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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第二十三章 正体不明の敵
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136 大量破壊魔法使用許可

「勇者殿、ご無沙汰しております!」


「インテリノ王子、今回はとんでもない戦いだな、ちょっと気合入れていこうぜ!」


「ええ、しかし早めに合流出来て良かったです」


「俺達もだよ、この人数じゃちょっと心細かったところだ」


「いつ敵とぶつかるかわかりませんから、移動中も数が多いに越したことはありませんね」



 もう間もなく目的の町、王都軍が集結している元アケチミ家が治めていた領地に到着するというところで、インテリノの軍と合流することが出来た。


「皆出て来ているみたいだが、王都の防衛はどうなっている?」


「筋肉団の一部、それから王都決死隊、あとは居残りの兵も5,000程」


「わかった、もし敵に抜けられたら俺達も戻るかも知れない」


「承知しました」




 その後は他愛のない話をしながら目的地へと向かう。

 そう時間が経たないうちに到着した。

 まだ空は真っ暗である。


「うわ~っ、城壁が低いな……」


「そこまで大きな町ではありませんから、城壁があるだけマシですね」


 城壁の高さは20m程、しかも薄く、簡単に押し潰されてしまいそうだ。



「まだ攻め込まれてはいないようだな」


「そうですね、ただ敵はこの町の反対側に居るはずです」


「行ってみようか!」



 静まり返った町を西へ抜ける。

 町の外が明るい……敵軍だ。



「敵さんもちょうど到着したところか」


「拙いですね、ここを包囲するつもりでしょう」



「何だ、まだ到着していない部隊があるのか?」


「部隊は我々が最後だったのですが……そのぉ……」



 なんと、駄王が行方不明らしい。


 到着直前に便所に行きたいと言い出して隊を離れ、そのまま忘れられてしまったようだ。

 どうしようもない国王だな。



 そのとき、遠くからインテリノの兵が近付いて来る。

 ニヤニヤしていやがるな……


「王子、報告があります、国王陛下、救出にございます」


「どこに居たんだ一体?」


「町のすぐ近くの草むらにてしゃがみ込んでおりました、どうやらケツを拭く紙を忘れたとのことで」


 特大のため息をつくインテリノ。

 無理もない、そんなのが今回の総指揮官で、しかも父親なのだから。



 そんな馬鹿をやっている間に、町は完全に包囲されてしまった。

 というか町の面積よりも周囲に張られた敵陣の面積の方が確実に広い。


 例えるならば台風だ。

 その小さな目の中に俺達は閉じ込められている。



「とりあえずパーティーの所に戻るよ、決起集会とかはご欠席で頼むわ」


「わかりました、ではご武運を」


 インテリノと別れ、町の中央に移動しているという俺達の馬車へと戻った。





「おかえり勇者様、何か問題とか無かった?」


「行方不明になっていた駄王が救出された、野○ソしながらな」


「汚い王様ね……」



 セラは呆れている。

 そしてユリナとサリナが馬車から顔を出し、手招きしている。


「ご主人様、ちょっとお時間よろしいですの?」


「どうした?」


「この感じだとノーマンはここへは来ていませんわ……」



 ユリナ曰く、もしノーマンが居ればこんな町程度俺達が着く前に陥落しているはずだという。


 頭が切れ、戦闘力も高く、行動力もある。

 ついでに空も飛べるのがノーマンという男だそうな。



「ノーマンはいつも雑用ばかりさせられていますの、今回もきっとそうなのですわ」


「おそらく企業魔将やその補佐が健在のうちは表立って動かせては貰えないはずです」


「つまりここを包囲している敵は……」


「雑魚ばかりということですの」


 勝機が見えてきた。


