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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1245 コンタクトして

「……行きましたね……ふぅっ、本当にやれやれな1日でした、まさかあの子にここまで絡まれてしまうとは思いもしませんでしたよ」


「アイツ、いつもあんな感じなのか……友達としてなら楽しそうだが、それ以外となるとちょっとな……ところでロボテック女神、お前ちょっと良いか?」


「……あっ、はい何でしょう? 何でしょう何でしょう……どうしましたか?」


「疲れすぎてバグってんじゃねぇかもう、まぁ今日のあの感じじゃ仕方ないか……でさ、この間まだ独房の壁で分断されていた頃に使っていたあの筆談出来る装置なんだが、どうした?」


「あぁ、アレならもう用済みと思って処分しましたが、3秒ほどあれば素材の生成から大規模な生産ラインの構築まですぐに終わると思いますよ、この空間にある物質だけで」


「そうか、まぁ大量生産は要らんからそこそこの数だけ作ってくれ」


「わかりました、カラーはどうしますか? ブラックとかホワイトとか、ピンクなんかも選ぶことが出来ますねここにある物質なら」


「う~む、闇に紛れて使うことが出来るブラックも捨て難いが……スケルトンとかは大丈夫なのか? あの4人にはコッソリ使わせたいからな、出来る限り目立たない方向で」


「それも可能ですよ、では試作としてこちらをどうぞ、注文通りスケルトンの聖なる筆談セットです」


「……いつの間に作っていたんだよ、○○秒で提供しないと無料みたいなキャンペーンでもやってんのか?」



 非常に素早い仕事をしてくれたロボテック女神、スケルトンなので基本的には見えない……いや、『馬鹿には見えないアイテム』とかそういうのではなくて、本当に透き通った、だがそこには存在している何かを手渡された。


 ご丁寧に付属しているペンのようなものもスケルトンで作ってくれたことだから、あとはこの筆談セットを神界人間エリアに収監されてしまった仲間達に渡して、連絡手段を確保していきたいと思う。


 だがそれを成功させるのは非常にハードルが高く、あの鬱陶しいが排除するのも難しい銀髪天使の目を盗んで、使用方法の説明などもしながらこれを手渡さなくてはならないのだ。


 というか先程、俺が銀髪天使を昏倒させようとした際に金髪天使や先輩天使が止めに入ったのはどうしてであったのか。


 少なくともここへ4人を連れて来たばかりのタイミングで、施設の外で同じことをやった際には、同行していた金髪天使はそれに協力したのであるが……まぁ、今はその金髪天使が居ないから、先輩天使に聞いてみることとしよう。


 すぐにベッドの隅に座っていた金髪天使を呼んで、先程のことはどういうことであったのかということを聞き出すと……どうやらこのマゾ狩り収監施設の監視体制に関連する懸念があったらしい……



「外でのことならともかく、施設の中、しかもあのような重要な場所ともなるとちょっとアレなんですよね」


「監視のためにずっとどこかで見張られている可能性が……ってことはないよな? だとしたらもう俺達の正体なんぞとっくにバレているぐらいのムーブはしているわけだし」


「えぇ、『見られている』ということはないと思うんですが、以前施設内で頭の悪い天使が死亡事故を起こしまして、そのときに襲撃があったと、それで天使が死んだものだと勘違いした警備班が凄まじい勢いで駆け付けまして」


「なるほどな、天使が、というか天使じゃないにしても構成員がダメージを受けると、そこに敵が現れて何かしたのかも、みたいな発想ですっ飛んでくる奴等が居るわけだな」


「しかしそれもヘンな話しですね、少し引っ掛かるというか、どうしてそこだけそんなに厳重な体制になっているのかという点ですが……」


「何だよ女神? 施設の中で重要な場所なんだから、そのぐらいしていてもおかしくはないだろうよ、むしろ他の場所がザルすぎるんだ、胡坐かきすぎだぞ結界の上で」


「まぁ、そう考えることも出来るのですが、それにしても……天使よ、そのような感じで『何かあればすぐに警備班が駆けつけて来る』というのはこの施設の建物内全部に該当することですか?」


「そうではないと思います、来る場所と来ない場所があって、例えばこの場所と神界人間が押し込まれているフロアなら、ハゲのおっさんクリーチャーが1体、不当に始末されただけでも大騒ぎですね」


