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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1254 今日のイベント

「えっと、あ、居た居た、おいこのゴミ野郎、すまないがちょっとあそこのグループに声を掛けてきてくれ、あいつら実は俺の配下なんだ」


『ふむ、ではあの者共にこちらへ来るように申し付ければ良いのか?』


「え? ちょっと待って何でお前そんなに偉そうなの? 話し聞いてた? あいつ等俺の仲間なんだけど、俺と同等の立場にある大事な仲間なんだけど、それに対して何お前? あの者共? 申し付ける? 立場ってもんをわかっていないような気がするんだが、気のせいだよなもちろん?」


『いやいや、俺とて今の段階では大師匠様の仲間であって、むしろ本来は天使である俺の方が……違う?』


「違うに決まってんだろ、そんなこともわからないほどに知能が低いのかお前は? もう生きている価値もなさそうだな、この場で殺してやろうかマジで?」


『ひっ、ひぃぃぃっ! おっ、お呼びして参りますっ!』



 偶然近くを通ったのか、それとも俺の姿を遠くに認めた結果として近付いて来たのかはわからないが、神界人間のフリをして収容者の中に紛れ込んでいる4人の仲間達が近くに見えた。


 その仲間達を呼んで来るようにと表見イケメン天使に命じたところ、今のような態度を取り出したので少しガチ目に注意しておく。


 もっとも、ここで注意されて態度を改善したところで、そのうち全てを失って、最終的に命まで奪われるENDに見舞われることが確定しているこの馬鹿には意味のないことではある。


 だが今現在はまだ、当該馬鹿野郎にそれを悟られるわけにはいかないし、脆弱なる存在であるがゆえ、あまり下手なことをすると簡単に死亡してしまってその後の楽しみがなくなってしまうリスクを孕んでいるため、このように単なる注意で終わらざるを得なかったということ。


 だが脅しの効果としては必要十分であったらしく、脂汗なのか冷や汗なのか、とにかく加工しまくった厚塗りの何かがジワジワと溶けているような顔をしながら、表見イケメン天使は4人の仲間達を呼んで来たのであった……



「あら勇者様、やっぱりここに居たハゲが勇者様だったのね」


「何だ、気付いていなかったのか、遠くからでも俺の力を感じ取ってどうのこうので……まぁ、それよりも注目すべきものが多いからな、わからんのも仕方ないってことか」


「まぁ、まだ今のところ『印』を持った神界人間は見つからないんですけどね、だから引き続き捜していこうという話をしていたところです、もちろんこのわけのわからない屋台? のアトラクションは全部回避して」


「いやお前等、そうやって4人で固まって捜すつもりなのか? もうちょっと効率を考えろよ、バラバラ……ってのはさすがにアレだと思うが、せめて2人ずつに分かれたりしてだな」


「そうですね……うん、あまりリスクは負いたくありませんが、とにかく2人と2人で分かれませんか? それで2人はここに残って、もう2人で一緒に捜しに行って、時間制にして交代で……というのはどうでしょうか?」


「まぁ、良いんじゃないかしらマリエルちゃんの案で、ずっとキョロキョロウロウロしていると何か怪しまれそうだし」


「一理あるな、確かにこんなイベントだから神界人間の数は凄いが、おかしな動きをしていてしかもアトラクションを体験していないとなると、何か異常なことをしているってのよりも意図的にイベントをサボろうとしているとかそういう疑いを掛けられそうだな、用心した方が良い」


「じゃあえっと……私とジェシカちゃんでまず『外回り』をしてくるわ、ミラとマリエルちゃんはここに残って……この屋台で遊んでいたらどうかしら?」


「そもそも勇者様、この屋台は何なんですか? 尻的って、その後ろに飾ってあるGUNみたいなのは一体?」


「うむ、何をするのかは俺にも良くわからん、おいそこのゴミ! ちょっと詳しく説明しやがれ、てかどこ行こうとしてんだよこのクズがっ!」


『すっ、すまない、俺がこの顔面でいることを知っている天使に見つかったようで、ゴミ捨てや屋台の設営、テーブルの雑巾掛けなどのタスクをサボっていると思われたようで、その、睨まれてしまって……』


「チッ、お前のせいで『機密に関して何も知らない連中』に怪しまれたり、むしろ俺達が『機密を漏らした背任者』みたいな扱いをされたら全て100%お前のせいだからな……それで、この屋台の遊び方を指南してから行けよせめて」