 最悪撤退戦ぐらいまでは覚悟していたんだが、強敵が居ない、烏合の衆で2億なら話は別だ。

 一気に片付けてしまいたい……



 しばらく待って夜明け前。

 インテリノが放ったと思しき伝令が来る。


「勇者殿、西側で敵が演説めいたことを始めるようです、聞きに行かれますか?」


「どうするセラ?」


「面白そうだから行ってみましょう」


 セラがそう言うのであれば行くこととしよう。

 馬車を出し、町の西外れへと向かった。





「おぉ、ゆうしゃよ、遅かったではないか、ウ○コでもしておったのか?」


「それはお前だろうが」


「おぉ、バレておったか、ところでゆうしゃよ、敵のカッパハゲが何か喋り出しそうじゃ」


「あんなカッパにも言語能力があるんだな」


「うむ、誠に面妖なことじゃ」



 敵陣からカッパ聖職者が出て来た。

 この町を包囲している軍の先頭で何やら演説を始める……


『聞けっ! 不届きな王国人共よ! 貴様等のような連中はウン……(お伝え出来ない内容です)……』


 小学生による罵倒並みの内容であった。




「お、あのハゲは、えぇ~っと」


 王宮が今ある情報を元に編纂した『聖国カッパハゲ大全(フルカラー挿絵付き)』を開き、演説ハゲの身分を確認する。



「……おぉっ! あれがカミナシだ!」


 喋っているは新生大聖国の協力者にあの髪型を強要したカミナシ、つまりトップと目される人物ではないか。



「おぉ、ゆうしゃよ、アイツは今のうちに殺してしまわぬか?」


「それも面白そうだが……やめたほうが良いだろ、他の雑魚の統制が利かなくなって暴走するかもだぞ」


 そうなられたら困る。

 数だけなら向こうが圧倒的なわけだし、出来るだけ一気に来られるのは避けたい。


 というかそもそもあの大軍が全部この町に入ろうとするなど考えにくいしな。

 奴等、どうするつもりなのであろうか? 何か策がある?


 一部は王都へ向かうとかそういうのも無いのか?


 行動が良くわからなさすぎる。

 ここは敵の出方を見て対応を決めるべきかもだ。



 くだらない演説も終わるようだし……



『……バーカ、バーカ、ウ○コ! という訳で我ら女神の信徒たる新生大聖国軍は、悪逆王国人を殲滅し、世界に平和をもたらすのである! 以上!』



 カミナシは敵本陣へと引き返して行く。


 同時に、数多の飛行魔族が後方から飛び立った。



「おぉ、来よるぞ、全軍、対空戦闘準備じゃ!」



『対空戦闘準備ぃぃっ!』


「外に居る者も城壁の中に入れぇ~っ!」


 俺達王国軍は町の中に立て篭もり、飛行魔族の空爆を阻止するための態勢を整える。




「セラはリリィと一緒に迎撃、それと精霊様もだ、精霊様は消火も頼むぞ!」


 それ以外、魔法が使えるメンバーは直ちに攻撃可能な位置に着く。



 敵は町の全方位から飛来、おそらく残り5,000の飛行魔族を全て使っている。

 全てへの対応は無理だ、地上ではなるべく被害軽減に努めるべきであろう。



 西正面の敵編隊にリリィがブレスを浴びせたところから本格的な戦闘が始まった。

 セラも風の刃で町方面に向かう敵を撃墜している。



「来たぞっ! 投下されたものが直撃しないように気を付けるんだ!」


 町の所々に防御魔法が張られているものの、完全にカバーすることは出来ない。

 とにかく攻撃して敵を落としていく他ないのだ。



「勇者殿、敵地上部隊も動き出しました」


「わかった、俺達も戦いに出るぞ」


 俺達が居るのは町の西側。

 正直その他の地域が今どうなっているのかはわからない。


 だが、どこかが破られるのも時間の問題であろう……



「おぉ、ゆうしゃよ、非戦闘員は避難済みじゃからの、何も気にせずに戦うが良い」


「了解した、だが可能な限り町へは侵入されないようにしたいな」



 城壁に殺到する敵地上部隊。

 全部魔族や魔物じゃないか、というかその中でも大半が魔物だ。



 カッパハゲ共は後ろでニヤニヤしているだけなのである。


 魔物……そうかっ!


