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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1244 離れないずっと

「なるほど、つまりその攫われちゃったカギになる子と、他にも候補者がこの施設の中には居て……それを探さなくちゃならないってことなのね」


「探すだけじゃなくて味方に引き入れる必要もあります、そして全員、とまではいかないかも知れませんが、少なくとも大多数の『カギとなる者』を集めておいて、その中から現在使用されている者を抽出します」


「ふむふむ、それがどのぐらいの人数になるのか、見つけ出すためのヒントはあるのかについても同時に探っていかなくてはならないですね、どうしましょう?」


「その調査関係に関しては自由に動くことが出来る私がやりたいと思う……のですが……」


「問題はこの付き纏って来る銀髪天使ってことだよな、おっと、そろそろ目を覚ましそうな感じだぞ」


「本当ですね、じゃあ今まであったことはなかったことに、この天使の方は何やかんやあって気絶してしまったということで」



 何度か覚醒しかけて、その度にミラが一撃を、もちろん深刻なダメージが出ないような攻撃を加えて昏倒させていた銀髪天使。


 おそらくそのせいでアホになってしまったりハしていないはずであるが、可能であれば少しは、金髪天使に付き纏うキッカケとなった思いを忘却していて欲しい。


 だがきっとこの天使がそれを忘れて帰ってしまうようなことはないであろうし、むしろこの間に何が起こっていたのかということを追及されてしまわないかが心配でもある。


 俺がウ○コをしに行って、それで仕事をサボっていた頭の悪いゴミ天使に見つかりそうになって、さらにそこから情報を得てきたということを知られてはならないし、もし万が一にでも知られれば大事なのだ。


 計画が完全に破綻してしまうことの原因にもなりかねないその事態を絶対に避けつつ、上手く誤魔化しながらこちらの思うように動いて貰わなくてはならないということなのだが、果たして……



「……ん? うんっ? あら? 私はどうしていたんでしょうか? 何だか強い衝撃を受けた後に記憶が……全員居ますよね? そこの薄汚いハゲが捕まえて来た神界人間が、反乱を起こすなど下というわけではありませんよね?」


「大丈夫ですか? あなた、向こうの木から凄い勢いで飛んで来た図太い枝に後頭部をヒットされて、それで意識を失ってしまったためここに寝かせて待機していたのですよ」


「あらそうでしたか、そんな天使を昏倒させるような図太くて硬い枝が、どうして風もないこの結界の中ですっ飛んで来たんでしょうね?」


「そそそっ、そういうことも稀にあるのですよ、ほら、枝も普通の枝じゃなくて伝説と言われるオリハルコンの枝でしたから、魔力とかも凄い乗っていてそのせいで……」


「なるほど、オリハルコンの枝でしたらそのようなことがあってもおかしくはありませんね、それで、憎むべきその伝説の木の枝はどちらへ?」


「えぇ、同僚をこんな目に遭わせた復讐として、私がキッチリ消滅するまで叩きのめしておきましたよ、だからもう跡形もなくこの神界から消えてなくなったのです」


「それはもったいないことを、伝説とも言われるオリハルコンの木の枝を消滅させてしまうとは……まぁ、それはたいしたことではありませんね、価値があると言っても、1g当たりでせいぜい神界人間の大都市の年間予算程度のものですから、ゴミと言えばゴミですね」


「・・・・・・・・・・」



 思いの外凄まじい価値のモノを、しかもそれを消滅させてしまったことまででっち上げ、非常に苦しいと言わざるを得ない言い訳をしている金髪天使。


 もっとも、今回の件は俺がハゲのおっさんクリーチャーであるにも拘らず、どうしてもウ○コがしたかったことに起因しているうえ、俺自身が何かを発言するわけにはいかないので文句も言えない。


 だがもしこの苦しい言い訳のせいで後からおかしなことになったとしても、俺は一切関与しないという態度で臨むことが出来るというのもまた事実である。


 言い訳した張本人である金髪天使に対して自分でどうにかしろと、命を削ってでも事態を収拾させよと命じることが出来るのだ。


 まぁ、そのようなことにもならず、そしてこの銀髪天使もそのうちに飽きて、どこかへ行ってくれるという結末を期待しているのだが……さすがにそこまで上手くはいかないであろうな。


