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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1253 祭のような何か

「えぇぇぇぇっ!? じゃ、じゃああのイケメン天使様が、こんな所に放り込まれてしまった神界人間達の唯一の癒しであったイケメン天使様の顔面が……ニセモノだったってことですかぁぁぁっ!?」


「そこまでビックリすんのか、まぁ、信じ切っていたのであれば仕方ないと思うんだが、とにかく奴はホンモノの顔をまだここでは晒していないんだよ、俺は見たけどな」


「ち……ちなみにイケメン天使様の素顔とはどのような……」


「……言うなれば地獄、いや魔界の肥溜めの底からサルベージした汚物の塊の中から、さらに忌避すべき成分を抽出し、濃縮して個体にしたような顔面だったな……見るに堪えないものの代表例みたいな感じだったぞ」


「そんな、まさかそんなことがあるなんて、だっていつもあの爽やかな笑顔で私達に語り掛けてくれて、そのイケメン天使様がそのようなゴミであるなど到底信じることが出来ませんっ!」


「じゃあその笑顔が少しでも動いたのを見たことがあるか? 喋っているのに口が動いていないとか、そういう不可思議な現象を見なかったか? どうだ?」


「い、言われてみると確かに……何だか貼り付いたような笑顔というか動きがないというか……」



 というような感じで、これまであの表見イケメン天使を信じ切っていた神界人間の収容者に対し、徐々に真実を伝えていく。


 明日になれば現物のお目見えというかたちで真実が明らかになるのだが、こんな連中がそこでいきなりそれを目の当たりにしてしまえばどうか。


 ショックを受けて卒倒するどころで済んでしまえば良いのだが、最悪救急搬送が必要になったり、寝込んでしまって起きることさえままならないような状況に陥ってしまう者も出るに違いない。


 その事態を避けるためにも、ここでこうして一部の収容者に情報を流して、明日のその瞬間までにはそこそこの噂が、神界人間の中で広まっているような状況を作り出しているのだ。


 もちろんそれでもショッキングな事態であることは事実だが、やはりこうやってワンクッション挟んでおくことによって、阿鼻叫喚の地獄という結果だけは避けられると考えたためである……



「それで勇者様、個人的な恨みでその表見イケメン天使を潰すのは良いんだけど、そこで起こったパニックを何に利用するの?」


「簡単さ、ここの天使共が全部同じような感じなんじゃないかと、神界人間の収容者を中心に思い込ませるんだ、そのための布石はもうアレしてあるからな」


「なるほど、ではそんなことも考えられないような大パニックに陥ることだけを避けて……ぐらいの感じで良いわけですね」


「うむ、これに関してはそっちでもちょっと手を加えてやって欲しい、ところで……『印』を持つ神界人間はこの中の誰と誰なんだ?」


「あ、その話でしたね、すみませんが皆さん、『印』があるという方は分類ごとにサイズ順、番号順に並んで下さい、もちろん『印』が見えるように」


「えっと、あの……一応なんですがその……こちらは本当にハゲのおっさんクリーチャーじゃないんですよね? そうであれば問題はないんですが、もしそうでない場合にはその、お尻を見られるのは凄くイヤなんですけど……」


「大丈夫です、この勇者様はホントにゴミカスの極みでどうしようもない穀潰しの無能ですが、クリーチャーの類ではないような気がしているのでたぶん大丈夫です、知りませんけど」


「おいミラ、せっかくだからお前もそこで尻を出せ、しばらく座れないようにしてやるから」


「……というように暴力的で知能が低いわけですが、それでも……あっ、ちょっ、ごめんなさい冗談でっ……ひぎぃぃぃっ!」



 ともあれ、一応『印』の確認だけはさせてくれることになった神界人間の収容者達を並べていくと、飛び飛びではあるがそれぞれのサイズや分類ごとの数字が揃い始めていた。


 最大の数字は現状で『小さい尻』の収容者に付されていた『8』であったのだが、おそらくはその数字がMaxというわけではないはず。


 あるとしたら『9』で、それが大中小のおっぱいと尻に分かれて付されていることを考えると……最小が『1』であったとしても9分の1が6桁、最小が『0』であることもないとは言えないのでその場合にはさらに……ということになるのか。


 この数字がパスワード化したものを、何の前情報もナシに合わせていって祭壇のカギをどうのこうのということはおそらく難しいであろうな。


 間違いなく『○○回失敗すると永久にロックされる』などの仕掛けが施されているはずだし、俺達の立場上、運営にパスワードのミスをした旨を伝えて身分証を提示して解除して貰うなどということは出来ない。


