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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1250 正体発覚

「……という感じだったんだ、あの表見イケメン天使だけは絶対に許すことが出来ないし、マジでこれでもかってぐらい痛め付けた後に惨殺してやらなくちゃ気が済まないぞ」


「なるほど、報告の半分以上がイケメン天使? とやらへの愚痴でしたが……そんな天使がこの団体に居たかどうか本気で不明ですね、後で調べてみます」


「おう頼んだ、それで、銀髪天使の奴はどこへ行きやがったんだ? アイツの動向だけはキッチリ把握しておかないとやべぇからな」


「わからないわ、つい先程何だか気が付いたような感じで、凄く嬉しそうに走って出て行ったけれど……何がしたかったのかは不明ね」


「どうしようもない奴だなアイツは、自由というか何というか、少なくとも賢くはないんだろうが」


「それで勇者様、これからはどういった動きをするのですか? 今日はもうそろそろ戻らないとならない時間ですが」


「うむ、おい金髪天使、一旦この3人を部屋へ戻してやってくれ、俺はルビアや神々を連れて戻って、夜になったらさっき確認した『印』の収容者の所へ行くから」


「わかりました、では行きましょう、夕食に間に合うように戻らないと叱られてしまいますからね、私が」



 色々とやるべきことはあるのだが、ひとまずジェシカにキープ? させてある『印』を持つ収容者の所へ、残りの3人も送り込んで囲い込みを行う。


 おそらくはターゲットだけでなく、その周りの神界人間収容者達も少なからず巻き込んでしまうこととなるのだが、それはもう致し方ないこととしておくしかない。


 実際のところ、あまり危険な状況に弱い神界人間を巻き込みたくはないのだが、こちらで絶対的に保護可能な、最低限の数だけであれば、事がスムーズに進む方を優先して『真実』を伝えていくべきなのだ。


 ということで金髪天使に頼んでセラ、ミラ、マリエルの3人を神界人間フロアへ、俺はルビアと俺達の世界の女神、それから看破の女神とロボテック女神、さらに先輩天使を連れて神界人間のフロアへと戻る。


 その道中においても『印』を持っている神界人間がその辺をウロウロしていないかなど確認しておいたのだが……そもそも時間帯的にあまり数が居ないし、『印』は普段衣服に隠れて見えることなどない。


 まさかあのシャワールームに張り付いて、素っ裸の状態の、『印』が丸見えの神界人間が来るのをずっと待っているわけにはいかないし、やはりもう少し効率の良い方法を考えなくてはならないようだ。


 そう考えているうちに神々のフロアへと辿り着き、もう完全に慣れた空間となってしまったいくつかの独房を接続した部屋へ入ると、ひとまず収容者であるルビア達がシャワーを浴びると言い出し、別に構わないと見送った。


 シャワーの数が足りないこともあって、俺と先輩天使だけは真ん中に集中させたベッドの上で少し待たされることになったのだが、まだ食事時までもうしばらくあるし、ひとまずこの間は作戦について話をしようということに決まる……



「それで、神界人間のフロアがどういうわけか厳重に監視されていることに関して、あの金髪天使はもう調べ始めているのかな?」


「どうでしょうか? 後で来たときに聞いてみるのが早いとは思いますが、おそらくまだそこまでは着手出来ていないんじゃないかと思いますよ、今は『印』のことばかり考えていますし、それに……」


「それにあの銀髪天使の奴だな、マジでどうしようかアイツ、邪魔で邪魔で仕方がないとはこのことだ、今のところは利用出来ているから良いがな」


「やっぱりどこか目立たない場所にでも監禁して……というのはリスクが高すぎるんですよね、仲間に引き込むのも無理だし……っと、噂をすれば影です、ちょっと立っていて下さい」


「あぁ、そうするよ嫌々ながら……」



 余計なことに触れてしまい、それがフラグにでもなったのではないかと思えるほどタイミングの良い、いや悪いのであろうか、とにかく銀髪天使の気配が接近しつつあることに気が付いた俺と先輩天使。


 俺はまたしてもハゲのおっさんクリーチャーモードで突っ立って、まるで生気のない目をしながら、先輩天使が唯一残ったかたちのその部屋の隅に立つ。


 バタバタと走ってやって来た銀髪天使は……何やら嬉しそうな顔で辺りを見渡したのだが、金髪天使がまだここに居ないということに気付き、きょとんとした後少しばかり考え込むような仕草を見せた……