『この屋台の遊び方というのは……えっと、普通にその辺を歩いている神界人間の尻を狙って、そのGUNで撃つだけのことだ、ヒットされた神界人間は1時間この屋台に拘束されて、その間はもう撃たれ放題となる仕組みだ』


「……それに一体何の意味があるってんだ? 優勝すると何か貰えるのか?」


『特に何かが貰えるわけではないし、そもそも誰かと競うようなこともない、単純にこの屋台の前を通過した神界人間が一定の確率で酷い目に遭うというだけのものだなこれは』


「いちいち生産性が皆無なんだよなこの団体のやることは……まぁ良い、お前のその作り物の気持ち悪い笑顔を間近で見るのはもうイヤだ、怪しまれる前にとっととどっか行け、ただし定期的に時間を見つけてここに立ち寄れ、そこで何か指示を出すかも知れないからな」


『わかった、では俺は……そうだな、どうやらあそこのテントを張るためのパーツがひとつ足りなくて混乱しているらしいから、何も知らないのにそれが自分のせいであると名乗り出て責任者にボコボコに殴られるというタスクをまずこなしておこう』


「……お前それ、いつもそんなことやってんのか?」


『うむ、自分から率先していかないと、間違いなくそのまま俺のせいにされていて、後々、というか発見され次第便所で半殺しにされるからな、トラブルは全て俺のせいなんだよここでは、一切関与していなくとも、それについて知らされていなくともそうなんだ、認めない場合には本当に命が危ない、じゃあ行って来る』


「何ですかこの天使は? 凄く卑屈なのも居るんですねこの神界には」


「あぁ、しかもアレだ、もう聞こえていないだろうから言うが、今日破滅するイケメン天使というのはアイツのことだ、そういえばジェシカ以外は見たことがなかったな」


「えぇ、ですがもう見納めでOKです、何かオーラからして気持ち悪いし、他の天使が仲間から除外したくなる気持ちもわかる不快さです」


「俺もそう思うが……そんなことよりもとにかく作戦を開始しよう、セラ、ジェシカ、ひとまず頼んだぞ、1時間後にここを通過してくれ、そしたら俺がこのGUNで狙って一撃……みたいな感じで呼び止めてやるから」


『うぇ~いっ!』



 ということで2人は捜索隊として人混みの中へ、そして残った2人、ミラとマリエルはこの場に拘束されている体で残ることとなった。


 ちなみに俺がGUNを構えていなくとも、ハゲのおっさんクリーチャーに追いかけられたりして逃げ回り、うっかりこの屋台の前を通ってしまう神界人間の収容者は多いようだ。


 ならばここでも俺が狙いを定めて、あわよくば『印』を持つ者をヒットさせて拘束……というほど上手くはいかないのであろうが、怪しまれないためにも、たまには通過する者に犠牲になって貰わなくてはならないことであろう。


 ちなみに既に発見してある『印』を持つ神界人間に関しては、俺達のような捜索隊が新規の者と誤解してしまわないよう、何らかの手立てをしておいて欲しいと頼んである。


 どういう感じで『発見済みアピール』をしてくるのかはわからないが、少なくとも神界人間の収容者のフリをしている4人は、ある程度その顔を覚えたはずなのでどうにかそれだとわかると予測しておく。


 で、イベントの方はそこそこ盛り上がっている様子だが……俺が屋台の中に立って、ミラとマリエルがその前に突っ立っているだけというのはなかなかに異様な光景だな。


 俺達もまともに『尻的』をしている感じの動きをしなくてはならないのではないかと2人に提案し、ならばそれらしさを出そうということに決まった……



「え~っと、まずはそのGUNで私達を撃って下さい、そこから開始しましょう」


「しかし、大丈夫なのかコレ? オモチャらしいとはいえ神界のアイテムなわけだし、攻撃力とか……」


「大丈夫ですよ勇者様、私達の防御力の方が遥かに上であるはずです、どうぞ、遠慮なく撃ってしまって下さい」


「……うむ、じゃあまずマリエルから……怪我しても恨むなよ……発射用意……発射!」


「あっ……いったぁぁぁぁっ! なっ、なかなかハードですよこのっ……あっ、ホントに痛いっ! 痛いっ! 連発だけはどうか勘弁をっ、えっ? 真ん中にヒットえぁぁぁぁぁっ!」


