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出遅れた勇者は聖剣を貰えなかったけれど異世界を満喫する  作者: 魔王軍幹部補佐
第十九章 島国
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1242 離脱して

「へっへっへ、なかなかの上玉だったな、神界人間などという下等生物だが、俺達天使と比べても遜色ないぐらいのビジュアルだぜ」


「おいおいお前、1匹ぐらい貰っちまってもバレねぇとか思ってんだったら大間違いだぜ、一昨日もほら、どこかの部署の偉い天使が除名されて追放されていただろう? そうなっちまうぞ俺達も」


「おっとそうだったそうだった……で、どうやら結界の扉が開いたようだ、ようこそ二度と出られねぇ夢のドMテーマパークへ、おいそこの腐ったハゲ! とっとと連れて行けこのハゲがっ! ブチ殺されてぇのかオラァァァッ!」


「・・・・・・・・・・」


「チッ、相変わらず気持ち悪いなこいつ等、早く絶滅して欲しいぜマジでよ」


「あぁ、このゴミのようなクリーチャーがあるせいで、俺達がこんな所で見張りをすることになっているんだからな……俺だって中へ入って女の天使を『管理』したいぜ」


「・・・・・・・・・・」


『黙ってねぇで早く行けやこのボケェェェッ!』



 いちいち怒鳴り散らかしてくる今回の見張り天使、やはり使えなさそうな野朗のビジュアルであって、ハゲのおっさんクリーチャーが居る居ないに拘らず、お前達はこのあまり意味がないように思える場所の見張りをすることになるであろうと、そう言ってやりたかった。


 しかし今の俺は俺ではないことから、最近ようやく身に着いてきたスルースキル……でもないか、とにかく反応せず、ブチ殺しもせずに従うムーブで結界の中へと入る。


 本来はマゾ狩り団体の関係者以外が一度入ってしまえば抜け出すことなど出来ない、そんな効果を持ち合わせている結界の中なのだが、そこにあえて侵入したのが俺達勇者パーティーの選抜メンバーなのだ。


 それゆえ余裕の表情で歩くセラとミラ、マリエルとジェシカであるが、ここは少しばかり不安そうにして貰いたいと、そうしないと怪しまれる原因になるのではないかとも思う。


 もっとも、かなりの数が収容されているらしい神界人間の中に混じってしまえば、もう目視だけでこの4人を発見することなど容易ではなくなるはず。


 もちろん俺は力の反応を辿って位置を特定し、まっすぐそこへ向かうことが出来るので問題ないが、通常の神界人間や天使程度の連中に、特殊な訓練を積んだこの大勇者様の真似など出来ようはずもない。


 それは生物でさえないハゲのおっさんクリーチャーにも準用される話であって、これはむしろ、俺がいつも多くの神界人間収容者の中から庫の4人を発見してまっすぐ……というのが非常におかしなことであると、そんなことをも意味しているのではないか。


 となるとやはり、4人は他の収容者とは一緒にせず、あくまで金髪天使の命令があったとして他の場所へ、というかもうあの装置がある部屋の専属清掃員などとして動かさざるを得ないであろうな。


 まぁ、その辺りは遣りながら調整していくべきところか、今はともかくこの4人を連れて、施設の中で待っている金髪天使とコンタクトを取るべきときだ……



「……他者の気配を感じなくなったな、少しは喋っても良いであろうか?」


「あぁ、ここの辺りなら良いんじゃないか? ご覧の通り、奴等は強固な結界に守られているせいで警備の方は適当、クソのようにいい加減になっているからな」


「なるほどね、でも勇者様、さっきは良く我慢出来たわね、てっきりあの天使をそのまま殺して、みたいなことになるかと思ったわよ」


「私も、あぁこれは面倒なことに……などと一瞬考えてしまいましたが、どうやら勇者様も耐えるということを覚え始めているようですね」


「まぁな、後で確実にブチ殺す、最大限の苦痛と恐怖と絶望と、生まれてきたことを後悔するほどの痛みを与えながら殺す、ただそれだけだ」


「結局殺すことには変わらないんですね、もちろん許すことも出来ないでしょうけど、それで、これからどこへ向かうんですか?」


「このまま歩いてくれ、そうすれば俺の帰還に気付いた金髪天使が向こうから出迎えに……動いたようだな、こっちに向かっている気配がそうだ……何か知らん奴も一緒のようだがな」