 特に後遺症もないようで、また金髪天使の仕事を手伝いたいという純粋な気持ちで歩き出す銀髪天使。

 俺達がむしろそのタスクを補助しているのではないかと、そう錯覚してしまうような動きの良さである。


 というか、もしこの場で俺がクリーチャーのフリを、ハゲのおっさんを装うことをしていなかったとしても、この感じの者に対して『迷惑だ』ということをビシッと告げることは出来なかったかも知れない……



「さてさて、ようやく施設に辿り着きましたよっ、ここがあなた達がこれから暮らす施設ですから、私達の言うことをキチンと聞いて、その全身から発散される『M』の力でこの組織の発展と、それとこれからウチを公認して提携していくことになる神界の上層部の役に立って下さい、いや役に立ちなさい命令です……っと、ほら入った入った! グズグズしているとそこのハゲに鞭を入れさせるわよっ!」


『へへーっ、畏まりましたーっ』


「……何だかあまり絶望感がないような気が……まぁ、捕まってしまって悔しいのと、これからどんな責めを受けられるのかと期待しているのとで相殺し合ってむしろ無になっているのだと推測します、ほらとっとと歩いた歩いたっ」


「あの銀髪天使よ、一応この4人の神界人間は私の担当であって、そこのハゲが担当している神々と先輩のお世話と、それから作業場の清掃などをさせたいのですが……」


「あっ、そうでしたねっ、でもまぁ、夜はどうせここに押し込むわけだし、チャチャッと紹介だけしておいて、それからそっちも案内、というか牽き回せば良いんじゃないかしら? もちろんこうやって鞭で打ちながらっ!」


「ひゃいんっ!」


「おっと、ちょっと強く叩きすぎましたね、神々や天使ならともかく、神界人間にこれじゃ体が壊れて……いないんですけど? どうなっているのあなた? ホントに神界人間? この中だと一番痩せていて弱そうなのに、どうしてそんなにタフなのかしら?」


「いててて……えっと、その……あの、もっとお仕置きして下さいませっ!」


「……何だかわからないけどその意気や良しっ! この雌豚がぁぁぁっ! それぇぇぇっ!」


「あひっ、あひぃぃぃっ! もっとお願いしますっ、もっとぉぉぉっ!」



 危うくこちらのキャラの本来の強さがバレ、それをもって何らかの疑いを掛けられてしまうところであったのだが、セラのファインプレー? なのか欲望に忠実であっただけなのかはわからないが、とにかく謎のおねだりムーブのお陰で助かったようだ。


 というかこの銀髪天使、いくら見目麗しいとはいえ所詮はマゾ狩り団体の構成員ということか。

 意気揚々とセラに対して鞭を振り下ろす、そしてつい今起こった不自然な事象を完全に忘れ去っているその姿は馬鹿そのもの。


 もちろんこの組織の構成員の中では比較的賢く、今はゴミのような上司のせいで抑圧されているだけであって、本来はもっと上にあがるような人間、ではなく天使なのであろう……これがだ。


 他の天使や神々に関しては、先程馬鹿すぎて逆に俺を追い詰める結果となったゴミ共と同程度、最悪身分だけ高くて賢さはそれ以下ということも考えられる、そんな連中の集まりがこのマゾ狩り団体なのであろう……



「はいはいこっちこっち、この雑居房があなた達の部屋、今は皆作業中で、外で色々やらされながらハゲに鞭打ちされている最中だから居ないけど、夜になったらそのドMの感性を刺激され尽くして満足した雌豚共が帰って来るから仲良くっと、何か質問は……はいそこの羨ましい巨乳、何かしら?」


「えぇ、その……今日からはこの部屋で就寝することになると思うのですが、あの……先程から見かけるようなハゲのクリーチャーが、この中まで入って来るようなことはさすがに……」


「何言ってんのあるに決まってんでしょそのぐらい、というかそれが嬉しいんでしょあなた達? 気持ち悪くて臭くて、どうしてそんなビジュアルのまま存在しているのかさえわからない次元のゴミに責められるのが嬉しくてドMなんかやってんでしょ?」


「いえ、さすがにそこまではちょっと……ハゲのおっさんなど論外でして……」


「はいはい、そうやっておかしな態度を取って、この場で鞭を入れて貰おうとしているのね、すぐに作業に駆り出されるよりもここでお仕置きされていた方が嬉しいから……でもそれはほら、あなた達が責めて欲しいと思っている気持ち悪いハゲにでも言いなさい、後ろに1匹居るけど……これもなかなか気持ち悪いですね、見れば見るほどに不快というか……」