 敵陣に突っ込んで大暴れしていたマーサを捕まえる。


「マーサ、あの魔物を操ることが出来るか?」


「全部は無理よ、さすがに」


「でも出来るだけ数を減らしたい、可能なだけ操って仲間割れさせてくれ」


「わかったわ、やってみる!」



 マーサが魔物を操作し出すと、たちまち敵軍では同士討ちが発生し始めた。

 どうやら操られた魔物は操られていない魔物を狙う傾向にあるようだ。



「マーサ、カレンと一緒に魔族を狙って倒すんだ、他の仲間にもそう指示してくれ」


「はいはい、じゃあ行こうカレンちゃん!」


「ではご主人様、行ってきます」



「空からの攻撃に気を付けろよっ!」


 カレンとマーサだけでなく、ミラとジェシカもそれに付いて行った。

 ルビアは作戦本部に退かせ、マリエルが守っているようだ。


 俺もちょっと本部に行ってみよう。

 作戦本部は町の中央、元アケチミ家邸宅にあるらしい。



 前線を離れ、町の中心部へと向かった……



 ※※※



「おつかれぇ~っす! おうマトン、久しぶりだな」



「勇者様、ご無沙汰しております、西側の様子はどうですか?」


「マーサが魔物を操ったお陰で巻き返しているよ、地上はな」


 空からの攻撃は範囲が広く、また、そこまで高く魔法を飛ばせる者が少ないため苦戦を強いられている。


 セラとリリィが奮闘しているものの、やはり討ち漏らして町の上空に入られてしまうことの方が圧倒的に多い。


 航空戦力がある西側でその感じなのだ。

 おそらく他の戦線はやられ放題であろう。



「そういえばルビア達は?」


「もう怪我人が一杯で、休む間もなく働いていますよ」


「他の方面はそんなにキツいのか?」


「筋肉団が当たっている東は良いんですが、南北が、とりわけ南はもう城壁が倒されそうです」


 これは雪崩れ込まれる感じだな。

 何だかんだ言って結局撤退戦か……


 とはいえ、俺達や他の援軍が入らなかったとしたらもうここは陥落済みであろう。

 おそらく元々入っていた1万の軍は全て失われていたはずだ。


 そして、ここが完全に落ちれば次はすぐ近くの王都である。

 20万を超える王都民を全て避難させることなど不可能だし、ここで迎え撃って正解ということか?


「う~ん、ちょっと一旦戻ってユリナを連れて来るよ」


「ユリナ様をですか?」


「うん、もし敵が城壁を倒して入って来たら、王国軍は反対に逃げて……」


「敵は火魔法で一掃するということですね、町ごと」


「……やむを得ないだろう」


 駄王が住民の避難は完了しているといっていたしな。

 あとは戦闘員の人的被害を出さないようにするだけだ。



 とりあえずユリナを連れに戻ろう……



「あ、居た、ユリナ~っ! ちょっと良いか?」


「あら、どうしたんですの?」


「一度町の中心にある本部まで来て欲しい」


「では誰かにサリナの護衛を」



 今回はサリナも幻術で戦っているようだ。

 サリナに惑わされた敵は、投下すべき火炎瓶を持ったままゆっくりと近くに着陸する。


 そこを一般兵士が滅多刺しにして殺しているのだ。



「う~ん、じゃあちょっと待っていろ、今ジェシカを呼んで来る」


 前線で戦っていたジェシカを呼び戻し、サリナに付ける。


 ついでに疲れて戻って来たリリィ、それから地上で戦いを続けているセラを回収しておいた。


 どちらも敵が町に侵入して来た後の作戦で使えそうだと判断したためだ。



「よし、セラ、リリィ、ユリナ、本部へ向かうぞ、セラの杖にはハンナも入っているな?」


『はいってま~す』


 何だその返答は、便所の個室か?



