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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1246 印持ち

「……ってことなんだよ、さっき俺が襲った神界人間のお姉さんにはそんなかんじで、この、ほらおっぱいの所に謎の印みたいなのがあってだな」


「てかどうして神界人間の女の人を襲ってんのよ勇者様は、サイテーな行為じゃないのそれっ」


「仕方ないだろうよ、今日のあの銀髪天使に命令されたからやむなく、お姉さんの全身をこの気持ちの悪い顔でベタベタ触ってだな……だがそのお陰で謎の印を発見することが出来たというわけだ」


「それは言い訳にすぎないな、全くこちらが情報の少ない中で苦労して色々と調査していたというのに、主殿はそんなことをして遊んでいて……あいったぁぁぁっ! いてっ、いてててっ! 強く抓りすぎだっ、脇腹が取れるっ!」


「周囲の目を誤魔化すのにはちょうど良い悲鳴だな、叩いたときの音もさぞかし響いてくれるんだろうと期待しているぞっ!」


「あぁぁぁっ! もっと激しく叩いてくれぇぇぇっ!」


「それよりも勇者様、その印が入った囚人の神界人間? 私も1人だけ見たような気がするのよね、でも胸じゃなくてお尻の方にあったような気がするわ」


「そうなのか、じゃあちょっとその話を詳しくして欲しいのと、後でもう一度確認して欲しい、俺が見つけた印ってのはこう何というか番号があって、そういえば『小』とも書かれていたな」



 そのままジェシカを引っ叩く手を止めずに、セラに対して先程犠牲者となり、今は疲れ果てて眠ってしまっているのであろう神界人間にあった『印』の特徴を話していく。


 同時にセラが目撃したという、その神界人間とは別の場所に『印』があったという収容者の特徴も聞き出し、可能であれば後程、俺が直々に確認をしたいと……いう提案はエッチすぎるという理由で却下された。


 この期に及んでそのようなことを言うのかと抗議したくもなったのだが、どうやらセラ様にあっては俺がそのようなことをするのを認めることは一切出来ないらしく、提案については断固却下の構えである。


 で、それが出来ないというのであれば、少なくとも神界人間を装ってここに潜入している4人が、他にも居るのであろう『印の入った収容者』を見つけ出し、仲良くなっておかなくてはならない。


 これはかなり難しいことだし、他の大部屋に入れられている者とコンタクトを取ることなど出来そうにないのだから、やはり非常に効率が悪いと言わざるを得ないものなのだが……まぁ、セラの態度的にそうしていくしかないといったところである……



「じゃあそういうことでだ、今説明したような印がある者を、可能な限り探し続けて見つけたら確認して仲良くなってそれから……って感じだな」


「やることが多いわね、でもお風呂は大浴場だったから、そこで監視の目を盗んで調査をしてみるわ」


「大浴場で監視って、もしかするとエロい目をした野郎の天使とかに、素っ裸で風呂に入っているのを見られているってことなのか?」


「いや主殿、監視をしているのは主殿と同じ存在、ハゲのおっさんクリーチャーだけだ、天使は人間のことを下等生物などと呼んで蔑んでいるからな、あまり私達の監視を積極的にはしてこないようだ」


「俺実際にはそれじゃないんだけど、あとそんなハゲに皆の素っ裸が見られているのも問題なんだが……しかし妙だな……」


「妙っていうと、何が妙なのかしら?」


「いやな、ここへ来る前にほら、あの銀髪天使を俺が昏倒させようとして、それを監視であって実は仲間でもある天使が止めに入っただろう?」


「あぁ、そんなこともあったわね、それで?」


「その関連でさっき話を聞いたんだがな、どうやらここの監視は神々のフロア並みに厳しくて、逆に天使のフロアはザルらしいんだよ」


「あら、それはどうしてなのかしらね? でも話の繋がりで考えるとやっぱり……」


「その印が入った囚人や、その他諸々、今回の件に大きく関わっているような気がしなくもないな」


「うむ、そう言われるとそんな気もしなくないぞ、ちょっと深く探る必要もありそうだな、とりあえず入浴時の天使による監視はないと……どこか他の場所から見ているとかないよな?」


「あ、それは否定出来ないな、ここは神界であって、私達の世界にはないような特殊な監視装置があってもおかしくはないし、それを使って全体を……などということがないとは限らないぞ」


「ふむ、じゃあその間思想血を探して……いや、防カメをガン見しているような状態を考えるとそれはそれで怪しすぎるな、そもそも神界人間如きにはそれを発見することが出来ないとしてそのような方法を取っているんだからな、もしそんなのがあるとしての話だが」