「・・・・・・・・・・」


「何か喋りなさいよこの愚図がっ! キモッ! 顔とかだけじゃなくて全身余すことなくキモッ! あーあ、おっさんって最低だわ、私達の上司のおっさん天使も全部死にませんかね早く?」


「銀髪天使よ、あまり大きな声でそのようなことを言うのはちょっと……それにほら、この4人の神界人間も待っていますし、早く鞭で打たれながら作業をさせられたいと思っているでしょうし……行きましょ?」


「それもそうですね、ということでお部屋の内覧会はお終いです、これからはキツい作業をタップリと科してあげるのでそのつもりで……返事!」


『へへーっ、どうか厳しくお願い致します』



 というkとで移動するらしいが、ここから先は俺も知っている、あの増幅装置があるルームでの『研修』ということになるようだ。


 相変わらず銀髪天使の方が前に出て牽引するような感じなのだが、ひとまずルビア達には会うことが出来そうだし、その後のことは連中も交えて話をしていこうと思う。


 徒歩で移動し、お馴染みの場所へ辿り着いたところで中へ入り、そこで作業しているロボテック女神とその他の仲間の姿が目に入ったときには少しホッとしてしまった……



 ※※※



「はいはいっ、あなた達にはここの清掃等をして貰いますっ、あ、少しでもサボるような素振りを見せたら……わかっているでしょうね?」


『へへーっ!』


「それから、神々や天使にはそれなりの食事が用意されるけど、神界人間のような下等生物にはアレだから、残飯みたいなゴミしか出ないから、もちろんここでの昼食もそうだからそのつもりで……と、そろそろその昼食が運ばれてくる時間ね」


『へへーっ!』


「今のには返事を求めていないっ! 勝手に喋った罰として鞭を受けなさいこの雌豚共!」


『ひぎぃぃぃぃっ!』



 などと適当なやり取り、というか銀髪天使の振るう鞭がカス過ぎて何も喰らっていない新たに潜入した仲間達のどうしようもない反応が続く中、ガラガラと音を立てる台車に乗った食事が運ばれて来た。


 そこで『休憩』という、割って入った金髪天使のひと言が入ったため、作業をしていた初期潜入組の仲間達も集まって来る。


 キラキラと輝くような豪華な食事は女神達のもの、それよりもワングレード下った食事は先輩天使と、それから監視員である金髪および銀髪天使のもの。


 更にグレードが下がっているとはいえ、そこそこのランクの弁当なのではないかと思えるものがセラ達4人のもので……というか、ここまで豪華な食事を収容者全員に提供している資金はどこから湧いて出てくるというのであろうか、それは本当に疑問である。


 で、いつものことながら、俺の分の食事は当たり前のように用意されていない、ただただ突っ立っているだけが要求されているのだ。


 普段であれば誰かからの提供を受けて俺も普通に、いや貰いものばかりの貧相な食事をするのだが……この銀髪天使が居る状況ではそれさえも叶わないではないか。


 こんな所で腹の音でも聞かせてしまえば、どうして食事などしないはずのハゲがどうのこうのと疑われてしまうのは明らかなこと、


 必死で食事の方を見ないよう我慢しながら、再会した仲間達、初期潜入組の顔を見て見ると……どうやら銀髪天使の振る舞いにはほとほと困り果てている様子。


 これは本格的にどうにかしないと、この空気の読めない天使を極力傷付けないように『処理』しないとならないようだな……しかしどうやって……



「ほらっ、早く食べて下さい神様方、そして早く、この美しくも素晴らしいマゾ狩り団体のための作業を再開して下さい、それがここで面倒を見て貰っているドMな神様方の義務なのですから」


『・・・・・・・・・・』


「返事がないっ! ただの屍じゃないんですからっ! ちゃんと返事ぐらいはしましょうよ普通にっ!」


『は~い……』


「声が小さいっ! そんなことじゃこの先やっていけませんよっ! どうしてそんなにダメなんですかあなた方は? ちょっとおかしいですよっ!」


『・・・・・・・・・・』


「だからただの屍かっ!」



 少しぐらいはルビア達とコンタクトを取ることが出来るものだと思っていたのだが、どうやら現実はそんなに甘くないらしい。


 ずっと単独で何やらし続けている銀髪天使と、それについていくことが出来ずに呆然としている先行組と金髪天使。


 そして後発組の潜入チームは何の指示も出されることなく、単にその場でボーっとしているしかないという地獄のような状態だ。


 本来であったら、ここで金髪天使から詳しい話があったりして、それから装置に見つかった『祭壇』の適合者に関する情報というか噂話も共有して……というようなことをしていたはずなのである。