 ならばこれに関しても何らかの情報を集めていかなくてはならないわけだが……まぁ、それは金髪天使の動きに期待することとしよう。


 俺達がやるべきは少なくともこのフロアに居る『印』を持った神界人間を全て集めること、そしてこの施設に向けて連行されている途中で、神界盗賊のような連中に攫われてしまったという、本来は同じように祭壇のカギとなる者の救出である。


 前者はここで仲間達が暗躍してどうにかなることとは思うが、問題は後者だな、外の仲間とまた連携を取って、それでどうにかこうにかやってのけるしかないことだ……



「……よし、じゃあここの皆は『印』がある者を引き続き探してくれ、新しく仲間になった子達にも協力して貰ってな、だがあまり大騒ぎをして探すようなことはやめろよ、敵に勘付かれでもしたら計画全体が破綻してしまうからな」


「わかったわ、コッソリと動く感じでどうにかやってみる、それから……明日のイベントって何をするのかしらね? ホントに詳しい情報がないんだけど」


「あの、それなら私が予想しているもの……きっとそれだと思うのですが」


「ほう、えっと、尻の『印』が『中』の『5番』の方だったかな、情報があるなら教えて欲しい」


「えぇまぁ、私はここに連れて来られてからかなり時間が経っていますので、あの濡れ透けイベントの次に来るのは、だいたい『爆乳爆尻大感謝祭』なんですね」


「またわけのわからんイベントを……ちなみに内容は?」


「はい、連れ出された私達のような神界人間が、おっぱい相撲したり尻相撲したり、あとお祭りみたいな感じでハゲのおっさんクリーチャーが屋台を出して、爆乳掬いとか爆尻射的とか……掬われたり射的の的にされるのは私達なんですが……」


「・・・・・・・・・・」



 もはや意味不明の極みなのであるが、そういうくだらないイベントがあること自体には何の感想も抱かなくなってきてしまった俺が居る。


 ここは、このマゾ狩り団体の収容施設は神界の中でも特に異質で、そろそろ何のためにこんなモノがあるのかというところから考えなくてはならない次元に達しているではないか。


 そして明らかにくだらない内容のこのイベントではあるが、それでもそのくだらなさのお陰で『印』を持つ者を捜し放題ということにもなるのではといったところ。


 もちろん参加者? というか強制的に、嫌々ながら参加させられている者というのは、『印』が付される部分が丸出しにされることもあるのであって……これは見ものと言わざるを得ないな。


 しかも意味不明なコンテンツではあるが、出展されるらしい屋台などの運営を担当するのがハゲのおっさんクリーチャーであることを考えると、俺が直接それを確認したり、実際に触ってその『印』がホンモノであるかどうかなどを調べ上げることも……出来るには出来るがセラにキレられそうだな……



「う~む、主殿、そういったイベントがあるのならチャンスだとは思うのだが、私達はそこでどういった動きをすれば良いのか?」


「まぁ、普通に参加させられている感を出しつつウロウロしていたら良いんじゃないのか? それで『印』を持っている者を発見したらすぐに追跡してコンタクトを取って、こちらの仲間に引き込んだりしてな」


「なかなか難しいことを言うわね、まぁ、でもどうにかして見せるわ、ここでその『印』キャラを、この施設の中に居る分だけ全員集めることが出来れば……」


「あとは俺と、それから外の仲間達に任せるんだ、きっと退屈しているだろうからな皆」


「じゃあそういうことで明日ね、とにかくそのイベントが開催されるということを前提にして動きましょ」


『うぇ~いっ』



 ということで話はまとまり、俺はルビア達が待っている神々のフロアへと戻ったのであったが、そこで聞いた話によると、どうやらそのイベントには神も天使も参加することがないらしい。


 当然のことながら、このマゾ狩り団体の構成員である天使が、イベントの監視役として動くことになるのだが、それに関しても下っ端ばかりで、金髪天使も銀髪天使もその運営チームには所属していないとのこと。


 イベントの詳細自体は金髪天使からの報告でかなりわかってきた、いや聞けば聞くほどに意味不明ではあるのだが、とにかく行われることの内容自体はそこそこ把握出来たように思える。