「もう1体の天使……の力の反応ですかね? 知らない天使ってことですか勇者様が?」


「あぁ知らん、知らんが……野朗の薄汚い、同じ空気を吸うことさえもイヤだと思うようなカスではないらしいな」


「でも念のため静かにしておいた方が良さそうだぞ、私達は捕まってしまって非常に残念であるというような態度を、主殿はその、お似合いのハゲをキッチリ演じておくんだ」


「ジェシカ、最後のドサクサで余計なひと言を追加するのはやめろ、後でお仕置きするのを忘れたらどうするつもりだ……っと、来るぞっ」



 確かにこちらの味方である金髪天使の気配があった、しかしそれと同時に、俺が知らない、まだ会ったことがない天使も俺達を出迎えるようなかたちで向かって来ているのだ。


 もしかすると俺達の計画がバレて、金髪天使は拘束されて、それを引き摺るようにして他の天使が……というわけではないようだな。


 歩いている感じを遠めで見るに、普通に同僚が、同じ仕事を一緒にするためにこちらへ向かっているように見えるのだ。


 一緒に居るのは白髪、というより銀髪の天使なのであるが、特にその2体が姉妹だとかそういう関係ではないように思える、本当にただ同じ組織に所属する天使というだけなのであろう。


 それが徐々に近付いて来て、良く見えるようになった金髪天使の表情は微妙なもの、意図していた通りにはいかなかったときのものである。


 喋ることは出来ないので推測するのだが、本来は金髪天使が単独で当たろうとしていた、帰還した俺から『戦利品』を受け取る業務に、なぜか仲間というか同僚というかが付いて来てしまったということなのであろう。


 もちろんそれを拒否することなど、やんわりと断ることも含めてしない方が良いということは、金髪天使もわかっているらしい。


 そんなことで後々何かあった際、そういえばあのときに不自然な動きを……というような具合で探偵のような奴に推理されてしまうのが恐ろしいのだ。


 で、近付く2体の天使のうち、スッと前に出た金髪天使が、ひとまず俺を、というか俺が連れて来た4人を、本当はそうではないのだが神界人間のドMマゾ狩り被害者として受け入れようとするのだが……



「はいはいおかえりなさい、この新しい収容者は私が預かりましょう、ちょうど人員が欲しかったのです」


「……あっ、ちょっと待って金髪天使ちゃん、この人間達……ホントに神界人間なのかしら? 何かちょっと違うような気がしなくもないんだけど、どうなのそこのハゲ! あんたもし何か不正していたとしたら承知しないからねっ!」


「・・・・・・・・・・」


「何か言いなさいよこのハゲ! この人間、どこでどうやって捕まえて来たの? 詳細を説明……する知能はなかったんだ、しょうがないわね」


「ま、まぁ、その、神界人間だろうとどこか別の世界から迷い込んだ人間だろうと関係ないでしょ、大丈夫大丈夫、ドMであればそれで良いから」


「う~ん、それもそうね、それで、この何の変哲もないハゲのクリーチャー、これが最近新しく神様を捕まえて来て、しかもその神様から凄い勢いで『M』の力を抽出しているっていう個体なの?」


「そう……であるはずよ、ほら、皆同じ顔だし同じく臭っさいしろくでもないし喋らないしキモいし、あまりしっかり見ていないからわからないのよね、でも多分そう、命令していた通り新しい『人員』になりそうなのを引っ張って来たから」


「あ~っ、そういうことね、それで、この4人はどこに連行するの? 足りてない場所って?」


「それは私がほら、最近見ているあの場所、マゾ狩りハンター神様が命と引き換えに新しく連れて来たロボテック女神様? に改修をさせている増幅装置の場所よ」


「そうなんだ、じゃあわたしも一緒に行くわね、最近ちょっと手が空いちゃって、金髪天使ちゃんが忙しくなりそうだから手伝おうと思ってさ」


「あ、う、うん、よろしくお願いする……」



 これは微妙な感じだ、特に何かを疑っているとか、金髪天使の仕事を邪魔しようだとか、そういったことを考えている様子ではない……仮に銀髪天使としておこう。


 それが鬱陶しく付き纏って来ている限りは、俺達もこの新しく潜入した4人も、そしてルビアや他の神々、先輩天使も目立った行動を取ることが出来ないのだ。


 しかもこの銀髪天使、特に何か歪んだ感情を持ってマゾ狩り団体などというゴミ組織に入ったわけではなく、純粋にそれが正義であって、自分は何もおかしなことなどしていないと思っている様子でもある。


