ユリナ、どうだった?」



「数は1万程度でしたわね、近付いてはみましたが、ノーマンの気配はありませんでしたわ」


「でも戦車部隊だったから進軍速度は早そうね」



 また良くわからない小軍勢を出してきやがったようだ。

 おそらく手前の3万に追いついて合流するつもりだったのであろう。


 そのうち偵察兵がこれを報告に来るだろうが、『知ってる』と言って驚かせてやると面白そうだ。



 まぁ、とにかくその軍勢が到来するのは早くても明日だな。

 今日の戦は勝ったわけだし、酒でも貰ってささやかな宴をしよう。



 かなり日が長くなってきたものの、そろそろ辺りも真っ暗になりそうだ……



 ※※※



「すげぇな、このテントは俺達だけで使って良いのか?」


「ええ、王国軍の新たな備品、グランピングテントです、20人まで入れますよ」



 確かにテントだが、中にはなんと風呂まで設置されている。

 風呂の部分だけ壁が木の板になっており、湯は外から沸かすことが出来るようだ。



 テントに馬車を横付けして荷物を搬入したところで、兵士が夕食と酒を持って来てくれた。

 安定のサンドウィッチだが、カレンとリリィ用の肉だけサンドもちゃんとある。


 つまみの干し肉とナッツも用意してくれたらしい。



「食事が終わったら酒を飲む前に風呂に入ろう、先に沸かしておくぞ」


「では私がお風呂を……」


「ミラはダメだ、ジェシカがやれ」



 不満そうなミラを放置し、ジェシカが外で風呂を沸かす。

 小さな湯船であるためか、すぐに良い湯加減になった。


 皆でサンドウィッチを頬張り、すぐに風呂へ入り始める。

 2人1組、まずは俺とセラからだ。



「そうだセラ、今日魔法で俺を撃ちやがったよな」


「あら、お仕置きするのかしら?」


「湯がこぼれるから挙がった後にだ、服を着なくて良いからな!」


「エッチな勇者様ねっ!」


「コラ、水鉄砲をするんじゃない、テントの中が濡れてしまうじゃないか」



「ちょっと勇者様、お姉ちゃん、イチャイチャするなら外でやってくださいな、全裸で」


「すみませんでした」

「ごめんなさい」


 ミラに怒られてしまったので静かに入っておく。

 俺達の次はミラとリリィ、カレンとルビア……といった感じで次々風呂に入っていった。


 セラを素っ裸のままくすぐってお仕置きしていると、最後に入っていたジェシカと精霊様が上がって来る。

 そろそろ酒を飲み始めよう。



「ハイ、じゃあ初日の勝利に乾杯!」


『うぇ~い!』



 周辺に張られた他のテントからも同じような音頭が聞こえてくる。

 きっと俺達以外もちょっとした宴会をしているのであろうな。


 まぁ今日は大勝だし、ちょっとぐらいは羽目を外しても良いであろう。

 そう思ったのだが、楽しい宴の時間は唐突に終わりを告げる……伝令の兵士が飛び込んで来たのだ。



「報告があります!」


「はい、何でしょう?」


「何かもう敵が来たそうです!」


「はやっ! ウザいんだよマジで、朝までお待ち下さいとでも言っておくんだ」


「しかし、敵方はやる気満々とのこと、既にこちらも戦闘の準備を始めております」



 全員で特大のため息を付き、外に出る。

 かなり遠くだが、敵軍の篝火がいくつも揺れているのが見えた。



「戦車部隊って言っていたよな、突っ込んでくるつもりか?」


「そのようね、あ、動き出したわよ!」


「こんな夜中にご苦労なことだ、迎え撃つぞ」


 そのまま突っ切られでもしたら南門から王都の中に入られてしまう。

 王国軍は横に広がり、壁を作って受け止める態勢だ。



 その最前列で俺達と、それからパワーのある筋肉団が突出して敵を叩くことになる。



「おう勇者殿、ここは筋力の見せ所だぞ、修行の成果を見せてやろうではないか」


「ああ、俺達はもう最強なんだ、戦車ごとき指一本で葬り去ってくれよう」



 接敵する……聖棒の一振りで縦に並んだ3台の戦車と、それに乗っていた9体の魔族をこの世から退場させる。


 ちなみにこの戦車、荷馬車のような形状でその上に槍と弓を持った魔族が2体、そして操縦している魔族が1体と、合計3体で運用しているもの。


 そして引っ張っているのは馬ではなく四足の魔物、牛のような奴だが戦うことは出来ないようだ。



 だが企業魔将軍虎の子、かどうかはわからないがとにかく特別と思しき戦車部隊。

 全くその真価を発揮することがなくどんどん数を減らしていく。



 修行によって超強化した俺達のパワーの前では、戦車ごときリヤカーと変わらないのだ。