 しかしその中で俺が動き回るに当たって、やはり金髪天使のサポートがないとなると厳しいような気がするところ。


 誰か俺と一緒に動きてくれる天使が居ないものかと、金髪天使にそのような要請をしてみたのだが、これに関してはどうしようもないとの返答しか得られなかった。


 そもそも金髪天使を始め、女性キャラの天使は一律有能な者ばかりであって、もちろんその中には大馬鹿も存在しているのだが、少なくともあの表見イケメン天使のような、野郎のゴミキャラよりはまともな者ばかりであるとのこと。


 それゆえこういったイベントで面倒な運営を任される下っ端天使というのは、必ず、例外なくうだつが上がらない中年ゴミ野郎ばかりであって、金髪天使の周りに居る女性天使はまったく参加しないのだ。


 こういう状況にあっては、誰か味方に引き込めそうな女性天使を勧誘して……ということはまず出来ないし、協力者の方は俺が単独で捜し出すしか……いや、それならすぐに見つかりそうだな。


 よくよく考えれば明日、おそらくそのイベントの最中になるのだとは思うが、そのイベントの中でも最大最高のイベントとして、あの表見イケメン天使の素顔の暴露があるのだ。


 そして奴程度のド底辺キャラであれば、間違いなく面倒なイベントの使い走りに駆り出されているはずであって、そこでまずコンタクトを取っておけば協力を得られそうである。


 というか、奴が一世一代の賭け(と思い込んでいる)正体暴露に気が急ぐばかりに、まだまだ俺達が『印探し』を終えていない段階で事を起こしてしまう可能性があるではないか。


 そうなってしまえばもう、パニックの中で俺も仲間達も自由に動くことが出来なくなってしまうばかりか、イベント自体が中止に追い込まれてしまい、せっかくの収容者が全て引っ込んでしまうことは必至。


 この事態が現実に起こったのだとしたら、少なくともあの表見イケメン天使を一度や二度惨殺するぐらいでは腹の虫が収まらない、生涯懸けて恨まなくてはならないことになってしまう。


 そんなことをするのは確実にエネルギーの無駄だから、あの馬鹿のことを確実に、一時のお笑いであったとして忘却することが出来る程度の『ムカつき』に留めておかなくてはならないのが今回のそのサブイベントなのだ……



「……どうなんですかご主人様、1人で勝手に納得したような顔をしていますけど、誰か協力してくれ差王な天使さんに心当たりがあるとか?」


「うむ、ほらさっき言っていただろう、表見イケメン天使の奴が明日社会的な死を迎えるってな、その前にちょっと良いように動いて貰おうと思ってさ」


「勇者よ、そんな無能そうなキャラを使用して大丈夫なのですか? ただでさえあなたが無能……ではありませんでしたっ! ちょっと、ひぎぃぃぃっ! お許しをっ、関節技だけはお許しをぉぉぉっ!」


「フンッ、全くしょうもない女神だなお前は、そんなんだからいつまで経っても底辺の雑魚キャラのままなんだよ……で、俺の実力を100とすると奴の実力は0.002ぐらいだ、足して半分で割ったとしても50.001ぐらいの活躍は出来るだろうよきっと」


「ご主人様の実力が100だとしたら、その100は求められる結果を出すのにまるで足りなくて……あ、お尻叩きます? どうぞどうぞ」


「ルビアまでこの俺様をディスりやがって! このっ、てか全員尻を出せっ! ついでだからこの俺様をゴミ置き場にまで至らせた罪をこの鞭で償わせてやるっ!」


『へへーっ、お願い致します』



 などと遊んでいるうちに夜も更けてしまったため、明日のイベントに備えるという理由と、さすがにお色々と疲れている俺が誰も見ていない間に休息しておくべきという理由で床に就く。


 相当に疲れていたのであろうが、気が付くともう朝になっていたらしく、そろそろ起きないとヤバいという先輩天使の声で目を覚ました。


 さて、外の方はこんな朝早くからかなりやかましいように思えるのだが、とっととこのフロアを出て、準備がされているのであろうイベントに潜り込むこととしよう……



 ※※※



「……おっ、居た居た、おいお前ちょっと来いこの不細工野郎、今日も厚塗りの顔面詐称がバッチリ決まってんな」


『……何だよお前は? 俺は今忙しいんだよ、今日は一世一代の大勝負の日なんだよ、というか天使の邪魔をするクリーチャーなんぞ見たことがないが、お前は本当に不快な奴だな、まず顔がキモい』


「キモいのはお前だろうよこの表見イケメン天使が、その表面の厚塗り、塩釜みたいにカチ割って中身を出してやろうか? というか、昨日の今日で俺のことを忘れてしまったってのかこの馬鹿は?」