 つまりもう仲間にした他の天使のように、どこかで切り崩して仲間に加えてしまうということが出来ない、純粋な敵として考えなくてはならない存在。


 それがこの先ずっと付き纏って来ることとなった場合、間違いなく俺達の計画に支障が出てしまうではないか……だが排除するにしてもどうするべきなのかといったところだ……



「ひ、ひとまずさ、私の持ち場に戻りましょ、ほら、話題の神様方もそこで作業させたままだし、今は見張りも立てていないのよ、人手不足だから」


「あらっ、そんなに忙しかったんだ、ごめんね、私そんなの気付かずに最近は1日中仕事の文書をパラパラ捲ってたまに無意味な付箋とか付けたり机を何の意味もなく、ゆっくり開け閉めして暇潰ししてたの」


「社内ニートかよ……うん何でもない、とにかく行きましょ」



 これだけでもかなりの強敵であって、そう簡単にはどこかへ行ってくれないであろうということがわかってしまううえに、実力による排除も現状では難しい。


 直接コイツに何かすれば間違いなく騒ぎになるし、もちろん捕まえたうえでずっとどこかに押し込んでおくようなことも出来はしないであろう。


 ハゲのおっさんクリーチャーならともかく、団体の構成員である天使が結界の中で行方不明などになれば、それこそ全体を挙げての捜索になってしまうはずだ。


 よってしばらく、いやそのしばらくがいつまでになるのか見当も付かないのであるが、とにかく俺はハゲのフリを、他の仲間達は単に捕まったドMのフリをしていなくてはならない。


 だがこんなときに限ってウ○コがしたいのだ、ハゲはいかにもウ○コばかりしていそうな気持ち悪いおっさんのビジュアルなのだが、クリーチャーである以上何も食べないし、もちろんウ○コもしない単に臭いだけの何かなのだ。


 そんなハゲに成りすましている俺が、いきなり『ちょっとウ○コしてくる』ということになって中座したらどのように思われるのか。


 少なくともこの銀髪天使は、ハゲがウ○コをしないことを知っているはずであって……いや、ウ○コをする特殊な個体であると認識して、逆に感動してくれるのかも知れないな。


 とはいえ、そのウ○コしたい旨をキッチリと伝達することなど、本来は喋る機能がほとんど搭載されていない、一般的なドS用語しか収録されていないハゲには出来ないことである。


 むしろウ○コをしに行くことよりも、ウ○コをしたい旨の意思表示が出来たことにつき、銀髪天使に疑われてしまうのではないかといったところか。


 さてどうする、このまま自然体でウ○コをしに行くのは少し厳しいから、目的地に着いたら金髪天使にひと言伝え、何か別のことを命令されたような感じで便所に走るべきと考えるのが妥当……のような気もするが、もう色々とどうでも良くなってきた……



「あ~て、そろそろ到着ですよ~っ、ドMの人間、雌豚共! これから始まる辛い日々、覚悟しておきなさ……いぃ? げふっ……」


「……!? ちょっ、何してんの勇者様? いきなりその天使を蹴飛ばして……気を失ってしまったじゃないのっ」


「いやすまん、ちょっとウ○コしたくなってな、出る前に食った山菜の天ぷらが効いてきたんだろうよ」


「汚いですねそんなモノするなんて、とても同じ人間とは思えませんよ異世界人というのは……」


「いや逆に『美女と美少女はウ○コしない世界』の方が特殊だと思うぞおそらく……で、ちょっと便所に行ってくるから、この銀髪天使が起きそうになったらアレだ、もう一撃加えて眠らせておいてくれ」


「え~っと、ちょっとその、転倒……よりももっと、そうですね、そのこ木の枝が凄い勢いで折れて飛んで来たのが直撃して、みたいなストーリーにしましょう、ここでいきなり気を失って、自分でも不自然に思ってしまうかもですから」


「じゃっ、ということで頼んだぞっ! えっと便所は……向こうかっ! 遠いなクソがっ!」


「……どうしようもない方ですねホントに、というか皆さんはあの勇者の方の仲間ですよね? いつもあんな感じなのですか?」


「まぁ、今日はいつもよりマシなぐらいよね、普段はもっと凄まじくアホだわ」


「本当に勇者なのでしょうかあの方は……というようなことは神々の、特にあの勇者の方を別の世界から召喚したという神様の前では言えませんがね」


「勇者っていうより何か別の存在な気がしますね勇者様は……っと、銀髪天使さんが起きますっ! ハァッ!」


「ぐへっ……」


「危なかったですね、余計な話を聞かれてしまっては元も子もありませんから、ひとまずここに寝かせておきましょう」


「あなた方もたいがいなようですが……いいえ、特に問題はありませんよ」



 俺がどうしてもということでウ○コをしに、無理矢理にその場を離れたことによって生じた金髪天使と仲間達との会話。


 お互いに先程初顔合わせをしたばかりなのであるが、これからこのマゾ狩り収監施設を完全に制圧するまで、他の神々や天使と共に行動していかなくてはならないなかなのである。