 それがこの銀髪天使がメチャクチャに、もしかしたらわざと俺達を困らせようとしているのではないかとおもうほどの最悪ムーブで台無しにしてくれた。


 少なくとも現時点でこの女の排除を考えているのは俺だけではない、というよりもむしろこの場の全員になったことであろう。


 だがその他のメンバーも俺と同じく、廃除するにしても安全で確実で、俺達の作戦がバレてしまうことなく、かつこの銀髪天使を傷付けることのない、ベストすぎる方法を発見することが出来ずにこのような感じになってしまっているのだ。


 ここはひとつ、先程のように昏倒させて、目を覚まそうとした際にはもう一撃加えて……というようなことをしていったらどうな。


 最もこの女から警戒されていない俺がやれば、おそらく簡単に背後を取って怪我をしない一撃を加えることぐらいは出来るはず。


 だがそれをしようと動き出したところで、なぜか金髪天使と先輩天使が、ほぼほぼ同時に俺にストップを掛けるようなアクションをしてきた……何かやってはいけない理由があるに違いない……



「ほらほらっ! そこまだ汚いですよっ、ちゃんと掃除して……おっぱいが引っ掛かってまともに掃除できないだぁ? ちょっとあなたこっち来て……この雌豚がぁぁぁっ!」


「ひぎぃぃぃっ!」


「それからそっちのあなた! 掃除の仕方もわからないとはどういうことですかっ? どうしてまだ上から埃が落ちて来るというのに、そんな下の方に這い蹲って床ばっかり磨いているんですか? え? 元々王女だから掃除なんてしたことないっ? この雌豚がぁぁぁっ!」


「あっひぃぃぃっ!」


「全くどうしようもない連中ですね神界人間などという下等生物は……いえ、しかしヘンですね、神界人間の中で王女……こんな王族は居ましたかね? いや居なかったような……」


「あっ、ごめんあそばせ、この子ちょっと知り合いで一緒にマゾ狩りに遭っちゃったんだけど、自分のことを王女だと思っている残念な奴隷なんですよ、だから気にしないで下さいな」


「そんな、奴隷の分際で……神界人間で奴隷? そんな身分がこの神界には……」


「あっ、奴隷ってのはあくまでプレイ上の話ですっ、この2人やっぱり頭が悪くて、誤解させてしまってごめんなさいっ!」


「何だそういうことだったのですね……私を混乱させた罪を償いなさいこの雌豚共が! そっちの巨乳もちょっと来て、ここにお尻でも並べなさいっ! それぞれ100ずつ鞭で打ってあげるからっ!」


『へへーっ! あり難き幸せっ!』


「では覚悟なさいっ! このっ! あなたからよっ! 偽王族の雌豚がぁぁぁっ!」


「ひぎぃぃぃっ! とってもありがとうございますぅぅぅっ!」



 などという馬鹿をやりながらも、結局丸1日その場を離れることがなかった、もちろんずっとテンションを保ったまま暴れ続けていた銀髪天使。


 そろそろ本日の業務が終了する時刻となったため、それぞれがそれぞれの部屋へと戻ることとなったのだが……俺と金髪天使は神々のフロアへ、そしてせっかく連れて来た新しい潜入チームには、なんと銀髪天使が単独で付くと主張し出したのだ。


 つまりここからしばらく、本当に短い時間にはなるのだが、情報を共有したり何だりといったことをするチャンスだと、誰もがそう捉えていた移動の時間までもが、まさかのアホ天使によって潰されてしまったということ。


 このままだと何をしたら良いのかさえもあまりわかっていない状態の4人を、ホンモノの恐怖であるハゲが侵入してくるような牢屋に置き去りにすることになってしまう。


 もちろん自分のみに危険が及ばないように、特に賢さが比較的高いジェシカを中心に回避行動は取ってくれるはずだが……それでもなかなかに不安と言えば不安であって、可能であれば俺も夜のうちに何度かは様子を見ておきたいところである。


 しかし、この銀髪天使のことだからもしかすると夜通しハイテンションでそこに居て、ずっと動きもせずに何やらやって……ということがないとも限らない。


 もしそうだとしたら、いやそうだとしても、遠巻きに仲間の無事を確認することぐらいはしておきたいし、可能であればコンタクトを取るための方法を用意して……間接的にでも良ければ、そういえばロボテック女神作の装置が……それを借りられるか後で打診してみよう……

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