「あれあれっ? 金髪天使さんはどこへ行ってしまったんでしょうか? せっかく良い報告が出来ると思ったのに、ちょっと先輩、何か知りませんか?」


「あの子なら神界人間のフロアに行っていると思いますよ、ほら、あの4人のうち3人を送り届けなくてはならなかったので……むしろあなた、手伝わなくて良いんですか?」


「おっと! コレを指摘されてしまうとは私、超有能でフットワークが軽い尻軽……じゃなかった身軽天使として情けないっ、情報提供ありがとうございます! それからそっちのハゲは不快だから死に晒せこのゴミクズがっ! ということでまた明日!」


「……行ってしまいましたね、本当に忙しいというか何というか」


「ちなみにアイツが言っていた『良い報告』って何なんだろうな? 金髪天使が昇進して、さらに職権を振りかざしてこの組織の調査を……ということにはならないだろうな」


「きっと『印』を持つ神界人間収容者のことだと思いますよ、何か新たな発見をしたとか、あの身軽さですからもしかしたらもう複数人を発見しているかも知れません」


「その可能性もないとは言えないな……まぁ、とにかく金髪天使からのまた聞きでも良いから、奴が持っている『良い情報』というのをこちらにも共有しておかないとだな」



 そこでルビア達が続々とシャワールームから出て来た……というかとっくに出て来るべきタイミングであったはずだが、あえて全員がそれを遅らせていたのである。


 ルビアにしても他の通常なる神々にしても、銀髪天使の気配がここへやって来ていることぐらい、鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていても気付いたはず。


 そしてそれを察知して、全員が全員、絶対に奴にだけは絡まれないようにということでシャワールームの中に『隠れた』ということだ。


 まぁ、皆で出て来て余計なことばかり言って、結果として銀髪天使がここに居座るようなことになれば面倒なのは俺である。


 これはこれで良かったのではないかと考えつつも……やはり対応をこちらに、しかも片方は喋ることさえ出来ない、罵倒されてもただただ立っていることしか叶わないこの俺に押し付けたという罪は重い……



「お前等、銀髪天使が来ていると知って隠れやがって、お仕置きだなそういう連中は、尻を出してそこに並べ、ルビア、女神、看破の女神にロボテック女神の順だ」


『は~い』


「どうしようもない連中め、このっ! 無駄に誘う尻を叩かれて反省しろ雌豚共がっ!」


『あっひぃぃぃっ! もっとお願いしますぅぅぅっ!』


「黙れ変態! 特にルビアお前、ちょっと太ったんじゃねぇのかここに来てから?」


「だって、あんな豪華な料理が毎晩毎晩、食べ過ぎてしまうのは仕方のないことかと……逆に痩せましたねご主人様、この数日で一気にやつれたというか、何かハゲのおっさん状態が似合う残念な感じになりましたよ」


「喝ぁぁぁぁっ!」


「ひぎぃぃぃっ! いっ、今のは強烈なお仕置きでした……」


「全く良いモノばかり食いやがって、俺のようにパンだけの食事をしてみろ、しかも高級すぎて真っ白なパンばかりだからな、栄養が足りなくてこんな状態に……と、何だか眩暈がしてきたぞルビアのせいで」


「大丈夫ですかご主人様、ちょっとほら、そこの地べたにでも横になった方が良いですよ」


「地べたなのかよ横になるのが……まぁ良いや、きっと疲れと栄養不足でこのようなことになったんだろうな、今日はちょっと夕飯の中からまともなものも徴収するとして、しばらく横になるから待機していてくれ」


「わかりました、じゃあここに粗末なムシロを敷きますので、地べたよりはマシなんじゃないかと」


「どういう扱いなんだよ全く……まぁ、今の俺はハゲのおっさんクリーチャーなわけだから仕方ないか……」


「そういうことですね、でもどうしましょう? このまま事情を知らない誰かが来てしまったら面倒臭いことになるんじゃないですか?」


「もうそしたらアレだ、ちょっと不具合を起こしてシャットダウンしたとでも言っておけ、今再起動中だからしばらくすれば大丈夫だともな」


「ホントに大丈夫なんでしょうかそれは……あ、そんなことをしていたら誰かの気配ですよまた、これは……金髪天使さんと銀髪天使さん、一緒になってここへ向かっていますね」


「チッ、本当にタイミングとかそういうのを考えない奴だな、だがもう面倒だ、このまま寝ているから適当に誤魔化しておいてくれ」



 せっかくしばらくの間横になろうと思っていたというのに、空気を読まない銀髪天使……いや、このタイミングに関しては金髪天使にも同じことが言えるが、とにかく奴等の登場によっておちおち寝てもいられなくなった。