 もっとも、金髪天使やその先輩の看破の女神付き天使に関しては、味方になったというだけで元々は敵、マゾ狩り団体の憎むべき構成員であったという事実があるのだ。


 つまり事件の解決後にはこの金髪天使と先輩天使、そしてこれからどのような扱いをするべきなのかがまだ定まっていない、銀髪天使に関しても、それなりの罰を与えていかなくてはならないということ。


 その罰がどの程度まで苛烈なものになるのかということは、ここでどれだけ俺達の計画の成功に貢献してくれるのかにもよるが、何をしたところでもう無罪放免ということはあり得ない。


 このような状況にある金髪天使なのだが、それでも今はしっかりと、少なくともスパイとして協力するフリをしているのではないということを、この新しく潜入した4人にも伝えていくことが重要であると、そのことぐらいはわかっているはずだ……



 ※※※



 で、その顔合わせの時間を取っている仲間達はそれで良いとして、ウ○コをbチかますために全力で便所へ向かっている俺なのだが、なかなかどうして目的地へ辿り着かないのであった。


 施設内のメインの場所ではないとはいえ、やはり構成員の天使やクリーチャーがウロウロしているのは変わらないため、どうしても隠れながら、やり過ごしながら移動せざるを得ないのだ。


 そして見えてきた便所は外の薄汚いモノであって、もちろん最下級クラスの天使が使用するものなのであろうが、まぁ神界人間用のものよりはまだマシな設備が存在していることであろう。


 ちなみにこの世界の美女と美少女は、種族に拘らずウ○コをしない、それが神界にも適用されているらしく、見えてきたのは男子便所としての機能しか備えていないもののようだ。


 もっとも、こんな場所に女子とイレなどが存在していれば、中身どころか表面まで腐っていそうなゴミクズ天使やゴミカス神などが、盗撮やその他暴力的な犯罪に走るのはいうまでもない。


 神界とは本来美しいものであって、清廉潔白な神や天使の楽園のような場所でなくてはならないのだが、現実的にはそのような理想、抱くだけ無駄なことであるらしいということはわかっている……



『……んっ? おい、今向こうにハゲのおっさんクリーチャーが居なかったか?』


『まさか、ここは奴等の活動範囲外だろうに、もしかしたら自己処分のために来ているのかもだが、まぁ、きっと方向感覚がバグって彷徨っているんだろうよ、もし居るんだとしたらな』


『そうかな、何か目的を持って歩いていた……いや走っていたように見えなくもなかったんだが……収容者の脱走とかじゃないよな?』


『だったとしたらもうとっくに連絡が来ているはずさ、俺達がここでサボっているのもバレているだろうしな』


『違いねぇ、きっと見間違いかバグってダメになったハゲだったんだな、すまんもう忘れてくれ、今日はなかなかのサボタージュ日和だからな』


「・・・・・・・・・・」



 便所のすぐ裏でブッサボっている2体の天使、あまりにもだらしのない顔をしたおっさんで、どう考えても有能には見えない、しかも最下級の天使であるということもすぐにわかってしまうような身形の奴等。


 それがどこかへ行ってしまわない限り、俺が便所に入ってウ○コをすることが叶わないのであるが、どう考えてもすぐに移動するような連中ではない。


 確実に今日の仕事が、おそらく時間で管理されているのであろう、こんなわけのわからない場所のどうでも良い警備の当番が終わるまで、この場でサボって時間を潰そうという魂胆なのであるから。


 もうこうなったらこいつ等だけでも殺してしまおうか、事故に見せかければワンチャン追及を免れることが出来るのかなど、ウ○コしたいのを我慢しながら考えを巡らせる。


 しかし出てくるのは思い切った案ばかり、どうしてもムチャクチャをしない限り、俺が安全にこの便所を用い、ウ○コをブチかますことは出来ないのだ。


 結局は殺すか、或いは回避するかの二択になってくるのだが……ひとまずバレないことを祈って便所に入ってしまうべきか、そして個室に篭ってしまえばもう、そうそう見られるようなことはないであろう……

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