 セラの風魔法、それから精霊様の放つ水の塊が、縦一列に並んだ敵部隊の前から後ろまでを一気に貫通する。


 前列の敵は動き回るカレンとマーサが粉砕しその残骸が後列の行く手を阻む。

 それを越えて来た敵も俺達が迎え撃ち、筋肉団に至っては魔物を掴んでハンマー投げの如く戦車を放り投げているではないか。


 俺達の後ろで待ち構えている王国軍は、既に一部が座り込み、談笑を始めている。

 テントから酒を持って来て飲み始めた馬鹿貴族も居るようだ、もう余裕ですな。



「ご主人様、ちょっと見て欲しいものがあるんですの」


「どうしたユリナ、可愛い踊りでも思いついたのか?」


「そうではなくて必殺技ですの、ちょっと私を一番前に出して頂きたいですわ」


 敵軍の中に食い込んで暴れていたカレンとマーサを下がらせ、ユリナを王国軍全体の先頭に立たせる。


 尻尾の先を前に突き出し、集中し始めるユリナ、一体何をしようというのだ……



「いきますわよぉ~っ!」


 カッと尻尾の先端が光る。

 そこから赤い光線が飛び出したではないか。


 以前サワリンの部下であった変態ドM課長が使っていた、レーザービームの火魔法だ。


 光線に当たった敵や魔物、戦車はあっという間に炎上していく。

 以前見たものよりも遥かに威力が高いようである。



 ユリナはそのまま尻尾を左右に動かし、敵陣全体に破壊を振り撒く。

 ものの十数秒で、残り9,000は居たはずの敵が10分の1以下になってしまったではないか。


 盛り上がる王国軍、そして逃げ惑う敵戦車部隊、勝敗は完全に決した。



「凄いなユリナ、遂にあの魔法を会得したか!」


「ええ、しかも省エネなので1日に何度でも使えますのよ」


「よっしゃ、これは危険も少ないし、これからガンガン使っていこうぜ」



 さて、今ので一気に士気が高まった王国軍に残りの始末を任せ、俺達は後ろに退かせて貰おう。

 もう十分に戦ったし、あとはもう追いかけて殺すだけの簡単なお仕事だ。


 本陣に戻り、駄王とバトンタッチして前に出させる……



『全軍突撃じゃっ! 敵将の首を獲った者には春のご褒美ギフトをやるぞっ!』


 一斉に突っ込んで行く王国軍の兵士達。


 念のため、最後列に居た将軍と思しき上級魔族にはセラの風魔法を3発ぶつけて弱らせておく。

 これで逃げられたり、兵に余計な犠牲者が出たりはしないはずだ。



「さて、それじゃあテントに戻って飲み直そうぜ」


 もう一度風呂に入って汚れを落とし、中断していた宴を再開する。

 適当に酒を飲んでいるところに本日2回目となる勝鬨が聞こえた。



 外に出て様子を見てみよう……


 敵将を討ったのはインテリノの教育係である女教師らしい。

 年甲斐もなく大喜びして飛び跳ねている……膝がどうかなってしまったようだ。



 その後、本日二勝目を記念した追加の酒が配られたため、ゆっくり飲んでから布団に入る。

 遅くまで騒いでいたテントもあったようだが、かなり戦った俺達は疲れ切っていたため気にせず寝た。



 そして翌朝……


「今朝は特にこれといった報告がありませんでしたね、昨日の戦車部隊に関して遅れて報せがあったぐらいです」


「そうか、だがトータルで6万も殺られたんだ、その結果がわかったら敵も新たに動くだろうよ」


「ですね、まだ気が付いてはいないはずですが、そのうち誰も帰って来ないことを不審に思うでしょう」



 とはいえ昨日の戦車部隊のように進軍速度が速く、偵察兵の方が遅くなってしまうというようなこともあり得る。

 念のため、精霊様に頼んで敵本拠地とそこへ続く道を確認して貰うことにした。



 朝のうちに飛び立ち、昼前に帰って来た精霊様。

 何だかニヤニヤしながら戻って来やがった……



「居たわよ」


「何が?」


「敵軍が3万、動き出していたわ、で、一兵卒の中に……」


「ノーマンか?」


 黙って頷く精霊様、凄く嬉しそうなのはどうしてだ?



「敵は全部歩兵みたいだったから、ここへ来るのは早くても明日の夕方ね」


「じゃあそれまでに作戦を立てておかないとだな」


「ええ、マリエルちゃん、王国軍にもこのことを伝えておいて、下手に手を出すと確実に死ぬ相手よ」


「わかりました、ではその後すぐに会議をしましょう」



 遂に最強の敵、ノーマンとぶつかることになる。

 どれほどの強さなのかは良くわからないが、とにかく勝たなくてはならない……

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