『何だと? 馬鹿はお前……まさかっ⁉』


「シッ、静かにしろ土下座もすんな、天使がクリーチャーにヘコヘコしてたら怪しまれんだろう」


『わ、わかった、それで大師匠、今日は何の用で? というか昨日ゴミ置き場に戻って処分されたと思ったのにどうして?』


「……あぁ、それはアレだ、その……あの失敗作の記憶を引き継いだ新型なんだよ俺は、だから昨日の俺よりも遥かにグレードアップしているし、戦闘力も知能もバリバリに高まっているんだ」


『さ、さすがは大師匠様、俺のようなゴミとはわけが違うらしい』


「そうだ、何で俺が大師匠様になったのかは知らんがとにかく凄いんだ、そしてお前は今日、素顔を晒すことによってその高みまでやって来ることになるんだ」


『あぁ、イベントが開始したらちょっと雑用があるんだが、それが終わり次第すぐに事を起こす構えだ』


「いやちょっと待て、それは早すぎるぞお前、わかってんのか? 正義の味方だって必殺技は最後の最後に出すし、そもそもそういう奴ってのは遅れて来るのがデフォルトなんだ、意味わかる?」


『わかるが、しかしはやる気持ちを抑えることなど……』


「お前、失敗するぞそれ、ここでやらかして社会的に死ぬパターンだ……もし上手くやり遂げたいと思うのなら、そうだな……」


『失敗はしたくないので大師匠様に従おう、それで、やり遂げたいと思うのであれば?』


「俺の仕事、今日はちょっとこのマゾ狩り団体ってわけじゃなくて、もう神界のとんでもないクラスの上層部から直接に、指名で依頼された『秘匿ミッション』なんだが、それを手伝え」


『そっ、そんな重要なミッションを俺なんかがっ?』


「お前だから頼んでいるんだ、やってくれるな?」


『あ……あぁ、可能な限り頑張るよ……』



 イマイチ自信なさ気の表見イケメン天使であるが、いざというときにはコイツに全責任を押し付けて俺だけ姿を消すことも出来るし、なかなか便利な存在であろう。


 で、早速こちらがやるべきこととして、『印』を持つ神界人間を捜し出すのだというミッションを授けたのだが……良く考えればコイツの人気を利用して、次から次へと直接に確認していけば良いのではないかとも思うな。


 おっぱいだろうが尻だろうが、少なくともこの馬鹿がナチュラルのイケメンだと信じている限り、ポロンッと出して見せてくれる者が多いはずだ。


 もちろんこの後、事情を知った仲間達による『噂広め作戦』の効果が出て来て、今日のうちに、徐々に徐々に疑いの目を向けられるようになるのだとは思うが……となると朝のうちがチャンスか。


 この馬鹿はどうせ押し付けられた雑用が何日かけても消化し切れないほどにあって、それを成し遂げることが出来ないことにつき同僚の天使から罵倒される運命にある。


 だがどうせそうなるのであれば、最初からそのような雑用をサボって俺の方を、この馬鹿が『神界上層部より賜った極秘ミッション』だと信じている俺達の勝手な作戦を手伝わせても良いのではなかろうか。


 というか手伝わせる方が絶対に良いと、そう感じるのは俺だけではないはずなので、ここは誰か仲間の意見を求めることなく、俺の独断で『チーム』にこの馬鹿を引き入れてしまうこととしよう。


 で、そんな感じで表見イケメン天使と一緒にその辺をウロウロしていると、その天使がいつも馬鹿にされているキモ顔のそれとは知らないらしい誰かから、こちらを手伝ってくれという声が掛かる。


 どうやら屋台をひとつ任されるようなのだが、ここで『屋台のおっさん』として実際に稼働するのは、ビジュアル的に完全なおっさんである俺となるはず。


 すぐに法被と捻じり鉢巻きが提供され、適当に組み上げられた屋台の内側に……どうやらこの屋台は射的(運営であるこちらがなぜか撃つタイプ)になっているようだが……看板には『尻的』と書いてあるため、収容者を並ばせて、尻を出させてそれを狙うというものなのであろう。


 となるとやはり、『印』を探すのにはもってこいの状況なのだが……肝心要の『見つけた印を追跡する係』が居ないな、誰か仲間が気付いてそれをやってくれれば良いのだが……ここは呼び出しを掛けるべきか……

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