「ん? ちょっと待て、神専用フロアと神界人間のフロア……天使が閉じ込められているフロアは該当しないってのか?」


「えぇ、これも少し前のことですが、収容されたばかりの天使がですね、今思えばあまりにもキモくて耐え難かったのでしょう、クリーチャーを1体暗殺……というか背後から襲って処理したことがありまして、それの発覚にはかなり時間が掛かってですね」


「すぐには警備班が来なかったってことだな? どのぐらい時間を要したんだろう、1時間とかか?」


「いいえ、1週間以上経過して、フロアの隅でその処理されたクリーチャーが隠されるようにして腐り果てているのが発見されまして、それでも当初は単なるエラーで、役目を終えて本来は目立つ場所で自滅するはずのものが、どういうわけかそんな場所で、みたいな感じでしたね」


「なるほどな、事件であることが発覚するまでにはさらに時間を要して……まぁ、これも謎といえば謎だな、神と天使のフロアをそうやって厳重にするならともかく、どうして天使の所だけ飛ばしたのか……まぁ良いや、この件に関してはもし何かあったら考えていくこととしよう」


「それでご主人様、この後はどうするんですか? そのスケルトンの何かを持って皆の所へ……というのは後にした方が良さそうですね」


「うむ、動くのは夜中にしようと思っている、どうせクリーチャーはねないことになっているんだし、俺がウロウロしていてもおかしいとは思われないだろうよ」


「では、それまでは普通にということで……シャワーでも浴びて来ます」



 そういって立ち上がったルビアを見送ったところで、夕食の時間になったらしく天使の気配がフロア内に感じ取れた。


 俺は渋々立ち上がり、あたかも看破の女神に対して何らかの罰を与えていたかのように、小脇に抱えて無表情のまま尻を引っ叩く動作をしてクリーチャー感を出しておく。


 まぁ、別にこのようなことをしなくても良かったのだが、食事の時間の度にただ突っ立っているだけのクリーチャーというのもかなり不自然なのだ。


 他の独房のような部屋からは、絶えず収容されている女神らしい悲鳴と、ハゲでしかもおっさんであるクリーチャーを排除するようにと、誰かに対して懇願している声が聞こえているのだから、俺もそのぐらい『真面目に働く』ということをしなくてはならない。


 ルビアがシャワーから戻るのを待って開始された俺を除く全員での食事からパンだけを貰い受け、次は誰を引っ叩く仕事をしようかと、並んで座る神々やその他の尻を眺めておいた……



「さてと、今日のお食事はこのぐらいで……歯を磨いて寝ることにします」


「この方は本当にマイペースなのですね、今自分達の作戦が佳境に……とかそういうことを考えて寝られなくなったりとかはしないんでしょうか?」


「ルビアは特別なんだよ、作戦が佳境どころかガチガチの戦闘中であっても普通に寝るし、そもそもいまそういう重要な作戦が行われている最中であるということさえも認識しているかどうか謎だ」


「えぇ……まぁ、図太いのは良いことですが……というかいつの間にか戻って来てもう寝ていますね……」


「ZZZZZZZZZZ……」



 誰もがルビアぐらい図太くありたいのだが、さすがにこれはやりすぎであって、思わぬところで足元を掬われかねないような気がする。


 そのような話を他の神々としたり、やはり『仕事している感』を出すために、リクエストに応じて『お仕置き』をしたりなどしているうちに、どうやら消灯時間になったようだ。


 すぐに布団に潜り込んだ部屋の連中とは違い、俺はベッドの脇に立ったまま、ジッと時間が経過し、他が完全に動きを止め、そして正体を見られたくないような存在が消え去るのを待つ。


 最後までウロウロしていたおっさんがどこかへ行ってしまい、そして他でビシバシと鞭打ちなどしていた音も止まって静かになる。


 そのタイミングからさらに少し様子を見て、その静寂がいよいよ確定した、夜中と呼べる時間に突入したところまで確認して、俺は動き出すフェーズに移行した……



「おい女神、起きてんのかまだ? とりあえず行って来るから、後のことはよろしく頼むぞ」


「行くというのですか勇者よ、気を付けて、ですが安心して行って下さい、ゲームオーバーになたtら勝手にここに戻って来て、死んでしまうとは何とやらの類の説教を受けることが出来るようにしておきましたので、ここからもう一度チャレンジすることが可能です」


「いや死なねぇんだがそう簡単には……てかせっかくそういうの仕掛けてくれたのは良いがな、そもそもゲームオーバーになった時点で作戦は破綻だぞ、ここから全員で逃げ切るための策を新しく考えなくちゃならない段階だそれは」