「やっぱり強力なんじゃねぇか、次はミラ、お前の番だから尻をこっちに向けろ」


「ひぃぃぃっ! ちょっと予想していたのと違って、お手柔らかにお願いを……」


「発射!」


「ひゃぁぁぁぁぁぁっ! お許しをぉぉぉぉっ!」


「てかこれさ、普通の神界人間が喰らったら死ぬんじゃねぇのか? マジで大丈夫なシロモノだとは思えないんだが」


「いてて……いえ、もしかしたらこの神界のアイテム……ほら、ここに注意書きがありますよ、相手の防御力に応じて何とやらみたいなタイプであるようです」


「なるほど、魔界で見たあの何だっけ? ゴーレムのCHING-CHINGを祀っていたアレの茨の参道に居た敵と同じ感じなのか、なるほど納得したぞ、後でセラとジェシカもビビらせてやろうぜ」


「きっと驚くでしょうねあまりの痛さに……マリエルちゃんはほぼ気絶してビクンビクンしていますし」


「あぁ、狙い通りど真ん中にヒットしたからな、そもそも尻を突き出してまともに喰らうもんじゃないってことだこれは」


「でも勇者様、ヒットされると1時間撃たれ放題というのは……どうなるんでしょうか?」


「こうなるに決まってんだろ、発射!」


「あげっ……」


「さらに発射!」


「うっ……あぁ……」


「メチャクチャかわいそうなのでやめてあげて下さい」


「ちなみに次はミラの番だぞ、マリエルの残骸の横で四つん這いになれ」


「ひぃぃぃっ! そんなぁぁぁっ!」



 半ば気絶したマリエルは、その場で尻を撃つたびにビクンッと反応する程度なのだが、ミラは完全に意識を保った状態で同じ目に遭うのだからひとたまりもない。


 だが多少は抵抗をする素振りを見せつつも、結局は指示通りの姿勢で『尻的』の的になったミラには、おそらくセラと同程度のドMの才能が眠っている、というかそれが開花しかけているのであろう。


 で、そんなことをして遊んでいる間に時間は経過し、時折通過する神界人間の尻を狙っては外し、向かいの屋台のハゲを射殺してしまったりなどしたのだが、とにかく何もしないままに時間の方は経過していった……



 ※※※



「勇者様達、きっとサボって遊んでいるわよね、私の勘がそう言っているわ」


「セラ殿、おそらく誰の勘でもそう言うに違いない、明らか極まりないことだぞそれは……で、私達はどうする?」


「そうねぇ、下手に屋台の前を通ると、あの『尻的』じゃないかもだけどハゲに捕まって陵辱されるわ、だから……ねぇ、アレは何かしら?」


「かなり人の数が多いようだな……少し行ってみるべきか」


「そうしましょ、人が多い方が捜すのも捗りそうだし、それに人気があるコンテンツがあるのかも知れないわ」



 そう考えて人だかりが出来ている方に移動したセラとジェシカであったが、そこに何か特別なものがあったわけではなく、普通に屋台……ではなく大きなテントのようなものが設置されていたのみであった。


 だがそのテントに小走りで入って行く神界人間の数は多く、しかも入ろうとする瞬間にホッとしたような顔を見せている者もかなり見受けられるような状況。


 セラとジェシカがそのテントと中へ入らんとする者の様子を見ている限りで判断したのは、そこが何らかの安全地帯のようなものであるということであった。


 確かにテントの周りにはハゲのおっさんクリーチャーの姿などなく、仮に中にもそれが居ないとなると、『ハゲに襲われたりしないという意味での安全地帯』ということにはなる。


 だがこんなくだらない団体の開催している、しかも収容所内の神界人間をドMであるからそれで喜んでいると信じ込んで痛め付けるためのイベントだ。


 テントの中には何もなく、単に休憩が出来るような本当の安全地帯になっている可能性は極めて低い、というかゼロに違いないということは、2人でなくともわかってしまうようなことであろう。


 しかし人の数が多く捜索に有利であることからも、そして自分達もハゲの魔の手から逃れなくてはならないことからも、やはりテントの中に何があるのかを調べておく必要がありそうだ……



「どうするセラ殿、入ってみるしかないとは思うが」


「そうねぇ……あっ、あそこほら、『印』を持っている子じゃないかしらあの子? ここに収容されて長いって言っていた子」


「本当だな、お~いっ、すまないがちょっと良いか~っ?」


「……あっ、あなた方はその、『印』を探しているという神の使いの、どうも、やはりこのテントに逃げ込もうとしていたんですね、正解だと思いますよ」


「いや、私達は人の数が多いからここに来ただけで、まだイベント、というかこの施設自体初心者なので何もわかっていないんだ、このテントはかなり人気があるようだが、中はどうなっているのだ?」