 だがふらついてしまった以上、このまま立ち上がって耐えていても良いことはないであろうから、『誤魔化し』の方は仲間達に任せて、俺は何となく不具合を起こしたクリーチャーのような感じを出して横たわっていることとした。


 気配に続いて足音が聞こえ始めたところで、同時にその会話している声の方も……いつもの如く銀髪天使が一方的に喋っているだけかと思いきやそうでもないらしいな。


 むしろ金髪天使の方が嬉しそうに、銀髪天使を褒めるような言葉を発しているように思えるのだが、先程の銀髪天使の報告に何か凄く良い情報があったということか。


 もはやそれ以外に考えられない、迷惑千万で作戦妨げにしかなっていない銀髪天使を心から褒め称えることなど、騙されてこちらの計画に寄与した状況以外であり得ないのだから……



「いやはや本当に良くやってくれました、この短時間で『印』を持っている収容者の神界人間を2名も発見してしまうとは」


「ふふんっ、やはり私の力を借りて正解ですよ金髪天使さん、このペースで全員? 何だかわかりませんが、とにかく発見していけばもう、私達がこの施設の天使階級筆頭になるのは時間の問題です」


「そうなると良いですね……それでえっと、その、どうして大ゆ……ハゲのおっさんクリーチャーがそんな所に寝かされているのでしょうか?」


「あ、これはちょっと壊れてしまって、もうすぐ再起動するんじゃないかと皆で話をしていたところで」


「それはいけませんね、この迷惑なハゲ、自己処分も出来ずに壊れてしまうとは、早速処分しましょう、確か明日は燃えるゴミの日でしたから、今のうちにゴミ置き場へ移動を」


「ですからあの、銀髪なる天使よ、もうすぐ元に戻ってまた動き出すことが確定して……」


「大丈夫ですって、また新しいのを用意しますから、それに責められてブヒブヒ喜んでいて下さい神様、じゃ、これちょっと持って行きますからっ」


「あぁっ、ちょっとそんなっ……どうしましょう、持って行かれてしまいました」


「・・・・・・・・・・」



 また余計なことをしやがると、俺は銀髪天使によってその辺にあった鳶口のようなもので引っ掛けられ、雑に引き摺られながらそう思った。


 そこら中に頭をぶつけ、ガンガンと会談を降ろされて……最終的に辿り着いたのは何やらゴミの集積所のような場所。


 そこへポイッと放り込まれると、何やら下でグチャっとクッションになった物体があった。

 イヤな予感しかしないのだが、恐る恐るそれを確認すると……やはりグッチャグチャになったおっさんの残骸ではないか。


 ここはあの窓から飛び降りるなどして『自己処理』をした、用済みまたは故障したハゲのおっさんクリーチャーの集積所であって、その他の燃えるゴミも一緒に搔き集められている暗黒の場所。


 明日が燃えるゴミの日だと銀髪天使は言っていたのだが、このままここで壊れたおっさんのフリをしている限り、明日にはもう神々の力で生み出された聖なる炎によってごみとして焼却処分されてしまうはずだ。


 そうなってしまっては敵わないので、ひとまず銀髪天使が立ち去るのを待って……と、どうやらそういうわけにもいかないようだな。


 この場所は施設全体のゴミ集積場所であるらしく、銀髪天使以外にもマゾ狩り団体の構成員である天使、さらにはそれに命じられた収容者などが次から次へと、ひっきりなしにゴミを捨てに来るのだ。


 もちろんまだギリギリ稼働していてピクピクと動く、死にかけのおっさんが捨てられるようなこともあると判断出来るが……まぁ、少なくとも元気良く、普通に歩いてここを立ち去るようなものが捨てられることはないであろう。


 つまり俺が普通にここから出て行くのは不自然なことであって、こうなったらもう、夜になるまでここで待機している以外の選択肢がないということなのだが、それはそれでまた大変に厳しいことである。


 何よりもまず、俺は腹が減ったというか栄養が足りないというか、それに起因する体調不良で立っていられなくなったのだ。


 それがここで息を潜めて隠れて、長時間待機した後になって動き出して……というのはなかなかにキツいことに違いない。


 だがそうする以外に道はなさそうなので、ここはグッと堪えて時の経過を待ち……と、ここで少し話が変わりそうな勢いだな。


 なんとひっきりなしに入ったり出たり、とにかくゴミを捨てに来ている連中の中に、あの明らかに加工しまくった笑顔が見えたのだ……そう、例の表見イケメン天使である。


 こんな場所にゴミ捨てなどに来なくてはならない天使というのは、明らかに組織の中でも下っ端で軽く見られている者であって、それ以外の天使は収容者の神界人間、または同じ天使でも収容されているドMの雌豚天使に作業を押し付けているはず。