「それで、そうやって盗撮した私達のお風呂を見て喜んでいるハゲがどこかに居るということなのね、勇者様みたいに」


「馬鹿だなぁセラは、俺様は漢の中の漢なんだ、盗撮なんぞするぐらいなら正面から立ち向かって行くね、その女湯とやらに」


「どのみちサイテーだぞ主殿、それで、もし風呂場が監視されているとしたらアレだ、なかなか情報収集が難しいように思えるのだが……どうする?」


「まぁ、それとなくな感じで良いんじゃないのか? ターゲット、というか『印』がある子を見つけたらさ、うっかり石鹸なんか滑らせて転倒させて、頭でも打って気絶した隙に全身隈なく調べたうえで、もしそれが目的の印だった場合には後から気付いた際に『私が助けました』感を出して接近する、ってのはどうだ?」


「凄く傷害事件だしまともな人間がやることではないわね、というかそんなことをしていても怪しまれるだけよ、でももっとこう、やり方によっては自然な雰囲気で話し掛けて……やっぱり石鹸が飛んで行ったのを使うしかなさそうね……」


「生む、風呂場でうっかりどこかへ行ってしまう可能性が高いのは石鹸だからな、ボトルのシャンプーとかじゃなくてそっち系なんだろう? ここの風呂場も?」


「ボトルのシャンプーって、そんなの人間用のお風呂になんか置いていないわよ、石鹸が1人にひとつ、それでしばらく持たせなきゃならないみたいなの、本当に貧相だわ」


「セラお前、もっと貧乏だったときのことを思い出してくれ頼むから……」



 などと贅沢を覚えて調子に乗り始めてしまったセラを諌めつつ、とにかく夜の時間に風呂場で、素っ裸の際に『印』の有無をチェックしていくということに決まった。


 まぁ、俺は何があっても風呂に来るなと言われてしまったため、仕方ないので報告だけを受けて、その都度どういう感じでここの収容者の人間共が風呂に入ってたのかを妄想しておくこととしよう。


 で、そのまましばらく時間を潰した後、セラとジェシカを牢屋の方に戻して……と、ほとんどの収容者が寝静まっている中で、居残りをしていたミラとマリエルが、見知らぬ神界人間と話をしているではないか。


 監視の目を掻い潜るため、一応は布団を被って寝ているようなフリをしているらしい2人とその神界人間であるが、もはや動きや形状などから起きていることなどバレバレの状態。


 もしここで俺以外のハゲが通り掛ったとしたら、それこそ罰としてベタベタと触られ、鞭で打たれて服が裂けて……というようなことになってしまうではないか。


 そうなってしまってからでは遅いと、俺が接近する際にわざと足音を大きくして忠告し、ついでに連れて歩いているセラとジェシカにも、戻ったらすぐにあの行為をやめさせるよう注文しておく。


 だが、そのミラとマリエルの行動には意図があったらしく、こちらが近付くと逆に大きく動き、ミラに至ってはこちらを向いて手招きしているではないか。


 寝る場所は特に決まっていないらしく、比較的バラバラに、適当に布団を敷いて寝ている様子の大部屋で、そのまま知らない神界人間を連れて、まるで布団イモムシのようにズルズルと移動して来る。


 そして格子の出入口付近までやって来て、セラとジェシカを中へ入らせたのを確認すると、ミラがすかさず前に出て俺の足を掴む……



「おかえりなさい勇者様、ちょっとお話がありますので、次は私達と、それからこの子を連れ出して下さい」


「……構わないが、その子には俺達のことを話したのか?」


「えぇ、実はこの子、ちょっと特殊な囚人らしくて、後で見ればわかると思いますが、何やら番号と記号のようなものが付けられていて……そのことはもうわかっていますよね?」


「うむ、じゃあちょっと来てくれ、不自然にならないよう、嫌々付いてくるような、引き摺り出されるようなムーブでな」


「わかりました、さぁ行きましょう、大丈夫です、このハゲはあまり危険ではないタイプのハゲでして、先程話した私達の仲間のハゲなんです、ハゲにはハゲですが」


「そ……そうなんですね、よろしくお願い致しますハゲの人、どうして普通の、そこらにウヨウヨしているクリーチャーのハゲと同じビジュアルになってしまったのかは存じ上げませんが、おそらく前世でよほどの悪さをしたのでしょう、その罪を償いさえすれば、次の世ではもう少しその、まともな顔面のバケモノに生まれ変わることが出来るのではないかと思いますし、無様で醜いハゲの姿でありながら、美しい私達を恨むことなくその脱出作戦に協力しようという心意気、素晴らしいものだと思います、見た目以外は」