「ああ、知らなかったんですか、ここは『超ハードお仕置きの館』です……ちなみに大人気なのは他でもない、このテントの中に関してはハゲのおっさんクリーチャーが居ないからです……と、それは見ればわかりますね」


「超ハードお仕置きの館……まぁ、私達なら大丈夫そうね、でもどうしてここだけハゲの監視がないのかしら?」


「えぇ、元々はハードすぎて余り人気が出ないだろうと、閑古鳥が鳴くような状況になるだろうということで、運営というか企画というかの神々がハゲを配置しなかったそうです、ですが……」


「ハゲに何かされるぐらいならここに逃げ込んだ方が良いということで、ここまで人気を博するアトラクションになったというわけだな?」


「その通りです、というか、ここまでこの超ハードなお仕置きをされるアトラクションが人気になっているというのに、どうしてこの団体の方々は『ハゲに何かされることこそ収容者にとって最悪』であるということに気付かないんですかね?」


「おそらく馬鹿だからだと思うわよ、そもそもまともな考えならこんな施設を設けてドMを拉致してハゲに……なんてことは考えもしないはずよ」


「……まぁ、それもそうですね、ところでどうしますか? 私はここに逃げ込んで、イベント終了まで引き篭もるつもりですが、一緒に入りますか?」


「えぇ、1時間後にはちょっと用事というか交代があって戻らないとだけど、ひとまず『印』を持っている人を捜すのにはちょうど良さそうだし、ご一緒させて貰うわ」


「わかりました、では案内しますので一緒にどうぞ」


『うぇ~いっ!』



 ということで『超ハードお仕置きの館』とやらに足を踏み入れたセラとジェシカ、2人共その程度のことはどうでもないことと考え、余裕の表情である。


 一方、案内してくれるはずの『印』を持つ神界人間収容者はというと……どこか覚悟を決めたような面持ちで、足取りも少し重くなっているようだ。


 おそらく相当にハードなお仕置きをされるのであろうと、逆に期待しつつテントの中の様子を見たセラとジェシカの目には、どういうわけか空中に浮かんだり、見えない何かに苦しめられたりといった感じの収容者達の姿が飛び込んできたのであった……



「えっと……あの、あそこでマジシャンみたいに宙に浮かんで悶絶している子は……」


「あの方はきっと『神の見えざる縄』で縛られて吊るされているんですね」


「ではあちらの、同じく宙に浮かんでいるようなのだがその、何かに跨っているような……」


「あちらの方はもう間違いありません、ここで一番苦しいと言われる『神の見えざる三角木馬』で責められているんですね」


「……さらに言うとあそこで頭を押さえてしゃがみこんでいる子は?」


「え~っと、なかなかレアですね、『神の見えざる罵詈雑言』を浴びせ掛けられているんですね」


『・・・・・・・・・・』


「そして私達にも神の見えざる手が……あうっ」


「あっ、連れ去られちゃったわね、しかも私達も……」


「何かにガシッと掴まれてしまったようだ、だが持ち上げられるみたいだし、このまま高い位置から『印』を持つ収容者を捜してみることとしよう」


「ちなみにこれ、1時間後に交代の時間になって、それで解放されるのかしら?」


「・・・・・・・・・・」


「……やっぱちょっとヤバかったみたいね、まぁ、とにかく流れに身を任せて……ってちょっと、いきなりパンツを剥ぎ取られるなんて、ひぃぃぃっ!」



 どうやらかなり危険な場所に来てしまったようだと、2人がそう気づいたときにはとき既に遅しといった感じであった。


 パンツを剥ぎ取られたセラは『神の見えざる触手』によって責められ、どう考えても周りの状況を確認出来るような、『印』を持つ者を捜すことが可能な状況ではなくなってしまった。


 一方のジェシカは……同じように捕まってパンツを剥ぎ取られ、吊るし上げられてしまったものの、たまたま運良く『神の見えざる指』によるカンチョーの罰を受けることになったらしい。


 修練の結果としてカンチョー耐性が100%となって、そのダメージを一切受けることのないジェシカにとって、これはかなりの好機である。


 念のためまともに喰らっているフリをしつつ、テント内全体を見渡していくこととして作戦を開始した。


 次から次へと入って来る神界人間が、『印』を持っているのかどうかということを確認して……と、どうやら早速にして1名、該当者らしきものを発見したようだ……

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