 とにかく本部へと戻った……



 ※※※



「ようマトン、作戦の要となるメンバーを連れて来たぞ」


「あ、お疲れ様です、ビーチャちゃんも合流していますよ」


「本当だ、ビーチャは西側から歩いて来たのか?」


『いいえ、精霊様が移動するときに運んで貰いました』


 そういうことか、まぁ、本部にブレインが増えるのは良いことだ。

 何かあったときに戦えないマトンの盾になることも出来るしな。



「ところで南北の様子はどうだ?」


「南はインテリノ王子が加勢に行ったんですが、今度は北です、城壁が一部損壊したと報告を受けています」


「ウォール家からは誰かそちらに向かっているのか?」


「ええ、今シールド様が東から一旦こちらへ向かっている最中だそうで、そのまま応援に行って頂くことにしました」


「そうか、防御魔法で一旦止めればその間に他の兵が退避出来るかもな……」



 その後、ユリナの魔法で雑魚を一掃、そしてセラやハンナが上空から残った敵を始末しよう。

 町は無くなるだろうが、ここで負けてしまえばどうせ同じことだ。



「参りましたっ! おや勇者殿もここへ来ていたか、僕もこれから北の前線へ向かうのだが」


「その件でちょっと話があるんだ」


 シールドに作戦の概要を伝える。

 苦い顔をしているが状況は把握出来ているようだ。


 納得し、参加してくれるという。



「ではすぐに北側へ向かおう、城壁を崩されてからじゃ間に合わないからな」



 作戦メンバー全員で北の前線を目指す。

 本部はビーチャに任せ、マトンも一緒に出た。



「そういえば北の守りは誰の軍なんだ?」


「こちらは王都の大臣達が受け持っていますが、山も近くて範囲が狭いため最も守りを薄くしてあったんです」


「まぁ、それはしょうがないわな、兵の人数も限られているんだし」



 北の町はずれに近付く、敵の数が多いな……


 おそらくここが最も破り易いことに気付き、攻撃を厚くしたのであろう。

 空爆も激しいようだ、消火している精霊様が飛んでいるのが見える。



「精霊様ぁ~っ! 聞こえるかぁ~っ!」


「そんなに大きな声を出さなくても聞こえているわよぉ~っ!」



「良かったっ! ちょっと城壁の外側に水の壁を張ってくれ!」


「じゃあ一気に消火してからねっ!」



 そう言った精霊様。これまでよりも多くの水を周囲に撒き散らし始める。

 これに味方が動揺しないと良いんだが……



「セラは一旦風防を張ってくれ、薄くても良いからなるべく広くな」


「了解よ!」


「防御魔法も同様だ、今居る兵と俺達が逃げ切れる時間を稼げればそれで良い」


「わかた、何とかなるはずだぞ!」



 精霊様の水壁が張られ、その内側にセラの風防。

 そして穴だらけの城壁、最後にシールドの防御魔法である。


 4層構造だ、敵の攻撃に比べて範囲が狭く、既に扉が機能していない門とその周辺を守るに過ぎないものだが、そこを中心に殺到している敵を足止めするには十分だ。



「勇者よ、加勢に来てくれたか! これでしばらくは持ちそうじゃ!」


「悪いが総務大臣、撤退の命令を出してくれ」


「なっ!? 何か策があるというのか? 無いのであれば玉砕じゃぞ!」



 総務大臣に作戦を伝える……


 当然渋い顔をしているのだが、ババァなので元々の部分も大きいであろう。

 致し方なしということで撤退を受け入れてくれた。



『撤退じゃ~っ! 怪我人を連れてすぐに退けぇ~ぃっ! ウエッフォ! ウヲォッフォ!』


 無理をしやがる。

 号令ぐらい部下にやらせろよ、むせているじゃないか……



 ともかく撤退が始まった。

 敵もそれを追いかけようとするが、4層の壁に阻まれてこちらへ来られない。



「ユリナ、いつでも攻撃出来るように準備をしておけよ」


「はいですの!」


「リリィ、もう飛べそうならセラと一緒に離れたところを旋回していてくれ」


「は~い」



 精霊様にもしばらく離れるように伝え、大臣連合軍の一番後ろに俺達も付く。


 ユリナも既に目標を定めたようだ、俺達と一緒に町の中心部に向けて進み出す……