「……ミラ、マリエル、ちなみにお前らにはもうひとつ、コイツに何を吹き込んだのかということも聞いておきたい、覚悟しておけ」


「あっ、やめなさいこのハゲ! ハゲ! 誰か助けてっ、不快なハゲに連れ去られるっ、誰かぁぁぁっ!」


「そこまで演技しろとは言っていないし助け求めながらニヤニヤしてんじゃねぇ、この雌豚がぁぁぁっ!」



 周囲からはまだギリギリ起きていたり、この騒ぎで目を覚ましたりした収容者から、『かわいそうな子』だとか『まだ若いのに』とか、『新しく入って来てもう目を付けられて哀れ』だとかいった言葉が発せられている。


 もちろんミラは完全にふざけているのであって、さらに言うとこの早速仲間に引き込んでいた神界人間が、俺のことを何か誤解しているのもミラノせいに違いない。


 ということで無駄に暴れるそのミラを制圧しつつ引き摺り、先程セラとジェシカと一緒に入った部屋……はなぜか清掃中になっていた、仕方ないので隣に入ることとしよう……



「ほらそこに座れっ、マリエルも隣に座ってやって……ミラ、お前は床に正座だ」


「イヤですね勇者様、こんな冷たそうな床に座れるわけがないじゃないですか」


「あの……勇者様ってことは……どういうことですか? このようなハゲが勇者で……少し話が読めなくなってきました……」


「大丈夫だ、お前がこのアホから教え込まれたことは半分デタラメだからな、俺が勇者様ってのは本当のことなんだぞ、異世界から来た伝説の男だ」


「え~っと、そうは思えませんね」


「・・・・・・・・・・」


「……ぷぷぷっ……勇者様面白いですよその顔」


「マリエルはやっぱり床に正座しろ、ミラはこっちだっ! お前はお尻ペンペンだからなっ!」


「あっ、ひぃぃぃっ! いでっ、痛いっ! あぁぁぁっ!」


「このっ、それでだっ! 俺達についての話はどこまでしているんだっ?」


「あうっ、そのっ、痛いっ! とにかく脱出計画が進んでいてっ、私達はつかまったフリをして潜入しているんだって、ちょっと、そのっ、一旦止めて下さいお尻叩くのっ!」


「まぁ、後でもう一度最初から叩き直しだな……で、この神界人間のどこに『印』のようなものがあるんだ?」


「あ、私ですか? 私はその、お尻の所に……見せますか?」


「見せろ」


「……しかしハゲにお尻を見せるのはちょっと抵抗が……あっ、見た目が変わって……普通の人間になって、えっ?」


「これで良いだろう? 俺は実際には普通の人間で、ここの施設の中で自由に動き回るために特殊メイク等でハゲのおっさんクリーチャーに変身しているだけの大勇者様なんだ、これなら尻を丸出しにして見せ付けても構わないだろう?」


「勇者様、それはそれで普通におかしいと思いますが……しかし計画の進展のためです、申し訳ありませんがちょっとだけ見せてあげて下さい、拝見に係る料金は後で徴収すれば良いですから」


「そういうことでしたら……どうぞ、この雌豚の汚いお尻を見てやって下さい」


「うむ、ちょうど良いサイズ感の尻で……『中』と『5』ってことか……さっき向こうで見たおっぱいの子は確か『小』のいくつかだったから……やっぱり大中小みたいな感じで分類されて、それぞれに番号があって……みたいな感じなんだろうな」


「それって勇者様が言っていた祭壇の分類と同じで、しかもおっぱいとお尻ということは……この『印』が入った子をどんどん探していけば、そのうち誰かが『カギ』になっている可能性が高いということですね」


「そういうことだ、じゃあちょっとお願いがあるんだが、俺が見つけたおっぱいに『印』がある貧乳の子も確保しておいてくれ、この子にも事情を説明しなくちゃだが」



 確かに先程発見した『印』と同じ字体で書かれたもので、間違いなくこれには何かあると、何もないはずがないと思わせるものであった。


 ここで知らない神界人間の尻を丸出しにさせて『印』を確認していることがセラにバレでもしたら大事なのだが、とにかく発見したことには発見したことである。


 ひとまず尻をしまわせて、別の良い感じの尻をふたつ、つまり調子に乗ってわけのわからない情報を他者に垂れ流したミラとそれを見て笑っていたマリエルのものなのだが、それを並べて引っ叩きながら事情説明を行っていく。