「……確かにそうでしたね、では勇者よ、絶対にゲームオーバーにはならないよう、頑張って来て下さい」


「頑張っても何も、このスケルトンの筆談装置を仲間に渡すだけ……ってのがまぁ、難しそうなんだがな……」



 出発前に女神と余計な話をしてしまったせいで、せっかくの緊張感が薄れて台無しになってしまったようにも思えるが、まぁ、自然体で行くことが出来ると好意的に捉えておくこととしよう。


 で、4人分プラス俺の分の装置がちゃんと手許にあることを、スケルトンだからといって見えずに脱落していないということを入念に再確認しつつ、俺は部屋を出て廊下を進む。


 神々専用のフロアを出て、すぐにすれ違った天使は……どうやら安定の馬鹿のようだな、俺に気付くどころか下を向いてエッチな本をガン見しているため、危うくぶつかりそうになってしまった


 その件で、完全に自分が悪いというのにこちらを睨み、殺すだの何だのと吐き散らしながら去って行く馬鹿を見て、おそらくこの後もこのような反応の奴ばかりなのだと確信する。


 同じビジュアルのハゲとすれ違った際にも特に何もなかったことだし、こうやってただ歩いているだけであれば特に問題はなさそうだ。


 問題が生じるとしたらこの先、今は神々のフロアを出て、天使のフロアを通過している最中なのだが、そこから更に進んで神界人間のフロアに到達した先。


 最初に案内された際に確認していた大部屋の牢屋に、他の神界人間の被害者と一緒に詰め込まれた仲間達を、果たしてどうやってピンポイントで呼び出すべきなのかという点においてである。


 俺が近付いてきたということは、仲間だけに感じ取れるオーラの類でわかるとは思うのだが、そこからどうやって『誰かを連れ出す』などの行動を取るべきなのか……


 ……と、ひとmず神界人間のエリアにはスッと入ることが出来たし、相変わらずすれ違う俺と同じおっさんの顔をしたバケモノも完全にスルー。


 問題なのは天使であろうと、特にあの銀髪天使がここに居た場合には困ったことになるであろうと予想していたのだが……実際にウロウロしていたその銀髪天使は、どうやら俺のことを『単なるハゲのおっさんクリーチャーである』としか認識していないらしい。


 普通に収容されている、牢屋の中に居る神界人間と話をしつつ、通り掛った俺のことをチラッと一瞥、そしてチッと舌打ちなどして、すれ違いざまに気持ち悪いとのお言葉を投げ掛けてきたにすぎなかった。


 まぁ、見目麗しい銀髪天使にそのようなことを言われるはなかなかショックなことであり、これで喜ぶのはそれこそドM豚野郎ぐらいのものだとは思うのだが、もちろんその言葉が本来の俺に掛けられているわけではないのだ。


 銀髪天使はまるで区別が付かない、どれも同じにしか見えないハゲのおっさんクリーチャーが気持ち悪いと思ったのであって、伝説の大勇者様であるこの俺様が気持ち悪いと思ったわけではないのである。


 それゆえ俺自身はディスられていないと安心して、しかも正体バレの可能性がかなり低下している、俺が今日行動を共にしていたおっさんであるということさえ認識出来ていない敵の頭の悪さにももちろん安心して、ダブルの安心を胸にその隣を通過して良いということなのだ、なのだが……



「……あっ、ちょっと待ちなさいそこの気持ち悪いハゲ、あんたよあんたっ! こっち来なさい愚図がっ!」


「・・・・・・・・・・」


「あの、天使様、そのように気持ちの悪いゴミを呼び立てて、一体私をどのような目に遭わせようというのですか?」


「黙りなさい下等生物の雌豚が、あんたはこの薄汚いハゲに全身をベタベタ触られてしまうのよ、本当はペロペロさせたかったところだけど、もう一度お風呂に入れるのは面倒だからベタベタ触らせるだけで許してあげるわ」


「そんなっ! そのようなゴミに触られただけで入浴が、いえ徹底的な消毒が必要なのですっ! どうかお許し願います、どうかっ!」


「フンッ、そんなこと言ってホントは喜んでいる癖に、私にはお見通しなのよ、あなた達ドM雌豚が何を考えているかなんてねっ」


「あの、決してそのようなことはなく、私達は誰もがそのハゲを心から嫌っておりまして……どうしてそのことにお気付き頂けないのでしょうか? 皆何度も、どのような天使様にも神様にもそのことをお伝えしているのですが……」