 現に見ている限りでは、ゴミ捨てにやって来るマゾ狩り団体構成員の天使というのは全部しょぼくれた野朗で、いかにも仕事が出来なさそうな奴ばかりなのである。


 女性の天使は先程自分で入って来て、俺を捨てると同時に立ち去った銀髪天使以外見かけていないのであるから、ある程度能力があって認められている優秀な天使は、こんな所に自らやって来るようなことなどないということになるのだ。


 となると、現に大量のゴミを持って、さらにはリヤカーにハゲのおっさんクリーチャーの残骸を山積みにして、ついでに言うとその加工しまくった顔面の塗りたくった何かが溶け出したような状態でここにやって来ているあの表見イケメン天使は……それなりの雑魚キャラでしかないということになるな。


 これは何か奴の弱みを握るチャンスになるかも知れない、そう考えた俺はさらに息を殺し、絶対に稼動したままの状態でクリーチャーが捨てられていることを悟られないようにしつつ、その様子を見守った。


 どうやら独り言で不満をブチ撒けているような感じであるからまずはそれを聞いて奴の現況について判断するための材料としていくこととしよう……



『全く、どうしてこの俺が、天使である俺がこんなことをせにゃならんのだ、こういう作業はもっとセンスのない、イケメンでない馬鹿のやる仕事であってだな……』


『おいっ! やかましいですよそこの厚化粧野朗! 作業が済んだらとっとと帰って下さいよ気持ち悪いっ! この私のような天使が、最下級のゴミであるあなたと同じ仕事をさせられているということすら屈辱なのに……』


『おいっ、聞き捨てならねぇな今のは、ちょっと面貸せやおっさん、ボッコボコにしてやるからよっ』


『フンッ、何を言っているのですかあなたは、というか、顔面のペイントが溶けて悪魔のようなビジュアルに成り下がっていますよ、直して差し上げましょうか? いえ、元々の素顔よりは幾分かマシなようですから、そのままにしておくのもまた良いかも知れませんね』


『んだとゴラァァァッ! 表出ろボケがぁぁぁっ!』


『おっと、良いんですかあなた? どうやらその偽りの顔面で収容者の神界人間からは大層な人気を得ているとのことですが……まぁ、今のあなたと普段のあなた、そこに同一性を見出すことなど出来ませんから、ここで暴れてもたいした影響はないでしょうね』


『そうだよオラァァァッ! だから死ねやこのゴミカスがぁぁぁっ!』


『おっと……たいした影響がないというのは誤りでしたね、ひとつ大きな変化があります、あなたはこのゴミ置場に沈んで、明日の燃えるゴミの日において聖なる炎で焼却されてしまうことでしょう、ふんぬっ!』


『ゴッ、ギョェェェッ!』


『他愛もない、地元では天使の中でも最弱でかつ最も無能であると罵られたこの私も、ここではまだまだマシな存在であるようですね、それでは……』


『あげげげ……がはっ……』


「・・・・・・・・・・」



 弱い、あまりにも弱すぎる表見イケメン天使であったその物体は、顔面をベコッとへこませた状態でゴミに埋まり、俺のすぐ近くでピクピクと動いている。


 おそらく今それをやった天使も、他の天使と比較すればかなりの弱者であるし、ここで俺が本気を出せば一撃で、分子ひとつ残さずにこの神界から消滅してしまう程度の雑魚なのであろう。


 だがその雑魚にワンパンで、余裕を持ってKOされてしまうこの表見イケメン天使というのは……もしかすると神界の存在の中で、少なくとも俺がこれまで確認してきた中で最も弱い、ホンモノの雑魚キャラなのではなかろうか。


 そしてその雑魚さだけでなく、殴られた拍子に厚化粧がバックリと割れ、まるで塩釜焼きの塩釜から中身を取り出したかのように本当の顔面が露に……吐き気を催すほどに不快なビジュアルだな。


 間違いなくあの雑魚キャラ天使が言っていたように、この表見イケメン天使はあの化粧の表面が半分溶け出した状態の方がマシであったろう顔面だ……

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