 自分がこのマゾ狩り収監施設のクリティカルな空間に繋がる祭壇のカギとなる可能性が高いこと、そしてそのような人物が他にも複数居るはずということを理解させておいて、驚くのも無理はないと付け加えておく。


 まさか神々によって創設されたこんな場所の、その中でも特に重要な部屋に至るために、神界人間をカギとして使用することなどあるものかと、そう思ってしまうのは仕方のないこと。


 しかしそれが真実であることはもう疑いの余地もないことであって、自分が実質この施設のボス部屋である『ドM収容者であって幹部でもある神』の部屋へ突入する際に、カギとして使用される可能性があることをキッチリ認識しておいて貰う必要があるのだ。


 当然のことながら、作戦決行の際には確実に守り抜くこと、僅かばかりの怪我さえもさせないことを約束しておき、一応のところ協力の確約を得た。


 あとはこの子にも手伝って貰って……そうだな、自分と同じ『印』を有する仲間を、なぜそんなものが付されているのかを明らかにするために見つけ出す、という体で捜索を進めるのが効率的かも知れないな。


 すぐにその作戦を審議に掛け、それで良いというミラとマリエル、そして本人の承諾も得て、代わりに牢屋に戻っている2人にもそのことを伝えるようにと告げて会議を終える。


 その頃にはミラとマリエルの尻は真っ赤になって、これなら十分に『ハゲに目を付けられて責められた』と主張することが出来るような状態となった。


 だが先程確認しただけの、『印』を有する神界人間には何もしていないので、このままだと傷ひとつない状態で戻すこととなってしまうではないか。


 それだとさすがに何かおかしいと思われてしまいそうだ、ここはひとつ、協力して貰うということで先ほどの尻に鞭など入れておくこととしよう……



「……で、最後にお前だ、俺と出会って最初からハゲだと決め付けて、キモいだの何だのという態度を取ったことにつき罰を与える、もう一度尻を出してみろそこで」


「へへーっ! 申し訳ございませんでした……というか、このまま私だけお仕置きを頂けないんじゃないかと思ってちょっとショックを受けていたところでした、して貰えるようで良かったです」


「何だこの雌豚、そんなにこの尻を引っ叩かれたいのか?」


「それはもうっ、私は故郷で、村一番のドM雌豚娘としてこの団体に突き出されて、それのお陰で他のドM認定を受けた子が皆助かったという経緯を持っていますから」


「単なる生贄じゃねぇか、やべぇなその村も……とまぁ、とにかくお仕置きを受けろっ!」


「ひぃぃぃっ! 気持ち良いぃぃぃっ!」



 どうやらホンモノのドMであったらしい『印』を持つ収容者である最初の仲間……まぁ、ここにはこのクラスのドMがゴロゴロしているというのが現状なのだが。


 で、とにかく仲間への引き入れはこれで成功したということで、尻を全て並べても十分に真っ赤になったことを、平等に痛い目を見たことを確認してから、夜も遅いのでということで牢屋に戻す。


 その際、明日からはどうにかしてこの『印』を持つ神界人間、尻に記載された『中』の『5番』の子も、あの部屋での作業に従事させられるように取り計らっておくとミラに伝え、それでその火の活動を終えた。


 神々のフロアに戻り、自分の部屋……というわけではないのだが、少なくとも当初潜入組の全員が収容されている部屋へと戻ると、既に全員が眠りこけているようだ。


 俺達の世界の女神がオネショなどしていなくて、布団が清潔であるということを確認した後、少し待って本当に周囲の誰もが寝静まり、俺とは違うハゲも存在していないことを確定させた後に布団へと潜り込む。


 次に気が付いたらもう朝となり、今日は看破の女神に揺すられて起こされたのであるが、そこにはもう、金髪天使の姿もあった。


 そういえばこれからはこの金髪天使だけでなく、事情を知らない、つまり普通に敵である銀髪天使が勝手にここへやって来ることも考えられるのだ。


 その際にもし俺が布団に入って寝ていたらと考えると、それだけでもうかなりヤバいことになってしまうのは明らかである。


 つまりここからはさらに気を使って生活しなくてはならないということなのか……やはりとっととこの施設を崩壊に追い込むべきなのであろう……

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