「勇者よ、我らの軍は全て後ろに下がった、今点呼を取っているのじゃが、逃げ遅れなどは無さそうじゃぞ!」


「わかった、でも可能な限り、少しでも攻撃地点から離れてくれ」


「うむ、健闘を祈るぞ」



 上空から精霊様が合図している。

 本当に逃げ遅れが居ないかどうかを確認していたようだ。


 両腕で大きく丸を作っているところを見ると、おそらく大丈夫なのであろう。



「勇者様~っ! そろそろ風防が消えてしまうわよ~っ!」


 上空からリリィに乗ったセラの声が響き渡る。


「そうなったら城壁も、僕の張った防御魔法も時間の問題だな」


 精霊様は既に水の壁を崩し、再び上空の敵殲滅と消火活動を始めているようだ。



 風防が消え、城壁に敵の塊がぶつかった。

 もう守る者の居ないその壁は、あっという間にボロボロになり、門の周辺から一気に倒壊する。


 町の北側を守っているのは、既にシールドが張った防御魔法のみである。

 そしてそれに気付いた敵軍、魔物や魔族をを北に移動させ始めたようだ。



 徐々にひび割れる防御魔法の壁。

 普段は見えないものの、傷が入った所は白く、見えるようになる。



「勇者殿、アレはもう限界だ、すぐに敵が雪崩れ込んでくるぞ!」


「よし、じゃあもうちょっと下がろう、ユリナはそこから撃つのか?」


「まだ下がれますわよ、というかここだと少し熱いかも知れませんわ」



 ということで俺達もさらに後方へと退く。



 ……後ろから凄まじい地響き。


 振り返ると、立ち並ぶ家々の中に大軍が侵入したと思しき土煙が見える。



「いよいよ侵入して来たようだぞ、ユリナ、準備は良いか?」


「はいですの! あと3分待って攻撃を放ちますわよ!」


 敵を十分に惹き付けるための時間。

 土煙は徐々にこちらへ向かっているようだ。


 これからどんな目に遭うかも知らない敵軍。

 もはやこの町は陥落させたつもりでいるのであろうな。



「勇者様ぁ~っ! 敵がかなり良い感じのところまで来ているわよぉ~!」


「わかった~っ! セラ達も爆風でやられないように一時着陸したらどうだぁ~っ?」


「そうするわぁ~っ!」


 セラとリリィが本部の方に消えていくのを確認する。

 そろそろ攻撃の時間だ……




「いきますわよっ!」


 ユリナの尻尾がまっすぐ上を向き、ビィーンと振動している。

 これまでにない強力な攻撃を放つつもりのようだな。



 刹那、北のそらがパァーッと明るくなる。

 既に日も出ているというのに、それを遥かに超える閃光が辺りを包みこむ……



 ドッという轟音とともに訪れる衝撃波。

 シールドがとっさに張った防御魔法の壁に、爆風に乗った土埃や建物の細かい破片が降り注ぐ。


 爆心地から巨大な煙が上がっているのが確認出来た。

 その煙は少しずつ大きさを増し、入道雲のように空を埋め始める。



「凄い煙と土埃だな、しばらくは何も見えないぞ」


「晴れるまで待って様子を見に行きましょう、まだ敵が残っているかもです」



 そこへ、セラとリリィ、それから精霊様がやって来た。

 この後はこの3人が強力な魔法やブレスを使い、生き残りの魔族を掃討するのだ。



「勇者様、そろそろ飛んでも良さそうな感じだわ」


「ああ、でも煙の中に入らないようにな、あと飛来物にも注意するんだぞ」


 次第に晴れる土埃、煙も空高く上がっていったようだ。



 町の北側はもはや瓦礫と、それから真っ黒焦げになった死体の山である。

 城壁も完全に消滅していた。



「これでかなりの数の敵が片付いたな」


「勇者様、油断してはいけませんよ、ここはもう城壁が無いんです、再び殺到されるかも知れません」


 マトンは敵の再来を心配しているようだ。

 だがしばらくは大丈夫であろう。


 ここへ大臣達の軍を呼び戻し、戦闘態勢を取り直すぐらいの時間はあるはず。



 この戦い自体はまだまだ続きそうだがな……

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