「はぁ? そんなことがあるわけないでしょう、あなた達はこの薄汚くて何か臭いハゲに責められて喜んでいるの、だって団体の研修で習ったんだもの、そうに決まっているわ、マゾ狩り団体の教えは絶対なのっ!」


「そんなメチャクチャな……」


「良いからハゲの餌食になりなさいっ! ほら早くやれこの愚図! 処分するわよこのクソハゲ!」


「・・・・・・・・・・」


「ひぃぃぃっ! どうかっ、あっ、そんなっ、こんな価値のないハゲに触れられるなんて最悪なっ!」


「全く、本当に不快で気持ちの悪いハゲね、どうしてこんなのに責められて喜んでいるのかしらここの収容者は? 一度しっかり話を聞いてみたいものね」


「ですからハゲなんて嫌いだって……ひぇぇぇっ!」



 俺のスムーズな移動の邪魔に入った銀髪天使、それに命じられてそこそこ可愛らしい神界人間の収容者を(仕方なく)ベタベタ触っているのであるが、これは役得というものなのであろうか。


 もちろんホンモノのハゲには一切の感情などなく、単に命じられたことを極端に気持ち悪い動きで遂行するのみの存在なのであろうが、生憎俺はそれではない。


 この神界人間のお姉さんにも申し訳ないと思うし、このお姉さんのおっぱいはセラと同程度に雑魚だなと……なぜか胸元に謎の印が付いているではないか。


 どう考えても最初からあった痣などではない、後付けのしかも比較的新しい印のようなもの。

 それはおっぱいとおっぱいの間に挟まれるようにして、どちらかというと右の膨らみ側に存在しているのだ。


 だがお姉さんはイマイチなおっぱいであるため、その印のようなものがどうこうなることなく、少し衣服がズレればガン見えになってしまうのであった。


 ということで少し、気になったそれを確認しつつ引き続きベタベタと……どうやら『小1番』という内容の文字が書かれているらしいな。


 おっぱいが『小』なのは凄く良くわかるのでそのことなのであろうが、『1番』というのは何のことなのであろう? もしかするとここに収容されている中で一番おっぱいが小さいとかそういう意味なのか?


 いや、だとしたら本日その記録は更新され、セラという新たな優勝者が出現しているわけだから、この時間になってもこのお姉さんが『1番』であるのはおかしなことだ。


 となるとやはり、何か違う理由でこの印のようなものが入っているキャラがこの神界人間のフロアに……もしかするとあの祭壇に関連していることかも知れないな。


 ひとまずこのお姉さんの居場所を覚えようと、辺りを見渡しつつ『作業』を続けていたところ、かわいそうなお姉さんはもう、抵抗する気力を失ってしまったようでダランとなる。


 それを見た銀髪天使は『作業の終了』を宣言し、俺に対してそのおねえさんをベッドに上げておくよう命じ、そのままどこかへ行ってしまった。


 俺も本来の動きに戻らなくてはならないと、恨みの篭った目線だけをこちらに向けてきているお姉さんの場所からサササッと離れ、今日案内された仲間達の元を目指す。


 すぐに辿り着いたその大部屋の前では、やはり俺が今夜やって来るということを察知していたのであろう、多くの神界人間に紛れて、4人が牢屋の格子の手前付近を陣取っていた……



「あ、やっと来たわね勇者様」


「シッ、静かにしないと、誰かに聞かれたら面倒だからな、それで、こっちの様子はどうだ?」


「時々勇者様みたいなハゲが来たり、天使が来たりして誰か連れて行かれる感じなの、その後向こうの個室? みたいな所から悲鳴が聞こえたりして」


「そうか、つまりは……誰が来て誰が残る?」


「主殿、私とセラ殿で主殿に『連れて行かれる』ようにして、ミラ殿とマリエル殿はここに残って他の囚人と話をしておくことに決まっている」


「わかった、じゃあえっと……鍵は俺が持っているのでどこも開くのか、便利だなこの鍵は……」


「では2人共、それからハゲの勇者様も気を付けて、私とミラちゃんでもうしばらくここの方々と親睦を深めておきますので」


「あぁ、俺じゃなくてホンモノのハゲに注意するんだぞ、あんなのに触られたらもう洗ったぐらいじゃ菌が死滅しないだろうからな」



 ということでセラとジェシカを連れ出し、確かに収容者らしき神界人間の悲鳴がこだましている個室が並ぶ場所へ移動することに成功した。


 ここにはいってしまいさえすれば、もう悪い話でも何でもし放題ということだ……

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